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卒業後
1203 星暦558年 緑の月 1日 事務作業(9)
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「既存の昇降機を作っている工房と共同開発にするって話をしたら、シェイラから『だったら既存の筋肉で動かす動力部分を魔術回路で代替するだけでよくね?』って言われたんだけど、どう思う?
なんかこう、新鮮さが無くて売れなそうな気もするんだが」
翌朝、いつもの朝食後のお茶で話し合うところで言ったら、アレクとシャルロが難しい顔をして考え込んだ。
「この家に設置する分に関しては自分でやれば良いだろうと思っていたのを、他者にも売るとなったら安全対策とか重要になるから共同開発って話になったが……確かに腕で引っ張っている部分を魔術回路で動く動作に変えるだけだったらもっと話は単純になりそうだな」
やがてアレクが頷いた。
「だけど確かに面白味も無くなりそうだよねぇ~。
昇降機があるような貴族や豪族の家だったら下男も十分に居るだろうから、単に人力部分を魔具化するだけだったらあまり購入側にとって得るものが無いと思う」
シャルロがクッキーに手を伸ばしながら言った。
だよなぁ。
どうせ昇降機を使う時間なんてそれ程長くないんだろうから、下男をその時だけ使えば良いと考えれば魔具化する意味が余りなさそうだ。
「となったら何か既存の昇降機にない機能を付け足すか?
人間が中に入っていたら動かないとか、警報が鳴るとか」
アレクが提案する。
「昇降機その物だけじゃなくって昇降機の穴っていうのか?あの縄がある部分全部に人が入ったら警報が鳴る方が良いんじゃないか?
縄を伝って下りたり上がったりしたがるガキもいるって話があったし」
ある意味、あの昇降機の縄を伝って上に登る侵入者用の抜け道になるかもだからそれも潰せるし。
まあ、実際には態々昇降機の穴を使わなくても外壁を登る方が楽だと思うが。見張りが多すぎて忍び込みにくいような屋敷があったら使おうと考える人間だっているかも知れない。
もしかしたら。
……場合によっては暗殺《アサッシン》ギルドあたりが既に使っているかも?
まあ、プロだったらちゃんと新規機能の情報収集しているだろう。
多分。
「魔具だからこそ出来る機能を詰めこんだ高級路線で行くんだったら、それこそ落下した時の安全装置を付けても良いかも?
ある程度以上の速さで落ちたら浮遊《レヴィア》の術が地階に着く直前に起動する様にでもすればいいんじゃないかな」
シャルロが提案する。
そうだな。
高級路線で行くんなら、没落して魔石を買えなくなるなんていう事態には陥らないという前提条件で開発しちまってもいいだろう。
「そんじゃあ取り敢えず、色々と機能を実装できるか試してみてから、工房の方に話を持って行こうか。
そう言えば、もう一つ思ったんだが人間や荷物を動かすような重量級な昇降機を動かせるような魔術回路も開発してみるか?」
アレクが提案する。
人間も?
まあ、階段を上るのが無理そうなデブなジジイとか、足腰が弱ったり怪我で歩けないような人もいるだろうから人間用の昇降機も悪くはないか?
「どの位需要があるかと、どの程度の値段になっても設置したがるかに寄るんだろうねぇ。
かなり魔力を使うと思うから、人気が出て普及しまくったら魔石の消費量が跳ね上がって魔石の値段が高騰しちゃうかもよ?」
シャルロが指摘した。
「……金持ち用の人間が使う昇降機なんぞを普及させて、魔石の値段が上がって俺たちが造る日常生活用の魔具が売れなくなったら元も子もない。
人間用は止めよう」
上の方の階の景色がいい部屋は足腰が強い人間の特権なままにしておこうぜ。
「まあ、確かに人間用の昇降機を作ってそれで誰かが死んだら面倒なことになるかもだし、魔石の値段が高騰するのも困るな。
今でもちょっと上がり気味だし」
アレクがあっさり頷いて合意した。
魔石の値段って上がってたっけ?
あまり自分では買わないから気が付かなかったぜ。
魔石購入でピーピー言うようなツァレスとかは俺に集ろうとするのは昔から変わっていないし、俺たちが使うのは基本的に充填して使いまわしているから、参考値程度にしか気にしてなかったんだよなぁ。
「色々俺たちが便利な魔具を開発したからか?」
それなりに新しいのを作っているが、そこまで影響が出るほど売れているとも思ってなかったが。
「いや、流石に私たちの事業がそこまで大きく市場に影響を与えている訳じゃあ無い。
大元は、ガルカ王国がザルガ共和国に吸収されたからだな。あの国で底値な人件費で発掘されていた魔石がザルガ共和国価格に値上げされて輸出されるようになったせいで、全般的に値段が上がったんだ」
アレクが言った。
うわぁ。
終わってる旧ガルカ王国の面倒をザルガ共和国に上手い事押し付けたと思ったら、やはりとばっちりはあったのか。
まあ、その利益で旧ガルカ王国の立て直しをしていてくれると期待しよう。
なんかこう、新鮮さが無くて売れなそうな気もするんだが」
翌朝、いつもの朝食後のお茶で話し合うところで言ったら、アレクとシャルロが難しい顔をして考え込んだ。
「この家に設置する分に関しては自分でやれば良いだろうと思っていたのを、他者にも売るとなったら安全対策とか重要になるから共同開発って話になったが……確かに腕で引っ張っている部分を魔術回路で動く動作に変えるだけだったらもっと話は単純になりそうだな」
やがてアレクが頷いた。
「だけど確かに面白味も無くなりそうだよねぇ~。
昇降機があるような貴族や豪族の家だったら下男も十分に居るだろうから、単に人力部分を魔具化するだけだったらあまり購入側にとって得るものが無いと思う」
シャルロがクッキーに手を伸ばしながら言った。
だよなぁ。
どうせ昇降機を使う時間なんてそれ程長くないんだろうから、下男をその時だけ使えば良いと考えれば魔具化する意味が余りなさそうだ。
「となったら何か既存の昇降機にない機能を付け足すか?
人間が中に入っていたら動かないとか、警報が鳴るとか」
アレクが提案する。
「昇降機その物だけじゃなくって昇降機の穴っていうのか?あの縄がある部分全部に人が入ったら警報が鳴る方が良いんじゃないか?
縄を伝って下りたり上がったりしたがるガキもいるって話があったし」
ある意味、あの昇降機の縄を伝って上に登る侵入者用の抜け道になるかもだからそれも潰せるし。
まあ、実際には態々昇降機の穴を使わなくても外壁を登る方が楽だと思うが。見張りが多すぎて忍び込みにくいような屋敷があったら使おうと考える人間だっているかも知れない。
もしかしたら。
……場合によっては暗殺《アサッシン》ギルドあたりが既に使っているかも?
まあ、プロだったらちゃんと新規機能の情報収集しているだろう。
多分。
「魔具だからこそ出来る機能を詰めこんだ高級路線で行くんだったら、それこそ落下した時の安全装置を付けても良いかも?
ある程度以上の速さで落ちたら浮遊《レヴィア》の術が地階に着く直前に起動する様にでもすればいいんじゃないかな」
シャルロが提案する。
そうだな。
高級路線で行くんなら、没落して魔石を買えなくなるなんていう事態には陥らないという前提条件で開発しちまってもいいだろう。
「そんじゃあ取り敢えず、色々と機能を実装できるか試してみてから、工房の方に話を持って行こうか。
そう言えば、もう一つ思ったんだが人間や荷物を動かすような重量級な昇降機を動かせるような魔術回路も開発してみるか?」
アレクが提案する。
人間も?
まあ、階段を上るのが無理そうなデブなジジイとか、足腰が弱ったり怪我で歩けないような人もいるだろうから人間用の昇降機も悪くはないか?
「どの位需要があるかと、どの程度の値段になっても設置したがるかに寄るんだろうねぇ。
かなり魔力を使うと思うから、人気が出て普及しまくったら魔石の消費量が跳ね上がって魔石の値段が高騰しちゃうかもよ?」
シャルロが指摘した。
「……金持ち用の人間が使う昇降機なんぞを普及させて、魔石の値段が上がって俺たちが造る日常生活用の魔具が売れなくなったら元も子もない。
人間用は止めよう」
上の方の階の景色がいい部屋は足腰が強い人間の特権なままにしておこうぜ。
「まあ、確かに人間用の昇降機を作ってそれで誰かが死んだら面倒なことになるかもだし、魔石の値段が高騰するのも困るな。
今でもちょっと上がり気味だし」
アレクがあっさり頷いて合意した。
魔石の値段って上がってたっけ?
あまり自分では買わないから気が付かなかったぜ。
魔石購入でピーピー言うようなツァレスとかは俺に集ろうとするのは昔から変わっていないし、俺たちが使うのは基本的に充填して使いまわしているから、参考値程度にしか気にしてなかったんだよなぁ。
「色々俺たちが便利な魔具を開発したからか?」
それなりに新しいのを作っているが、そこまで影響が出るほど売れているとも思ってなかったが。
「いや、流石に私たちの事業がそこまで大きく市場に影響を与えている訳じゃあ無い。
大元は、ガルカ王国がザルガ共和国に吸収されたからだな。あの国で底値な人件費で発掘されていた魔石がザルガ共和国価格に値上げされて輸出されるようになったせいで、全般的に値段が上がったんだ」
アレクが言った。
うわぁ。
終わってる旧ガルカ王国の面倒をザルガ共和国に上手い事押し付けたと思ったら、やはりとばっちりはあったのか。
まあ、その利益で旧ガルカ王国の立て直しをしていてくれると期待しよう。
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