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39 森の真実
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❋アラール第二王子視点、続きます❋
「あの森だって、何の騒ぎにもならず元通りになったし、リュシエンヌも大丈夫なら、もう何の問題もないですよね!?なら、この枷も必要ないですよね!?」
「────あぁ……なるほど……」
「「……………」」
アラスターの言葉を聞いたユラは、パッと笑顔になった。何故笑顔になるのか、全く分からない。私からすれば、恐怖でしかない。それより、アラスターから溢れまくっている殺気に気付かない、その神経が羨ましい。
今のユラは、両手両足に魔法の枷をはめられた状態で、部屋の椅子に座っている。そのユラの方へとアラスターはゆっくりと近付いて───右手を軽く振り上げた。
「きゃあっ──い───っ!?な…何を!?」
ユラが手で押さえている左頬からは、薄っすらと血が出ている。
「あぁ…すまない。手を振り上げただけで、初歩の初歩のレベルだが攻撃魔法が発動してしまったようだ。ワザとではないから、赦してくれるよね?命に関わるような大怪我でも、毒がある訳でもないしね。これからは…気を付けよう………」
「なっ……酷くないですか!?私は…アラスター様の為に、白色の生き物を探して───きゃあっ!」
「あぁ、すまない。また勝手に魔法が発動してしまったようだ……それで…誰が、お前に探してくれと…頼んだ?」
「それ…は………」
「それに、その白色の生き物に怪我をさせて良いと、誰が言った?」
「…………」
「俺は、俺が大切にしたいものや大切にしているものを傷付けるような奴は、決して赦さない。ユラ、俺がお前を赦す事はない。例え、クレイオン嬢がお前を赦したとしても」
そこで、ようやくユラは黙り込んだ。とは言え、反省したと言うよりは、納得いかないと言った表情だ。きっと、ユラには、何を言っても通じないだろう。通じるのは、自分に都合の良い話だけなのだ。
「お前は、拘束したままユーグレイシアに強制送還する。強制送還の後は、地下牢で処分が下されるのを待っていろ。そこで、今以上の騒ぎを起こせば……もう二度と笑えるとは思うな」
「…………」
そこで、アラスターを睨みつけるユラは、ある意味凄いなと思う。涙を流して許しを乞うのであれば、まだ可愛らしかったかもしれないが……そうしたところで、何も変わらないだろうけど。
それから、ユラは一言も喋る事はなく、そのままユーグレイシアへと転移魔法陣で強制送還された。
******
その日の夕方、秘密裏に王宮から手紙が届いた。
「やっぱり、あの森に掛けられていた魔法は、国王繋がりだったようだ」
「そんな………」
“そちらに、使者を送る”
とだけ書かれた手紙ではあるが、その使われている便箋には国王の紋章が入っている。
「レイモンド様からは、何も隠す事なく話すようにと言付かっています」
「そりゃそうだろうね」
隠したところで、拗れるだけだ。素直に話して謝るしかない。事が大きくならないように、祈るのみだ。
そして、夕方やって来た使者は────
「何故………シーフォールス国王が………」
「私が直接話した方が早いと思ってね?宜しく頼みます……アラール殿下」
シーフォールス国王の若き国王─アンセルム国王だった。それと、私の事も把握済みだった。
「森での事は、全てこちらで把握しているから、説明は良いよ。結局は、身内同士の問題だけで、こちら側の被害は一切無かったし、今はもう元通りになっているからね」
「ありがとうございます。それと、本当に申し訳ありませんでした」
「うん。謝罪は受け取ったから、もうこれで終わりにしよう。ただ……その代わり、一つだけお願いがあるんだ」
「お願い…ですか?」
「うん」
「「………」」
シーフォールスの若き国王は、飄々としているが、何を考えているのか全く分からない。
「確か、白豹が大きな怪我をしたらしいけど…もう大丈夫なんだとか……」
「……はい」
対魔獣用の短剣で大怪我をしたのにも関わらず、たったの数時間で大丈夫となったクレイオン嬢。気にならない訳がない。普通なら、生死を彷徨うレベルなのだ。
「ひょっとして……“治癒”の力を持つ者が……居るの?」
「「……………」」
名も無き女神の逆鱗に触れ、失ってしまった力。その力は争いの種にもなる。
「それには、私がお答えします」
「アラスター!?」
「レイモンド様からは、許可を得ていますから。ただ、ここだけの話としていただくことが条件です」
「あぁ、それは承知の上だ。他言はしない」
「では………先程の答えは“是”です」
「本当に!?」
「はい」
「あぁ…何て事だ!本当に存在したんだね!」
アンセルム国王は、それから静かに涙を流した後、あの森の事を話してくれた。
「あの森には今、獣人の私の妻と子が眠っているんだ」
「王妃と王子と言う事ですよね?何故…森に……」
「“獣人のくせに”と……王妃と王子を妬んだ者に呪いを掛けられてしまってね。2人を助ける為に、王宮ではない浄化された場所で眠ってもらう事にしたんだ。そのお陰で、何とか命を繋いでいる─と言ったところで……それでも少しずつ呪いに侵されていて……」
だから、あの森に人が近付かないように鬱蒼とした森に目くらましの魔法を掛けていたのだった。
「あの森だって、何の騒ぎにもならず元通りになったし、リュシエンヌも大丈夫なら、もう何の問題もないですよね!?なら、この枷も必要ないですよね!?」
「────あぁ……なるほど……」
「「……………」」
アラスターの言葉を聞いたユラは、パッと笑顔になった。何故笑顔になるのか、全く分からない。私からすれば、恐怖でしかない。それより、アラスターから溢れまくっている殺気に気付かない、その神経が羨ましい。
今のユラは、両手両足に魔法の枷をはめられた状態で、部屋の椅子に座っている。そのユラの方へとアラスターはゆっくりと近付いて───右手を軽く振り上げた。
「きゃあっ──い───っ!?な…何を!?」
ユラが手で押さえている左頬からは、薄っすらと血が出ている。
「あぁ…すまない。手を振り上げただけで、初歩の初歩のレベルだが攻撃魔法が発動してしまったようだ。ワザとではないから、赦してくれるよね?命に関わるような大怪我でも、毒がある訳でもないしね。これからは…気を付けよう………」
「なっ……酷くないですか!?私は…アラスター様の為に、白色の生き物を探して───きゃあっ!」
「あぁ、すまない。また勝手に魔法が発動してしまったようだ……それで…誰が、お前に探してくれと…頼んだ?」
「それ…は………」
「それに、その白色の生き物に怪我をさせて良いと、誰が言った?」
「…………」
「俺は、俺が大切にしたいものや大切にしているものを傷付けるような奴は、決して赦さない。ユラ、俺がお前を赦す事はない。例え、クレイオン嬢がお前を赦したとしても」
そこで、ようやくユラは黙り込んだ。とは言え、反省したと言うよりは、納得いかないと言った表情だ。きっと、ユラには、何を言っても通じないだろう。通じるのは、自分に都合の良い話だけなのだ。
「お前は、拘束したままユーグレイシアに強制送還する。強制送還の後は、地下牢で処分が下されるのを待っていろ。そこで、今以上の騒ぎを起こせば……もう二度と笑えるとは思うな」
「…………」
そこで、アラスターを睨みつけるユラは、ある意味凄いなと思う。涙を流して許しを乞うのであれば、まだ可愛らしかったかもしれないが……そうしたところで、何も変わらないだろうけど。
それから、ユラは一言も喋る事はなく、そのままユーグレイシアへと転移魔法陣で強制送還された。
******
その日の夕方、秘密裏に王宮から手紙が届いた。
「やっぱり、あの森に掛けられていた魔法は、国王繋がりだったようだ」
「そんな………」
“そちらに、使者を送る”
とだけ書かれた手紙ではあるが、その使われている便箋には国王の紋章が入っている。
「レイモンド様からは、何も隠す事なく話すようにと言付かっています」
「そりゃそうだろうね」
隠したところで、拗れるだけだ。素直に話して謝るしかない。事が大きくならないように、祈るのみだ。
そして、夕方やって来た使者は────
「何故………シーフォールス国王が………」
「私が直接話した方が早いと思ってね?宜しく頼みます……アラール殿下」
シーフォールス国王の若き国王─アンセルム国王だった。それと、私の事も把握済みだった。
「森での事は、全てこちらで把握しているから、説明は良いよ。結局は、身内同士の問題だけで、こちら側の被害は一切無かったし、今はもう元通りになっているからね」
「ありがとうございます。それと、本当に申し訳ありませんでした」
「うん。謝罪は受け取ったから、もうこれで終わりにしよう。ただ……その代わり、一つだけお願いがあるんだ」
「お願い…ですか?」
「うん」
「「………」」
シーフォールスの若き国王は、飄々としているが、何を考えているのか全く分からない。
「確か、白豹が大きな怪我をしたらしいけど…もう大丈夫なんだとか……」
「……はい」
対魔獣用の短剣で大怪我をしたのにも関わらず、たったの数時間で大丈夫となったクレイオン嬢。気にならない訳がない。普通なら、生死を彷徨うレベルなのだ。
「ひょっとして……“治癒”の力を持つ者が……居るの?」
「「……………」」
名も無き女神の逆鱗に触れ、失ってしまった力。その力は争いの種にもなる。
「それには、私がお答えします」
「アラスター!?」
「レイモンド様からは、許可を得ていますから。ただ、ここだけの話としていただくことが条件です」
「あぁ、それは承知の上だ。他言はしない」
「では………先程の答えは“是”です」
「本当に!?」
「はい」
「あぁ…何て事だ!本当に存在したんだね!」
アンセルム国王は、それから静かに涙を流した後、あの森の事を話してくれた。
「あの森には今、獣人の私の妻と子が眠っているんだ」
「王妃と王子と言う事ですよね?何故…森に……」
「“獣人のくせに”と……王妃と王子を妬んだ者に呪いを掛けられてしまってね。2人を助ける為に、王宮ではない浄化された場所で眠ってもらう事にしたんだ。そのお陰で、何とか命を繋いでいる─と言ったところで……それでも少しずつ呪いに侵されていて……」
だから、あの森に人が近付かないように鬱蒼とした森に目くらましの魔法を掛けていたのだった。
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