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ループ
184.シスターはみんな聖女
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「あの、愛し子ってどう言う存在なんでしょうか?」
「そう言えば、聖女だとか愛し子だとか色々あるよな」
【聖女はただの格付け、愛し子は⋯⋯ふふっ、ナスタ君はすご~く知りたそうだね?】
「聖女はただの格付けか⋯⋯」
シスター・タニアのことを思い出したナザエル神父とニールが微妙な顔をしている。
「聖女って基準が微妙なんだよな。昔は簡単に聖女認定していた時代もあったらしいし、横槍だとか賄賂だとか⋯⋯誰かの思惑で決まってたこともあったって言うしな」
「今はオーガストの爺さんが頑張りすぎてて厳しくなってるしな」
オーガストは聖女訓練について非常に厳密な制度を作り上げ、毎年試験を行なって篩にかけていく。最終試験は浄化の力によって決められる。
「お陰で聖女は幻みたいになっちまってる。それが良いのか悪いのかわかんねえ」
【聖女の基準など正確に判断できるものじゃない。全く同じ条件を作れるわけじゃないんだから、最後は人の主観に頼ることになる】
「だよなー。爺さんは言っても聞かねえし」
「毎日、真面目に怪我人の回復や奉仕活動やってるシスターはみんな聖女だと思う」
ナスタリア助祭の言葉に全員が頷いた。
【で、愛し子だが⋯⋯】
ナスタリア助祭の表情が少し強張ったのに気付いた精霊王達がニヤニヤと笑っている。
(何で笑ってるんだろう)
不思議に思いエリサの顔を見るといつも以上に優しげな顔で笑みを返された。
(んーと、その笑顔ってどう言う意味?)
【簡単に言うと次期精霊王⋯⋯】
「は? えっ、じゃあローザリアは次は精霊王になっちゃうって事?」
ナスタリア助祭が酷く慌て出し、精霊王が噴き出した。
【ぶふっ、予想通りの慌てぶり。面白⋯⋯本人が望めば精霊王の一柱になることができる、その権利を持って生まれた存在ということだな】
「望まなければ?」
【人としての輪廻の輪に戻る】
「精霊王は何故精霊王になると決めたんですか?」
【おねだりしたのー】
【精霊王、楽しーから】
【悪戯いっぱ~い教えてくれたから】
「⋯⋯人の間も精霊王になっても性格はあんまり変わんねえってことか」
【内緒でパンを黒焦げにするの】
【穴を掘って聖獣捕まえたの。スコル怒ったよね~】
「風と隠蔽、地となんだ⋯⋯複合魔法か? すげえな」
【悪者にざまぁしたのー】
【お仕事忘れちゃってたスコルにもお仕置き】
詳しく話を聞いてみると⋯⋯。
村にパン焼き窯が一つしかない時代に、特定の村人達にだけ意地悪をしているパン屋を見つけた。
【パン屋のパンだけ黒焦げにするの難しかった~】
サラマンダーの背中に乗ったシルフが【あたしのお陰!】とはしゃいでいる。
スコルが太陽を追いかけるのに夢中になりすぎて森に帰ってこなくなった。そのせいで森の薬草が枯れはじめ一計を案じた。
【スコル、ごめんなさいしたから今は森も元気になったよねー】
【ハティは月を追いかけてもちゃんと帰ってきてるって】
「きゅう」
親の暴走を知って落ち込み気味のフィードの頭をローザリアはそっと撫でてやった。
「ハティはスコルの兄弟だよな。スコルがヤンチャならフィードの将来も大変だぞー」
ケラケラと笑い話をしながらみんなで囲んだ夕食の後、ローザリアは勇気を奮ってエリサを散歩に誘った。
「よ、夜の池を見に行かない? 月が出てるから⋯⋯す、すっごくちれいだと思うかりゃ」
「はい、ぜひお供させて下さい」
(((ローザリア、頑張れよ!)))
見ないふりをしながらもつい聞き耳を立てていたナザエル神父達が心の中で応援していた。
フィードも大人しくニールの肩の上でお留守番している。
真っ赤な顔は月明かりの下では目立たないはず。誘いの文句を噛みまくったローザリアは前世からの夢を叶えようと平静を装って歩いているが⋯⋯右手と右足が一緒に出ている。
池にはくっきりと丸い月が映り、緩やかにそよぐ風でキラキラと輝いていた。ピチョンと音がして水が岸にあたった。
「本当に綺麗ですね。声をかけて下さってありがとうございます」
「⋯⋯」
「⋯⋯ローザリア様とご一緒してから、本当に色々な事があってとても楽しく過ごさせていただいております」
高まる緊張で黙り込んでいるローザリアの代わりにエリサが話しかけてくれた。
「その、もしよろしければ旅の時にでもと思いまして新しいローブを縫っております。ご迷惑でなければ受け取っていただけましたら嬉しいです」
「⋯⋯おか⋯⋯おかあひゃん!」
(ああ! ここで噛むなんて)
「⋯⋯ロ、ローザリア様? あの」
「お母さん⋯⋯だよね。前世で精霊王が教えてくれたの。私はね、すごく嬉しかった。ずっとエリサがお母さんなら良いのにって思ってたから。そしたら精霊王が父親はあんなだけど母親はエリサだからねって。それで最後の時、エリサはもういないから『お母さん』って呼べなかったなって思って。
今回は全部終わったら⋯⋯ちゃんと頑張れたら『お母さん』って呼びたいって思ってて」
「ローザリア⋯⋯」
「そう言えば、聖女だとか愛し子だとか色々あるよな」
【聖女はただの格付け、愛し子は⋯⋯ふふっ、ナスタ君はすご~く知りたそうだね?】
「聖女はただの格付けか⋯⋯」
シスター・タニアのことを思い出したナザエル神父とニールが微妙な顔をしている。
「聖女って基準が微妙なんだよな。昔は簡単に聖女認定していた時代もあったらしいし、横槍だとか賄賂だとか⋯⋯誰かの思惑で決まってたこともあったって言うしな」
「今はオーガストの爺さんが頑張りすぎてて厳しくなってるしな」
オーガストは聖女訓練について非常に厳密な制度を作り上げ、毎年試験を行なって篩にかけていく。最終試験は浄化の力によって決められる。
「お陰で聖女は幻みたいになっちまってる。それが良いのか悪いのかわかんねえ」
【聖女の基準など正確に判断できるものじゃない。全く同じ条件を作れるわけじゃないんだから、最後は人の主観に頼ることになる】
「だよなー。爺さんは言っても聞かねえし」
「毎日、真面目に怪我人の回復や奉仕活動やってるシスターはみんな聖女だと思う」
ナスタリア助祭の言葉に全員が頷いた。
【で、愛し子だが⋯⋯】
ナスタリア助祭の表情が少し強張ったのに気付いた精霊王達がニヤニヤと笑っている。
(何で笑ってるんだろう)
不思議に思いエリサの顔を見るといつも以上に優しげな顔で笑みを返された。
(んーと、その笑顔ってどう言う意味?)
【簡単に言うと次期精霊王⋯⋯】
「は? えっ、じゃあローザリアは次は精霊王になっちゃうって事?」
ナスタリア助祭が酷く慌て出し、精霊王が噴き出した。
【ぶふっ、予想通りの慌てぶり。面白⋯⋯本人が望めば精霊王の一柱になることができる、その権利を持って生まれた存在ということだな】
「望まなければ?」
【人としての輪廻の輪に戻る】
「精霊王は何故精霊王になると決めたんですか?」
【おねだりしたのー】
【精霊王、楽しーから】
【悪戯いっぱ~い教えてくれたから】
「⋯⋯人の間も精霊王になっても性格はあんまり変わんねえってことか」
【内緒でパンを黒焦げにするの】
【穴を掘って聖獣捕まえたの。スコル怒ったよね~】
「風と隠蔽、地となんだ⋯⋯複合魔法か? すげえな」
【悪者にざまぁしたのー】
【お仕事忘れちゃってたスコルにもお仕置き】
詳しく話を聞いてみると⋯⋯。
村にパン焼き窯が一つしかない時代に、特定の村人達にだけ意地悪をしているパン屋を見つけた。
【パン屋のパンだけ黒焦げにするの難しかった~】
サラマンダーの背中に乗ったシルフが【あたしのお陰!】とはしゃいでいる。
スコルが太陽を追いかけるのに夢中になりすぎて森に帰ってこなくなった。そのせいで森の薬草が枯れはじめ一計を案じた。
【スコル、ごめんなさいしたから今は森も元気になったよねー】
【ハティは月を追いかけてもちゃんと帰ってきてるって】
「きゅう」
親の暴走を知って落ち込み気味のフィードの頭をローザリアはそっと撫でてやった。
「ハティはスコルの兄弟だよな。スコルがヤンチャならフィードの将来も大変だぞー」
ケラケラと笑い話をしながらみんなで囲んだ夕食の後、ローザリアは勇気を奮ってエリサを散歩に誘った。
「よ、夜の池を見に行かない? 月が出てるから⋯⋯す、すっごくちれいだと思うかりゃ」
「はい、ぜひお供させて下さい」
(((ローザリア、頑張れよ!)))
見ないふりをしながらもつい聞き耳を立てていたナザエル神父達が心の中で応援していた。
フィードも大人しくニールの肩の上でお留守番している。
真っ赤な顔は月明かりの下では目立たないはず。誘いの文句を噛みまくったローザリアは前世からの夢を叶えようと平静を装って歩いているが⋯⋯右手と右足が一緒に出ている。
池にはくっきりと丸い月が映り、緩やかにそよぐ風でキラキラと輝いていた。ピチョンと音がして水が岸にあたった。
「本当に綺麗ですね。声をかけて下さってありがとうございます」
「⋯⋯」
「⋯⋯ローザリア様とご一緒してから、本当に色々な事があってとても楽しく過ごさせていただいております」
高まる緊張で黙り込んでいるローザリアの代わりにエリサが話しかけてくれた。
「その、もしよろしければ旅の時にでもと思いまして新しいローブを縫っております。ご迷惑でなければ受け取っていただけましたら嬉しいです」
「⋯⋯おか⋯⋯おかあひゃん!」
(ああ! ここで噛むなんて)
「⋯⋯ロ、ローザリア様? あの」
「お母さん⋯⋯だよね。前世で精霊王が教えてくれたの。私はね、すごく嬉しかった。ずっとエリサがお母さんなら良いのにって思ってたから。そしたら精霊王が父親はあんなだけど母親はエリサだからねって。それで最後の時、エリサはもういないから『お母さん』って呼べなかったなって思って。
今回は全部終わったら⋯⋯ちゃんと頑張れたら『お母さん』って呼びたいって思ってて」
「ローザリア⋯⋯」
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