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*竜王国*

41 竜人の溺愛

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効率の良い方法とは、キスを交わす事だった。

「そっ………そっ……んな事聞いてない!」
「今初めて教えましたからね」
「ん──っ!」

ーあぁ、だからさっき、アルマが微妙な表情を浮かべていたのかー

アルマは知っていたから。結婚は3ヶ月前だったけど、その前から一緒に住んでいたのだから、勿論、相手の竜人の竜力をアルマに馴染ませる為に……

「他に方法は?」
「手を繋ぐぐらいですね。その方法なら、数年は掛かると思います」
「……数年…………」
「口からなら、一月ぐらいで馴染みますよ?」

あまりにもテオフィルさんがサラッと言うから、それが普通なのか─と何とか自分に言い聞かせて言い聞かせて……

「お手柔らかにお願いします……」
「はい」

テオフィルさんは嬉しそうに笑った後、もう一度私にキスをした。







それから更に1年。


「婚約から結婚迄が早かったね」
「騙された!!」
「騙してませんよ?」

あれから、本当に1ヶ月程でお互いの竜力が馴染む事ができ、そのお陰でいつでも結婚できる状態になったかと思えば、もう既に結婚の日取りが決まっていた。
実は、人間と竜人では力の差があり過ぎる為、本来であれば手を繋いで数年掛けて馴染ませていくそうだけど、私の場合は竜人寄りだった事もあり、少し強引に馴染ませた─と。

「無理だと分かったら切り替えるつもりでしたけど、問題無かったので…。それに…少しでも早く結婚したかったから─と言う事もありました」
「うっ………」

そんな事を言われると、それ以上は何も言えなくなる。

「ふふっ…まぁ、父親の私から見ても、レイラーニに問題なかったから、私も何も言わなかったんだ。私も同罪だね。ただ、私としては、レイラーニに1日でも早く幸せになって欲しかったから…」
「別に、怒ってませんよ?ただ………恥ずかしかっただけだから!!」

毎日毎日、隙あるごとにキスされて、それだけでいっぱいいっぱいなのに、今迄以上に甘やかされて……王城だけではなくて、街に行っても温か過ぎる視線で見守られて……恥ずかしいやら居た堪れないやらで………。

「結婚だって嫌じゃないから」

竜人と人間では、結婚式に関しても色々違いがあるようだ。
人間ひと族では、主に女性側の家が中心に決めて行くけど、竜人族では男性側の家が中心に決めて行くんだそうだ。

「ドレスも、後は試着して仕上げるだけだから」

と言われた時は、本当に驚いた。

腰から下がフワッと膨らんでいて、後ろの裾が少し長めになっていて幾重かになった総レースでできたドレスの色は、白に近いアイスブルーの色をしていた。身に着けるアクセサリーは青色。

文句の言い様のないドレスだった。

結婚式も人間族とは違い、お互い誓い合うと言うのはなく、お披露目に近いものだった。王女と四天王の結婚と言う事もあり、招待客はそれなりの人数だった。その人達と挨拶をしながら歓談して終わりとなる。

「竜人の結婚式とは、最初で最後の大々的なお披露目なんです」
「最初で最後?」
「竜人は、獣人よりも独占欲が強くて、伴侶となった相手は、あまり外に出したがらないので、特別な行事事ではない限り、人間みたいな夜会が殆どないんです」
「そうなの!?」

まともに社交界デビューした事が無い私でも、流石に王女で四天王の嫁ともなれば、夜会やお茶会やらに振り回さ──お呼ばれされ、参加しなければならないよね……なんて思っていたけど…。

「竜王国は、理想郷だったんだ………」
「レイラーニ様なら、そう言うと思ってました」

と、少し呆れた顔をしたアルマに笑われた。







******


「これは…聞いてなかった…………」

きっと、アルマも態と教えてくれなかったんだろう。確かに、アルマも結婚式の後、竜人族の慣例として1ヶ月の“新婚休暇”が与えられて、仕事を休んでいた。新婚だし、旅行にだって行けるから─なんて思っていたけど、そうではなかった。

ーベッドの上の住人になるなんて……知らなかった!!ー

私は今、「生地が薄過ぎない?」と訊きたくなるような寝夜着を着た状態で、背中から寝ているテオフィルさんに抱きつかれてベッドに横になっている。寝ている筈なのに、その腕を外そうとしてもビクともしない。
“新婚休暇”とは、“子作り目的でお互いの竜力を更に馴染ませよう”と言う意味の休暇だった。
勿論、初夜の事は知っていたし拒否をするつもりもなく受け入れる事しか頭になかったけど、それが1ヶ月も続くなんて……誰が予想できただろうか?グレスタンに居た頃に年上の侍女達の「新婚から3日間は大変らしいわ」と言う話を耳にした時は、意味が分からなかったけど、そう言う意味だったんだろう。それが、竜人では1ヶ月。

ー新婚早々、命の危険に晒されてない?ー

なんて、テオフィルさんには言えなかった。

『レイラーニ…』

と、愛おしそうに切なそうに私の名前を呼んでは、私に熱を与えてくるテオフィルさんが、とても愛おしく見えて、全てを受け入れたくなってしまう。意識を飛ばした回数なんて…正直分からない。
そして、昼間はテオフィルさんが、グッタリした私のお世話をしてくれたのだった。



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