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第三章

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「これは…」
「せんせ、ぇ、おれ、おとこ、だ、よ?」
「そうだ、お前は男だ。そして先生もお前に恋愛感情はない」
「じゃ、なん、で、」
「体と気持ちは違うんだよ。どれだけ好きな人を前にしても、幼稚園児は勃起しないだろ?」
「う、ん…」
「でも俺たちは何も考えなくても勃つ時ってないか?」
「朝勃ち、とか?」
「そうだな。だからそんなに怯えなくても、先生はお前をどうにかしたいと思わない。ただの生理現象ってやつだ」
「おしっこと、いっしょ?」
「そうだな。だからそんなに怯えなくてもいい」
「ん…せんせいは、こわく、ない…」
「それは良かった。そろそろ出よう。ズボン、ちょっと濡れちゃったけどこれなら着替えなくて良いだろ」



 先生も、勃起するんだ。家に帰ってからも、やけに頭がぼんやりして、そんなことばっかり考えてしまう。
最近、シてないな…
あの日から、そういうことをしなくなった。
普通は定期的に出してやらないと、夢精したり、学校で少しの刺激で勃ってしまうから、結構な頻度でやっていたんだけどな。すっかり忘れていた。いや、忘れようと必死だった、の方が正しいか。
「久しぶりに抜いてみるか…」
スマホで適当な動画を探し、いつもしているみたいにズボンの中に手を入れて、柔く揉む体勢をとった。

 おかしい。全く勃たない。

 女の人が仰向けで、男の人が穴に向かって前後に揺れている、一般的なAV。嫌悪感はない。なのになぜだろう。俺はインポにでもなってしまったのだろうか。映像を変えて再び挑戦するも、結果は同じ。ふにゃりと萎えたペニスのままだ。
 電源を消し、諦めて寝ることにした。今日は疲れた。目を閉じるとすぐに寝られそう。

 俺もキス、気持ちよかったんだけどなぁ…。
 なんで、俺は勃たなかったんだろう。ていうか、本当に俺、インポだったらどうしよう。日常生活では支障が無いとはいえ、結構困った問題なのでは…?まあ、早く小便が出来るようになるのが先決なんだけど。
 でも、最近思う。あの日から遠ざかるにつれて、「男」が自分から消え去ってるんじゃないかって。自分の「性」がずれていってるんじゃないかって。


『先生はお前のことをどうにかしたいと思わない』
あの言葉が脳裏をチクチクと刺す。
 何で、なんだろう。

 分かんない。
 
頭がぐるぐるして気持ち悪い。
もう、何も考えたくない。
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