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ウィナーズ
3-18「私の方が先だったから……負けないでござるよ」
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「ちょ、ジョブチェンジしてみんなに見られたらどう説明するんだお? エリザとか来るかもしれないお」
「エリザは二人でお薦めしたラノベを読むって言っていたよ」
そういえばご飯の時にそんな事を言っていた気がする……律儀だ。
「昨日も美百合が来たから今日も来るお」
「別に美百合ちゃんは姿が変わる事を知っているから問題ないよね?」
そ、そうだった……なんで忘れていたのだ。
「でも誰が来るか分からないからマズいんだお」
『カチャ』っと茜の背中の方から音がした……まるで鍵が掛かるような音だな。
「大丈夫、扉に鍵が掛かるよう錬金術でチョチョイってしたから不意に開けられたりはしないよ」
「チョチョイって……いつの間にそんな事をしたんだお!!」
「セバスチャンさんがご飯を作っている時の自由時間だよ……あ、もちろんみんなの部屋もそうなってるよ」
oh~特に咎めるような理由は無かったよ。というかそもそも耳かきしてもらう理由が無いよ、ちゃんと説明をしないと……
「いや、でも僕の耳は「巧美は嫌かな? 私がしてあげるのは?」」
うっ、そう言う言われ方をすると断りにくいよ。耳かきをしてもらうからには、僕の頭が茜のHUTOMOMOに……僕の視線は茜の腰の下……丸みを帯びたラインに下りていく。
ゴクリ……いや、待つのだ巧美、大切な仲間にそんな視線を送るなんてキモオタ紳士として有るまじき行為。だが僕はキモオタ紳士の前にただのキモオタでもある。
その太ももに顔を埋めたら……そして下を向いて思い切りクンカクンカしたら一体どんな幻想世界を垣間見られるかという知的好奇心を抑える事が難しい。
「え、えーと……【MウィッチローブR】の方がいい? た、巧美がそっちがいいって言うなら……」
茜が僕の露骨な視線に気付くと、とんでもない事を言ってきた。いやいや、僕はそんなつもりで見ていた訳じゃ無いよ、急いで誤解を解かないと!!
「いや、そのままで大丈夫だから!!」
しまった、焦りすぎて本音と建て前が逆になってしまった!!
「いや、今のはちが……「わ、わかった」」
僕の言い訳を待たずに茜の姿がエロい【MウィッチローブR】に切り替わる。何回か見ているのに僕の視線はその姿から離せなくなった。
「あ、あんまり……見ないで」
「うん」
「全然視線が外れていないよ~」
「うん、ごめんだお」
ノーマルな【Mウィッチローブ】は脹ら脛(ふくらはぎ)の辺りからスリットが入っていたのだが、【R】の方は腰骨の上からスリットが入っていて、HUTOMOMOがよく見える。
ノーマルな【Mウィッチローブ】は首から胸まではちゃんと覆われているのに【R】は胸の上は素肌が晒(さら)されていて胸の谷間も見える。
僕は今、真理にたどり着いた……【MウィッチローブR】の【R】は【リファイン】では無くて【R指定】の【R】だ。
もう一度言おう【MウィッチローブR】の【R】は【リファイン】では無くて【R指定】の【R】だ。
「どうしたの巧美? 大丈夫?」
「うん、駄目かもしれないお」
「と、とにかくしてあげるね」
はっ、思いっきり状況に流されてしまった……これが魔女の誘惑という奴なのか? でもこれを抗える男は決して男なんかじゃ無いよ。
茜はゆっくりとベッドに上がると正座をする。そしてHUTOMOMOの上にポンっと手を置くと……
「……どうぞ」
……と、僕を誘った。
今更だけれどこのシチュエーションはヤバい。ベッドの上にエロい服の女の子。これこそまさにエロゲーでしかあり得ないシチュエーションだ。さっきから僕の心臓は激しく全身に血液を送りつけている……頼むから下半身には送らないでほしい。
だめだ、落ち着け巧美……僕はキモオタ紳士、エロソシャゲ主人公のようにいくら物語で真面目に振る舞っていても、寝室に入った途端に理性が飛んで、どんな方向からでも寝技に持ち込む鬼畜野郎では無い。……僕は深呼吸をするとベッドに上ると正座で茜と向かい合った。
「ぼ、僕もジョブチェンジした方がいいかお?」
「ううん、そのままで大丈夫」
茜は両手でその艶めかしいHUTOMOMOをポンポンと叩いた。僕は耳かきを茜に渡すと、そのままそのHUTOMOMOに頭を委ねたのだった。
「これ耳かきなの?」
「ペンみたいだけど蓋を外すと耳かきが出てくるお」
茜の質問に何とか答えるけれど僕は今、顔半分に感じる感触に思考の大半を奪われている。それはやわらかくて、甘い香りがして、そしてやわらかかった。
「あ、光った……ねぇ、これ先の形がこれしか無いの?」
「うん、とってもやわらかいお」
「え?」
「あ、いや、キャップの先に違う形が入ってるお」
「あ、本当だ……ちょっと取りにくいね」
いけない、思考が飛んでゆく……これが夢のHIZAMAKURA。は~クンカクンカしてスリスリしたい。
「ひゃっ! くすぐったいよ!!」
「ご、ごめんだお」
無意識にスリスリしていた……これがHIZAMAKURAの魔力……さすが茜、魔術を使いこなしておる。
「先っちょが落ちちゃった……」
どうやら僕が動いたせいでキャップの先に入っている耳かきのアタッチメントが落ちてしまったようだ。わ、わざとでは無いのだよ。
「ご、ごめんだお……ほぉわぷっ」
僕が顔を茜の方へ向けた瞬間……何かが落ちてきた。なんだこれは? あたたかくて、やわらかくて、そしていいにおい……これは、まさか!?
「ふも、ふもも、ふもっふ!!」
「はうん、くすぐったいよ巧美、もうちょっとで届くから待って」
茜は落ちたアタッチメントに手を伸ばして身をかがめたようだ、そして身をかがめた時HUTOMOMOの上にあった僕の顔に茜のたわわな何かが落ちてきたのだ!!
「とれたよ……あっ」
茜も自分が何をしたか気付いたようだ。僕はもう意識がもうろうとして……いや、呼吸が出来ていなかった。ちょうど落ちてきた何かに口と鼻が塞がれていたからだ。
「た、巧美!! 大丈夫!?」
「……わ、我が生涯に一片の悔い無しだお」
すこし落ち着いてから改めて茜の耳かきが開始された。
「痛かったら言ってね」
「大丈夫だお、気持ちいいお」
「もう、まだ始まったばっかりだよ」
あぶない、HUTOMOMOが気持ちいいと言いそうになった。しかし、茜はなんで急にこんな事を言い出したのだろう? この状態だと何を聞かれても答えてしまいそうだよ。
「あの……巧美は……エリザと何かあったの?」
「ぶほっ」
そうだ、エリザの事を聞かれるかもと思っていたの忘れていた。しかし良い機会なのか? ちょっと将来の事に関わってくるし、話が重めなので軽く判断出来ないから、茜に聞いてもらうのもアリなのかもしれない。
「じ、実は昨日……」
こうして昨日の出来事を簡単に説明したのだった。
「え、エロゲーの話をしても平気だったの……これは予想外の伏兵だよ」
「でも、別に男として好きだとかじゃないお」
「そう言う問題じゃ無いよ……まずいよ、これじゃ”拙者が先に好きでござったのに”だよ」
「え? 何だお?」
僕は決して難聴系主人公ではないけれど、耳かきの音で茜の声がかき消えてしまっている。
「巧美は……どうしたいの? もしもエリザが巧美の事をちゃんと男の子として好きってなったら?」
「そ、それは……そんな事になるわけないお」
「巧美、返答から逃げないで。あるわけない……じゃなくて、好きになったらどうするの?」
「そ、それは……エリザは可愛いお。スレイヤーズとしても心強いし、もしも僕を好きになってくれたら、それに応えちゃうかもしれないお」
「……そう」
茜の耳かきが止まった。耳かきの途中なので顔を見る事が出来ないけれど、何か真剣な雰囲気を感じる。
「じゃあ、アイシャだったら……ちゃんとナタクが巧美だと分かって、エロゲーにも理解をしてもらったら?」
「あ、アイシャ? うーん、アイシャも美人だし、年上のお姉さんに甘えたい気持ちも無きにしも非ずだお……やっぱり本気になっちゃうかもしれないお」
まぁ、アイシャの場合はあり得ないけれどね。というか、凄い恥ずかしいのだけれど。まるで黒歴史ノートを告白させられている様な気分だ。
「じゃ、じゃ、じゃあ……わわた、私だったら、どどう?」
「え? そ、それを本人の目の前で言うというのかお!? それにどういう意味が……」
冗談では無さそうだ……どもっている茜を見るのは久しぶりだ。滅茶苦茶恥ずかしいのだけれど、それはたぶん茜も同じはずだ。女の子だけにそんな思いをさせるのは男として駄目だよね。
「え、えーと、茜は……趣味が合うし、一番長い付き合いだし、色々相談に乗ってくれて凄く頼りになるお。だから……えーと、もしも……茜なら……」
「わ、私なら?」
「僕は茜ならす……」
『ガチャガチャ』『あ、あれぇ? おにぃー!! 開けてー!!』
お約束の登場だ……扉のドアノブがガチャガチャ言い続けている。先にノックくらいしなさい。
「…………」
「…………」
『おにぃー、あけてよー!!』
「時間切れだね……この続きはまただね」
「……うん」
僕が起き上がると茜の服が普通の【Mウィッチローブ】に変わっていた。とりあえずベッドから下りると茜がボフッと立ち上がらずにベッドに倒れた。
「あ、足……痺れちゃった」
「だ、大丈夫かお?」
確かにそこそこ長い時間正座していたし、正座は苦手な人はベッドの上でも痺れてしまうのかもしれない。僕はそのまま茜に手を貸して起こそうとすると、彼女の顔が迫ってきた。
「んっっ」
「んむっ!?」
え? なに? いまのは?
「私の方が先だったから……負けないでござるよ」
茜の方を見ると既に腐女子になっていた……普通にベッドから下りて歩いている……足は痺れていたのじゃ? いや、僕も浄化の魔法で耳の中が綺麗なのに耳かきしてもらったわけだし。……呆然と現実逃避した思考をする僕を置いて扉を開ける。
「美百合殿、今みんなの部屋に付けた扉の鍵をチェックしていたでござるよ」
「えー? なんですぐに開けてくれなかったのー!?」
「ちゃんと鍵が掛かったままか確認していたでござるよ、ちょうど美百合殿が来て良かったでござる……おっと、そろそろ良い時間でござるな、それじゃあ二人ともお休みでござる」
彼女は何事も無かったように部屋を出て行ってしまった。
……僕は唇を押さえたまま動く事が出来なかった。
________
_________________________________________
タグをコメディからラブコメに変更しました。
いきなりラブコメに舵を切ったわけではなく、元々こういう予定ではあったのですが、
徐々に温度を上げないとこういう話を書けない物でして、ここまで時間が掛かったのですよ。
火、木、土(ストックにゆとりがあれば日)の週3~4回更新となります。
お読みいただきありがとうございます。
もしも面白いと感じていただけたら是非いいね! お気に入り登録をお願いします。感想もお待ちしております。
「エリザは二人でお薦めしたラノベを読むって言っていたよ」
そういえばご飯の時にそんな事を言っていた気がする……律儀だ。
「昨日も美百合が来たから今日も来るお」
「別に美百合ちゃんは姿が変わる事を知っているから問題ないよね?」
そ、そうだった……なんで忘れていたのだ。
「でも誰が来るか分からないからマズいんだお」
『カチャ』っと茜の背中の方から音がした……まるで鍵が掛かるような音だな。
「大丈夫、扉に鍵が掛かるよう錬金術でチョチョイってしたから不意に開けられたりはしないよ」
「チョチョイって……いつの間にそんな事をしたんだお!!」
「セバスチャンさんがご飯を作っている時の自由時間だよ……あ、もちろんみんなの部屋もそうなってるよ」
oh~特に咎めるような理由は無かったよ。というかそもそも耳かきしてもらう理由が無いよ、ちゃんと説明をしないと……
「いや、でも僕の耳は「巧美は嫌かな? 私がしてあげるのは?」」
うっ、そう言う言われ方をすると断りにくいよ。耳かきをしてもらうからには、僕の頭が茜のHUTOMOMOに……僕の視線は茜の腰の下……丸みを帯びたラインに下りていく。
ゴクリ……いや、待つのだ巧美、大切な仲間にそんな視線を送るなんてキモオタ紳士として有るまじき行為。だが僕はキモオタ紳士の前にただのキモオタでもある。
その太ももに顔を埋めたら……そして下を向いて思い切りクンカクンカしたら一体どんな幻想世界を垣間見られるかという知的好奇心を抑える事が難しい。
「え、えーと……【MウィッチローブR】の方がいい? た、巧美がそっちがいいって言うなら……」
茜が僕の露骨な視線に気付くと、とんでもない事を言ってきた。いやいや、僕はそんなつもりで見ていた訳じゃ無いよ、急いで誤解を解かないと!!
「いや、そのままで大丈夫だから!!」
しまった、焦りすぎて本音と建て前が逆になってしまった!!
「いや、今のはちが……「わ、わかった」」
僕の言い訳を待たずに茜の姿がエロい【MウィッチローブR】に切り替わる。何回か見ているのに僕の視線はその姿から離せなくなった。
「あ、あんまり……見ないで」
「うん」
「全然視線が外れていないよ~」
「うん、ごめんだお」
ノーマルな【Mウィッチローブ】は脹ら脛(ふくらはぎ)の辺りからスリットが入っていたのだが、【R】の方は腰骨の上からスリットが入っていて、HUTOMOMOがよく見える。
ノーマルな【Mウィッチローブ】は首から胸まではちゃんと覆われているのに【R】は胸の上は素肌が晒(さら)されていて胸の谷間も見える。
僕は今、真理にたどり着いた……【MウィッチローブR】の【R】は【リファイン】では無くて【R指定】の【R】だ。
もう一度言おう【MウィッチローブR】の【R】は【リファイン】では無くて【R指定】の【R】だ。
「どうしたの巧美? 大丈夫?」
「うん、駄目かもしれないお」
「と、とにかくしてあげるね」
はっ、思いっきり状況に流されてしまった……これが魔女の誘惑という奴なのか? でもこれを抗える男は決して男なんかじゃ無いよ。
茜はゆっくりとベッドに上がると正座をする。そしてHUTOMOMOの上にポンっと手を置くと……
「……どうぞ」
……と、僕を誘った。
今更だけれどこのシチュエーションはヤバい。ベッドの上にエロい服の女の子。これこそまさにエロゲーでしかあり得ないシチュエーションだ。さっきから僕の心臓は激しく全身に血液を送りつけている……頼むから下半身には送らないでほしい。
だめだ、落ち着け巧美……僕はキモオタ紳士、エロソシャゲ主人公のようにいくら物語で真面目に振る舞っていても、寝室に入った途端に理性が飛んで、どんな方向からでも寝技に持ち込む鬼畜野郎では無い。……僕は深呼吸をするとベッドに上ると正座で茜と向かい合った。
「ぼ、僕もジョブチェンジした方がいいかお?」
「ううん、そのままで大丈夫」
茜は両手でその艶めかしいHUTOMOMOをポンポンと叩いた。僕は耳かきを茜に渡すと、そのままそのHUTOMOMOに頭を委ねたのだった。
「これ耳かきなの?」
「ペンみたいだけど蓋を外すと耳かきが出てくるお」
茜の質問に何とか答えるけれど僕は今、顔半分に感じる感触に思考の大半を奪われている。それはやわらかくて、甘い香りがして、そしてやわらかかった。
「あ、光った……ねぇ、これ先の形がこれしか無いの?」
「うん、とってもやわらかいお」
「え?」
「あ、いや、キャップの先に違う形が入ってるお」
「あ、本当だ……ちょっと取りにくいね」
いけない、思考が飛んでゆく……これが夢のHIZAMAKURA。は~クンカクンカしてスリスリしたい。
「ひゃっ! くすぐったいよ!!」
「ご、ごめんだお」
無意識にスリスリしていた……これがHIZAMAKURAの魔力……さすが茜、魔術を使いこなしておる。
「先っちょが落ちちゃった……」
どうやら僕が動いたせいでキャップの先に入っている耳かきのアタッチメントが落ちてしまったようだ。わ、わざとでは無いのだよ。
「ご、ごめんだお……ほぉわぷっ」
僕が顔を茜の方へ向けた瞬間……何かが落ちてきた。なんだこれは? あたたかくて、やわらかくて、そしていいにおい……これは、まさか!?
「ふも、ふもも、ふもっふ!!」
「はうん、くすぐったいよ巧美、もうちょっとで届くから待って」
茜は落ちたアタッチメントに手を伸ばして身をかがめたようだ、そして身をかがめた時HUTOMOMOの上にあった僕の顔に茜のたわわな何かが落ちてきたのだ!!
「とれたよ……あっ」
茜も自分が何をしたか気付いたようだ。僕はもう意識がもうろうとして……いや、呼吸が出来ていなかった。ちょうど落ちてきた何かに口と鼻が塞がれていたからだ。
「た、巧美!! 大丈夫!?」
「……わ、我が生涯に一片の悔い無しだお」
すこし落ち着いてから改めて茜の耳かきが開始された。
「痛かったら言ってね」
「大丈夫だお、気持ちいいお」
「もう、まだ始まったばっかりだよ」
あぶない、HUTOMOMOが気持ちいいと言いそうになった。しかし、茜はなんで急にこんな事を言い出したのだろう? この状態だと何を聞かれても答えてしまいそうだよ。
「あの……巧美は……エリザと何かあったの?」
「ぶほっ」
そうだ、エリザの事を聞かれるかもと思っていたの忘れていた。しかし良い機会なのか? ちょっと将来の事に関わってくるし、話が重めなので軽く判断出来ないから、茜に聞いてもらうのもアリなのかもしれない。
「じ、実は昨日……」
こうして昨日の出来事を簡単に説明したのだった。
「え、エロゲーの話をしても平気だったの……これは予想外の伏兵だよ」
「でも、別に男として好きだとかじゃないお」
「そう言う問題じゃ無いよ……まずいよ、これじゃ”拙者が先に好きでござったのに”だよ」
「え? 何だお?」
僕は決して難聴系主人公ではないけれど、耳かきの音で茜の声がかき消えてしまっている。
「巧美は……どうしたいの? もしもエリザが巧美の事をちゃんと男の子として好きってなったら?」
「そ、それは……そんな事になるわけないお」
「巧美、返答から逃げないで。あるわけない……じゃなくて、好きになったらどうするの?」
「そ、それは……エリザは可愛いお。スレイヤーズとしても心強いし、もしも僕を好きになってくれたら、それに応えちゃうかもしれないお」
「……そう」
茜の耳かきが止まった。耳かきの途中なので顔を見る事が出来ないけれど、何か真剣な雰囲気を感じる。
「じゃあ、アイシャだったら……ちゃんとナタクが巧美だと分かって、エロゲーにも理解をしてもらったら?」
「あ、アイシャ? うーん、アイシャも美人だし、年上のお姉さんに甘えたい気持ちも無きにしも非ずだお……やっぱり本気になっちゃうかもしれないお」
まぁ、アイシャの場合はあり得ないけれどね。というか、凄い恥ずかしいのだけれど。まるで黒歴史ノートを告白させられている様な気分だ。
「じゃ、じゃ、じゃあ……わわた、私だったら、どどう?」
「え? そ、それを本人の目の前で言うというのかお!? それにどういう意味が……」
冗談では無さそうだ……どもっている茜を見るのは久しぶりだ。滅茶苦茶恥ずかしいのだけれど、それはたぶん茜も同じはずだ。女の子だけにそんな思いをさせるのは男として駄目だよね。
「え、えーと、茜は……趣味が合うし、一番長い付き合いだし、色々相談に乗ってくれて凄く頼りになるお。だから……えーと、もしも……茜なら……」
「わ、私なら?」
「僕は茜ならす……」
『ガチャガチャ』『あ、あれぇ? おにぃー!! 開けてー!!』
お約束の登場だ……扉のドアノブがガチャガチャ言い続けている。先にノックくらいしなさい。
「…………」
「…………」
『おにぃー、あけてよー!!』
「時間切れだね……この続きはまただね」
「……うん」
僕が起き上がると茜の服が普通の【Mウィッチローブ】に変わっていた。とりあえずベッドから下りると茜がボフッと立ち上がらずにベッドに倒れた。
「あ、足……痺れちゃった」
「だ、大丈夫かお?」
確かにそこそこ長い時間正座していたし、正座は苦手な人はベッドの上でも痺れてしまうのかもしれない。僕はそのまま茜に手を貸して起こそうとすると、彼女の顔が迫ってきた。
「んっっ」
「んむっ!?」
え? なに? いまのは?
「私の方が先だったから……負けないでござるよ」
茜の方を見ると既に腐女子になっていた……普通にベッドから下りて歩いている……足は痺れていたのじゃ? いや、僕も浄化の魔法で耳の中が綺麗なのに耳かきしてもらったわけだし。……呆然と現実逃避した思考をする僕を置いて扉を開ける。
「美百合殿、今みんなの部屋に付けた扉の鍵をチェックしていたでござるよ」
「えー? なんですぐに開けてくれなかったのー!?」
「ちゃんと鍵が掛かったままか確認していたでござるよ、ちょうど美百合殿が来て良かったでござる……おっと、そろそろ良い時間でござるな、それじゃあ二人ともお休みでござる」
彼女は何事も無かったように部屋を出て行ってしまった。
……僕は唇を押さえたまま動く事が出来なかった。
________
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タグをコメディからラブコメに変更しました。
いきなりラブコメに舵を切ったわけではなく、元々こういう予定ではあったのですが、
徐々に温度を上げないとこういう話を書けない物でして、ここまで時間が掛かったのですよ。
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