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卒業後
1106 星暦558年 紺の月 28日 創水の魔術回路(10)(第三者視点)
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>>>サイド:ホルザック・シェフィート (シェフィート家長男)
「行商や遠乗り中に水を水筒の中に抽出できる魔具なんて、どうかな?」
数日姿を見なかったと思ったら現れた弟《アレク》が、ファンが横についているちょっと変な水筒を手に持って私の執務室に現れた。
アレクが水筒を開けて逆さにし、中に水が入っていないのを示してから蓋を閉めて横のボタンを上に動かす。
何やらファンが動き始めたのを此方に向けてくれたが・・・今日はそこまで暑くはないぞ?
微風は気持ちが良いので止めないが。
とは言え。
「・・・なんだって水筒にファンが付いているんだ?」
見た目的にかなりちょっと不格好なんだが。
「水を周囲の空気から抽出する方が、純粋に魔力で創り出すよりもずっと効率的に抽水出来るんだ。
だけど、魔術と違って魔具だと有効範囲が限られているから空気の動きがないとやたら時間と魔力ががかかるんでね。
ファンで水を含んだ空気を動かすことで抽水機能の効率を上げている」
アレクはそう答えるとボタンを押し戻して蓋を開け、持ってきたコップに水を注いで私に渡してきた。
そっと舐めてみたところ、普通の水のようだ。
見た目は微妙だが、コップ半杯分の水をあっという間に集める能力は悪くない。
「使える使用回数に制限は?」
1日1回とか2回しか使えないのでは話にならない。
そんな非実用的な魔具をアレクが持ってくるとは思わないが、都合の良い誤解は危険だ。
「まだ完全にテストは終わっていないが、半日使いまくって小型魔石1個と言うところかな?
ただし、周囲が乾燥しているか湿気ているかで魔力消費量が変わるし、大きな集団で皆が一斉に使った場合は空気中の水分をお互いに奪い合う形になるせいで魔力消費量が増えて抽水速度も落ちる筈だ」
アレクが応じる。
ふむ。
行商や隊商の参加者が動いている最中に普通に喉を湿らす程度だったら問題ないだろうが、夕方の野営時や朝餉の準備や洗顔なんかが重なると問題になる可能性はあるということか。
「悪くなさそうだな。
ちなみに船上での使用は?」
真水抽出用魔具はグリム商会と利権を分け合っているが、今でも人気商品でそれなりに大きな売り上げを出している。
ここで新しい競合する魔具が出てきたらちょっと面倒かも知れない。
「触媒の値段込みでトントンぐらいかな?
水を抜いた後の塩を売るんだったら以前の真水抽出用魔具の方がちょっと儲かるかもと言ったところだと思う」
アレクが応じる。
ふむ。
色々な道具や触媒を既に買って在庫にしている商会や交易船も多いだろうから、無理にそっちに売り込む必要はないか?
そう考えると、必ずしも水源に行き着けないこともある行商人に売りつける方が喜ばれそうだ。
しかも荷物が少なくて済むから、それなりに大きな船倉がある船よりも、スペースを切り詰めて持って行く物を吟味に吟味を重ね、安全と売り上げを天秤に掛けねばならない行商人の方が有り難がるだろう。
軍事行動時なんかも、列を乱して勝手に井戸や川で水を飲む訳に行かないし、大人数での行動の場合は後から水場に来た人間はかき乱されて濁った水しかないという不快な思いをすることも多い。
が。
「軍部に取り上げられる可能性は?」
抽水と創水とどう違うのか分からないが、どちらにせよ軍部に特許権ごと買い上げられたら我々としては売りに出せない。
あったら便利そうな魔具ではあるのだが。
「大量に一気に水を取り出そうとすると余程湿気ているとか強風なのでもない限り、水分の奪い合いになって効率が下がるから攻撃魔術の補完用には向かないと思う。
ただ、それなりな人数での軍事行動で皆が一気に使おうとした際にどの程度問題が起きるかは不明なので、軍部への販売を考えるなら先に大人数での一斉試用を試してみてくれ」
アレクが言った。
なるほど。
隊商での野営時の問題が更に大きくなるのを想定するべきか。
「取り上げられる可能性が低そうなら、取り敢えず登録して製造を始めた上で大人数での使用を何通りか試してから軍部に売りつけるか検討するか」
軍部に販売できる方が売り上げは安定するが・・・シェフィート商会の行商部にも是非とも使わせたい。
水を持ち運ばなくて良くなれば、行商の効率がかなり上がる。
まあ、この魔具が壊れたせいで行商人が野垂れ死んだなんてことになったら大問題だから、気を付ける必要はあるが。
取り敢えず。
ちょっとこの見た目をなんとか出来ないか、母にでも相談かな。
「行商や遠乗り中に水を水筒の中に抽出できる魔具なんて、どうかな?」
数日姿を見なかったと思ったら現れた弟《アレク》が、ファンが横についているちょっと変な水筒を手に持って私の執務室に現れた。
アレクが水筒を開けて逆さにし、中に水が入っていないのを示してから蓋を閉めて横のボタンを上に動かす。
何やらファンが動き始めたのを此方に向けてくれたが・・・今日はそこまで暑くはないぞ?
微風は気持ちが良いので止めないが。
とは言え。
「・・・なんだって水筒にファンが付いているんだ?」
見た目的にかなりちょっと不格好なんだが。
「水を周囲の空気から抽出する方が、純粋に魔力で創り出すよりもずっと効率的に抽水出来るんだ。
だけど、魔術と違って魔具だと有効範囲が限られているから空気の動きがないとやたら時間と魔力ががかかるんでね。
ファンで水を含んだ空気を動かすことで抽水機能の効率を上げている」
アレクはそう答えるとボタンを押し戻して蓋を開け、持ってきたコップに水を注いで私に渡してきた。
そっと舐めてみたところ、普通の水のようだ。
見た目は微妙だが、コップ半杯分の水をあっという間に集める能力は悪くない。
「使える使用回数に制限は?」
1日1回とか2回しか使えないのでは話にならない。
そんな非実用的な魔具をアレクが持ってくるとは思わないが、都合の良い誤解は危険だ。
「まだ完全にテストは終わっていないが、半日使いまくって小型魔石1個と言うところかな?
ただし、周囲が乾燥しているか湿気ているかで魔力消費量が変わるし、大きな集団で皆が一斉に使った場合は空気中の水分をお互いに奪い合う形になるせいで魔力消費量が増えて抽水速度も落ちる筈だ」
アレクが応じる。
ふむ。
行商や隊商の参加者が動いている最中に普通に喉を湿らす程度だったら問題ないだろうが、夕方の野営時や朝餉の準備や洗顔なんかが重なると問題になる可能性はあるということか。
「悪くなさそうだな。
ちなみに船上での使用は?」
真水抽出用魔具はグリム商会と利権を分け合っているが、今でも人気商品でそれなりに大きな売り上げを出している。
ここで新しい競合する魔具が出てきたらちょっと面倒かも知れない。
「触媒の値段込みでトントンぐらいかな?
水を抜いた後の塩を売るんだったら以前の真水抽出用魔具の方がちょっと儲かるかもと言ったところだと思う」
アレクが応じる。
ふむ。
色々な道具や触媒を既に買って在庫にしている商会や交易船も多いだろうから、無理にそっちに売り込む必要はないか?
そう考えると、必ずしも水源に行き着けないこともある行商人に売りつける方が喜ばれそうだ。
しかも荷物が少なくて済むから、それなりに大きな船倉がある船よりも、スペースを切り詰めて持って行く物を吟味に吟味を重ね、安全と売り上げを天秤に掛けねばならない行商人の方が有り難がるだろう。
軍事行動時なんかも、列を乱して勝手に井戸や川で水を飲む訳に行かないし、大人数での行動の場合は後から水場に来た人間はかき乱されて濁った水しかないという不快な思いをすることも多い。
が。
「軍部に取り上げられる可能性は?」
抽水と創水とどう違うのか分からないが、どちらにせよ軍部に特許権ごと買い上げられたら我々としては売りに出せない。
あったら便利そうな魔具ではあるのだが。
「大量に一気に水を取り出そうとすると余程湿気ているとか強風なのでもない限り、水分の奪い合いになって効率が下がるから攻撃魔術の補完用には向かないと思う。
ただ、それなりな人数での軍事行動で皆が一気に使おうとした際にどの程度問題が起きるかは不明なので、軍部への販売を考えるなら先に大人数での一斉試用を試してみてくれ」
アレクが言った。
なるほど。
隊商での野営時の問題が更に大きくなるのを想定するべきか。
「取り上げられる可能性が低そうなら、取り敢えず登録して製造を始めた上で大人数での使用を何通りか試してから軍部に売りつけるか検討するか」
軍部に販売できる方が売り上げは安定するが・・・シェフィート商会の行商部にも是非とも使わせたい。
水を持ち運ばなくて良くなれば、行商の効率がかなり上がる。
まあ、この魔具が壊れたせいで行商人が野垂れ死んだなんてことになったら大問題だから、気を付ける必要はあるが。
取り敢えず。
ちょっとこの見た目をなんとか出来ないか、母にでも相談かな。
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