シーフな魔術師

極楽とんぼ

文字の大きさ
98 / 1,309
魔術学院3年目

097 星暦551年 紺の月 17日 追い剥ぎ注意

しおりを挟む
商船で見つけた古貨幣は引き揚げ屋サルベージャー協会に持っていったらそれなりの値段で売れた。
本当は売らないで記念に持っていても良かったのだが・・・鑑定を頼んだら相手がかなり興奮しちゃって売らないとは言えない雰囲気になってしまった。
その後はどこであれを入手したのかとひたすら煩く聞かれたし。

思っていたよりも昔の船だったようだ。
最近は目新しい引き揚げ屋サルベージャーも無く、協会としては新しい船が発見されたかと興奮した訳だ。
だけどねぇ。
普通の人には取りに行けないところにあるから、喜んでもしょうがないがないんだけど。
説明するのも面倒だったので適当に誤魔化して出てきたら・・・。

なんか怪しげな連中に後をつけられた。
宿までつけられたので、寝る際にはそれなりに念入りに結界を張ったが寝込みは襲われなかった。
代わりに今朝もつけられている。

引き揚げ屋サルベージャーって漁師の副業なんじゃなかったのか。海賊とか強盗の副業だとは聞いていなかったぞ。

「昨日、引き揚げ屋サルベージャー協会の後からつけてきた連中がまだ付いてきているんだが・・・俺たちが魔術師だと分かっても追い剥ぎしようとするかな?」

これが下町で、それなりに価値があるモノを持っていると思われたら、ガキの魔術師なんか当然襲われる。
幾ら魔術師に色んな能力があるとは言っても、経験の無いガキなんて接近戦に持ち込めばあっと言うまに頭を殴って終わりだ。
殺したら後々面倒だが、後がつかないように強盗するぐらいのことは当然行われる。

問題は、港町のダッチャスも下町と同じぐらい危険かというところだ。

「協会からつけてきているのか?」
アレクが顔をしかめた。

「昨日襲ってくるかと思ってそれなりに念入りに結界と罠を張っていたんだけどね。どうやら俺たちが何かを見つけたらそれを頂戴しようと思っているんじゃないか?」

「しまったね。距離が短くてもアレクかウチの家紋入りの馬車を使うべきだった」
シャルロがため息をつく。

「つまり、貴族や大商人を襲うことは無いが魔術師の卵ならターゲットになるんだ?」

アレクが頷く。
「これで超一流の宿にでも泊っていたら金持ちの道楽として警戒したかもしれないんだがね。なまじ実用的な場所に泊ってしまったのも仇になったかもしれないな」

「じゃあ、今日は探索が終わったら街の中心部の傍から出ることにしよう。変な注目を集めるかもしれないが追い剥ぎに合うよりはましだろう。明日はアレクの馬車を使えば大分リスクは下がるんだろ?」

「ああ」

ここが沖合の探索ポイントから宿への一番短距離ルートなんだが、しょうがない。
無駄な戦闘に体力・魔力を削ぐのはバカらしいし、乱闘騒ぎで逮捕されても困る。

◆◆◆ 


時間がもったいなかったのでズルをして昨日の船のところまで一気に清早に連れて行って貰い、探索を始めた。

昨日の船の経験から、実は船は俺たちが無意識に考えていたよりも大きいはずということで、『異物』ではなく単なる『地形』かもしれないものでも出っ張っているモノには全て水打ヒタンで表面を確認することにした。

一々出っ張っている場所全てに術をかけ、砂埃モドキが収まるのを待つ訳だから時間がかかってしょうがない。

でも、大きな船を見つけようと思ったらそのくらいはしかたがない。
・・・見つかればいいんだけどね。

昼食までにまたもう一つ小さめの船を見つけたがやはりあまり得るものは無かった。
小さい船は短距離の食料関係の輸送に使われているみたいだ。

ま、あまり得るものは無かったもののそれなりに面白いからいいんだけどね。

昼食を終わらせ、一度海面まで上がって現在地を確認して更に北西へ進む。
気分的にはそこそこ進み、いい加減その方角を諦めて違う方向へ向かおうかと相談し始めた時。
岩陰と思っていたモノに当てた水打ヒタンの下から船首像が出てきた。


しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...