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ウィナーズ

3-3『……我を呼び出したのお前か』

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 引き続き美百合には【召喚士】にジョブチェンジしてもらう。

「おにぃ、チェンジしたから……みゅーを見て」

「よし、確認するよ」

【NAME:真田美百合 LV:15 JOB:召喚士】

 HP150/150
 MP75/75
 SP35/35

 ATK:E
 AGL:E
 DEX:E
 INT:B
 DEF:E
 MGR:C
 LUK:E

【召喚士:契約をした召喚獣を呼び出し使役する。 召喚者の能力が高いほど召喚獣の力を引き出せる】

魔術師や聖魔術師よりも魔力が高いんだ……その代わり魔法防御以外の能力は最低ラインだから前に出せないな。

 能力が高いほど召喚獣の力を引き出せると言うことは、最初は弱くても召喚士が強くなれば召喚獣も強くなるって事かな?

 問題は『契約』ってあるけれど、どこでどうやって契約するかだね? 手に入れたDクリスタルの中には召喚獣なんてなかったし。

「召喚獣の契約をしないと召喚士は何も出来ないみたいだ……基本は聖魔術師に……あっ」

 って、言ってから気付いたけれど、そもそも美百合を連れてダンジョンに行く訳じゃ無い。もう美百合を危険な目に合わせたりは出来ないよ。

「おにぃ、みゅーもダンジョンに行く!! おにぃと一緒に行きたい!!」

 僕が言い淀んだ事を察して先回りしてきた……なんて勘の鋭い妹だよ。何とか説得しないと!!

「僕達とレベル差があるから一緒には難しいよ、それに戦う手段が無いと危ないし」

「召喚獣を単独でダンジョンに向かわせて経験値稼ぎができるもん」

「ええっ!? そうなの!?」

 僕レベルの鑑定では調べきれない内容があったのか……いや、そもそも召喚獣いないでしょ?

「ゆにーくすきるで召喚獣があるもん!!」

 な、なんだってーーーっ!! そうだよ、名前付きネームドモンスターを倒したのだからユニークスキルが……僕の時もそうだったし……手に入っていても不思議じゃないよね?

「おいで!! ゆきむら!!」

 えっ、ここで呼び出すの? しかも名前が決まっているの? なにゆきむらって? 苗字が真田だから真田ゆきむらってどうなの? 足下に光の魔法陣っぽい光が輝くとその中央から現れたのは、まさか……城で対峙したあいつなのか!?

『……我を呼び出したのお前か』

 喋った!? 白い毛並み、頭には悪魔のような角、その姿は……子猫だった。

「……か、かわいいね」

「うん、かわいい!!」

 美百合は現れた子猫? を抱きしめてスリスリした。猫がジタバタ暴れている。

『こ、こら、よさぬか……我は魔獣のプリンスであるぞ!!』

『みーみー』と鳴き声が聞こえるのだけれど、頭の中には直接声が聞こえてくる。大層なことを言っているけれど、完全に嫌がる子猫を抱きしめている絵面だ。いや、猫だったら引っ掻いたりするだろうけれど、爪が美百合に当たりそうになると見えない壁みたいな物で阻まれているように見える。

『くっ、お前が我を召喚したのか……見ての通り召喚された者は主である召喚者に傷を付けることは敵わぬ……だから離すのだ!!』

「やだ!! かわいい!!」

『やめるのだ主!! 我が威厳が損なわれる……これ、そこの男、主を止めぬか!!』

「うん、そもそもその格好では威厳もへったくれも無いよね? 美百合が満足するまで我慢して」

『くっ、まだ主のレベルが低いから我はこのような無様な姿なのだ……早急にレベル上げを要求する』

 とりあえず美百合が満足するために20分ほどの時間を要したよ。ゆきむらはぐったりと脱力していて、抵抗する方が疲れることを理解したみたい。

「でもこれだと戦闘で役に立たないよね」

『こ、これとは何だ! 我は魔獣随一の力を持つのだぞ!!』

「魔獣で一番可愛いね!」

 イマイチ話が噛み合っていない。色々聞いてみた感じゆきむらが言うにはとにかく……

 ・美百合のレベルを上げる事によってだんだん本来の姿、力を使うことが出来るようだ。

 ・呼び出しにはMPを使用する……一度呼び出せば継続的な消費は無いらしい。

 ・離れた所から呼び出す場合は距離に応じたMPコストがかかるらしい。

 ・同時に手に入れたユニークスキルがあって、SPの8割を使い一時的に元の力を取り戻せるらしい。効果時間は使用したSP量によるので、やはりレベルを上げてSPを上げる必要があるようだ。

「どちらにせよ今の段階だと難しいね」

「えーーっ!」

「僕もダンジョンだけじゃ無くて勉強とかしっかり両立しているから、それが出来ないと駄目だしね」

 と言ってもダンジョンでレベルを上げると頭の回転も良くなるのか勉強もはかどるのだけれどね。

「まぁ。これは後でダンジョン探索している仲間とも相談してみるよ。それまで勝手に危ないことは駄目だからね」

「はーい」

 美百合はしぶしぶ納得したようだ……ちなみに角を隠すことが出来るみたいなので、ゆきむらは家で飼い猫として飼うことになった。

 猫は昔飼っていた事があったので猫グッズは揃っているのだが、ゆきむらは『我を猫扱いとは何事か!!』とか滅茶苦茶文句を言っていた。

 でも家に住むからには猫のフリが必要と言うことで、餌を食べたり猫トイレを使ったフリをしたりする事になった”魔獣ゆきむら・自称王子”……切ないね(実際には主のMPがあれば餌の必要ないしトイレも必要ないみたい)



「……と言う感じで、一旦保留になっているんだ」

「まさかとは思ったけれど、妹さん……美百合ちゃんはエクスプローラーズになっちゃったんだね」

「そうなんだ……しかもダンジョン潜る気満々だからどうしたものか……」

「無理に禁止して勝手にダンジョンに入られるくらいなら目の届く範囲でって選択肢はあるよ?」

 なるほど、確かに勝手にダンジョンを探して入ってしまう可能性もあるのか……見つけられるかは置いておいて。本来ならモンスターを見せて怖い思いをさせて試すなんて方法もあったかもしれないけれど、最初からボスモンスターを見てしまっているからなぁ。

 まぁ、レベルは15だし無茶をしなければ大きな危険も無いかもしれない。

「いちどここへ呼んで試してみる? 私もゆきむらを見てみたいし」

「そうだね、仲間の顔合わせも必要だしね」

 僕はそのまま茜をハウスに待たせて一旦自宅へ美百合を呼びに行く事にした。


「おにぃ、おかえり!!」

 僕が帰ってきた事に気付くと両手を広げダッシュでダイブしてくる……美百合を受け止めてからジョブを確認するとブラコンになっていた。

「今朝からだけれど、どうしてジョブをブラコンにしているの? そのジョブを嫌がっていたよね?」

「うん、みゅーはブラコンじゃないんだけど、この状態でおにぃと一緒にいるとすっごい幸せな気持ちになるんだ」

 ブラコンのジョブ自体は相変わらず否定するけれどそのジョブになる事自体は嫌じゃ無いとか矛盾しているなぁ。とりあえず仲間と拠点となっているダンジョンハウスを説明するとはしゃぎだした。

「うん、行く!! おいでゆきむら!!」

『くっ、我はてれびじょんを見ていたいというのに……』

 どうやら召喚獣であるゆきむらは美百合の一声に逆らえないようで、不満そうに『みーみー』鳴いている。倉庫が入り口だと言うことで、特に準備はせずそのまま向かった。

「わぁぁっ、倉庫の壁を抜けたらお家の中に出た!!」

 封印されているダンジョンでも転送と同じ理屈なのか手を繋げば美百合も一緒にダンジョンハウスへ入ることが出来る。

「おかえり巧美」

「ただいま茜」

「む~~っ、なんで名前で呼び合っているの?」

 打って変わって美百合の機嫌が悪くなった。いや、最初は恥ずかしかったけれど、ダンジョンで互いに連携する時は名前呼びの方が効率よいと実感したしね。もう慣れた物だよ。

「そんな事よりも僕達のレベルは既に40くらいなんだ……ゆきむらを単独で戦わせれば経験値が稼げると言う事だけれど、どれくらい戦えるんだ?」

『ふむ、我に掛かれば造作も無い……ここはダンジョンのようだがモンスターはいるのか?』

「か、かわいい!!」

 最初にゆきむらを見た美百合の如く、茜は『みーみー』鳴いているソレを抱き上げた。

『こ、こら止めぬか!! これ、主の兄よ、止めぬか』

「とりあえず満足するまでそのままで」

『簡単に見捨てる出ないぞ!!』

 茜が満足するまで20分ほどの時間を要した……ゆきむらはぐったりしている。彼女はまだ名残惜しそうだけれど話が進まないので強引に引き離した。

「それで、なんだったっけ?」

『くっ、忘れおって……モンスターと戦えば我の実力はわかるであろう。ここにはモンスターはいるのか?』

「そうだったね、じゃあ地下に行こうか」

 ダンジョンハウスB1には戦うには十分なスペースの部屋を20個ほど作っていて、それぞれにモンスターを出して戦えるようなバトルルームにしてあるのだ。

 リポップの頻度の設定も出来るから確かにゆきむらを放置して戦わせることも出来る。とりあえず手前のバトルルームへ入るとダンジョンコアの設定をする。

「試しにジャイアントバットを出してみようか?」

 するとバトルルームの天井にジャイアントバットが出現して……部屋のまぶしさに耐えられず『ギヤーギャー』鳴きながら地面に落下した……相変わらず不憫なモンスターではあるけれどお試しには丁度良いんだよね。

『我にこんな雑魚の相手をさせるとは……まぁ良い、我の力、とくと見ておくが良い』



 ”ゆきむらが飛びかかるとその鋭利な爪を大蝙蝠に突き立てる、そして凶悪な牙で噛みついた……さらに強靱な2本の後ろ足で交互に追い打ちをかける……大蝙蝠はたまらず叫び声を上げる”

 ……と、ゆきむら自身の中ではそんな感じで戦っているつもりなのだろうけれど、ただ単に子猫がぬいぐるみか何かに戯れ付いているようにしか見えない。

 両前足で蝙蝠を捕まえて噛みついて後ろ足を使って、てしてしキックしているだけだった。蝙蝠が叫んでいるのはただ単にまぶしくて苦しんでいるだけだ。

 ……やがて大蝙蝠は消えていった。ゆきむらが得意そうにこちらを見て『みー』と鳴く。

『ふん、他愛ない……』

「いや、蝙蝠はゆきむらの攻撃じゃなくて、明るさでダメージを受けてやられたんだからね」

「「かわいい」」

 二人はゆきむらの戦いより、その様子の方に御執心みたいだ。 



 ……これは先が思いやられるよ。




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ちなみにゆきむらの見た目は真っ白なチンチラです。子猫なので手足は短いです。
イメージが湧かない方はググってみて下さい。もうたまらんです。

第15回ファンタジー小説大賞にエントリーしました。
面白いと感じていただけたら投票お願いいたします。

火、木、土(ストックにゆとりがあれば日)の週3~4回更新となります。

お読みいただきありがとうございます。
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