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第14話 運命が始まった日
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エメラルドの原石は二つの大きな石と12個の小さな石に切り出された。
カットして研磨したら、インクルージョンが肉眼では見えないほど少ない最高品質なものだとわかった。
カットされた石を並べ、デザイン画を見せる。
「結婚記念ということで男女ペアのアクセサリーにいたしました。
国王様ご夫妻にふさわしい豪華なエレガントさを表現するためにメインをエメラルドに、ほかには真珠を使い、台座にはピュア・プラチナを使用いたします。
国王陛下へは一番大きなエメラルドを使ったジャボを留めるブローチ、お好きな花であるダリアを模った台座にローズカットのエメラルドを配置します。
もう一つは、同じローズカットのエメラルドにベビーパールを取り巻きにつかったカフスボタンになります。
王妃様へは、チョーカー、イヤリング、ブレスレット、指輪のパリュールをご提案いたします。
チョーカーは、真珠9ミリ玉の三連パールのチョーカーの中央に、エメラルドカットのエメラルドをあしらいます。
イヤリングはチョーカーに合わせてエメラルドに大粒の真珠を合わせます。
ブレスレットと指輪はホワイトゴールドに小粒のエメラルドをならべてパヴェにいたしました。こちらでいかがでしょうか?」
デザイン帳に見入っていたエリオットの表情がぱっと明るく輝く。
「いいですね、両親のイメージにも合っています。ぜひこれで進めてください」
「かしこまりました」
オーナーもホッとした表情だ。
「おっと」
立ち上がったときにエリオットの腕がグラスに触れ倒れた拍子に割れてしまった。
「すみません」
反射的に手を伸ばし、ガラスの破片で手を切ってしまった。
人差し指に血がにじむ。
「殿下、大丈夫ですか?」
アビーはエリオットの手を取ると、治癒の魔法を唱えた。
柔らかな風が吹いたような波動がエリオットの手を包み込み、切り傷はすーっと消えていった。
「ありがとう。あなたは治癒の魔法が使えたのですね」
「とはいっても、小さな傷ぐらいしか治せないのですけど」
エリオットはこの魔法の波動に覚えがあった。
「もしかして、子供のころに王宮で男の子の手当てをしたことはありませんか?」
「え?」
「僕が5歳の時に、庭園で転んで擦りむいた膝を同い年くらいの女の子が魔法で治してくれたのです」
アビーは記憶を辿る。
「あ!!まさか、あの男の子が殿下だったんですか?白いバラがたくさん咲いているお庭でした」
アビゲイルは子供のころ、両親に連れられて王宮に行ったことがあった。
好奇心から城を探検していたら、あまりに広くて元の部屋に戻れなくなり迷子になってしまった。
はぐれた家族を探しながら歩き回っていると、白いバラが咲き誇る庭園に迷い込んだ。
どこからか泣き声が聞こえる。
探してみると、しゃがみ込んだまま動かない男の子がいた。
近寄ると膝から血がにじんでいる。
泣かないでと慰めながら、治癒の魔法で擦り傷を治した。
それでもまだ悲しそうな顔をしている。
「どうして悲しいの?」
男の子はうつむいて何も答えない。
アビゲイルは男の子の手をぎゅっと握ると
「あなたを悲しませているものがすべてなくなりますように」
精一杯心を込めて祝福の呪文を唱えた。
「あれはたしか4歳の時でした。殿下、そんな昔のことをよく覚えていらっしゃいますね」
「ええ、僕にとっては特別な出来事だったんですよ」
エリオットは感慨深げな表情を浮かべた。
カットして研磨したら、インクルージョンが肉眼では見えないほど少ない最高品質なものだとわかった。
カットされた石を並べ、デザイン画を見せる。
「結婚記念ということで男女ペアのアクセサリーにいたしました。
国王様ご夫妻にふさわしい豪華なエレガントさを表現するためにメインをエメラルドに、ほかには真珠を使い、台座にはピュア・プラチナを使用いたします。
国王陛下へは一番大きなエメラルドを使ったジャボを留めるブローチ、お好きな花であるダリアを模った台座にローズカットのエメラルドを配置します。
もう一つは、同じローズカットのエメラルドにベビーパールを取り巻きにつかったカフスボタンになります。
王妃様へは、チョーカー、イヤリング、ブレスレット、指輪のパリュールをご提案いたします。
チョーカーは、真珠9ミリ玉の三連パールのチョーカーの中央に、エメラルドカットのエメラルドをあしらいます。
イヤリングはチョーカーに合わせてエメラルドに大粒の真珠を合わせます。
ブレスレットと指輪はホワイトゴールドに小粒のエメラルドをならべてパヴェにいたしました。こちらでいかがでしょうか?」
デザイン帳に見入っていたエリオットの表情がぱっと明るく輝く。
「いいですね、両親のイメージにも合っています。ぜひこれで進めてください」
「かしこまりました」
オーナーもホッとした表情だ。
「おっと」
立ち上がったときにエリオットの腕がグラスに触れ倒れた拍子に割れてしまった。
「すみません」
反射的に手を伸ばし、ガラスの破片で手を切ってしまった。
人差し指に血がにじむ。
「殿下、大丈夫ですか?」
アビーはエリオットの手を取ると、治癒の魔法を唱えた。
柔らかな風が吹いたような波動がエリオットの手を包み込み、切り傷はすーっと消えていった。
「ありがとう。あなたは治癒の魔法が使えたのですね」
「とはいっても、小さな傷ぐらいしか治せないのですけど」
エリオットはこの魔法の波動に覚えがあった。
「もしかして、子供のころに王宮で男の子の手当てをしたことはありませんか?」
「え?」
「僕が5歳の時に、庭園で転んで擦りむいた膝を同い年くらいの女の子が魔法で治してくれたのです」
アビーは記憶を辿る。
「あ!!まさか、あの男の子が殿下だったんですか?白いバラがたくさん咲いているお庭でした」
アビゲイルは子供のころ、両親に連れられて王宮に行ったことがあった。
好奇心から城を探検していたら、あまりに広くて元の部屋に戻れなくなり迷子になってしまった。
はぐれた家族を探しながら歩き回っていると、白いバラが咲き誇る庭園に迷い込んだ。
どこからか泣き声が聞こえる。
探してみると、しゃがみ込んだまま動かない男の子がいた。
近寄ると膝から血がにじんでいる。
泣かないでと慰めながら、治癒の魔法で擦り傷を治した。
それでもまだ悲しそうな顔をしている。
「どうして悲しいの?」
男の子はうつむいて何も答えない。
アビゲイルは男の子の手をぎゅっと握ると
「あなたを悲しませているものがすべてなくなりますように」
精一杯心を込めて祝福の呪文を唱えた。
「あれはたしか4歳の時でした。殿下、そんな昔のことをよく覚えていらっしゃいますね」
「ええ、僕にとっては特別な出来事だったんですよ」
エリオットは感慨深げな表情を浮かべた。
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