追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

文字の大きさ
226 / 227
ユニコーン編

第百二十話 遺跡の奥へ

しおりを挟む
「ーーはっ」

ガバリ、とアレクは体を起こした。
どうやら眠っていたらしい。

「アレク君! 大丈夫?」

シオンが泣きそうな顔で駆け寄ってきた。
心配をかけていたようで、アレクは笑ってシオンに返す。

「平気だよ。ちょっと過去視が発動しちゃって」
「……どんなことが見えたの?」
「うーん、ユニコーンと天使がいたなぁ。あれって何年前の話なんだろ」

その話に飛びついてきたのは少年だった。

「ユニコーン様のこと、何かわかったのか!?」
「うわっ」
「聞かせてくれ!」

目を輝かせて迫ってくる少年に、アレクは自身の視た記憶を話した。

「そうか……俺達の先祖は、やっぱりユニコーン様に助けられたことがあったんだな」
「うん。ユニコーンの体を使って、何か道具とか作ってない?」
「もしかしたら、タペストリーとか……弓とかか?」

うんうんと少年が唸る。
自分の信仰対象の話には興味全開らしい。
そこで、アリスとライアン、ユリーカが戻ってくる。

「アレク! 起きたのか!」
「うん。ごめんね、寝ちゃってて」
「アレク君、一時間は寝てたわよ」
「そんなに?」

引き留めてしまったようで申し訳ない。
そこで、アリスがアレクの前に立つ。

「お兄さん、過去視が発動したんでしょ。どんなことを視たの?」
「ユニコーンと天使のこと」
「私達のこと、何か言ってた?」

私達、ということは、悪魔のことを言及しているのだろう。
アレクは首を横に振る。

「別に何も。何かと戦ってる様子もなかったし」
「そっか。じゃあ、かなり前の話なのかも」

悪魔と天使は、昔争っていた過去がある。
詳しいことはアレクは知らないが、これこそが二者の因縁を生んでいた。

「お兄さん、立てる? もう元気?」
「あ、うん。全然大丈夫」
「なら進もう。長居すると危ないかも」

アリスの言葉をきっかけに、アレク達は再び進み出す。
歩いている間、アレクは考えを巡らせていた。

(過去視を使う度に倒れてたら、ダメだよなぁ……クリアが言うには、使いまくるしかないってことだけど)

帰ったら過去視の修行を本格的に取り入れよう。
そう思った矢先に、リリスの声が脳内へと響く。

『仕組みを解いたのですね! あの村の少年を連れてきてよかったじゃないですの』
「リリス!」

アリスが声音を鋭くした。
少年は持っている槍を握りしめ、強く空中を睨む。

「お前、どこいるんだよ……今すぐ殺してやるっ!」
『まあ物騒な。酷いですわね、そんなことをおっしゃるのは』
「酷いも何も、村をめちゃくちゃにしやがって!」

ひたすらに噛みついてくる少年をいなすように、リリスは穏やかに言い放つ。

『そんなに憎いならこちらに来なさいな。次が最後の扉ですの』

ここでリリスの声が途絶える。
気づけば、扉が目の前に鎮座していた。

「……」

少年が扉に手をかける。
止める者はいない。
ギギ、と軋むような音と共に、ゆっくりと扉が開いた。

「!」

扉の先には、椅子に深く腰掛ける女悪魔がいた。
緩くねじ巻いたツノに、大きな蝙蝠のような翼。
妖艶に微笑む姿は悪魔であることを体現していた。
少年がリリスに飛び掛かる。

「悪魔め! みんなの……父ちゃんの仇!」

少年は叫ぶ。
リリスは少年を槍をあっさりと受け止め、そのまま少年ごと地面へ投げ飛ばした。

「ぐあっ」
「あっ!」

シオンが真っ先に駆け寄り、少年を支えた。
少年は悔しげにリリスを見上げた。

「役不足ですわね……人間」
「ちくしょう……」
「ねえ、天使さん。こちらに興味がありまして?」

リリスが差し出した、淡い黄色の玉。
アレクはその玉を見て、心配と安堵の気持ちが溢れ出す。

「その子は僕の召喚獣なんだ! 返して!」
「いいですわよ。私に……というか、この子達に勝てたらですけど」

パチンとリリスが指を鳴らす。
合図と共に、天井から豚のような魔物が多数降ってくる。

「どうか頑張ってくださいな。面白いものをお見せくださいませ」
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。