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卒業後
1112 星暦558年 青の月 6日 創水の魔術回路(16)
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「これと大匙一杯の砂糖を水に溶かして、その液体を各試作品に入れて振る?」
蒼流からの指示をシャルロが『はぁぁ?』と言う顔をしながら繰り返す。
ここ数日である程度効果があって有害では無い消毒ができる魔術回路の試作品が幾つか作れたのだが、今朝になって蒼流がシャルロに渡した粉と指示はイマイチ理解を超える内容だった。
『この粉は水で増えやすい菌を乾かした物で、濡れて休眠状態から覚醒して増えると緑色に見える性質がある。
菌は餌がある方が早く増えるから、多少の砂糖を水に入れて混ぜると結果が明らかになりやすいだろう』
蒼流が説明した。
へぇぇ。
砂糖が混じると菌が増えやすいんだ?
脂とか塩とかお酢が混じるとどうなるかちょっと興味があるが・・・まあ、あまり関係ないか。
しっかし、菌って粉の形状なんだ?
いや、至る所にあって今回は俺たちに与えやすい様に粉にしたんだろうけど、蒼流だったら水に溶けた状態でも持って来れただろうに。
増えすぎちゃったらダメだとでも思ったのかな?
まあ、取り敢えず。
「そんじゃあ全部にちょっとずつ入れて半日待つか。
・・・待っている間はどうする?」
半日ってちょっと微妙な時間なんだよなぁ。
「丁度いい。
今までの分の今年の収支報告書の詳細を確認してくれ。
私はその間に紺の月の収集計算をしておくよ」
アレクがぽんと手を叩きながら言った。
うげ~。
そう言えば、近いうちにあの元愛人女性とかシェフィート紹介から派遣される人間が定期的に来て書類作業を手伝うようになるんだったっけ。
そいつらが来た時に何も知らないと舐められるから、ちゃんと数字の流れとかどの位が通常なのかとか、理解しておく方がいいかも。
貴族な上に高位精霊から溺愛されているシャルロや、シェフィート商会のお坊ちゃんでこの工房の収支計算や契約をほぼ全て担っているアレクと違って、俺は単なるスラム出身の魔術師だからなぁ。
清早も中位精霊で助けてくれるけど、蒼流みたいな威厳には溢れてないし。
一応事業の共同経営者の一人だから面と向かってバカにはされないだろうが、内心『こいつだけ馬鹿なんじゃん』とか思われたら嫌だ。
とは言え。
まずは試作品のテストだな。
工房にはお茶の際に入れられるように砂糖が常備されているので、ポットに水と大匙一杯分の砂糖を入れた後に蒼流から貰った粉を放り込んでスプーンで適当に混ぜる。
考えてみたら、次にお茶を淹れるまでにこのポットを洗わないと多分危険だよな?
増えたら色が緑になるとは言っていたけど、人間がそれ飲んだらどうなるんだろ?
あまり緑な液体を飲みたいと思わないが。
「取り敢えず、直射日光の当たらない工房の奥に置いておこうか」
適当に混ぜた液体を各試作品に注ぎ、魔力を注いで消毒の魔術回路を起動してから奥の棚に並べて置く。
ついでに一つ、適当な容器にも液体を入れて横に置いておく。
試作品の中が全然緑になって無かったとして、それが魔術回路の効果なのか単に菌が増える時間が足りなかったのか、分からないと困るからな。
そんじゃあ書類に目を通しますか。
◆◆◆◆
「それじゃあ遂に!ご確認~!!」
ついつい泳ぎ勝ちになる目を無理やり書類に留めて今年分の収支の報告を確認し、パディン夫人に作ってもらった昼食を食べ、食後のお茶をゆっくり飲んだ俺たちは午前中に準備した試作品諸々の前に立っていた。
「トレーに敷いた白い布にまず消毒をしなかった容器の液体を流して緑っぽさの基準値にするぞ」
アレクがそう言いながら消毒しなかった容器を手に取った。
「ちゃんと緑になってるか?
上から見て全然変化が無いようだったらもう数刻待った方が良いかも」
書類を見るのはもう止めにしたいところだが、実験がちゃんと出来なかったら意味がない。
「・・・大丈夫。
緑になっている」
容器の蓋を開けて中を覗き込んだアレクが言った。
へぇぇ。
半日でそんなにはっきり見えるほど菌って増えるんだ?
見えない他の菌もどのくらい増えているのか、ちょっと気になるかも?
まあ、そんな菌の事を気にしないで今まで生きてきて平気だったんだから、無理に清潔さを保とうと意識する必要はないだろうけど。
変に菌とかが心眼《サイト》で見えなくて良かったかも。
半日でそれなりに増えるんだったら、気になって身の回りを確認し過ぎて落ち着かなそうだ。
蒼流からの指示をシャルロが『はぁぁ?』と言う顔をしながら繰り返す。
ここ数日である程度効果があって有害では無い消毒ができる魔術回路の試作品が幾つか作れたのだが、今朝になって蒼流がシャルロに渡した粉と指示はイマイチ理解を超える内容だった。
『この粉は水で増えやすい菌を乾かした物で、濡れて休眠状態から覚醒して増えると緑色に見える性質がある。
菌は餌がある方が早く増えるから、多少の砂糖を水に入れて混ぜると結果が明らかになりやすいだろう』
蒼流が説明した。
へぇぇ。
砂糖が混じると菌が増えやすいんだ?
脂とか塩とかお酢が混じるとどうなるかちょっと興味があるが・・・まあ、あまり関係ないか。
しっかし、菌って粉の形状なんだ?
いや、至る所にあって今回は俺たちに与えやすい様に粉にしたんだろうけど、蒼流だったら水に溶けた状態でも持って来れただろうに。
増えすぎちゃったらダメだとでも思ったのかな?
まあ、取り敢えず。
「そんじゃあ全部にちょっとずつ入れて半日待つか。
・・・待っている間はどうする?」
半日ってちょっと微妙な時間なんだよなぁ。
「丁度いい。
今までの分の今年の収支報告書の詳細を確認してくれ。
私はその間に紺の月の収集計算をしておくよ」
アレクがぽんと手を叩きながら言った。
うげ~。
そう言えば、近いうちにあの元愛人女性とかシェフィート紹介から派遣される人間が定期的に来て書類作業を手伝うようになるんだったっけ。
そいつらが来た時に何も知らないと舐められるから、ちゃんと数字の流れとかどの位が通常なのかとか、理解しておく方がいいかも。
貴族な上に高位精霊から溺愛されているシャルロや、シェフィート商会のお坊ちゃんでこの工房の収支計算や契約をほぼ全て担っているアレクと違って、俺は単なるスラム出身の魔術師だからなぁ。
清早も中位精霊で助けてくれるけど、蒼流みたいな威厳には溢れてないし。
一応事業の共同経営者の一人だから面と向かってバカにはされないだろうが、内心『こいつだけ馬鹿なんじゃん』とか思われたら嫌だ。
とは言え。
まずは試作品のテストだな。
工房にはお茶の際に入れられるように砂糖が常備されているので、ポットに水と大匙一杯分の砂糖を入れた後に蒼流から貰った粉を放り込んでスプーンで適当に混ぜる。
考えてみたら、次にお茶を淹れるまでにこのポットを洗わないと多分危険だよな?
増えたら色が緑になるとは言っていたけど、人間がそれ飲んだらどうなるんだろ?
あまり緑な液体を飲みたいと思わないが。
「取り敢えず、直射日光の当たらない工房の奥に置いておこうか」
適当に混ぜた液体を各試作品に注ぎ、魔力を注いで消毒の魔術回路を起動してから奥の棚に並べて置く。
ついでに一つ、適当な容器にも液体を入れて横に置いておく。
試作品の中が全然緑になって無かったとして、それが魔術回路の効果なのか単に菌が増える時間が足りなかったのか、分からないと困るからな。
そんじゃあ書類に目を通しますか。
◆◆◆◆
「それじゃあ遂に!ご確認~!!」
ついつい泳ぎ勝ちになる目を無理やり書類に留めて今年分の収支の報告を確認し、パディン夫人に作ってもらった昼食を食べ、食後のお茶をゆっくり飲んだ俺たちは午前中に準備した試作品諸々の前に立っていた。
「トレーに敷いた白い布にまず消毒をしなかった容器の液体を流して緑っぽさの基準値にするぞ」
アレクがそう言いながら消毒しなかった容器を手に取った。
「ちゃんと緑になってるか?
上から見て全然変化が無いようだったらもう数刻待った方が良いかも」
書類を見るのはもう止めにしたいところだが、実験がちゃんと出来なかったら意味がない。
「・・・大丈夫。
緑になっている」
容器の蓋を開けて中を覗き込んだアレクが言った。
へぇぇ。
半日でそんなにはっきり見えるほど菌って増えるんだ?
見えない他の菌もどのくらい増えているのか、ちょっと気になるかも?
まあ、そんな菌の事を気にしないで今まで生きてきて平気だったんだから、無理に清潔さを保とうと意識する必要はないだろうけど。
変に菌とかが心眼《サイト》で見えなくて良かったかも。
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