36 / 1,309
魔術学院2年目
035 星歴550年 赤の月 10日 裏情報
しおりを挟む
親って言うのは実は色んな事が見えているようだ。
内緒なつもりでえげつないことをやっていたら、それも評価の一部になっているって子供たちは気がついているんだろうか?
「シェフィート家の次男ってどんな人間だと長は思っています?」
久しぶりに盗賊ギルドに顔を出して長に聞いた。
「ほほう、三男に助けを請われたか」
もう知ってやんの。
「三男は魔術師になるからライバル脱落ということで、ここで長男を助けても次男は許してくれると思っているそうです。
長の読みはどんな感じですか?敵に回したら後々後悔するようなタイプなら『無理だった』で済まそうと思っているんですが」
朝からワインの入ったグラスを手に、長が机を離れてソファに来た。
「まぁ・・・ある程度執拗な相手ではあるが、確かに三男に対してはそれなりに甘いかもな」
「シェフィート家の将来的な跡取りとしては、長男と次男とどっちの方が望ましいと思っています?」
ゆっくりとワインを一口味わってから長が答えた。
「長男がずっと次男を抑えられるかどうかは分からないが・・・。
次男が跡取りにならない方がいいかな。あれがシェフィート家をついだら、盗賊ギルドにとって仕事が増えるかもしれないが、暗殺ギルドの仕事も増えそうだからな。
そういう人間が国を代表する大商家のトップに立つのは長い目で見ればマイナスだ」
「社印を盗んで足を引っ張るだけじゃなくって暗裏まで使うタイプなんですか、その次男?」
「徹底的に味方と敵とを分けて考えるタイプだ。味方・・・というかシェフィート家の者に対しては足を引っ張る程度だが、敵となれば暗殺でも恐喝でも誘拐でもやって来ている。まあ今までのところはそういう扱いを受けても当然な相手にしかやっていないが」
おいおい。
既にやっているんかよ。
刃には刃をというタイプは、そのうち血を流させることに慣れてくることが多いからなぁ。
一応味方との争いは足を引っ張る程度のレベルなら、ここはアレクの頼み通り長男を助けておく方が良さそうだな。
「シェフィート家の三男から依頼を伝えます。社印を奪回して欲しいそうです」
ワインをもう一口味わいながら長が考えた。
「では・・・盗賊ギルドは幽霊にその依頼を振り分けよう。受けるか?」
そう来るか、やはり。
「あんまり時間をかけて探す暇、無いんですが」
にやりと長が笑った。
「場所はウェスト・ヴィストにある別邸だ。あの。社印》が無くなった時期に次男があそこに行っている。
これがシェフィート家西ルート。社印の印だ」
正式な。社印を押した立体像つき蝋印の押してある書類を長が持っていた。
これがあればその波動と共鳴する物体を探せばいいので。社印探しも楽になる。
「なんだ。既にアレクの親父からも頼まれていたんですか」
一昨日盗まれた。社印の正式印なんて、そう簡単に手には入らない。
この時点で長に渡せる人間なんて、アレクの親父か長男もしくは盗んだ本人ぐらいのもんだ。
「シェフィート家ぐらい大きな商家となると、何かと裏とも繋がりが出来るからな。
親父さんの依頼は、『盗賊ギルドに頼みに来るだけの覚悟を見せたら助けてやってくれ』だとさ」
「シェフィートの家長は長男が来ると思っていたんですか、それともアレクが俺経由で来ると想定していた?」
長が肩をすくめた。
「さあね。どちらも有りだと思っていたんじゃないか?奇麗事ばかり言っていてプロに助けを求める覚悟が無いんだったら今回は次男の勝ちというところなんだろうな」
長男が盗賊ギルドの手を取る覚悟が無くても相談役の三男がそれを出来れば合格というところか。
次男にはそんな信頼する相手がいるんかね?
いないとしたら可哀想という気がするが、それもマイナスだな。
「では、俺の取り分は5分というところで、いいですか?」
「休業中なんだ。6分出すよ」
おやまぁ。長が親切だ。
何か怖いかも。
内緒なつもりでえげつないことをやっていたら、それも評価の一部になっているって子供たちは気がついているんだろうか?
「シェフィート家の次男ってどんな人間だと長は思っています?」
久しぶりに盗賊ギルドに顔を出して長に聞いた。
「ほほう、三男に助けを請われたか」
もう知ってやんの。
「三男は魔術師になるからライバル脱落ということで、ここで長男を助けても次男は許してくれると思っているそうです。
長の読みはどんな感じですか?敵に回したら後々後悔するようなタイプなら『無理だった』で済まそうと思っているんですが」
朝からワインの入ったグラスを手に、長が机を離れてソファに来た。
「まぁ・・・ある程度執拗な相手ではあるが、確かに三男に対してはそれなりに甘いかもな」
「シェフィート家の将来的な跡取りとしては、長男と次男とどっちの方が望ましいと思っています?」
ゆっくりとワインを一口味わってから長が答えた。
「長男がずっと次男を抑えられるかどうかは分からないが・・・。
次男が跡取りにならない方がいいかな。あれがシェフィート家をついだら、盗賊ギルドにとって仕事が増えるかもしれないが、暗殺ギルドの仕事も増えそうだからな。
そういう人間が国を代表する大商家のトップに立つのは長い目で見ればマイナスだ」
「社印を盗んで足を引っ張るだけじゃなくって暗裏まで使うタイプなんですか、その次男?」
「徹底的に味方と敵とを分けて考えるタイプだ。味方・・・というかシェフィート家の者に対しては足を引っ張る程度だが、敵となれば暗殺でも恐喝でも誘拐でもやって来ている。まあ今までのところはそういう扱いを受けても当然な相手にしかやっていないが」
おいおい。
既にやっているんかよ。
刃には刃をというタイプは、そのうち血を流させることに慣れてくることが多いからなぁ。
一応味方との争いは足を引っ張る程度のレベルなら、ここはアレクの頼み通り長男を助けておく方が良さそうだな。
「シェフィート家の三男から依頼を伝えます。社印を奪回して欲しいそうです」
ワインをもう一口味わいながら長が考えた。
「では・・・盗賊ギルドは幽霊にその依頼を振り分けよう。受けるか?」
そう来るか、やはり。
「あんまり時間をかけて探す暇、無いんですが」
にやりと長が笑った。
「場所はウェスト・ヴィストにある別邸だ。あの。社印》が無くなった時期に次男があそこに行っている。
これがシェフィート家西ルート。社印の印だ」
正式な。社印を押した立体像つき蝋印の押してある書類を長が持っていた。
これがあればその波動と共鳴する物体を探せばいいので。社印探しも楽になる。
「なんだ。既にアレクの親父からも頼まれていたんですか」
一昨日盗まれた。社印の正式印なんて、そう簡単に手には入らない。
この時点で長に渡せる人間なんて、アレクの親父か長男もしくは盗んだ本人ぐらいのもんだ。
「シェフィート家ぐらい大きな商家となると、何かと裏とも繋がりが出来るからな。
親父さんの依頼は、『盗賊ギルドに頼みに来るだけの覚悟を見せたら助けてやってくれ』だとさ」
「シェフィートの家長は長男が来ると思っていたんですか、それともアレクが俺経由で来ると想定していた?」
長が肩をすくめた。
「さあね。どちらも有りだと思っていたんじゃないか?奇麗事ばかり言っていてプロに助けを求める覚悟が無いんだったら今回は次男の勝ちというところなんだろうな」
長男が盗賊ギルドの手を取る覚悟が無くても相談役の三男がそれを出来れば合格というところか。
次男にはそんな信頼する相手がいるんかね?
いないとしたら可哀想という気がするが、それもマイナスだな。
「では、俺の取り分は5分というところで、いいですか?」
「休業中なんだ。6分出すよ」
おやまぁ。長が親切だ。
何か怖いかも。
1
あなたにおすすめの小説
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【毒僧】毒漬け僧侶の俺が出会ったのは最後の精霊術士でした
朝月なつき
ファンタジー
※完結済み※
落ち着かないのでやっぱり旧タイトルに戻しました。
■ ■ ■
毒の森に住み、日銭を稼ぐだけの根無し草の男。
男は気付けば“毒漬け僧侶”と通り名をつけられていた。
ある日に出会ったのは、故郷の復讐心を燃やす少女・ミリアだった。
男は精霊術士だと名乗るミリアを初めは疑いの目で見ていたが、日課を手伝われ、渋々面倒を見ることに。
接するうちに熱に触れるように、次第に心惹かれていく。
ミリアの力を狙う組織に立ち向かうため、男は戦う力を手にし決意する。
たとえこの身が滅びようとも、必ずミリアを救い出す――。
孤独な男が大切な少女を救うために立ち上がる、バトルダークファンタジー。
■ ■ ■
一章までの完結作品を長編化したものになります。
死、残酷描写あり。
↓pixivに登場人物の立ち絵、舞台裏ギャグ漫画あり。
本編破壊のすっごくギャグ&がっつりネタバレなのでご注意…。
https://www.pixiv.net/users/656961
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる