悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里

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 それからは、殿下からお声をかけていただいても、最低限参加が必要なもの以外は丁重にお断りした。

 そして、その間に、悩みに悩んだ私は、騎士団の入団を父に申し出た。


「マリエッタが騎士だと?」

「はい」


 父親は、驚いたように私を見て固まっていた。

 それもそうだろう。だって私は、これまで皇太子妃候補として育てられてきたのだから。


「けれど、どうして? 殿下との仲も良好だと聞いていたが。何かあったのか?」


 父親は、どこか心配そうに私を見つめる。


「それは……」

 私が見てきたことを、話すべきだろうか。

 けれど、誰が信じるだろう。

 殿下には、他にふさわしい運命の人がいて、その人が今後現れる。さらには、私はその人に嫉妬されて命を落とすだなんて……。


「これまで皇太子妃になることを受け入れていたマリエッタが急に考えを百八十度変えるだなんて、何かあったんだろう?」

「お父様……」


 私の心を揺さぶるような父の声を聞いて、私の瞳から涙があふれでた。

 私の弱さからかもしれないけれど、何となく、もしかしたら信じてもらえるかもしれないと感じたんだ。


「実は……」


 私は夢で見たことを話した。一度マリエッタとしての人生を歩んだことを。そして、残酷で悲しい最期を。


「……マリエッタの話はわかった。けど、その殿下の運命の人というのが本当に現れるかどうかはわからないわけだろう? 剣術を習うことは認めるが、マリエッタのいう未来が、……その運命の人というのが現れるまでは、大きな行動は起こせない」

「……お父様は、私の話を信じてくれるの?」

「私の可愛い一人娘の話だからな。万が一の時は、うちの騎士を継がせるつもりで訓練をするから、そのつもりでいろ」

「はい」


 父の顔から、きっと父は私の話に対して半信半疑なのだろうと感じた。

 それでも私の言葉に真摯に受けとめてくれたことが嬉しかった。


 一番は、サクラが私の前に現れないことだ。
 けれど、それを私にはどうすることもできない。
 だから私は、どちらに転ぼうと対策しておく必要があるのだ。


 それからの私は、騎士としての修行に励むことになった。



「やっ! はっ!」

「うん、マリエッタ。よくなったね」


 私についてくれる騎士団の一人に褒めのお言葉をいただいて、達成感がうまれる。

 初心者の私が突然剣術だなんて、もちろん一筋縄ではいかないところもあったが、この半年間、剣術に打ち込んでかなり腕を上げた。

 けれど、他の騎士団の人たちに比べるとまだまだだ。

 私は引き続き稽古を続けようと、騎士団の一人に構えの姿勢をとる。

 そのときだった。


「マリエッタ様」


 手紙を手にした侍女に呼ばれた。
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