上 下
6 / 14

6.ハリエットが一人になった途端

しおりを挟む
「元気がないけど何かあったのかい?」


 お昼休憩にやって来た食堂奥にある王族専用の談話室で、特別メニューを前にジェイムズが心配そうに聞いてきた。


「大したことではありませんの」

 笑って誤魔化そうとしたハリエットに、
「聞かせてくれないかな? ハリエットがそんな憂いを帯びた思案顔をしていると、心配で午後の授業に身が入らなくなりそうだ」


「・・ジェイムズ様は私の事怖いとお思いになりませんの?」

「一度も思ったことはないなあ。逆に怖がりで臆病・・慎重派だと思ってる」

「臆病者は酷いですわ。でも、クラスの皆さんは私の事怖がっておられる気がしますの」


「うーん、ハリエットは普段余り話さないから誤解を受けやすいのかもしれないね。
綺麗な顔をしてるから、緊張して無表情になると怒っているように見えるのかも」


「もっと自分からお話をするよう頑張れば、少しは変わりますかしら」


「ああ、かなり印象は変わると思う。
でもなぁ、今は俺だけのハリエットって感じで無口なのも結構気に入ってるんだよね。
邪魔者が寄ってこないから安心してられるし」


(邪魔・・邪魔者・・変態ズ、はぁ)


 暫くしてふとジェイムズの言葉を思い出しハリエットはみるみる赤くなっていった。

 ジェイムズが首を傾げ、

「あっあの、先程ジェイムズ様が綺麗な顔って仰ったので。その」

「照れてるんだ。真っ赤な顔のハリエットも可愛くて良いね」

「揶揄わないでくださいまし。早くいただかないと、お昼休憩が終わってしまいますわ」


 二人は慌ててナイフとフォークを手にした。


 食事を終え特別室を出た後、クラスメイトがジェイムズに声をかけて来た。

 来週行われる予定の、生徒会の新しい役員決めについてらしく、かなり時間がかかりそうだった。

「ジェイムズ様、私はお先に教室に戻らせて頂きますね」

 二人に挨拶をして、食堂を後にしたハリエットの背後に怪しい影が張り付いた。

(はぁ、どこで見てたのかしら)



 午後の授業が終わりハリエットが帰り支度をしていると、ルーシーが話しかけて来た。

「ハリエット様ぁ、今日はありがとうございましたぁ」

「いえ、特に何も・・」

(聞いてみる? でもなんて聞けばいいのかしら。周りに人も大勢いらっしゃるし)


「・・」

 ルーシーは無言でハリエットを見つめているが、その目がいつもの可愛らしい小動物ではなくハンターの目になっている。

「あの、どうかされましたか?」


 ルーシーがハリエットの耳元で囁いた。
「あんた、転生者だろ?」




「俺もあんたと同じ転生者」

(! おっ俺?・・まさかの、男?)

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】2愛されない伯爵令嬢が、愛される公爵令嬢へ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:1,612

婚約破棄されましたが、幼馴染の彼は諦めませんでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,968pt お気に入り:281

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,898pt お気に入り:3,109

悪役令嬢の中身が私になった。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:347pt お気に入り:2,628

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,219pt お気に入り:3,762

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,422pt お気に入り:2,473

処理中です...