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 私を引っ張ていたのは6歳くらいのかわいらしい男の子だった。

「さっきの子役の子ね?」

「あ、はい。僕はレオって言います。ジョージ様が連れてこいって言ったから……」

 もじもじと話すその姿はさっきまで舞台で堂々と演技をしていた者とは思えないくらいの年相応の子供だった。

「そうなのね。ありがとう。それでここは?」

「あ、ここは控室です」

「わかったわ。ここで待てばいいのかしら。私もジョージ様にお礼を言いたかったしちょうどよかったわ。ありがとう」

「いえ……それでは……」

 その子供は、なぜか顔を背けるとそのままその部屋から出て行った。

 それにしてもどうして控室なんかに呼ばれたのかしら?
 あーそうよ。きっと観劇したことがないという私にどうだったかという感想を聞くためね。

 私はどれほど感動したかということを話すために頭の中で内容を整理していた。

 トントン

「はい」

「入るよ~」

 声とともにやってきたのは、タオルでウェーブのかかった銀髪の髪を拭いている半裸のジョージ様だった。

「あ、いや……ちょっと……そんな姿では困ります」

「ハハハ。君はウブなんだね……反応が今までの子と違ってかわいらしいな」

「な、なんですか。破廉恥な!!」

「ハハハ、破廉恥だななんてひどいなー。誰のおかげで今回観られたと思ってるの?」

 そう言われて自分はお礼を言うためにここにいることに気づく。

「あ、そうでした。取り乱してしまい申し訳ありませんでした」

 私はドレスを整え、淑女の礼で挨拶することにした。

「私はフレア・カートリと申します。この度は貴重な体験をさせていただきありがとうございます。素晴らしい舞台でした。マイク殿下が平民の娘を愛していると告白するシーンは……」

 ぺらぺらと興奮のあまりしゃべり過ぎたようで、気づけばジョージ様は驚いたような顔で私を眺めていた。

「あ、あの……つい……素晴らしすぎて語り過ぎてしまいました。すみません。要するにとっても感動しました。これから毎日観に来ようと思います」

「うんうん、それは私が出てるから素晴らしいのは当たり前なんだけどね。君って本当に女の子だよね?」

 そう言っていきなり私の胸を揉んできた。

「キャー。何するんですか……もしかしてお礼は体でとかそういう……魂胆だったんですか?」

「失敬な。女性から抱いてくれと懇願されるからいつもは抱いているだけで……そんな魂胆などない」

「なら……なぜこのような破廉恥な真似をするのですか? 警備隊を呼びますよ?」

「ハハハ。すまないね。私と一緒にいて正気を保っていられる女性などいなかったから、女装してる男性かと思っただけだよ。胸も違和感あるくらい大きいからね」

「あ、そうだったんですね。それはとんだ勘違いを失礼しました」

 私はジョージ様に謝罪すると今度は再び真面目な顔をしていた。

 コロコロと表情が良く変わる人だな。
 ため息ばかりつく殿下とは違って見ていて面白い。

「ねぇ君、僕の婚約者にならないか?」

「へっ? あの……はい? 今なんと?」

 私はきっと聞き間違いだろうと思い、もう一度確認することにした。

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