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一回目 (過去)
61.ローザリア&ニールVS使用人 初バトル
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「公爵令嬢が使用人より早く起きて水汲みをする、玄関の掃除をする。そんな貴族がどこにある?
この後は洗濯だったか。使用人達はそれらの仕事をして対価を得ているのだろう? ならば使用人達がローザリア様に報酬を払わねばならん。今までの年数・日数で計算すれば使用人達は皆、借金奴隷となるのではないか? それで構わなければ今まで通りに仕事を押し付ける事も出来るかもしれんな」
「そっ、そんなの払えるわけないし⋯⋯借金奴隷なんて冗談じゃないわよ!! ここの給料なんてほんのちょっぴりなんだから!」
「それは雇用主と使用人の間で決めるものであってローザリア様には関係ない」
この後、全く同じやりとりがメイド長やその他の使用人達と何度も繰り返され仕事をする以上に疲れ果てたローザリアはよろよろと部屋に戻った。
ニールと一緒に朝食を食べお茶を飲んでいると不機嫌全開のメイド長がやって来た。
「教会の人が来てます。さっさと応接室に来て下さい」
「着替えたら行くわ」
「着替え? 3日も同じ服を着る公爵令嬢様、お早めにお願い致しますね」
教会がドレスを準備してくれているのを知らないメイド長はふふんと鼻で笑いながら踵を返した。
教会⋯⋯恐らくはナスタリア神父⋯⋯が準備してくれた事に感謝しながらローザリアはメイド服を脱ぎデイドレスに着替えた。三つ編みにしていた髪を解くと緩くうねっていた。
【お手伝い~】
声をかけてくれたのは風の精霊シルフだろう。生温い風が吹いてローザリアの髪が真っ直ぐになる。ひとつに束ねた髪を横に流しリボンで結んで部屋を出た。
化粧もせずアクセサリーも付けていないローザリアを見たニールが不満そうな顔をしたが気にせずにっこり笑って階段を降りていった。
「こんにちは、ナザエル枢機卿。ナスタリア神父様、ドレスをご準備くださりありがとうございます。とても助かりました」
ぎこちないカーテシーをしたローザリアは少し照れ臭そうにお礼を述べた。
「とてもよくお似合いです。今日の午後王宮に参内するそうなので公爵家の方々とは王宮で落ち合うことにしましたが宜しかったでしょうか?」
「はい、構いません」
公爵邸に長居をすれば不快な思いをするだけ。ウォレスやカサンドラと一緒の馬車に乗るように言われでもしたら何をされるかわからない。
ナスタリア神父達はローザリアを教会に連れて行き安全な昼食を終わらせてから王宮へ向かうと決めていた。
「話し方が随分と貴族令嬢らしくなりましたね」
「ナスタリア神父の言葉遣いを真似していますが、中々上手くいきません。努力中といった感じです」
「大丈夫。もし言葉を思い付かなければ少し首を傾げて思い悩んでいる素振りをすればいいのです。女性はそれだけで思慮深く言葉を選んでいるのだと思ってもらえます」
「ナスタリア神父も言葉に詰まることがおありなのですか?」
いつも流暢に話すナスタリア神父が口籠るのは想像できない。
「まあ、ナザエル枢機卿が絡むと⋯⋯ナザエル枢機卿限定で地が出てしまいますね」
ナザエル枢機卿がドアをぶち破って部屋に入ってきた時に聞いたアレだと思い出した。
(アレが地ならいつもの話し方は?)
「良く言えば丁寧なこの話し方はとても便利なんです。ちょっと態度や言い方を変えるだけで慇懃無礼にも温良恭倹にも見えるのです。
尊尚親愛の振りをするときにも使えますし」
温良恭倹とは素直で穏やかで礼儀正しくひかえめなこと、尊尚親愛は尊敬して親しみ愛することを言う。
「性格的にローザリア様には無理だと思いますが、貴族らしい話し方としては優秀ですし軽蔑から尊敬まで表現できて私的にはとても役立っています」
腹黒ナスタリアが出現し楽しそうに笑った。
(確かに、ナスタリア神父のように極めるのは私には高等技術すぎるけど、今とこれからの私にはとても役立ってるわ)
順調に走っていた馬車が急にガタンと大きく揺れて停まった。
「おい、大丈夫か!?」
「怪我は!?」
(何があったんだろう。怪我?)
【子供が飛び出してきたの】
【すっごいボロボロ、汚れてる~】
「何があったのか見てきます。ドアに鍵をかけて絶対に降りてこないで下さい」
この後は洗濯だったか。使用人達はそれらの仕事をして対価を得ているのだろう? ならば使用人達がローザリア様に報酬を払わねばならん。今までの年数・日数で計算すれば使用人達は皆、借金奴隷となるのではないか? それで構わなければ今まで通りに仕事を押し付ける事も出来るかもしれんな」
「そっ、そんなの払えるわけないし⋯⋯借金奴隷なんて冗談じゃないわよ!! ここの給料なんてほんのちょっぴりなんだから!」
「それは雇用主と使用人の間で決めるものであってローザリア様には関係ない」
この後、全く同じやりとりがメイド長やその他の使用人達と何度も繰り返され仕事をする以上に疲れ果てたローザリアはよろよろと部屋に戻った。
ニールと一緒に朝食を食べお茶を飲んでいると不機嫌全開のメイド長がやって来た。
「教会の人が来てます。さっさと応接室に来て下さい」
「着替えたら行くわ」
「着替え? 3日も同じ服を着る公爵令嬢様、お早めにお願い致しますね」
教会がドレスを準備してくれているのを知らないメイド長はふふんと鼻で笑いながら踵を返した。
教会⋯⋯恐らくはナスタリア神父⋯⋯が準備してくれた事に感謝しながらローザリアはメイド服を脱ぎデイドレスに着替えた。三つ編みにしていた髪を解くと緩くうねっていた。
【お手伝い~】
声をかけてくれたのは風の精霊シルフだろう。生温い風が吹いてローザリアの髪が真っ直ぐになる。ひとつに束ねた髪を横に流しリボンで結んで部屋を出た。
化粧もせずアクセサリーも付けていないローザリアを見たニールが不満そうな顔をしたが気にせずにっこり笑って階段を降りていった。
「こんにちは、ナザエル枢機卿。ナスタリア神父様、ドレスをご準備くださりありがとうございます。とても助かりました」
ぎこちないカーテシーをしたローザリアは少し照れ臭そうにお礼を述べた。
「とてもよくお似合いです。今日の午後王宮に参内するそうなので公爵家の方々とは王宮で落ち合うことにしましたが宜しかったでしょうか?」
「はい、構いません」
公爵邸に長居をすれば不快な思いをするだけ。ウォレスやカサンドラと一緒の馬車に乗るように言われでもしたら何をされるかわからない。
ナスタリア神父達はローザリアを教会に連れて行き安全な昼食を終わらせてから王宮へ向かうと決めていた。
「話し方が随分と貴族令嬢らしくなりましたね」
「ナスタリア神父の言葉遣いを真似していますが、中々上手くいきません。努力中といった感じです」
「大丈夫。もし言葉を思い付かなければ少し首を傾げて思い悩んでいる素振りをすればいいのです。女性はそれだけで思慮深く言葉を選んでいるのだと思ってもらえます」
「ナスタリア神父も言葉に詰まることがおありなのですか?」
いつも流暢に話すナスタリア神父が口籠るのは想像できない。
「まあ、ナザエル枢機卿が絡むと⋯⋯ナザエル枢機卿限定で地が出てしまいますね」
ナザエル枢機卿がドアをぶち破って部屋に入ってきた時に聞いたアレだと思い出した。
(アレが地ならいつもの話し方は?)
「良く言えば丁寧なこの話し方はとても便利なんです。ちょっと態度や言い方を変えるだけで慇懃無礼にも温良恭倹にも見えるのです。
尊尚親愛の振りをするときにも使えますし」
温良恭倹とは素直で穏やかで礼儀正しくひかえめなこと、尊尚親愛は尊敬して親しみ愛することを言う。
「性格的にローザリア様には無理だと思いますが、貴族らしい話し方としては優秀ですし軽蔑から尊敬まで表現できて私的にはとても役立っています」
腹黒ナスタリアが出現し楽しそうに笑った。
(確かに、ナスタリア神父のように極めるのは私には高等技術すぎるけど、今とこれからの私にはとても役立ってるわ)
順調に走っていた馬車が急にガタンと大きく揺れて停まった。
「おい、大丈夫か!?」
「怪我は!?」
(何があったんだろう。怪我?)
【子供が飛び出してきたの】
【すっごいボロボロ、汚れてる~】
「何があったのか見てきます。ドアに鍵をかけて絶対に降りてこないで下さい」
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