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一回目 (過去)
60.精霊の事情
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(食べられちゃうってどういう事?)
【アイツに捕まるとパクンって】
【大きい子は栄養満点だって言ってる】
もしかしたら精霊王が言っておられた『ジンの力がまだ十全ではない』と言う話につながっているのかもしれない。精霊を手に入れるとジンはその精霊の持つ力を取り込めるのだろうか。
小さい子は力が少なくてジンの力になれないから食べられずに済む。王宮精霊師達の加護に見合う精霊は小さいからジンに見逃され精霊師達に力を貸せている?
(明日王宮に行く前に調べる方法があったら良いんだけど⋯⋯精霊王ならもっと詳しく知っておられるはず)
【精霊王はまだここには来れないの】
【もっと繋がり強くなるまで無理だって】
【ここ好きだったから可哀想なの】
埋められた子供を探し出して石碑を見つけ修繕することができれば変わってくるのかもしれない、一日も早く力が使えるようにならなければと心に決めて毛布を頭まで被った。
翌朝、井戸で水汲みの為に釣瓶に手をかけたローザリアの手をニールが掴んだ。眉間に皺を寄せ首を横に振っている。
「でも⋯⋯」
「使用人の仕事です」
「では、明日からそうします。起きてきた時水汲みが終わってないってなったら困るでしょう? 明日からは水汲みはしないと伝えておけば混乱は少ないと思います」
勝手に困らせておけばいいのに⋯⋯と思いつつ渋々頷いたニールは釣瓶を井戸に放り込んでサクサクと水汲みを終わらせていった。ジャスパーと同じく天秤棒の扱いに苦慮し、ジャスパーと同じように桶を両手に持って運んでいた。
思いの外水汲みが早く終わったので、ローザリアは玄関の落ち葉を掃くニールに聞いてみることにした。
「えっと、本当はどういう言い方をするのかわからないけれど『大きな精霊と小さな精霊』って言ったらなにか分かりますか?」
「⋯⋯上位精霊と下位精霊の事でしょうか?」
ニールの話では、上位精霊は下位精霊よりも力が強く具現化できる精霊の事を言う。人型や動物に似た形などで現れ会話することもできる。
最も有名なのは水の精霊ウンディーネ・火の精霊サラマンダー・風の精霊シルフ・地の精霊ノームの四大精霊だが他にも複数の精霊がいる。
下位精霊は上位精霊に比べると力が弱く、人の言葉を理解していても自分から話す事は出来ない。属性に因んだ色を纏った玉のような姿で現れる。
「具現化できる精霊は長い間現れていないので、一般的には精霊は光の玉のようなものだと思われています。上位精霊と下位精霊は同じ名前で呼ばれていますが力の差は歴然としているそうです」
ローザリアの前に羽の生えた小さい子供の姿などで現れるのは上位精霊のウンディーネ達なのだろう。
ニールの話からするとやはり精霊師が契約するのは小さい光の玉⋯⋯下位精霊のようだ。
「精霊の力ってそんなに違うんですか?」
「資料によると上位精霊の力があれば津波や大雨・爆発や炭化・暴風や竜巻・地震や石化なども出来るそうです」
「それは⋯⋯自然災害のような」
驚きすぎて腰がひけたローザリアが箒を持ったまま呆然としている横でニールは淡々と落ち葉を袋に詰めていた。
「なに? 今日は騎士さんも手伝ってくれるんだ。昨日の騎士さんより気がきくわ。あたしはメリッサって言うのぉ、宜しくね」
公爵達は使用人に何も指示をしていないのだろうか。昨日・一昨日に引き続き今日も横柄な態度の使用人達。
ニールが立ち上がりメリッサに向けて口を開きかけたが、ローザリアが先に話しはじめた。
(今までみたいに言われっぱなしで黙ってちゃいけない。ナスタリア神父ならこう言うはず)
「料理長やメイド長にも後で伝えますが、水汲みや掃除をするのは今日まで。勿論騎士の方々が手伝うこともありませんから」
「は? お嬢様ったらぁ。冗談きつ~い。騎士さんの前だからってカッコつけても似合いませんよぉ。そんな我儘、旦那様達が許すはずないじゃないですかぁ」
ウォレスやカサンドラ達が癇癪を起こした時のことを思い出して思わず怯えが先に立ったローザリアは口籠もってしまった。彼等に堂々と言い返すイメージができない。
「それは⋯⋯」
【アイツに捕まるとパクンって】
【大きい子は栄養満点だって言ってる】
もしかしたら精霊王が言っておられた『ジンの力がまだ十全ではない』と言う話につながっているのかもしれない。精霊を手に入れるとジンはその精霊の持つ力を取り込めるのだろうか。
小さい子は力が少なくてジンの力になれないから食べられずに済む。王宮精霊師達の加護に見合う精霊は小さいからジンに見逃され精霊師達に力を貸せている?
(明日王宮に行く前に調べる方法があったら良いんだけど⋯⋯精霊王ならもっと詳しく知っておられるはず)
【精霊王はまだここには来れないの】
【もっと繋がり強くなるまで無理だって】
【ここ好きだったから可哀想なの】
埋められた子供を探し出して石碑を見つけ修繕することができれば変わってくるのかもしれない、一日も早く力が使えるようにならなければと心に決めて毛布を頭まで被った。
翌朝、井戸で水汲みの為に釣瓶に手をかけたローザリアの手をニールが掴んだ。眉間に皺を寄せ首を横に振っている。
「でも⋯⋯」
「使用人の仕事です」
「では、明日からそうします。起きてきた時水汲みが終わってないってなったら困るでしょう? 明日からは水汲みはしないと伝えておけば混乱は少ないと思います」
勝手に困らせておけばいいのに⋯⋯と思いつつ渋々頷いたニールは釣瓶を井戸に放り込んでサクサクと水汲みを終わらせていった。ジャスパーと同じく天秤棒の扱いに苦慮し、ジャスパーと同じように桶を両手に持って運んでいた。
思いの外水汲みが早く終わったので、ローザリアは玄関の落ち葉を掃くニールに聞いてみることにした。
「えっと、本当はどういう言い方をするのかわからないけれど『大きな精霊と小さな精霊』って言ったらなにか分かりますか?」
「⋯⋯上位精霊と下位精霊の事でしょうか?」
ニールの話では、上位精霊は下位精霊よりも力が強く具現化できる精霊の事を言う。人型や動物に似た形などで現れ会話することもできる。
最も有名なのは水の精霊ウンディーネ・火の精霊サラマンダー・風の精霊シルフ・地の精霊ノームの四大精霊だが他にも複数の精霊がいる。
下位精霊は上位精霊に比べると力が弱く、人の言葉を理解していても自分から話す事は出来ない。属性に因んだ色を纏った玉のような姿で現れる。
「具現化できる精霊は長い間現れていないので、一般的には精霊は光の玉のようなものだと思われています。上位精霊と下位精霊は同じ名前で呼ばれていますが力の差は歴然としているそうです」
ローザリアの前に羽の生えた小さい子供の姿などで現れるのは上位精霊のウンディーネ達なのだろう。
ニールの話からするとやはり精霊師が契約するのは小さい光の玉⋯⋯下位精霊のようだ。
「精霊の力ってそんなに違うんですか?」
「資料によると上位精霊の力があれば津波や大雨・爆発や炭化・暴風や竜巻・地震や石化なども出来るそうです」
「それは⋯⋯自然災害のような」
驚きすぎて腰がひけたローザリアが箒を持ったまま呆然としている横でニールは淡々と落ち葉を袋に詰めていた。
「なに? 今日は騎士さんも手伝ってくれるんだ。昨日の騎士さんより気がきくわ。あたしはメリッサって言うのぉ、宜しくね」
公爵達は使用人に何も指示をしていないのだろうか。昨日・一昨日に引き続き今日も横柄な態度の使用人達。
ニールが立ち上がりメリッサに向けて口を開きかけたが、ローザリアが先に話しはじめた。
(今までみたいに言われっぱなしで黙ってちゃいけない。ナスタリア神父ならこう言うはず)
「料理長やメイド長にも後で伝えますが、水汲みや掃除をするのは今日まで。勿論騎士の方々が手伝うこともありませんから」
「は? お嬢様ったらぁ。冗談きつ~い。騎士さんの前だからってカッコつけても似合いませんよぉ。そんな我儘、旦那様達が許すはずないじゃないですかぁ」
ウォレスやカサンドラ達が癇癪を起こした時のことを思い出して思わず怯えが先に立ったローザリアは口籠もってしまった。彼等に堂々と言い返すイメージができない。
「それは⋯⋯」
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