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一回目 (過去)
59.スペシャルメニュー
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【スープが駄目】
【スプーンも汚れてる】
性懲りも無くスープに何か混ぜたらしい。ローザリアは顎を上げて得意げな顔のメイドにやり返すことにした。
「ありがとう。スープの毒味をお願いできる?」
「は?」
「そのスプーンでスープを飲んでみて」
「⋯⋯なんであたしがそんな事しなくちゃなんないの?」
「他に毒見できる人がいないから」
「今まで毒味なんてした事ないじゃない」
「それを言うなら今までこの部屋に食事を運んできたことなんてなかったわ」
「⋯⋯そっ、そこの人にしてもらったらいいでしょう? 護衛なんだから」
「分かりました。ではニールさんにお願いしましょう。何かあれば教会へ連絡をしますね。公爵家のメイドの依頼で公爵家の料理を毒見をしてくださったら体調を崩されたと」
「ダメよ! そんなことしたら馘になっちゃうじゃない」
「おかしなものが入ってなければ問題ないわ」
「あっ、あたしじゃないもん。料理長がスープの具にじゃがいもの芽を入れたって言ってた」
「スプーンは?」
「⋯⋯床に落ちてた雑巾で拭いてた」
ローザリアは思わずため息を漏らした。教会が派遣した護衛に食ってかかり、教会の目があると分かっていて毒のある料理を堂々と持ってくる。
「作った料理長は確信犯だけど運んだあなたも同罪になるのよ」
「あたしは持ってきただけで」
「知っていて持ってきたなら幇助罪が適用される」
ニールは淡々と説明しながらトランクから出した瓶にスープを掬って入れている。
「ほうじょって、なにそれ。あたしは⋯⋯だって断れるわけないじゃない! ローザリア様が我儘言うから⋯⋯ってか、アンタ、何してんの!?」
「証拠集め? 念の為、持ち帰って検査する」
「あっ、あたしは何にも知らない。あたしはわるくないから!!」
ニールの手からスプーンをもぎ取りトレーごと持って逃げ帰ったメイドを呆れ顔のニールが見ていた。
「最初にやってきた奴とあのメイドの名前は?」
「最初に来たのはメイド長のキャシーで、今の子はアビス。新人なの」
とっくに冷めていたお湯を沸かし直してお茶を入れ、トランクの上にクロスを敷いて教会から持参した夕食を並べた。
「トランクのこんな使い方があるとは思いませんでした」
パンにハーブの効いたハムやチーズを挟んだものと卵とソーセージのガレット。アーモンドクリームを乗せたガレットはお菓子のように甘くて美味しかった。
「教会から専属のメイドが来たらあのテーブルと椅子を使ってください。俺が座ると壊れるんで」
ローザリアが驚いてニールを見ると大きな身体に似合わずちまちまとパンを齧っていた。
食事の後、ニールはお茶を新しく淹れた後桃のタルトとメロンを皿に乗せてローザリアに手渡した。
「甘いものは苦手なんで」
ローザリアが半分こしようと言うとニールは気まずそうに頭をかいた。
ニールが部屋の外で警備に立ちローザリアはこっそりと水で体を拭いてベッドに潜り込んだ。
(明日、王宮かぁ。水を出せって言われたらどうしよう。時間をかけて集中しないと加減が出来ないんだけどそれでも構わないのかな)
国王の前で水を溢れさせて勘気をこうむるか、チロチロとしか水を出せず顰蹙を買う未来しか見えない。失敗するならどっちがマシなんだろうと思いながらローザリアは大きな溜息をついた。
【王宮はもう行けないかも】
【悪い奴に捕まっちゃいそう】
(ジンに捕まっちゃうの?)
【そう、食べられちゃうの】
加護は使えないと言う事なのだろうか。もし水を出せと言われても失敗するだけだと呆然としたローザリアだったが、王宮精霊師達はどうやって魔法を使っているのだろうかと不思議に思った。
【ちっちゃい子なら連れてけるよ】
(ちっちゃい⋯⋯光の玉が小さいって事?)
【うん、そういう子は食べられないの】
【ちっちゃい子連れてく?】
(食べられたり危険だったりしないならお願いしたいんだけど、どうかな?)
【大丈夫】
【ちっちゃい子も喜ぶよー】
(みんなはどのあたりまでなら来れるとかって分かる?)
【あたし達はお城の塀の外までかなー】
(食べられちゃうってどういう事?)
【スプーンも汚れてる】
性懲りも無くスープに何か混ぜたらしい。ローザリアは顎を上げて得意げな顔のメイドにやり返すことにした。
「ありがとう。スープの毒味をお願いできる?」
「は?」
「そのスプーンでスープを飲んでみて」
「⋯⋯なんであたしがそんな事しなくちゃなんないの?」
「他に毒見できる人がいないから」
「今まで毒味なんてした事ないじゃない」
「それを言うなら今までこの部屋に食事を運んできたことなんてなかったわ」
「⋯⋯そっ、そこの人にしてもらったらいいでしょう? 護衛なんだから」
「分かりました。ではニールさんにお願いしましょう。何かあれば教会へ連絡をしますね。公爵家のメイドの依頼で公爵家の料理を毒見をしてくださったら体調を崩されたと」
「ダメよ! そんなことしたら馘になっちゃうじゃない」
「おかしなものが入ってなければ問題ないわ」
「あっ、あたしじゃないもん。料理長がスープの具にじゃがいもの芽を入れたって言ってた」
「スプーンは?」
「⋯⋯床に落ちてた雑巾で拭いてた」
ローザリアは思わずため息を漏らした。教会が派遣した護衛に食ってかかり、教会の目があると分かっていて毒のある料理を堂々と持ってくる。
「作った料理長は確信犯だけど運んだあなたも同罪になるのよ」
「あたしは持ってきただけで」
「知っていて持ってきたなら幇助罪が適用される」
ニールは淡々と説明しながらトランクから出した瓶にスープを掬って入れている。
「ほうじょって、なにそれ。あたしは⋯⋯だって断れるわけないじゃない! ローザリア様が我儘言うから⋯⋯ってか、アンタ、何してんの!?」
「証拠集め? 念の為、持ち帰って検査する」
「あっ、あたしは何にも知らない。あたしはわるくないから!!」
ニールの手からスプーンをもぎ取りトレーごと持って逃げ帰ったメイドを呆れ顔のニールが見ていた。
「最初にやってきた奴とあのメイドの名前は?」
「最初に来たのはメイド長のキャシーで、今の子はアビス。新人なの」
とっくに冷めていたお湯を沸かし直してお茶を入れ、トランクの上にクロスを敷いて教会から持参した夕食を並べた。
「トランクのこんな使い方があるとは思いませんでした」
パンにハーブの効いたハムやチーズを挟んだものと卵とソーセージのガレット。アーモンドクリームを乗せたガレットはお菓子のように甘くて美味しかった。
「教会から専属のメイドが来たらあのテーブルと椅子を使ってください。俺が座ると壊れるんで」
ローザリアが驚いてニールを見ると大きな身体に似合わずちまちまとパンを齧っていた。
食事の後、ニールはお茶を新しく淹れた後桃のタルトとメロンを皿に乗せてローザリアに手渡した。
「甘いものは苦手なんで」
ローザリアが半分こしようと言うとニールは気まずそうに頭をかいた。
ニールが部屋の外で警備に立ちローザリアはこっそりと水で体を拭いてベッドに潜り込んだ。
(明日、王宮かぁ。水を出せって言われたらどうしよう。時間をかけて集中しないと加減が出来ないんだけどそれでも構わないのかな)
国王の前で水を溢れさせて勘気をこうむるか、チロチロとしか水を出せず顰蹙を買う未来しか見えない。失敗するならどっちがマシなんだろうと思いながらローザリアは大きな溜息をついた。
【王宮はもう行けないかも】
【悪い奴に捕まっちゃいそう】
(ジンに捕まっちゃうの?)
【そう、食べられちゃうの】
加護は使えないと言う事なのだろうか。もし水を出せと言われても失敗するだけだと呆然としたローザリアだったが、王宮精霊師達はどうやって魔法を使っているのだろうかと不思議に思った。
【ちっちゃい子なら連れてけるよ】
(ちっちゃい⋯⋯光の玉が小さいって事?)
【うん、そういう子は食べられないの】
【ちっちゃい子連れてく?】
(食べられたり危険だったりしないならお願いしたいんだけど、どうかな?)
【大丈夫】
【ちっちゃい子も喜ぶよー】
(みんなはどのあたりまでなら来れるとかって分かる?)
【あたし達はお城の塀の外までかなー】
(食べられちゃうってどういう事?)
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