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2.魔法契約の裏側編
4-2.不器用な魔法執行官と襲撃事件の現状編
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「任せてくださいよエンヴェレジオさん、俺もそこそこ場数踏んでるんで!」
「返事が軽すぎて、なんか信用ならねぇんだよなぁ。お前」
エンヴェレジオさんは再度品定めするように、ヴェセルの姿を眺めている。
それを見ていると、この世界の下級魔法使いも大変だと考えさせられた。
やはり姿が変異していると、魔力なしとは別方向に疑われることも多い。
「たまに魔法を暴発させてるけど、魔力量自体はかなり多いよね。ヴェセル」
「そうだなー。金掛かるし、ちゃんと調べてねぇけど!」
ヴェセルはあっけらかんとしているが、これは別に珍しいことじゃない。
貴族であれば魔力検査は必須だが、高額なので平民以下ではほとんど行われない。
まして下級魔法使いであれば、その費用を手にすることも難しいのが現実だ。
「手続きで金銭補助受けられるから、フィルトゥラムのとこでちゃんと測定し「エンさん、それより面会終了して。本当は絶対安静なんだからね」」
不意に艶やかな声がむさくるしい詰め所に響くと、入り口が急にざわつき始めた。
俺たちが発生源に目を向けると、白い医療服を纏った薬師が歩いてくる。
「フィルトゥラム、そんなにエンヴェレジオさん容体悪いの? 今は意識あるけど」
「いや大したことねー「俺は魅了魔法で、寝台に縛り付けてもいいんだよ」」
エンヴェレジオさんが否定すると、フィルトゥラムがそっと彼の膝に乗り上げる。
そして抑えていた魅了魔力を放出し始め、辺りに甘い魔力が漂い始めた。
「おまっ、オルディール君の前で! なにやってんだ!」
「彼、もうすぐ成人じゃん。それに一夜くらい別にいいでしょ」
自分より細い相手を乱暴には退かせず、エンヴェレジオさんは露骨に慌て始める。
その間にもフィルトゥラムはたおやかな指で、彼の首をくすぐっていた。
「軽々しく言うなって、そういうこと! だから評判悪いんだよ、お前!」
「硬いんだから、もう。とにかく、そろそろ寝台に戻ってね」
とどめにエンヴェレジオさんの頬にキスをして、フィルトゥラムは去っていく。
けれど残された甘い香りと出来事に、誰も落ち着くことができない。
「なんか、すげー色っぽい人っスね。お近づきになりたい……」
「下手に手を出したら殺すからな、ヴェセル」
フィルトゥラムの後ろ姿を見送るヴェセルの目は、分かりやすく熱を含んでいる。
だがそれを断ち切るように、エンヴェレジオさんが彼を睨みつけていた。
「エンヴェレジオさん、随分殺気立ってるね。あれは今に始まった事じゃないのに」
「アイツ、それで損してるからな。看病してる時は可愛いんだけど」
そう言った途端にエンヴェレジオさんの目元が緩み、声が柔らかくなる。
しかし自分でも変化に気づいたようで、慌てて言い訳をし始めた。
「ねえ、それ「いや、なんでもない! 俺は事件現場の入室許可を出してくる!」」
俺の言葉を遮って、今度はエンヴェレジオさんは詰所から出て行ってしまった。
でもあの様子なら、彼も大人だし自分の心情を自覚してるだろう。
(にしても、エンヴェレジオさんがフィルトゥラムを)
まさか生真面目な魔法執行官が、魔性の薬師を好いているとは思わなかった。
二人にお世話になっている身としては、ぜひ恋を成就させてほしいけれど。
(でも既に好敵手の出現で、どう転ぶか分からなくなっているんだよなぁ)
感情表現豊かな獣人記者は尻尾を振りながら、もういない薬師の姿を追っている。
もしかしたら俺は、とんでもない火種を持ち込んでしまったのかもしれなかった。
「返事が軽すぎて、なんか信用ならねぇんだよなぁ。お前」
エンヴェレジオさんは再度品定めするように、ヴェセルの姿を眺めている。
それを見ていると、この世界の下級魔法使いも大変だと考えさせられた。
やはり姿が変異していると、魔力なしとは別方向に疑われることも多い。
「たまに魔法を暴発させてるけど、魔力量自体はかなり多いよね。ヴェセル」
「そうだなー。金掛かるし、ちゃんと調べてねぇけど!」
ヴェセルはあっけらかんとしているが、これは別に珍しいことじゃない。
貴族であれば魔力検査は必須だが、高額なので平民以下ではほとんど行われない。
まして下級魔法使いであれば、その費用を手にすることも難しいのが現実だ。
「手続きで金銭補助受けられるから、フィルトゥラムのとこでちゃんと測定し「エンさん、それより面会終了して。本当は絶対安静なんだからね」」
不意に艶やかな声がむさくるしい詰め所に響くと、入り口が急にざわつき始めた。
俺たちが発生源に目を向けると、白い医療服を纏った薬師が歩いてくる。
「フィルトゥラム、そんなにエンヴェレジオさん容体悪いの? 今は意識あるけど」
「いや大したことねー「俺は魅了魔法で、寝台に縛り付けてもいいんだよ」」
エンヴェレジオさんが否定すると、フィルトゥラムがそっと彼の膝に乗り上げる。
そして抑えていた魅了魔力を放出し始め、辺りに甘い魔力が漂い始めた。
「おまっ、オルディール君の前で! なにやってんだ!」
「彼、もうすぐ成人じゃん。それに一夜くらい別にいいでしょ」
自分より細い相手を乱暴には退かせず、エンヴェレジオさんは露骨に慌て始める。
その間にもフィルトゥラムはたおやかな指で、彼の首をくすぐっていた。
「軽々しく言うなって、そういうこと! だから評判悪いんだよ、お前!」
「硬いんだから、もう。とにかく、そろそろ寝台に戻ってね」
とどめにエンヴェレジオさんの頬にキスをして、フィルトゥラムは去っていく。
けれど残された甘い香りと出来事に、誰も落ち着くことができない。
「なんか、すげー色っぽい人っスね。お近づきになりたい……」
「下手に手を出したら殺すからな、ヴェセル」
フィルトゥラムの後ろ姿を見送るヴェセルの目は、分かりやすく熱を含んでいる。
だがそれを断ち切るように、エンヴェレジオさんが彼を睨みつけていた。
「エンヴェレジオさん、随分殺気立ってるね。あれは今に始まった事じゃないのに」
「アイツ、それで損してるからな。看病してる時は可愛いんだけど」
そう言った途端にエンヴェレジオさんの目元が緩み、声が柔らかくなる。
しかし自分でも変化に気づいたようで、慌てて言い訳をし始めた。
「ねえ、それ「いや、なんでもない! 俺は事件現場の入室許可を出してくる!」」
俺の言葉を遮って、今度はエンヴェレジオさんは詰所から出て行ってしまった。
でもあの様子なら、彼も大人だし自分の心情を自覚してるだろう。
(にしても、エンヴェレジオさんがフィルトゥラムを)
まさか生真面目な魔法執行官が、魔性の薬師を好いているとは思わなかった。
二人にお世話になっている身としては、ぜひ恋を成就させてほしいけれど。
(でも既に好敵手の出現で、どう転ぶか分からなくなっているんだよなぁ)
感情表現豊かな獣人記者は尻尾を振りながら、もういない薬師の姿を追っている。
もしかしたら俺は、とんでもない火種を持ち込んでしまったのかもしれなかった。
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