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卒業後
1053 星暦558年 紫の月 16日 音にも色々あり(16)
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今日は、会議室用の盗聴防止用魔具の実地テストを第三騎士団の本部でやる為に騎士団の拠点に連れ込まれた。
昨日はがっしりした体格だが穏やかそうな顔をしたおっさんが俺たちの工房に来て、『救助要請』の声を記録してくれたんだが・・・。
あの顔に似合わず、何やら妙に怖くて通る声だった。
こう、ピシッと背筋を伸ばして走り出しそうになる感じ。
学院長なんかも魔術学院でちょっとしたスピーチをする時とか、誰かを叱る時に威厳があって従わなきゃって思わせる何かがあったが、あれは魔力を声に混ぜているんじゃないかと俺は疑っている。
ついでに彼の火精霊と仲の良い(多分)風精霊たちが声を広げているのも見えたし。
が、この軍曹は全然魔力も精霊の助けもなく、やたらと声が通るんだよなぁ。不思議だ。
ある意味、キルスの楽団がオペラを上演する時に参加したら良いんじゃないかね?
それとも歌う時と怒鳴る時とでは声の出し方が違うのかな?
コツは同じなんじゃないかと思うが・・・。
もしも音痴だったら問題だから、歌わなくて良い劇団の方を勧めるべきかな?
まあ、それはともかく。
取り敢えず音を記録し直し、試作品に取り付けたので予定通りに第三騎士団に持って来たのだ。
ウォレン爺の方は事前に騎士団の方で会議室での内部襲撃の演習を遣る人間も手配しておいたらしいので、取り敢えず今は護衛すら部屋の中に入れられない程に機密度の高い問題を話し合っている間に裏切り者が動いたという想定で会議室の中でドタバタやっている・・・筈だ。
ほぼ何も聞こえてこないけど。
いや。
ちょっと何か椅子を蹴倒したような振動が伝わって来たか?
バタバタした音も微妙に聞こえる様な気もしないでもない・・・か?
耳を傾けて音に集中しようとしたところで、突然甲高い音がそこら中に響き渡った。
パッパラパッパ、パッパラパッパ、パッパラパッパー!!
『救助要請!救助要請!!』
パッパラパッパ、パッパラパッパ、パッパラパッパー!!
『救助要請!救助要請!!』
ドアの前に立っていた護衛役が慌てて抜剣しつつ振り返り、扉を開けて中に飛び込む。
周囲を見回したらあちこちから人が走ってくるのが見えた。
「・・・これって演習だって騎士団の人間には知らせているのかな?」
横に立って見物していたシャルロに尋ねる。
「一応、非常事態の連絡が外に出たら不味いから門兵の士官とか何人かには知らせてあるけど、残りには何も言ってないらしいよ~。
非常事態なんだから予告なんぞしちゃ本番の時の反応を確認できないだろって団長が言ったらしい」
シャルロが応じる。
「・・・かなり遠くからも人が走って来るな。
街中でやった場合は警備兵が駆けつけてくれて良いかも知れないが・・・話がかなり大きくなりそうだ」
アレクが少し眉を顰めながら廊下の窓から外を眺めた。
確かに、騎士団の敷地の端にある建物からも人が飛び出して走り回っている。
一部はこちらへ駆け込み、一部は門の方へ向かい、一部は別の建物の方へと向かっている。
「こういう時に何をすべきか、役割分担って決まっているんかね?」
それなりにバラバラな行動をしているようだが。
「ある程度は決まっておるし、残りは士官が状況を見極めて指示を出す必要がある。
今回の非常警報でどの程度早く各部署へ騎士たちや兵たちが到達したか、異常事態の報告がどんな感じだったか、色々と楽しみじゃの」
にやにや笑いながらウォレン爺が言った。
廊下を走ってきた騎士たちが大音響が溢れている部屋へ飛び込んでいく。
一人は騎士たちから分かれてウォレン爺の方へ掛け寄ってきた。
「ガズラート殿、何が起きたかご存じですか?!」
「ちょっとした暗殺騒動への対応を試すための演習じゃよ」
あっさりウォレン爺が答えた。
落ち着いて立っているウォレン爺と俺たちを見て何か察していたのか、ちょっと勢いが下がっていたものの剣を手に、廊下や扉を鋭い目で見まわしていた騎士ががくっと肩を落として剣を鞘に戻した。
「演習ですか・・・」
「うむ。
新しい盗聴防止用魔具の緊急事態用の道具を使った際にどのくらいの音が鳴るかを試す必要があったのでの。
ついでに皆がちゃんと素早く適切な行動をとるかも確認しようとシャーストン団長が言い出したんじゃよ」
ふぉっふぉっふぉと言った感じに笑いながらウォレン爺が言った。
非常事態が起きた時にちゃんと反応するかは確かに事前に言われていたら確認できないだろうけど、あの軍曹の怒鳴り声ってかなり心臓に悪いからなぁ・・・。
まあ、食事時じゃなくて良かったなってところだね。
魔具についてウォレン爺と寄ってきた騎士が話し合っている間に、トランペットと怒鳴り声の騒音が止まった。
延々と続いていた気がしたが、これで2ミルかぁ。
意外と長いようで短いな。
とは言え、走り回っている団員はまだまだあちこちに散らばっているが。
この後どうするんだろ?
昨日はがっしりした体格だが穏やかそうな顔をしたおっさんが俺たちの工房に来て、『救助要請』の声を記録してくれたんだが・・・。
あの顔に似合わず、何やら妙に怖くて通る声だった。
こう、ピシッと背筋を伸ばして走り出しそうになる感じ。
学院長なんかも魔術学院でちょっとしたスピーチをする時とか、誰かを叱る時に威厳があって従わなきゃって思わせる何かがあったが、あれは魔力を声に混ぜているんじゃないかと俺は疑っている。
ついでに彼の火精霊と仲の良い(多分)風精霊たちが声を広げているのも見えたし。
が、この軍曹は全然魔力も精霊の助けもなく、やたらと声が通るんだよなぁ。不思議だ。
ある意味、キルスの楽団がオペラを上演する時に参加したら良いんじゃないかね?
それとも歌う時と怒鳴る時とでは声の出し方が違うのかな?
コツは同じなんじゃないかと思うが・・・。
もしも音痴だったら問題だから、歌わなくて良い劇団の方を勧めるべきかな?
まあ、それはともかく。
取り敢えず音を記録し直し、試作品に取り付けたので予定通りに第三騎士団に持って来たのだ。
ウォレン爺の方は事前に騎士団の方で会議室での内部襲撃の演習を遣る人間も手配しておいたらしいので、取り敢えず今は護衛すら部屋の中に入れられない程に機密度の高い問題を話し合っている間に裏切り者が動いたという想定で会議室の中でドタバタやっている・・・筈だ。
ほぼ何も聞こえてこないけど。
いや。
ちょっと何か椅子を蹴倒したような振動が伝わって来たか?
バタバタした音も微妙に聞こえる様な気もしないでもない・・・か?
耳を傾けて音に集中しようとしたところで、突然甲高い音がそこら中に響き渡った。
パッパラパッパ、パッパラパッパ、パッパラパッパー!!
『救助要請!救助要請!!』
パッパラパッパ、パッパラパッパ、パッパラパッパー!!
『救助要請!救助要請!!』
ドアの前に立っていた護衛役が慌てて抜剣しつつ振り返り、扉を開けて中に飛び込む。
周囲を見回したらあちこちから人が走ってくるのが見えた。
「・・・これって演習だって騎士団の人間には知らせているのかな?」
横に立って見物していたシャルロに尋ねる。
「一応、非常事態の連絡が外に出たら不味いから門兵の士官とか何人かには知らせてあるけど、残りには何も言ってないらしいよ~。
非常事態なんだから予告なんぞしちゃ本番の時の反応を確認できないだろって団長が言ったらしい」
シャルロが応じる。
「・・・かなり遠くからも人が走って来るな。
街中でやった場合は警備兵が駆けつけてくれて良いかも知れないが・・・話がかなり大きくなりそうだ」
アレクが少し眉を顰めながら廊下の窓から外を眺めた。
確かに、騎士団の敷地の端にある建物からも人が飛び出して走り回っている。
一部はこちらへ駆け込み、一部は門の方へ向かい、一部は別の建物の方へと向かっている。
「こういう時に何をすべきか、役割分担って決まっているんかね?」
それなりにバラバラな行動をしているようだが。
「ある程度は決まっておるし、残りは士官が状況を見極めて指示を出す必要がある。
今回の非常警報でどの程度早く各部署へ騎士たちや兵たちが到達したか、異常事態の報告がどんな感じだったか、色々と楽しみじゃの」
にやにや笑いながらウォレン爺が言った。
廊下を走ってきた騎士たちが大音響が溢れている部屋へ飛び込んでいく。
一人は騎士たちから分かれてウォレン爺の方へ掛け寄ってきた。
「ガズラート殿、何が起きたかご存じですか?!」
「ちょっとした暗殺騒動への対応を試すための演習じゃよ」
あっさりウォレン爺が答えた。
落ち着いて立っているウォレン爺と俺たちを見て何か察していたのか、ちょっと勢いが下がっていたものの剣を手に、廊下や扉を鋭い目で見まわしていた騎士ががくっと肩を落として剣を鞘に戻した。
「演習ですか・・・」
「うむ。
新しい盗聴防止用魔具の緊急事態用の道具を使った際にどのくらいの音が鳴るかを試す必要があったのでの。
ついでに皆がちゃんと素早く適切な行動をとるかも確認しようとシャーストン団長が言い出したんじゃよ」
ふぉっふぉっふぉと言った感じに笑いながらウォレン爺が言った。
非常事態が起きた時にちゃんと反応するかは確かに事前に言われていたら確認できないだろうけど、あの軍曹の怒鳴り声ってかなり心臓に悪いからなぁ・・・。
まあ、食事時じゃなくて良かったなってところだね。
魔具についてウォレン爺と寄ってきた騎士が話し合っている間に、トランペットと怒鳴り声の騒音が止まった。
延々と続いていた気がしたが、これで2ミルかぁ。
意外と長いようで短いな。
とは言え、走り回っている団員はまだまだあちこちに散らばっているが。
この後どうするんだろ?
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