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19 先輩?

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「──と言う事で、今からは……“プライベートタイム”って事で良いか?」
「はい、構いませんよ。」
「はー……久し振りに肩が凝った……」

そう言いながら、グッタリとソファーの背凭れに背をあずけるリュウさんを、お兄様が苦笑しながら見ている。
どうやら、さっきまでは“余所行き”だったようで、本来のリュウさんはゆるい感じの人のようだ。

「あー……ブルーナ様、今からの俺に関しては、スルーしてくれると有り難い……。」
「あ、全然問題ないです。寧ろ、私が王族扱いされる事は無いので、今のリュウさんの態度の方が、私も気が楽です。あ、“様”も要りませんよ?」
「あー……それはそれで、色々と突っ込みどころはあるが……取り敢えず、他人ひとの目の無いところでは、ゆるい感じでよろしく。」

「はい。」と快く返事をすると、リュウさんは「早速だけど─」と、今回、お姉様が召喚した聖女についての話をしだした。

ここだけの話─として、実は、以前、異世界からやって来た聖女が、とんでもない聖女だったらしく、その後始末が大変だった事があったらしい。その為、今回やって来た聖女について知っているのは、異世界から来たと言う事だけだった為、実際会う前にどんな聖女なのかを知りたいと。

「「…………」」

それを聞いて、私とお兄様はお互い視線を合わせて黙り込む。

ーもう、リュウさんには言ってしまおうか?ー

お兄様が静かに頷いた事を確認すると、私はリュウさんの方に視線を向けて「実は─」と、この15年の間の話と、清水渚沙についての話をした。恥ずかしかったから、セオ君の事は話さなかった。





『マジか!日本か!清水しみず渚沙なぎさ吉岡よしおかすいとか!』
「えっ!?」

ーあれ?リュウさん、今……日本語を喋った?ー

『ハハッ!俺、日本人の転生者なんだ。で、今のウォーランド王国の王妃である聖女様も、日本からの召喚者だから、ある意味、ブルーナのってとこだな!』

「先輩!?」

驚いた─ウォーランド王国の聖女様が異世界人と言う事は知っていたけど、まさかの日本人で、リュウさんが……転生者……ラノベあるある…??

「と言うか……それまた、聖女がやって来たな……それ、多分と言うか、絶対第一王女ニコルと同じ属性だろう…。ああ!そうか!なら……もういっその事、してみるか!」

眉間に皺を寄せたと思えば、直ぐに顔を明るくさせ、そのまま私達の目の前で、魔法で真っ白な大きな鳥を創り出した。その鳥に何か囁いた後、その鳥は部屋の壁や窓をすり抜ける様にして飛び立って行った。

ー凄い!ー

魔法って……凄い!!お姉様が私の目の前で扱う魔法は、いつも私を攻撃するモノしかなかった。だから、魔法と言うモノに対して、嫌な印象しかなかったけど……今、目の前で見たリュウさんの魔法は、とてもキレイだった。
あの鳥は何だったのか?と訊けば、急ぎの連絡を飛ばす為の鳥なのだそうだ。但し、受け取る側にもそれなりの魔力がなければ、あの鳥がその人に辿り着く事ができない為、使える相手には限りがあるそうだ。

と言う事は、今、連絡を飛ばした相手は、それなりの魔力持ちと言う事だ。詳しく聞くと、飛ばす距離も関係してくるらしいが、隣国とイーレン王国間の距離で飛ばすとすれば、お姉様とお兄様がギリギリで辿り着ける距離と魔力なのだそうだ。

「まあ……今飛ばした相手は……相手が相手だから、俺が足らなくても……辿り着けるんだよなぁ……」と、遠い目をして呟いたリュウさん。

「「?」」

お兄様も私も、いまいちよく分からないけど、兎に角、魔法使いと言うのは、本当に色々と凄いな─と思った。

「明日、俺とニコルと聖女が会うのは午後からだったか?」
「そうです。リュウ殿が呼ぶと言った人は…いつ頃来れそうですか?」
「ん?あー………多分、明日の午前中には……来れるな。あ、勿論、非公式と言うか、極秘でお願いする。」

「明日の午前中…ですか!?」

そんなにも早く来れると言う事は、もう既にイーレンに来ていると言う事なんだろうか?イーレンの人間では…ないよね?

「一つ確認しておくけど、聖女は、吉岡翠がイーレンの王女だと言う事は、まだ知らないんだよな?」
「知らないと思います。」

知っていたら、きっと突撃されていただろう。

「知った時にどう出るか……楽しみだな?」
「「…………」」

リュウさんが、それはそれは悪い笑顔を浮かべている。清水さんが、どう言うと行動を取るかは──予想できる。面倒臭い事になる事は分かりきっている。

「何なら、その聖女も第一王女も纏めてできるだろう。」
………」

一体どう言う意味なのか──私とお兄様は、ただただ黒く笑うリュウさんを見ていた。






❋エールを頂き、ありがとうございます❋
ꕤ*(*´꒳`*)♡


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