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書籍化記念SS
しあわせ巣作り 3
しおりを挟む総真が帰ってきたとき、正直驚きはなかった。きっとすぐに帰ってきてくれるんだろうな、と申し訳なさを感じながらも期待していたし、なにより信じていた。
だから、総真が寝室に飛び込んできたとき、雅臣は戸惑いながらも内心はすごくうれしかったのだ。
──俺の番、俺のアルファ……
雅臣は恍惚としながら、自身の首筋に痕を残そうとする総真のキスを受け入れる。軽く甘噛みされると、いっそう心臓の鼓動が早くなる気がした。
「総真、そうま……」
「雅臣」
着ていた紺色のパジャマを、総真の手でゆっくりと脱がされていく。
総真の母がクリスマスにプレゼントしてくれた、総真とのペアパジャマだ。着心地がいいので、最近寝るときはこればかり着ている。
そのパジャマを脱がされたあとは、タンクトップと下着も一緒に脱がされた。
雅臣の裸体を見下ろした総真の目が、楽しげに細められる。
「綺麗だな」
「……お前の方が綺麗だよ。スーツ姿、かっこいい……」
雅臣がいつも思っていることだが、総真のスーツ姿は本当にかっこいい。なんといっても品があってスタイルがいいので、若者にありがちな『スーツに着られている感』がないのだ。
初めて総真のスーツ姿を見たときは『足が長いとなに着ても似合っていいよな』なんてかわいげのないことを言ってしまったが、内心ではいつも惚れ惚れしている。帰宅した総真がすぐにスーツを脱いでしまうのを、毎日残念に思っているくらいだ。
総真は意外そうに丸くした目をぱちりと瞬かせたあと、「だろ?」と言って得意げにニヤリと笑う。
「じゃあ、今日はこのまま抱いてやろうか?」
「ん……」
「俺は服着てるのにお前は裸ってのも、エロくていいよな」
言いながら、総真は雅臣の体に手を滑らせていく。胸板からゆっくり下へと移動した指先が、雅臣の下腹部をとんとんと叩いた。
そこから痺れるような快感が生まれ、自然と雅臣の下肢に力が入る。
「はっ、あ……っ」
「ぐちゃぐちゃにしていいんだよな? いつもより乱暴にされたい?」
「乱暴やだ……優しくして」
「今日は注文多いな……」
苦笑した総真は身を屈め、雅臣の乳首に舌を這わせた。濡れた柔らかな舌が、乳輪ごとツンと尖った胸の突起を舐める。舌先が器用に動いて、美味そうに雅臣の乳首をこねくり回していた。
総真の猫のように大きな目が細められ、からかうように雅臣を見つめる。
「ここ、すぐ真っ赤になってかわいいな」
「っ、お前が、しつこくするから……」
「俺が舐める前から弄られるの期待してたくせに」
「んっ……う、あっ!」
咎めるように、もう片方の乳首を指でキュッと摘まれた。そのまま指の腹で優しく転がされる。
「はっ、あ、あっ……んっ、ン……」
「気持ちいいだろ?」
「っ…………い、いい……けど……ッ」
「けど?」
「……は、はやく、挿れてほしい……」
羞恥に耐えながら言った。
腹の奥が切なくて、もう我慢できない。ぐずぐずにとろけたナカが、早く総真が欲しいと訴えている。
総真は口角を上げ、ニヤリと笑った。
そして、緩慢な動きで体を起こすと、張り詰めていたスラックスの前を寛げはじめる。
「お前がかわいいことばっか言うから、すぐ勃っちまう。朝ちゃんと抑制剤も飲んでんのにな」
そう言って取り出された総真の性器は、確かに大きく勃ち上がっていた。
血管の浮き出たその凶悪な見た目に、雅臣の喉がごくりと上下する。
あれを奥まで突き入れられ、ナカを掻き回されたらと想像するだけで、下腹部がきゅうっと収縮した。気が触れそうなその快感を知っているからこそ、我慢なんてできない。
お預けされた犬のように、雅臣は荒い呼吸を繰り返した。
「はっ、あ、はぁ……」
「欲しいなら、挿れやすいように自分で足開いて、持ち上げて……そう、いい子だな」
雅臣は総真の手と言葉に促されるまま、足を開き、自身の膝裏に回した手で両足を持ち上げた。
総真はスーツを着たままなのに、裸ですべてをさらけだした自分の体勢が恥ずかしい。そのくせ、この状況にひどく興奮している自分もいた。
ヒクついた後孔からとろりと愛液があふれ、それを見た総真がそこに自身の先端を軽く押し当てた。ぐちゅ、っといやらしい水音が響く。
「あっ」
「すっげぇ濡れてる。これなら指で慣らさなくても簡単に入りそうだな」
「ッ……い、いいからっ、はやく……っ」
雅臣が余裕のない声でねだると、総真は満足げに笑みを深めた。
「ちゃんと優しくてしてやるからな」
その言葉通り、総真の性器は雅臣のナカにゆっくりと時間をかけて入ってきた。大きくて、硬くて、熱いそれが、狭いナカを押し広げるようにズブズブと奥へと進んでいく。
総真が少しずつ腰を進めるたびに雅臣の前立腺が押しつぶされ、雅臣の唇からは上擦った声がこぼれた。
「ひっ、あ、ぁ……ッ」
「気持ちいいな、雅臣」
「あっ、あ、ダメ……すぐ、イっちゃう……」
「また? 本当に抑制剤飲んだのか?」
ちゃんと飲んだ。飲んだが、この多幸感の前では薬の力なんてなんの意味もない。
自分の作った巣の中で、愛しい番のアルファの香りに包まれながら抱かれているのだ。
幸せで、気持ちよくて──この状況で絶頂するなという方が無理な話だった。
「──あ、んっ……ひ、あ、ああっ!」
総真の先端がトンッと雅臣の結腸口を優しく突いた瞬間、雅臣は体を震わせて達した。軽く勃っていた性器から少量の薄い精液が零れ、腹のナカが総真の雄に絡みつくように蠢く。
「はぁ、あ、あ……ぁ、ん……」
「っ……は、……本当にイったな……」
総真は大きく息を吐いた。
ナカの性器はまだ硬く勃起したままで、どうやら達したのは雅臣だけらしい。
未だに体を震わせる雅臣の手を取り、総真は優しく微笑む。
「落ち着くまでじっとしとくからな」
「ん、ん……」
普段ならこのまま腰を打ちつけられることもあるが、今日は本当にちゃんと優しくしてくれるらしい。
重なった手のひらが温かくて、雅臣は絶頂の快感にうっとりしながら目を閉じる。
総真の花の香りが心地いい。
繋がったところからとろけてしまいそうなくらいに気持ちよくて、指を絡めて手を握ってくる総真の手が愛おしかった。
「……そろそろ動いていい?」
「……うん……今日、ほんとに優しいな……」
目を開いた雅臣がはにかみながら言った。
すると、総真が綺麗ににこりと笑う。
「優しくするなら、ぐちゃぐちゃにしてもいいんだろ?」
「……え?」
「さっき言ってたもんな。『巣も俺のこともぐちゃぐちゃにしていい』って、『優しくして』って」
「う、うん……? ひ、あっ、アッ!」
後孔に収まったままの性器が、とんっ、とんっと雅臣の奥をノックする。最奥に入りたいとねだるように軽く突かれるたび、そこから痺れるような快感が生まれていた。
決して乱暴な動きではないのに、一突きされるたびに腹の奥が、頭の中がぐずぐずにとろけていく。後孔がきゅうっとヒクついて、まるでもっと奥へと総真の雄を誘っているようだった。
「あ、ああっ、ん、あっ、あっ……!」
「ほら、力抜いて。奥まで挿れてやるから」
「っわ、かんな……アッ、あっ、ん、ンッ──!」
頭ではわからなくても体は総真の声に従順で、促されるままに結腸口が綻び、グプッと音を立てて総真の亀頭が雅臣の最奥へと入り込んできた。
雅臣の体が大きく跳ねる。自分で抱えていた足が投げ出され、宙を蹴るように大きくビクついていた。
真っ白になった視界がチカチカと明滅する中、雅臣は必死に呼吸を繰り返す。
「はっ、ふ……あっ、はあっ……」
「ッ奥まで入ったな……すげぇきつくて、とろとろで、気持ちいい……」
目を細めた総真がうっとりと微笑んだ。
繋いでいた手が解かれ、その手のひらがするりと雅臣の臍から下を這うように撫でる。
「ひっ、あ」
「ここまで入ってるのわかる?」
「はっ……あっ、あっ、ン、やっ……イッてる、イッてるから……っ」
「……聞こえてねぇか」
総真はくつくつと笑った。
煩わしそうに首元のネクタイを緩め、欲に濡れたどろりとした目をしながら、雅臣の頬を撫でる。
「いっぱい甘やかして、いっぱいイかせてやるからな」
甘い声で囁かれた雅臣は、ふわふわとした多幸感に包まれたまま総真の美しい顔を見上げ、目をとろんとさせる。
そして、これから『もう嫌だ』と泣いてしまうくらい一晩中優しく犯されることも知らず、「うん」と甘えた声で頷いた。
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