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卒業後
1045 星暦558年 紫の月 4日 音にも色々あり(8)
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「素晴らしい!!!」
何度も扉を開け閉めして練習部屋の中と外で音を確認していた男《キルス》がアレクの腕を握ってブンブン振りまわしながら言った。
数日かけて箱型に上下四面全部を囲う形で音を反射させる結界を二重に展開させる魔具を造り上げた俺たちは、自分達で出来る試用はやり終えたのでアレクの知り合いの楽団に試用を頼みに来た。
ちなみに、工房でやっていた時は天井と四面だけで良いかと思った結界だが、2階の部屋を使ってみた際に一階に床(1階から見たら天井)を通してそれなりに音が響いて煩いとパディン夫人に指摘された為、箱型に六面全部展開することにしたのだ。
天井と床に関しては完全な防音結界を張っても良いんじゃないかとも思ったのだが、魔具の一部に防音結界を使っていたらちゃんと魔術回路を知っている人間にとってはそれを他の部分に使う様に改造するのは難しくないので、諦めて全部同じ仕様にした。
と言うか、魔術回路を改造できるんだったら最初から完全防音の魔具を造ってしまえばいいのだが、防音結界の魔術回路を人目につく製品の一部として世に出す事が販売制限に引っ掛かる原因になるとアレクが指摘したので、ヤバそうな魔術回路は最初から使わないで音反射の結界、しかも精度が低く完全には音を反射しない程度の魔術回路にまとめ上げたのだ。
何度か試行錯誤し、俺たち的にはこれ以上の物は作るのは難しいのではないかと思うほぼ完成品なつもりなのだが、自分達で適当にオモチャのトランペットや近所の赤ちゃんだけでテストするのでは商業的に売り出した際に失敗しかねない。
と言うことで、楽器をガンガン鳴らす楽団の練習に使わせてみているのだ。
扉を開けるとそれなりに音が聞こえてくるし、閉めていても微かに楽器の音が聞こえるので完全防音ではないが、これだったら街中の日中だったら練習をしていても苦情は来ないくらいかな?そして隣り合った部屋で別の曲の練習をしていても、それ程気にならないのではないだろうか。
雑音っぽいざわざわした音はするので夜中の寝静まった住宅街では流石に煩い楽器の練習はしない方が良いかも知れないが・・・もしかしたら子守歌代わりになるかも?
少なくとも近所の夫婦喧嘩の怒鳴り声よりは落ち着く。
「高い音や低い音が集中的に続く曲や打楽器が活躍する曲なんかも試してみて、変に反響したり音が抜ける音域が無いか、確認してくれ。
あと、人の歌声とかでも高い声で歌っても大丈夫なのかも」
アレクがキルスに頼んだ。
そうなんだよなぁ。
女性の高いキンキン声って響くから。
ヒステリックに大声で怒鳴る中年ババアの声なんかはマジで壁を越えて近所一帯に響き渡って頭を貫くような感じがする時があるが、流石にあれを再現してくれと頼むのは不味いので、高い声で歌う曲か何かを代わりに試してもらいたい。
まあ、大声で喧嘩をするようなそこらの一般庶民が防音用の魔具を買うような資金的余裕があるかどうかは怪しいが。
金がある人間は基本的に精神的余裕もあるから、そこまで怒鳴らないことが多いんだよなぁ。
もっとも、金っていくらあっても満足しない人間は多いから、魔具を買えるぐらい金があっても『足りない!!』とヒステリーを起こす人間もいるだろうが・・・そう言う人間は周囲に気を使って防音用の魔具を買おうなんて夢にも思わないか?
貴族とか豪商とかだったら喧嘩をしているのが周囲にバレるとみっともないってことで家族がこっそり買ってきて寝室とか応接間とかに何食わぬ顔で設置する可能性もゼロではないが。
この魔具を使った部屋で音を出すと、ちょっと雑音が流れる感じがするので知っている人間だったら気付くかも知れないが、周囲の迷惑を気にせずにがなり立てるような人間だったら気付かないかも?
「ああ、今度オペラがあるから、ソロのパートで悩んでいる新人の練習に丁度いい!!!
これを幾つ使わせてもらえるんだ??!!」
喜びに小躍りしながらキルスが言った。
練習場所の確保が大変だったのかなぁ・・・。
でも、楽団ってそれ程金持ちと言う印象が無いんだが、魔具をそうそう沢山買えるんかね?
今回は売り出す前の試用ってことで無料提供するけど。
まあ、一か所どこかの楽団に提供したら『素晴らしい!!』ってことが業界に流れて他の連中も買いたがるかも?
「取り敢えず10個程試作品を持ってきたから使ってみてくれ。
誓約魔術で情報漏洩をしないと約束しているんだから、誓約していない部外者に話を漏らしたり善意で貸し出すのもダメだからな?
テストが終わって売り出し始めたら契約を解除するから、業界仲間に売ったり貸し出したりするのも良いが」
アレクが釘をさす。
そっか、業界に素晴らしさを広めるのも誓約魔術が解除されてからになるな。
・・・契約解除前に善意でうっかり試作品を貸し出そうとして心臓発作とかを起こさないでくれよ??
何度も扉を開け閉めして練習部屋の中と外で音を確認していた男《キルス》がアレクの腕を握ってブンブン振りまわしながら言った。
数日かけて箱型に上下四面全部を囲う形で音を反射させる結界を二重に展開させる魔具を造り上げた俺たちは、自分達で出来る試用はやり終えたのでアレクの知り合いの楽団に試用を頼みに来た。
ちなみに、工房でやっていた時は天井と四面だけで良いかと思った結界だが、2階の部屋を使ってみた際に一階に床(1階から見たら天井)を通してそれなりに音が響いて煩いとパディン夫人に指摘された為、箱型に六面全部展開することにしたのだ。
天井と床に関しては完全な防音結界を張っても良いんじゃないかとも思ったのだが、魔具の一部に防音結界を使っていたらちゃんと魔術回路を知っている人間にとってはそれを他の部分に使う様に改造するのは難しくないので、諦めて全部同じ仕様にした。
と言うか、魔術回路を改造できるんだったら最初から完全防音の魔具を造ってしまえばいいのだが、防音結界の魔術回路を人目につく製品の一部として世に出す事が販売制限に引っ掛かる原因になるとアレクが指摘したので、ヤバそうな魔術回路は最初から使わないで音反射の結界、しかも精度が低く完全には音を反射しない程度の魔術回路にまとめ上げたのだ。
何度か試行錯誤し、俺たち的にはこれ以上の物は作るのは難しいのではないかと思うほぼ完成品なつもりなのだが、自分達で適当にオモチャのトランペットや近所の赤ちゃんだけでテストするのでは商業的に売り出した際に失敗しかねない。
と言うことで、楽器をガンガン鳴らす楽団の練習に使わせてみているのだ。
扉を開けるとそれなりに音が聞こえてくるし、閉めていても微かに楽器の音が聞こえるので完全防音ではないが、これだったら街中の日中だったら練習をしていても苦情は来ないくらいかな?そして隣り合った部屋で別の曲の練習をしていても、それ程気にならないのではないだろうか。
雑音っぽいざわざわした音はするので夜中の寝静まった住宅街では流石に煩い楽器の練習はしない方が良いかも知れないが・・・もしかしたら子守歌代わりになるかも?
少なくとも近所の夫婦喧嘩の怒鳴り声よりは落ち着く。
「高い音や低い音が集中的に続く曲や打楽器が活躍する曲なんかも試してみて、変に反響したり音が抜ける音域が無いか、確認してくれ。
あと、人の歌声とかでも高い声で歌っても大丈夫なのかも」
アレクがキルスに頼んだ。
そうなんだよなぁ。
女性の高いキンキン声って響くから。
ヒステリックに大声で怒鳴る中年ババアの声なんかはマジで壁を越えて近所一帯に響き渡って頭を貫くような感じがする時があるが、流石にあれを再現してくれと頼むのは不味いので、高い声で歌う曲か何かを代わりに試してもらいたい。
まあ、大声で喧嘩をするようなそこらの一般庶民が防音用の魔具を買うような資金的余裕があるかどうかは怪しいが。
金がある人間は基本的に精神的余裕もあるから、そこまで怒鳴らないことが多いんだよなぁ。
もっとも、金っていくらあっても満足しない人間は多いから、魔具を買えるぐらい金があっても『足りない!!』とヒステリーを起こす人間もいるだろうが・・・そう言う人間は周囲に気を使って防音用の魔具を買おうなんて夢にも思わないか?
貴族とか豪商とかだったら喧嘩をしているのが周囲にバレるとみっともないってことで家族がこっそり買ってきて寝室とか応接間とかに何食わぬ顔で設置する可能性もゼロではないが。
この魔具を使った部屋で音を出すと、ちょっと雑音が流れる感じがするので知っている人間だったら気付くかも知れないが、周囲の迷惑を気にせずにがなり立てるような人間だったら気付かないかも?
「ああ、今度オペラがあるから、ソロのパートで悩んでいる新人の練習に丁度いい!!!
これを幾つ使わせてもらえるんだ??!!」
喜びに小躍りしながらキルスが言った。
練習場所の確保が大変だったのかなぁ・・・。
でも、楽団ってそれ程金持ちと言う印象が無いんだが、魔具をそうそう沢山買えるんかね?
今回は売り出す前の試用ってことで無料提供するけど。
まあ、一か所どこかの楽団に提供したら『素晴らしい!!』ってことが業界に流れて他の連中も買いたがるかも?
「取り敢えず10個程試作品を持ってきたから使ってみてくれ。
誓約魔術で情報漏洩をしないと約束しているんだから、誓約していない部外者に話を漏らしたり善意で貸し出すのもダメだからな?
テストが終わって売り出し始めたら契約を解除するから、業界仲間に売ったり貸し出したりするのも良いが」
アレクが釘をさす。
そっか、業界に素晴らしさを広めるのも誓約魔術が解除されてからになるな。
・・・契約解除前に善意でうっかり試作品を貸し出そうとして心臓発作とかを起こさないでくれよ??
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