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第六章
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「珍しいな。篠田が俺を呼び出すなんて。どうしたんだ?」
クラスの違う篠田を朝から監視していたが、昼休み、動きがあった。人の滅多に通らないロータリーへと向かっていったからだ。
「時田、おれ、お前に渡さねえといけないものがあるんだよ」
「何だこれ?SDカード?」
「あ、ああ」
「パソコンねえと見れないじゃん。俺んちないから情報室で見ていいか?」
「ああ。俺も行く」
「えー、何だろー」
「時田!!あのさ…先言っとく。それ、さ、」
「うん?」
「それさ、お前の、犯された、動画」
「…は?」
「証拠、犯人も映ってるから」
「なん、でそれを…」
「学校で見つけた盗撮機。場所はあの、ペットボトルの…」
「そ、れ、って、」
「分かるだろ?俺らの担任が、犯人だ」
「…ちがう…ちがう、だってせんせいは、おれを、たすけて、やさしくて、」
「っ…信じたくないのもわかるけどさ、でも一応渡しとくから。じゃあ」
足早にそこを去る篠田。よし、俺の指示通りだ。
こちらに向かって歩いてくる。しかし、気になるのか何度も後ろを振り返って、今にもSDカードの持ち主に引き寄せられそうだ。
「あっ、篠田!!いたいた!!顧問が今すぐ職員室来いってさ!!…どーした?」
「あ、や…なんでもない。サンキューな!」
少し戸惑いを見せたが、パタパタと走って、職員室の方に向かっていく。あいつはああ見えて真面目だから、約束をすっぽかして戻ってくることはないだろう。
ちなみに監督の件は半分本当で半分嘘だ。用があるというのは本当だが、今日中にとのこと。でも行けば用件を伝えられるため、バレることはない。
「あれ、どうしたんこんなところで」
息も絶え絶えで蹲っている奴に白々しく話しかける。
「あ…えと…」
「確かお前、時田だよな?どうした?顔真っ青だけど」
「いや、っ…」
「おいおい、マジでヤバそうだけど大丈夫?先生呼ぼうか」
「…いいっ…」
「まあでも、保健室はには行っとけよ?立てるか?」
「っ、わるい…」
右腕で時田の腰を支え、空いた手で時田の左手を首に回す。
「っは…っは…」
隣にいるだけで分かる、こいつの心臓の音。息が苦しいわけだ。
(あった…)
右ポケット、四角い感触。歩くのに精一杯な隣の彼は気づかない。
「ほら、着いた。先生、気分悪そうで連れてきました」
「あらあら…真っ青じゃない。こっちにいらっしゃい。君、ありがとね。」
「いえいえー…失礼しまーす」
右手がやけに汗ばんでいる。そして、心臓もうるさい。試合の時のような緊迫感だ。
(でも、)
でも、これで、全てが終わる。
次の日、俺の学校の体育教師が逮捕された。
クラスの違う篠田を朝から監視していたが、昼休み、動きがあった。人の滅多に通らないロータリーへと向かっていったからだ。
「時田、おれ、お前に渡さねえといけないものがあるんだよ」
「何だこれ?SDカード?」
「あ、ああ」
「パソコンねえと見れないじゃん。俺んちないから情報室で見ていいか?」
「ああ。俺も行く」
「えー、何だろー」
「時田!!あのさ…先言っとく。それ、さ、」
「うん?」
「それさ、お前の、犯された、動画」
「…は?」
「証拠、犯人も映ってるから」
「なん、でそれを…」
「学校で見つけた盗撮機。場所はあの、ペットボトルの…」
「そ、れ、って、」
「分かるだろ?俺らの担任が、犯人だ」
「…ちがう…ちがう、だってせんせいは、おれを、たすけて、やさしくて、」
「っ…信じたくないのもわかるけどさ、でも一応渡しとくから。じゃあ」
足早にそこを去る篠田。よし、俺の指示通りだ。
こちらに向かって歩いてくる。しかし、気になるのか何度も後ろを振り返って、今にもSDカードの持ち主に引き寄せられそうだ。
「あっ、篠田!!いたいた!!顧問が今すぐ職員室来いってさ!!…どーした?」
「あ、や…なんでもない。サンキューな!」
少し戸惑いを見せたが、パタパタと走って、職員室の方に向かっていく。あいつはああ見えて真面目だから、約束をすっぽかして戻ってくることはないだろう。
ちなみに監督の件は半分本当で半分嘘だ。用があるというのは本当だが、今日中にとのこと。でも行けば用件を伝えられるため、バレることはない。
「あれ、どうしたんこんなところで」
息も絶え絶えで蹲っている奴に白々しく話しかける。
「あ…えと…」
「確かお前、時田だよな?どうした?顔真っ青だけど」
「いや、っ…」
「おいおい、マジでヤバそうだけど大丈夫?先生呼ぼうか」
「…いいっ…」
「まあでも、保健室はには行っとけよ?立てるか?」
「っ、わるい…」
右腕で時田の腰を支え、空いた手で時田の左手を首に回す。
「っは…っは…」
隣にいるだけで分かる、こいつの心臓の音。息が苦しいわけだ。
(あった…)
右ポケット、四角い感触。歩くのに精一杯な隣の彼は気づかない。
「ほら、着いた。先生、気分悪そうで連れてきました」
「あらあら…真っ青じゃない。こっちにいらっしゃい。君、ありがとね。」
「いえいえー…失礼しまーす」
右手がやけに汗ばんでいる。そして、心臓もうるさい。試合の時のような緊迫感だ。
(でも、)
でも、これで、全てが終わる。
次の日、俺の学校の体育教師が逮捕された。
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