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20 見間違える筈のない色

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「明日、ここに来るだろう3人に関しては“極秘扱い”って事で宜しく頼みます。」

そう言うと、リュウさんは、王太子宮内の執務室とお兄様と私の部屋に結界を張った。

ー凄いー

魔力持ちではないから、普段は殆ど魔力を感じる事がない私でも、リュウさんが結界を張った瞬間は、肌がピリピリするような痛みを感じた。
この王太子宮には、お兄様が許可した者しか入る事ができないようになってはいるが、何かしでかしそうなお姉様が居る為、リュウさんが結界を張ってくれたのだ。



ー明日は…どうなるのか……これから、私はどうしたいのか…ー

「しっかり考えないとね」

結界が張られたからか、その日はいつもより安心して寝る事ができた。





******


ぐっすり眠れたからか、翌日はいつもより早い時間に目が覚めた。

今日の予定は、午前中に、もう一度リュウさんと、そのリュウさんが呼んだ人達と会って、私をもらう事。午後からは、リュウさんがお姉様と清水さんと対面する。あの清水さんがどう出て来るか─おとなしく……している筈はないだろう。

ー主に、私に対しては絶対何かしてくるよねー


「うん。ちょっと…散歩でもしようかな…」

ベッドサイドのソファーで、スピスピと鼻息をたてて寝ているのはシルヴィ。起こすのは可哀想かな─と思い、私は1人で静かに部屋を出た。



私の過ごしている部屋は、王太子宮の奥にあり、そこから小さな庭園へ出る事ができる。警備の為の騎士が数人いるが、その騎士もお兄様が信頼できる者だと言っていた為、私の姿を目にしても黙礼するだけで、特に私に何か言ったり、何かをして来たりする事はない。



朝も早い時間で、太陽もまだ低い位置でキラキラと輝いていて、太陽の登って来る方角とは逆の空は、まだ薄っすらと漆黒を纏った空がある。
イーレンで迎える穏やかな朝。
15年前は、朝が来るたび「今日も生きて、目が覚めた」と、安堵するのと同時に、「また1日が始まるのか」と、苦しい気持ちになっていた。本当に、イーレンここには良い思い出が…ない。

「──あぁ…そうか………」

イーレンここは、もう私にとって───

「─っ!?」

その時、庭園の奥の方が光り輝き、魔力が波のように広がって来るのが分かった。ただ、その魔力は嫌なものでも肌を刺激するようなものでもなく、とても穏やかで温かくて……安心するような魔力。

私が感じる程の、それなりに大きな魔力が発動しているのにも関わらず、この辺りが騒がしくなっていないと言う事は、予定通りの事だと言う事だろう。
もしかすると、リュウさんが何かしているのかもしれない─と思い、その光り輝いた方へとこっそりと近付いて行った。



ボソボソと話し声はするものの、何を話しているのかは分からい。立ち並ぶ木の向こう側に居る為、その姿もハッキリとは分からないけど、リュウさんらしき人以外に3人居るようだった。おそらく、リュウさんが呼んだ人達だと思うけど…何でこんな所に?お兄様も居ない…よね?

「────え?」

4人の様子を覗いながら考えている時に、ふと目にした人物に……息を呑んだ。

ーどうして!?ー

シルバーブロンドの髪に青色の瞳。
遠目だけど、その青色を見間違える筈は…ない。

セオ君の…いろだ。

ーもう会えないと思っていたのにー

一歩踏み出したところで……二歩目は進めなかった。

「─────」
「───」

セオ君の前に、セオ君の方を向いているから顔は見えないけど、プラチナブロンドの髪の小柄な女性が居て、2人で何かを話しながらその女性がセオ君の腕に軽く触れると、セオ君はその女性を見つめたままフワリと優しく微笑んだ。

「っ!」

私に向けてくれた笑顔とはまた違って……とても優しい…以上の何かが含まれているような……

目の前に、手の届くような距離にセオ君が居るのに、それ以上近付いて行く勇気がなくて、私はセオ君達に気付かれないようにその場を後にした。









『バフッ!?』
部屋に戻ると、シルヴィが起きていて、部屋のドアの前で座って私を待っていてくれた。

ー可愛い!ー

と、シルヴィに抱き付けば、一吠えした後尻尾をフリフリとさせている。

さっきの人は…本当にセオ君…だったんだろうか?会いたいな─と思っていたから…同じ色だからと思い込んだだけ……かもしれない…よね?

「───ないな……」

見間違える筈は…ない。

あの女性に向ける眼差しは──
ひょっとしたら、婚約者なのかもしれない。日本では考えられないけど、この世界において、セオ君や私の年では、婚約者どころか結婚して子供が居てもおなしくはない。

セオ君にとって吉岡翠わたしは、もう…思い出になっているのかもしれない。

『ワフッ?』と、首を傾げて私を見上げるシルヴィが、『どうしたの?大丈夫?』と訊いているような気がして、「大丈夫じゃないかもだけど、大丈夫かな?」と答えると、私を慰めるように顔をスリスリと擦り付けた。








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
ଘ(੭ˊ꒳​ˋ)੭✧


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