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卒業後
232 星暦553年 紺の月 1日 船探し(15)
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「やあ、おはよう」
何食わぬ顔をして海底探索用に使っているボートの傍で待っていたヴァナールに、シャルロが声を掛けた。
昨日は色々話し合った後は魔道具を運び出し、磁器と保険契約の資料との突き合わせをやり始めた辺りで時間切れになってこちらに帰ってきた。
次の休養日までどの位やることが残っているのか。
俺たちも色々やりたいんだけど、10日も後になったらそれまでやることが残っているとはあまり思えないのだが・・・。
いい加減、アドリアーナ号を見つけたいな。
そうすりゃ、この作業は終わりで俺たちはさっさとカラフォラ号の作業に戻れる。
「おはよう。昨日はどうだった?王都まで行ったのかい?」
ヴァナールが普通に返事を返してきた。
「ええ。
あの沈没船は名前がカラフォラ号だと言うことが分かったのですが、何と昨日の朝に王都へ運び込もうと行ったら私たちが見つけた船を偶々同じ時期に見つけたと主張する引き揚げ屋達がいてね。
まあ、ウィルが先手を打っていてくれたお陰で何も盗まれなかったが、驚いたよ」
アレクも何気なく返事をしている。
「シェフィート商会のセビウス氏が沈没船好きでカラフォラ号の貨物を調べたり売り払ったりするのに色々手を貸してくれているんだけど、偶然引き揚げ屋達が俺たちの発見した直後に船を見つけたらしいと言うことを言ったら、友人のダルム商会が関係している案件でそんな情報管理に問題が起きるなんて、残念なことだと言っていたよ」
お。
ヴァナールの顔が蒼くなったぞ。
「シェフィート商会のセビウス氏・・・?」
「ああ。兄はこういった古い船や遺跡が大好きなようでね。
冷淡そうでロマンだなんて柄ではないので意外に思われることが多いのだが」
アレクが何気なく答える。
おいおい。
相手が知りたいのはセビウス氏が遺跡好きなことじゃなくって、自分がやったことが伝わってしまった事なんじゃ無いのかい?
しかもアレクの兄貴だと聞いて顔が更に蒼くなったぞ。
・・・と言うか、アレクがシェフィート商会の人間だと気付いていなかったのか?
「セビウス氏がアレクのお兄さんなのかい・・・?」
シャルロが首をかしげながらボートに乗って答える。
「最初に会ったときにアレク・シェフィートって自己紹介したよね?
僕みたいに爵位と関係ない一族の人間が多い姓ならまだしも、シェフィート家ってあまり同じ名前の一族が沢山居るわけじゃないよね?」
おやまあ。
爵位という言葉まで聞いて、航海士殿の顔色は蒼を通り越して殆ど透き通った白になってきたぞ。
幽霊みたいだ。
このまま海底に捨ててきても顔色変わらなかったりして。
ま、そんなことはしないけどさ。
「今回は警告だけで何もしなかったけど、次回からは警告無しに俺たちが見つけた沈没船に近づいた人間は海底に埋めて殺すよう手配しているから、今後は同じような問題が起きないように期待したいところだな。
さて、いい加減アドリアーナ号を見つけてこの契約を終わらせちまいたいから、さっさと出発しようぜ」
「ああ、勿論だ」
半ば呆然としながら座ったヴァナールを見て小さく笑いながら、清早に頼んでまた一昨日まで探索していた地点へとボートを動かす。
これだけ脅しておけば、こいつもこれ以上情報を売るなんて馬鹿なことはしないだろう。
幾ら物が盗まれなくても、清早に人を殺すよう頼むのは気分が悪い。
どちらにせよ、さっさとアドリアーナ号を見つけたいなぁ。
もう日当なんてどうでも良いから、さっさと終わらせてカラフォラ号に集中したいぜ。
何食わぬ顔をして海底探索用に使っているボートの傍で待っていたヴァナールに、シャルロが声を掛けた。
昨日は色々話し合った後は魔道具を運び出し、磁器と保険契約の資料との突き合わせをやり始めた辺りで時間切れになってこちらに帰ってきた。
次の休養日までどの位やることが残っているのか。
俺たちも色々やりたいんだけど、10日も後になったらそれまでやることが残っているとはあまり思えないのだが・・・。
いい加減、アドリアーナ号を見つけたいな。
そうすりゃ、この作業は終わりで俺たちはさっさとカラフォラ号の作業に戻れる。
「おはよう。昨日はどうだった?王都まで行ったのかい?」
ヴァナールが普通に返事を返してきた。
「ええ。
あの沈没船は名前がカラフォラ号だと言うことが分かったのですが、何と昨日の朝に王都へ運び込もうと行ったら私たちが見つけた船を偶々同じ時期に見つけたと主張する引き揚げ屋達がいてね。
まあ、ウィルが先手を打っていてくれたお陰で何も盗まれなかったが、驚いたよ」
アレクも何気なく返事をしている。
「シェフィート商会のセビウス氏が沈没船好きでカラフォラ号の貨物を調べたり売り払ったりするのに色々手を貸してくれているんだけど、偶然引き揚げ屋達が俺たちの発見した直後に船を見つけたらしいと言うことを言ったら、友人のダルム商会が関係している案件でそんな情報管理に問題が起きるなんて、残念なことだと言っていたよ」
お。
ヴァナールの顔が蒼くなったぞ。
「シェフィート商会のセビウス氏・・・?」
「ああ。兄はこういった古い船や遺跡が大好きなようでね。
冷淡そうでロマンだなんて柄ではないので意外に思われることが多いのだが」
アレクが何気なく答える。
おいおい。
相手が知りたいのはセビウス氏が遺跡好きなことじゃなくって、自分がやったことが伝わってしまった事なんじゃ無いのかい?
しかもアレクの兄貴だと聞いて顔が更に蒼くなったぞ。
・・・と言うか、アレクがシェフィート商会の人間だと気付いていなかったのか?
「セビウス氏がアレクのお兄さんなのかい・・・?」
シャルロが首をかしげながらボートに乗って答える。
「最初に会ったときにアレク・シェフィートって自己紹介したよね?
僕みたいに爵位と関係ない一族の人間が多い姓ならまだしも、シェフィート家ってあまり同じ名前の一族が沢山居るわけじゃないよね?」
おやまあ。
爵位という言葉まで聞いて、航海士殿の顔色は蒼を通り越して殆ど透き通った白になってきたぞ。
幽霊みたいだ。
このまま海底に捨ててきても顔色変わらなかったりして。
ま、そんなことはしないけどさ。
「今回は警告だけで何もしなかったけど、次回からは警告無しに俺たちが見つけた沈没船に近づいた人間は海底に埋めて殺すよう手配しているから、今後は同じような問題が起きないように期待したいところだな。
さて、いい加減アドリアーナ号を見つけてこの契約を終わらせちまいたいから、さっさと出発しようぜ」
「ああ、勿論だ」
半ば呆然としながら座ったヴァナールを見て小さく笑いながら、清早に頼んでまた一昨日まで探索していた地点へとボートを動かす。
これだけ脅しておけば、こいつもこれ以上情報を売るなんて馬鹿なことはしないだろう。
幾ら物が盗まれなくても、清早に人を殺すよう頼むのは気分が悪い。
どちらにせよ、さっさとアドリアーナ号を見つけたいなぁ。
もう日当なんてどうでも良いから、さっさと終わらせてカラフォラ号に集中したいぜ。
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