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ウィナーズ

3-21「こんなキモオタで安心出来るのならどうぞだお(キリッ)」

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「これで止めだお!!」

 僕の攻撃スキルがリザードジェネラルの頭部にヒットすると、そのまま光となって消えていった。

「ふひぃぃ~、2連戦は辛いお」

「お疲れ様ですわ巧美様、勇ましい戦いぶりがとても素敵でしたわ」

「おにぃ強い!!」

 初戦を終え一休みしているとすぐに次の敵が近づいてきた。こちらの位置を察知している訳では無くて巡回しているような動きのようだ。

 相手はコボルトの団体だった。本来は素早い動きで敵を翻弄するのが得意なのだけれど、僕等はまた狭い通路に陣取っていたので有利に戦いを進める事が出来た。

 しかし、戦いの途中に後方から接近する敵の集団を察知、挟み撃ちにされるかもしれない焦燥感の中、何とかコボルト集団を倒すと一息つく間もなく新たな敵集団リザードマンとの戦いが始まったのだった。

『我に掛かれば造作も無い事よ』

 ちなみにゆきむらは瀕死の敵にてしてし攻撃してとどめを刺していた……どうみても子猫がじゃれているようにしか見えない。
 とはいえレベル50の敵にダメージを与えられるくらいには強くなっているのは驚きだね。

「ボス以外を全滅させておかないと戦闘中にバックアタックを食らうでござるからな」

「ドロップ品もゴージャスだお、稼ぎだけで見れば悪くないんだお」

 生きて帰れればだけれど……なんてみんなを不安にさせるような事は言えないね。それにしても一体あとどの位の敵を倒せばいいんだろう?

「アイシャから連絡がありましたわ……ボスの位置が判明したからMAPデータを送ってくれるようですわ」

 全員のギルドスマホが震えるとマップデータが更新されたようだ。ボスの位置はお約束のように最北端にあるようだ。

 僕等が戦っている間にアイシャは単独で危険な探索をして、この短時間でMAPを完成させた……彼女も僕達と一緒に戦っているのだ。

「今の所は周りに敵の影は無いようです……少し休憩をしましょう」

「さんせ~い! みゅーも疲れちゃった」

 通路を抜けて大部屋に戻ると僕等はつかの間の休息を取るのだった。


「ボスの部屋に向かった方がいいのかお?」

「雑魚を全滅させる方が安全でござるよ」

「人数がいればどちらの戦略もとれるのですが……ままなりませんな」

「もしかしたらこのまま見張りを立てて一夜を超す必要もあるかもしれませんわ」

「え~お風呂は入れないの~?」

『………………(毛繕いをしている)』

「なかなかヘヴィーな状況だお」

 さすがにレイドボス戦でDテントが安全かどうか確かめる勇気は無い。ダンジョンハウスには行かずに普通のスレイヤーズと同じように見張りを立てながらの野営をする必要がありそうだ。


 しばらくしてアイシャが戻ってきた。

「ボスの部屋が見つかったわ……基本的には移動はしないで待機するタイプよ。ボス部屋の前の部屋の敵は移動しないから戦闘は避けられ無さそうね……それぞれの部屋の距離が近かったから、多分だけれど戦闘になれば援軍として駆け付けてくると思うわ」

「ますますヘヴィーな状況だお」

「レイドボス手前ではよくある事ですわ」

「レイドボスあるあるなのでござるか」

 そんなあるあるはノーサンキューだよ。

『我は夕食にツナ缶を要求する』

「お家帰らないと無いよ?」

『なん……だと』

 美百合の回答にもの凄いショックを受けるゆきむら……それを見て女性陣がクスクス笑っている。
 重苦しい空気がゆきむらのお陰で少し和んだ……やるな、ゆきむら。


 簡単な夕食を済ますと、早いけれど順番に寝る事にした。組み合わせは索敵を持っている人と持っていない人のペアで

 ①茜&僕

 ②セバスチャン&エリザ

 ③アイシャ&美百合

 ……となった。順番はくじ引きで決めたよ

 僕も索敵は持っているけれど魔力の関係で茜の方が索敵係で僕が無い人扱いだ。僕等を残して皆はテントに入っていった。

 皆が休むと周りはとても静かになった。まるで世界に僕と茜だけがいるような錯覚に陥りそうだ。
 テーブルのマグカップを手に取りコーヒーを飲む……ううっ、会話が思いつかない。
 
「巧美殿……名前付きネームドモンスターの時ももうだめかと思ったけれど、今回もどうなるか分からないね」

 会話の途中で茜は魔術師のジョブにチェンジした……黒髪ポニテの美人系女子の顔を見ると昨夜の事が嫌でも頭に浮かんでくる。

「そ、そうだお……でも、今回もきっと大丈夫だお」

 茜が弱気になっているので、僕は反射的に答えてしまった。

「巧美は強いね、私は怖くて仕方ないよ……みんながいなきゃ取り乱してたかも?」

「別に強くなんか無いお、ただみんなの強さを信じているだけだお……もちろん茜の事も信じているお」

「うん……ありがと」

「…………」

「…………」

 か、会話が続かない。茜も上目遣いでマグカップを両手で持ちながらこちらをチラチラ見ている……可愛いなもう。
 そもそもキモオタに女子との会話が出来るはずが無かったんだ。いや、二人の共通の話題と言えばアニメとかゲームだよ! なんか話題、一番最近遊んだゲームは……

「そう、僕は無しだと思うお、ヒロインがバッドルートだと陵……あ、いや、何でも無いお」

「?」

 しまった! 一番最近遊んだのはエロゲだった!! 絵が可愛くて純愛ルートはラブラブなのにバッドルートだとヒロインがとんでもない目に合ってしまう。そのギャップでプレイヤーの脳が破壊されちゃうやつだ……ジャケ買いするとこういう事が稀に良くある。
 そしてこの状況で出す話題としては最悪に近いチョイスだよ!!

「巧美は……どう思っているのかな?」

「え? 何だお?」

「き、昨日の事……」

「昨日の事……三下が絡んできた事かお」

 僕は茜が言いたい事が何となく分かっていながら逃げに走った……これでこの話題に乗ってくれるかな?

「ううん、昨日の夜の……巧美の部屋での事」

 ですよね~。

 茜は僕の逃げを許さずにズバリ切り込んできた。でも僕はまだその事についての結論を出すのはまだ先だと勝手に思っていたのに……

「もしも……今回のレイドボスに負けちゃったら……永遠に分からなくなっちゃうから……聞きたいかなって」

 そう言われるとさすがに僕もこれ以上逃げる事は出来ない。

「えーと、その~、僕は……」

「巧美!?」

 急に茜が真剣な顔をして部屋の出口の通路方向を見ている……まさか!?

「索敵に……【サーチ】に引っかかった……でも……こっちには来ない?」

「僕の索敵にはまだ入ってこないお」

 僕等は緊張で動きが止まってしまった。こちらに来るようなら急いでみんなを起こさないといけない。


 僕等は黙ったままの時間を過ごした……凄く長かったように感じるけれど、実はそれほど経っていないのか分からない。時計を見る事も忘れてジッとしていた。

「…………行っちゃった」

「ふぅぅぅぅぅっ」

 安心で深く息を吐いた。さっきまで甘酸っぱい雰囲気が出てきたのに、いきなり緊張感MAXでもの凄く精神的に疲れてしまった。

「これは……これが続くと精神が削れてしまうお」

「そうだね、私たち休憩の番になったらよく眠れそうだね」

「本当だお、出来れば明日まで来ないで欲しいお」

「本当だよね」

「…………」

「…………」

 再び沈黙が訪れる……さっきの話題を僕から出す勇気は無い。何か話題を探そうとするとまたエロゲの事が思い浮かんできた……だからそれはもういいって!

「あの!」

 茜が沈黙を破って声をかけてきた。

「なにかお?」

「えーと、側に行ってもいい? その……怖くて……」

「ふぁっ!?」

 くっ、これは断れない。それに昨日の事云々を抜きにしても怖がっている女の子をそのままにするのはキモオタ紳士として有るまじき行為だよ。

「こんなキモオタで安心出来るのならどうぞだお(キリッ)」

「ありがとう」

 そう言うと座っていた椅子を持っていそいそと向かいのテーブルからこちらに回り込んで来た。

「えっと……その……手も握ってもらっていい?」

「むっ……もちろんだお……では、ど、どうぞだお」

 勢いで言ってしまった。しかし怖がっている女の(以下略)
 
  椅子同士もピッタリくっつけたので僕等の太ももも同じようにくっついている。ぼくは茜に向かっておずおずと手を差し出すと彼女も手を合わせてくる。
 そして互いの指が絡み合うようにそっと握られる……こ、これは恋人繋ぎ!? 茜は僕と視線が合わないようにしているが、その頬はうっすらピンク色に染まっている。
 なんだか、昨日はそれ以上の事をしたはずなのに変わらないくらいキドキしてきた。

「!?」

 急に茜が手を強く握ってくる……まさか、また索敵に?

「敵なのかお?」

「うん、さっきとは違う集団みたい……直接こちらには向かっていないけれど……巡回している感じがするよ」

「ううっ、心臓に悪いお」

 甘酸っぱい青春のドキドキ感を感じていたのに、いつの間に殺伐とした緊張のドキドキに変わっていた。なんかさっきもこんなのあったよね?

「敵がこちらに向かってきたらみんなを起こさないとだね」

「そうだお、できればゆっくり休みたいから来ないでいいお」

 しかしその後、僕等の希望を拒否するかのように【サーチ】へ度々、敵集団が引っかかるのだった。その度に僕等の気が張り詰めて想像以上に消耗してくる。



 交代時間になる頃には僕等の精神もだいぶ疲れてしまった。僕等は次の見張りであるセバスチャンとエリザを起こして眠りにつくのだった……



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更新が滞っていて申し訳ございません。

テレワークが終わり通常の仕事に戻ったのですが、仕事終わりに執筆して3日に1話、休みの日に1~2話くらいで週3~4話と思っていたのですが皮算用もいい所で仕事終わりに”疲れて寝落ちする時間”を計算に入れていなかったのが敗因です。

いや、本当に「あ、これは寝る」という瞬間が分かるのですが抗えないのですよね~
きっと眠りの魔法をかけられたらこんな感じなのでしょう。

休みも不定期なので今週のように連続出勤が重なると休日も疲れで半日以上寝てしまいます。だんだん体も慣れていくとは思うのですが、これからますます忙し行くなっていく予感でままなりません。
しばらくは不定期になるかと思いますので、もし宜しければ見捨てずに見守っていただければと思います。


お読みいただきありがとうございます。
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