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第四部 王都の新たな日々
第352話 依頼人とのご対面②
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「あ~……アガサ?」
「なにかしら?」
「少々聞き間違えがあったようです。すみませんが、もう1度言ってくれませんか?」
「ええ、構わないわ。理解したくない気持ちも分かる気がするし。じゃあ、もう1度言うわね。……このシュリが、対悪魔の為に連れてきた強力な助っ人なの」
「なん、ですって!?」
アガサの言葉に見事に固まったその人の名前はディリアン。
今回の依頼を持ち込んだ人で、アガサが高等魔術学園で学んでいた若き日のお友達、なんだそうだ。
午後になり、傭兵団[月の乙女]の拠点を訪れたその人は、旧友と言うには堅苦しい挨拶をアガサと交わし、そしてその後お互いの自己紹介タイムとなった訳なのだが。
それは早々に頓挫して、今に至る。
ディリアンが久々に会う旧友と、なぜかその旧友が抱っこして離さない子供の為に。
「ジェス?」
問うように名を呼ばれ、ジェスは困った顔で頬をかく。
「あ~。うん。何が言いたいかはよく分かる。だが、私もアガサ殿の側なんだよ、ディリアン殿。私は、シュリに命を救われた事があるから余計に、な」
「命を?」
「休暇中、ゴブリンの群に悩まされている村にたまたま滞在してな。そこで、その」
「なるほど。それでゴブリンの退治を引き受けた、と」
「まあな。ただ、その場にいた冒険者達と意見が分かれて、だな」
「まさか、単身で突っ込んだのではないでしょうね?」
「そのまさか、です。単身で突っ込んだらしいですよ? このバカは。しかも、その群はキングが率いる群だった、とそういう訳らしいです」
ディリアンの問いに思わず言葉につまったジェスに代わり、フェンリーが答える。
ジェスはフェンリーを恨みがましい目で見るが、だが誰が暴露したところで事実は変わらない。
「……その通りだ。辺境の小さな村だ。まさかキングが率いるほどの群が育ってるなどとは夢にも思わずに踏み込んだ私は、危地におちいった。我ながら、間抜けにもほどがあるとは思うがな」
「それは……よく無事でしたね?」
キングのいるゴブリンの群は、それほどに危険なものだった。
少なくとも、単身で挑むものではない。
群の総数にもよるが、人数を集め、集団で討伐に当たるべき対象だ。
場合によっては軍隊が出動する事だってある。
そんな危険な群に、1人で挑んで生きて帰れるとは、運が良かったとしか言いようがない。
「私が無事だったのはシュリのおかげなんだ。シュリが、助けてくれた」
「助けた……。では、キングは?」
「シュリが倒したさ。瞬殺だったな」
「ほんとう、なんですか? あんな小さな子が?」
「ほんとうだ。こんな事で嘘をついても仕方ないだろう?」
「ふむ」
しばし口を閉じ、ジェスから与えられた情報を咀嚼する。
そして改めて、古い友人が抱き抱えている小さな子供に目を移した。
「ゴブリンキングを討伐する幼子、か。にわかには信じがたい、ですが」
「相変わらす頭が固い男ね、ディル。こう見えてこの子、冒険者ランクはAランクよ?」
「A!? こんなに幼い子供が、ですか?」
「嘘でこんな事を言ってどうするのよ。シュリ、見せてあげなさい」
促されて冒険者証を取り出して見せる。ディリアンは驚愕の眼差しで、まじまじとそれを見つめた。
「ほんもの、のようですね」
「もちろん、本物に決まってるでしょ?」
「む、う」
小さく唸り、考え込み。
ディリアンはその視線をようやくシュリ本人の顔の上に定めた。
「君は本当に、ゴブリンキングを倒したんですか?」
「えっと。はい、倒しました」
問いかけに、小首を傾げつつきっぱり答える。
「悪魔はゴブリンキングより強い。無理なら無理と言うのも勇気だと思いますが?」
「ゴブリンキングよりも悪魔よりも、僕の方が強い……っていったら信じてくれますか?」
「ただ信じろと言われても難しいですね。私は今日初めて君を知ったのですから。信じるに足る根拠を示してほしいところですが。どうでしょう?」
ディリアンの言葉に、いいよ、と頷く。
確かに、なんの根拠もなく10歳に満たない年の子供の強さを信じろと言ったところで難しいだろう。
「根拠かぁ。えっと、まず、僕のおばー様はヴィオラ・シュナイダー。唯一のSSクラスの冒険者です」
知ってます? と首を傾げて問えば、
「ヴィオラ・シュナイダーの名は知っています。彼女の偉業の数々も。ですが、その彼女が君の祖母だとしても、それだけで君の強さを信じろというのは暴論ですね。それ以前に、アガサ、今の彼の主張は本当ですか?」
ディリアンは答え、アガサに問う。
その問いに、アガサは即座に頷いた。
「シュリがヴィオラの孫って言うのは本当。今回、助っ人をシュリに頼むかヴィオラに頼むか迷ったのよ。ただ、隠れてる悪魔を探すって言う繊細な作業はヴィオラには向かないだろうから、シュリに頼もうかなって思って。ヴィオラからシュリの強さは散々自慢……いえ、聞かされてたしね」
「聞かされていた。ということは、君自信が少年の強さを見たわけではないという事ですね?」
「実際に戦いの場にいるシュリを見ているか、という問いなら否と答える他はないわね。ただ」
「ただ?」
「ここに来るまでの間に、シュリのとんでもなさを、イヤと言うほど体験したわね」
「とんでもなさ、ね。それはいったいどのレベルのものなんでしょう? 悪魔と渡り合えるほどの?」
「私がみたのは、シュリの凄さのほんの端っこにすぎないとは思うけど、それだけでも十分すぎるくらいだって思えるとんでもなさだったわね。正直、悪魔なんて楽勝だと思うわ。たぶん、私の出る幕もないくらいじゃないかしら」
「正直、信じがたい。……年を重ねすぎて、少々目が曇ってるのでは?」
「女に年の話は禁物よ。ディル、あなたこそ年をとって頑固さが増したんじゃない?」
シュリを間に挟んでにらみ合う2人。
こみあげるため息を押し殺しつつ、シュリは己を売り込むべき相手を見上げた。
おばー様の七光りがきかないなら仕方ない。次の手だ、と。
次なる手は、精霊と眷属、どっちの札をさらすべきか。
(ん~。どっちでもいいけど、今回活躍してもらうのはオーギュストだから、眷属の札を見せておくか)
そう考え、眷属達を呼び出す為のマスターキーを手のひらの中に取り出す。
全員を呼び出そうとして、ふと昨日の事を思い出した。
(……イルル達はお疲れだろうし、みんなを一気に呼び出すと騒がしくなるし。今回は、オーギュストだけでいっか)
「……オーギュスト? ちょっと来てもらえる??」
色々考えた末、オーギュストだけを呼び出すことにした。
次の瞬間、シュリの目の前にオーギュストが現れ、なぜかアガサの腕の中にいるシュリにちゅむっとキスをぶちかます。
ディリアンは突如目の前に現れた美女に目を丸くし、アガサは目の前でシュリの唇が奪われた事実に目をつり上げた。
「えっと、オーギュスト?」
何でキス? と見上げると、
「ただの挨拶だ。昨日はイルル達に散々自慢された。少しくらいは、いいだろう?」
そう答えて、美しい悪魔は艶やかに笑う。
「少年。そちらの女性は?」
「シュリ」
「ん?」
「僕のことはシュリって呼んで下さい。で、この子はオーギュスト。僕の眷属です」
「眷属? その人は人間でしょう?」
「いいえ。悪魔です」
「……は?」
「オーギュストは悪魔ですよ? 人間は眷属に出来ませんからね」
「ああ。俺は悪魔でシュリの眷属で愛人だ」
「え!? 愛人じゃないよね!?」
「む。耳聡いな。仕方ない。愛人候補でいい。これ以上は譲らんぞ」
仕方ない奴だな、とオーギュストがちょっと男前に笑うが、そういう問題じゃない気がする。
ない気はするが、これ以上は客人の前でするやりとりじゃない気もするし、がんばって説得しても聞き入れて貰えない予感しかなかったので、シュリは早々に諦めた。
「えっと、そう言う感じです」
「……愛人?」
「そこは出来ればスルーで」
「……悪魔は、眷属に出来るもの、なんですか?」
「そこは僕も疑問なところだったんですけど、出来ちゃいましたね」
ディリアンの質問に、シュリは苦笑混じりに答える。
「ちなみに、シュリの眷属はそこの変態悪魔の他に、とんでもないのが後3人……いえ、3匹いるわ」
「悪魔の眷属の他にもいる、と。アガサ、君は見たんですか?」
「ええ見たわよ」
「差し支えなければ教えて欲しいんですが」
ディリアンの申し出に、アガサはすぐには答えなかった。
友人の瞳が、許可を得るようにシュリに向けられるのを見て、ディリアンは軽く目を見張る。
記憶が間違っていなければ、友人の冒険者ランクはS。
それに昔の彼女は男を獲物として見て軽視している印象が強かった。
そんな友人がたてている少年の冒険者ランクはA。
その年頃の少年が到達できるランクではないが、Sランクの冒険者から見れば格下のはず。
そんな相手に、あの友人が従うなんて事は、目の前で見せられた今でも中々信じられそうにない。
それ以前に、少年は明らかに幼く愛らしく、正直かつて友人が好んで食い荒らしていたタイプとはまるで違っていた。
(長く生きすぎた弊害で少年趣味にでもなったのだろうか)
そんな考えが頭に浮かび、思わずまじまじと2人を見つめてしまう。
そんな彼の視線を感じたのだろう。
アガサは苦笑を浮かべ、
「シュリの眷属は、ドラゴン、フェンリル、九尾の狐。プラスそこの悪魔で4体。眷属をテイムする条件はなにか、ディル、知ってる? あ、ちなみに私は少年趣味になった訳じゃないわよ? シュリだけが好きなの」
先ほどの質問の答えと共に、ディリアンの頭の中を読んだような返事を返した。
シュリだけが好き。
その言葉はきっと本当なのだろう。
昔は、己に気がないと分かっているディリアンにさえ、性別が男であるというだけで無駄に色気を放ってきたものだが、今はそれがない。
今の彼女が甘く見つめるのは、彼女の腕の中にちんまりおさまっている少年を見るときだけ。
その事実に驚きつつも、ディリアンは少しほっとした。
正直、彼女をこの国に招くネックはそこだったのだ。
自分や国家元首が誘惑に負けるとは思っていなかったが、その周囲を固める者達の理性の心配まではしていられない。
最悪、彼女と接した者全てが餌食になり得ると、その心配はあった。
ただ、年を重ねて思慮深くなり欲望が減退している事もあり得ると思い、己の目で今の彼女を確かめてから対策をしようと考えていた。
最悪、彼女に接する者は同性だけにするしかないと想定していたが、その必要はなさそうだ。
しかし。
(ドラゴンにフェンリルに九尾の狐。そして悪魔、ですか)
本当にそれらを全て眷属にしているというのなら、目の前の少年の強さは確かだろう。
なぜなら。
「テイマーが対象をテイムするには、そのためのスキルを獲得する他に、己の力で対象を屈服させる必要がある……」
「そうよ。そこを理解しているなら分かるわよね?」
「ええ。名前を聞くだけで脅威だと思える生き物を、その少年……シュリが屈服させた、ということ。少々……いやかなり、信じがたい事ではありますが」
信じがたいが、それが本当であるなら、目の前の少年は悪魔をも屈服させる力を持っている、ということだ。
今のこの国の現状にもっとも必要なのは、この見るからに幼く愛らしい少年だ、ということになる。
ディリアンはシュリを見つめ、それからその傍らに控える悪魔を見た。
見た目はただの美しい女にしか見えない。
だが、悪魔という存在の姿形は千差万別。
人と変わらぬ姿を好む者も多く、見た目だけでは中々判断できない。
ただ、人でない為、その身に宿す魔力は明らかに人とは違う異質なもの。
普通の人間では感じられない魔力の違いを、魔に属する者の血がその身に流れるディリアンは感じることが出来る。
その血は薄く、かすかに感じることが出来る程度だが。
その、己の身を流れる血が教えてくれた。
目の前の者は異質だ、と。
そこまではっきり感じられることは珍しい。
おそらく、目の前の悪魔が己を隠そうとしていないためなのだろう。
「貴女は本当に悪魔なんですか?」
オーギュストという悪魔に問いかける。
女性形態なのに男名前なのは、かつて男の姿の時もあったという事なのだろうか、とそんな事を考えながら。
「ああ。隠していないから、お前程度の血の濃さでも俺の異質さは感じられるだろう? 魔の血を持つ者がいて助かった。ただの人間に悪魔であることを証明するのは、存外難しいものだからな」
「そうなの?」
「ああ。悪魔は人に似た姿を好む者が多いし、1度受肉した姿を別の姿に変えるのは結構手間でな。かといって、人が想像するような悪魔らしい姿をしていては、人の世での活動は難しい。まあ、ただの一時的な戦力として召還されたのであれば、それでもいいんだろうが。人間とは基本的に、己と同じ姿をした者には寛容な生き物だ。人の姿をした俺が、己が悪魔である証明をしようとして力を見せても、並外れて強い人間としか認識して貰えないことの方が多いだろうな。それこそ、人でも喰って見せない限り」
「えっと、人は食べちゃダメだからね?」
「ああ。分かってる。シュリに嫌われるようなことはしない。シュリが嫌う行為も。それにもともと、俺は人の肉を喰うのは好きじゃなかった。悪魔である以上、人の魂を喰わなかった、といえば嘘になってしまうが、それも随分昔の話だ。ここ数百年の間は、人を喰ってはいない。それだけは信じて欲しい」
オーギュストは真剣な顔でシュリを見つめた。
その告白を、シュリは頷いて受け入れ、微笑んでオーギュストの頬を撫でた。
「大丈夫。信じるよ」
そんな2人の様子を眺め、ディリアンは頷く。
2人の主従関係は強固なもののようだ、と。
だが、念のために問いかけた。
「貴女が悪魔であるということは、理解しました。明確に悪魔だと断じられるほど私の能力は高くないですが、少なくとも人とは違う別のものだということは分かります。貴女がかなり強いということも。貴女ほどの力があれば、人を殺すなど簡単でしょう? なのに貴女はこの少年……シュリに従う事を良しとする、と?」
「誤解があるようだが、悪魔にだって個性がある。中には人間を嫌っていない、人間を食料と考えていない者だっているさ」
「貴女が、そうだと?」
「今はそうだな。召還主が死んだ後も、俺は人の群れに紛れて生活してきた。シュリに出会うよりもずっとずっと前から。その中で出来た友人もいるし、師匠として仰ぐ人間もいる。少なくとも、今の俺は人間が嫌いではない。彼らを食料として見ることが出来ないくらいには、な」
それに、とオーギュストは続けた。
「今の俺は、シュリのものであることを嬉しい、と感じている。身も心も、今ある俺の存在の全てはシュリのもの。シュリの為に生き、シュリの為に命を使うことが出来る事を、心の底から幸福だと思っている」
言い切ったオーギュストという悪魔の言葉に嘘はないか、それを確かめるようにじっと見つめる。
嘘はない、と思う。
人の心を読めるわけではないが、目の前の悪魔の瞳は穏やかで真剣だった。
だが、今回の標的もまた悪魔。
人に忠誠を誓っていたとしても、己と同種の生き物を滅することは出来るのだろうか。
「君は悪魔で相手も悪魔。君は同じ種族の者を滅する手伝いが出来ますか?」
真面目な問いだったが、オーギュストという悪魔に鼻で笑われた。
「人間とはおもしろいな。お前達人間だって同じ種族同士殺し合うじゃないか。それなのに、別の種族は同族殺しをしないとなぜ思う? それに元々悪魔は個人主義な者が多い。同族だろうとなんだろうと、邪魔だと思えば排除することに躊躇はない」
オーギュストの答えに、ディリアンは頷いた。
目の前の悪魔がいう通り、人間も同族同士殺し合う生き物だ。
今でこそ各国の友好の元落ち着いているが、一昔前までは戦争という大義名分の元の殺しあいがあちこちで頻発していた。
現在の平和とてきっかけがあればどうなるか分からないし、そうでなくともちょっとした諍いから他者を殺す者もいる。
結局、1番大切なのは同じ種族であるという点ではないのだろう。
大切なのは個人個人のつながり。
種族が違おうと大切なものは大切だし、同じ種族でも馬が合わないものはあわない。
まあ、中には己の種族以外を認めようとしない、強固な同族至上主義者もいるだろうが。
目の前の悪魔にとって、大切なのは同族ではなく……
「あなたにとって1番大切なのはその少年、ということですか?」
答えの分かり切った問いではあるが、率直に尋ねてみた。
「ああ。今の俺にとっての最優先はシュリだ。まあそれ以前にも、俺は同族にそれほどの思い入れはない。知り合い程度の奴はいないでもないが、よりつき合いが深く思い入れがある相手はほとんどが人間だ。その点だけでも、俺が同族の味方をする理由はないな」
答えるオーギュストの顔をじっと見つめ、見極める。
その言葉に嘘はない、と思った。
だから、とりあえず今は……
「わかりました。あなたを信じましょう」
「俺じゃなく、シュリを信じてくれればいい」
ディリアンの言葉にオーギュストが素っ気なく返す。
その言葉に促されたというわけではないが、ディリアンは改めて友人がずっと抱いたままの少年に目を移した。
いろいろ話を聞き、無視できない情報を手に入れた後でもなお、その少年の幼げな容貌は、ディリアンの胸に不安しかもたらさない。
だが、見た目だけで判断して排除するのは明らかに悪手だと、そう思えるだけの判断力はあった。
ディリアンはほんの一瞬瞠目する。
そして自分に言い聞かせた。己の中の常識を盲信するのはするのはやめなければ、と。
幼い子供は弱く、大人が庇護すべき存在だという常識は。
少なくとも、シュリという少年にその常識は当てはまらない。
再び目を開き、ディリアンはまっすぐシュリを見つめる。
それから深々と頭を下げた。
「今までの非礼をお詫びします。その上で改めてお願いしたい。シュリ、この国の危機を救うために、あなたの力を貸していただけますか?」
その言葉に、シュリはにっこり笑い、そして答えた。
もちろん、と。
その笑顔を見た瞬間、ディリアンは己の胸がなにかにずぎゅん、と打ち抜かれたような気がした。
思わず首を傾げ、まじまじとシュリの顔を見る。
さっきまでも十分可愛い子供だと思っていたが、見れば見るほどその姿は味わいを増し、様々な感情が胸の内で渦巻く。
心臓がやけに早く鼓動を刻み、
(心臓がおかしいですね。私も年には勝てないということなのでしょうか)
そんな見当違いの事を思いつつ、ディリアンは不思議そうな顔で再び首を傾げた。
「なにかしら?」
「少々聞き間違えがあったようです。すみませんが、もう1度言ってくれませんか?」
「ええ、構わないわ。理解したくない気持ちも分かる気がするし。じゃあ、もう1度言うわね。……このシュリが、対悪魔の為に連れてきた強力な助っ人なの」
「なん、ですって!?」
アガサの言葉に見事に固まったその人の名前はディリアン。
今回の依頼を持ち込んだ人で、アガサが高等魔術学園で学んでいた若き日のお友達、なんだそうだ。
午後になり、傭兵団[月の乙女]の拠点を訪れたその人は、旧友と言うには堅苦しい挨拶をアガサと交わし、そしてその後お互いの自己紹介タイムとなった訳なのだが。
それは早々に頓挫して、今に至る。
ディリアンが久々に会う旧友と、なぜかその旧友が抱っこして離さない子供の為に。
「ジェス?」
問うように名を呼ばれ、ジェスは困った顔で頬をかく。
「あ~。うん。何が言いたいかはよく分かる。だが、私もアガサ殿の側なんだよ、ディリアン殿。私は、シュリに命を救われた事があるから余計に、な」
「命を?」
「休暇中、ゴブリンの群に悩まされている村にたまたま滞在してな。そこで、その」
「なるほど。それでゴブリンの退治を引き受けた、と」
「まあな。ただ、その場にいた冒険者達と意見が分かれて、だな」
「まさか、単身で突っ込んだのではないでしょうね?」
「そのまさか、です。単身で突っ込んだらしいですよ? このバカは。しかも、その群はキングが率いる群だった、とそういう訳らしいです」
ディリアンの問いに思わず言葉につまったジェスに代わり、フェンリーが答える。
ジェスはフェンリーを恨みがましい目で見るが、だが誰が暴露したところで事実は変わらない。
「……その通りだ。辺境の小さな村だ。まさかキングが率いるほどの群が育ってるなどとは夢にも思わずに踏み込んだ私は、危地におちいった。我ながら、間抜けにもほどがあるとは思うがな」
「それは……よく無事でしたね?」
キングのいるゴブリンの群は、それほどに危険なものだった。
少なくとも、単身で挑むものではない。
群の総数にもよるが、人数を集め、集団で討伐に当たるべき対象だ。
場合によっては軍隊が出動する事だってある。
そんな危険な群に、1人で挑んで生きて帰れるとは、運が良かったとしか言いようがない。
「私が無事だったのはシュリのおかげなんだ。シュリが、助けてくれた」
「助けた……。では、キングは?」
「シュリが倒したさ。瞬殺だったな」
「ほんとう、なんですか? あんな小さな子が?」
「ほんとうだ。こんな事で嘘をついても仕方ないだろう?」
「ふむ」
しばし口を閉じ、ジェスから与えられた情報を咀嚼する。
そして改めて、古い友人が抱き抱えている小さな子供に目を移した。
「ゴブリンキングを討伐する幼子、か。にわかには信じがたい、ですが」
「相変わらす頭が固い男ね、ディル。こう見えてこの子、冒険者ランクはAランクよ?」
「A!? こんなに幼い子供が、ですか?」
「嘘でこんな事を言ってどうするのよ。シュリ、見せてあげなさい」
促されて冒険者証を取り出して見せる。ディリアンは驚愕の眼差しで、まじまじとそれを見つめた。
「ほんもの、のようですね」
「もちろん、本物に決まってるでしょ?」
「む、う」
小さく唸り、考え込み。
ディリアンはその視線をようやくシュリ本人の顔の上に定めた。
「君は本当に、ゴブリンキングを倒したんですか?」
「えっと。はい、倒しました」
問いかけに、小首を傾げつつきっぱり答える。
「悪魔はゴブリンキングより強い。無理なら無理と言うのも勇気だと思いますが?」
「ゴブリンキングよりも悪魔よりも、僕の方が強い……っていったら信じてくれますか?」
「ただ信じろと言われても難しいですね。私は今日初めて君を知ったのですから。信じるに足る根拠を示してほしいところですが。どうでしょう?」
ディリアンの言葉に、いいよ、と頷く。
確かに、なんの根拠もなく10歳に満たない年の子供の強さを信じろと言ったところで難しいだろう。
「根拠かぁ。えっと、まず、僕のおばー様はヴィオラ・シュナイダー。唯一のSSクラスの冒険者です」
知ってます? と首を傾げて問えば、
「ヴィオラ・シュナイダーの名は知っています。彼女の偉業の数々も。ですが、その彼女が君の祖母だとしても、それだけで君の強さを信じろというのは暴論ですね。それ以前に、アガサ、今の彼の主張は本当ですか?」
ディリアンは答え、アガサに問う。
その問いに、アガサは即座に頷いた。
「シュリがヴィオラの孫って言うのは本当。今回、助っ人をシュリに頼むかヴィオラに頼むか迷ったのよ。ただ、隠れてる悪魔を探すって言う繊細な作業はヴィオラには向かないだろうから、シュリに頼もうかなって思って。ヴィオラからシュリの強さは散々自慢……いえ、聞かされてたしね」
「聞かされていた。ということは、君自信が少年の強さを見たわけではないという事ですね?」
「実際に戦いの場にいるシュリを見ているか、という問いなら否と答える他はないわね。ただ」
「ただ?」
「ここに来るまでの間に、シュリのとんでもなさを、イヤと言うほど体験したわね」
「とんでもなさ、ね。それはいったいどのレベルのものなんでしょう? 悪魔と渡り合えるほどの?」
「私がみたのは、シュリの凄さのほんの端っこにすぎないとは思うけど、それだけでも十分すぎるくらいだって思えるとんでもなさだったわね。正直、悪魔なんて楽勝だと思うわ。たぶん、私の出る幕もないくらいじゃないかしら」
「正直、信じがたい。……年を重ねすぎて、少々目が曇ってるのでは?」
「女に年の話は禁物よ。ディル、あなたこそ年をとって頑固さが増したんじゃない?」
シュリを間に挟んでにらみ合う2人。
こみあげるため息を押し殺しつつ、シュリは己を売り込むべき相手を見上げた。
おばー様の七光りがきかないなら仕方ない。次の手だ、と。
次なる手は、精霊と眷属、どっちの札をさらすべきか。
(ん~。どっちでもいいけど、今回活躍してもらうのはオーギュストだから、眷属の札を見せておくか)
そう考え、眷属達を呼び出す為のマスターキーを手のひらの中に取り出す。
全員を呼び出そうとして、ふと昨日の事を思い出した。
(……イルル達はお疲れだろうし、みんなを一気に呼び出すと騒がしくなるし。今回は、オーギュストだけでいっか)
「……オーギュスト? ちょっと来てもらえる??」
色々考えた末、オーギュストだけを呼び出すことにした。
次の瞬間、シュリの目の前にオーギュストが現れ、なぜかアガサの腕の中にいるシュリにちゅむっとキスをぶちかます。
ディリアンは突如目の前に現れた美女に目を丸くし、アガサは目の前でシュリの唇が奪われた事実に目をつり上げた。
「えっと、オーギュスト?」
何でキス? と見上げると、
「ただの挨拶だ。昨日はイルル達に散々自慢された。少しくらいは、いいだろう?」
そう答えて、美しい悪魔は艶やかに笑う。
「少年。そちらの女性は?」
「シュリ」
「ん?」
「僕のことはシュリって呼んで下さい。で、この子はオーギュスト。僕の眷属です」
「眷属? その人は人間でしょう?」
「いいえ。悪魔です」
「……は?」
「オーギュストは悪魔ですよ? 人間は眷属に出来ませんからね」
「ああ。俺は悪魔でシュリの眷属で愛人だ」
「え!? 愛人じゃないよね!?」
「む。耳聡いな。仕方ない。愛人候補でいい。これ以上は譲らんぞ」
仕方ない奴だな、とオーギュストがちょっと男前に笑うが、そういう問題じゃない気がする。
ない気はするが、これ以上は客人の前でするやりとりじゃない気もするし、がんばって説得しても聞き入れて貰えない予感しかなかったので、シュリは早々に諦めた。
「えっと、そう言う感じです」
「……愛人?」
「そこは出来ればスルーで」
「……悪魔は、眷属に出来るもの、なんですか?」
「そこは僕も疑問なところだったんですけど、出来ちゃいましたね」
ディリアンの質問に、シュリは苦笑混じりに答える。
「ちなみに、シュリの眷属はそこの変態悪魔の他に、とんでもないのが後3人……いえ、3匹いるわ」
「悪魔の眷属の他にもいる、と。アガサ、君は見たんですか?」
「ええ見たわよ」
「差し支えなければ教えて欲しいんですが」
ディリアンの申し出に、アガサはすぐには答えなかった。
友人の瞳が、許可を得るようにシュリに向けられるのを見て、ディリアンは軽く目を見張る。
記憶が間違っていなければ、友人の冒険者ランクはS。
それに昔の彼女は男を獲物として見て軽視している印象が強かった。
そんな友人がたてている少年の冒険者ランクはA。
その年頃の少年が到達できるランクではないが、Sランクの冒険者から見れば格下のはず。
そんな相手に、あの友人が従うなんて事は、目の前で見せられた今でも中々信じられそうにない。
それ以前に、少年は明らかに幼く愛らしく、正直かつて友人が好んで食い荒らしていたタイプとはまるで違っていた。
(長く生きすぎた弊害で少年趣味にでもなったのだろうか)
そんな考えが頭に浮かび、思わずまじまじと2人を見つめてしまう。
そんな彼の視線を感じたのだろう。
アガサは苦笑を浮かべ、
「シュリの眷属は、ドラゴン、フェンリル、九尾の狐。プラスそこの悪魔で4体。眷属をテイムする条件はなにか、ディル、知ってる? あ、ちなみに私は少年趣味になった訳じゃないわよ? シュリだけが好きなの」
先ほどの質問の答えと共に、ディリアンの頭の中を読んだような返事を返した。
シュリだけが好き。
その言葉はきっと本当なのだろう。
昔は、己に気がないと分かっているディリアンにさえ、性別が男であるというだけで無駄に色気を放ってきたものだが、今はそれがない。
今の彼女が甘く見つめるのは、彼女の腕の中にちんまりおさまっている少年を見るときだけ。
その事実に驚きつつも、ディリアンは少しほっとした。
正直、彼女をこの国に招くネックはそこだったのだ。
自分や国家元首が誘惑に負けるとは思っていなかったが、その周囲を固める者達の理性の心配まではしていられない。
最悪、彼女と接した者全てが餌食になり得ると、その心配はあった。
ただ、年を重ねて思慮深くなり欲望が減退している事もあり得ると思い、己の目で今の彼女を確かめてから対策をしようと考えていた。
最悪、彼女に接する者は同性だけにするしかないと想定していたが、その必要はなさそうだ。
しかし。
(ドラゴンにフェンリルに九尾の狐。そして悪魔、ですか)
本当にそれらを全て眷属にしているというのなら、目の前の少年の強さは確かだろう。
なぜなら。
「テイマーが対象をテイムするには、そのためのスキルを獲得する他に、己の力で対象を屈服させる必要がある……」
「そうよ。そこを理解しているなら分かるわよね?」
「ええ。名前を聞くだけで脅威だと思える生き物を、その少年……シュリが屈服させた、ということ。少々……いやかなり、信じがたい事ではありますが」
信じがたいが、それが本当であるなら、目の前の少年は悪魔をも屈服させる力を持っている、ということだ。
今のこの国の現状にもっとも必要なのは、この見るからに幼く愛らしい少年だ、ということになる。
ディリアンはシュリを見つめ、それからその傍らに控える悪魔を見た。
見た目はただの美しい女にしか見えない。
だが、悪魔という存在の姿形は千差万別。
人と変わらぬ姿を好む者も多く、見た目だけでは中々判断できない。
ただ、人でない為、その身に宿す魔力は明らかに人とは違う異質なもの。
普通の人間では感じられない魔力の違いを、魔に属する者の血がその身に流れるディリアンは感じることが出来る。
その血は薄く、かすかに感じることが出来る程度だが。
その、己の身を流れる血が教えてくれた。
目の前の者は異質だ、と。
そこまではっきり感じられることは珍しい。
おそらく、目の前の悪魔が己を隠そうとしていないためなのだろう。
「貴女は本当に悪魔なんですか?」
オーギュストという悪魔に問いかける。
女性形態なのに男名前なのは、かつて男の姿の時もあったという事なのだろうか、とそんな事を考えながら。
「ああ。隠していないから、お前程度の血の濃さでも俺の異質さは感じられるだろう? 魔の血を持つ者がいて助かった。ただの人間に悪魔であることを証明するのは、存外難しいものだからな」
「そうなの?」
「ああ。悪魔は人に似た姿を好む者が多いし、1度受肉した姿を別の姿に変えるのは結構手間でな。かといって、人が想像するような悪魔らしい姿をしていては、人の世での活動は難しい。まあ、ただの一時的な戦力として召還されたのであれば、それでもいいんだろうが。人間とは基本的に、己と同じ姿をした者には寛容な生き物だ。人の姿をした俺が、己が悪魔である証明をしようとして力を見せても、並外れて強い人間としか認識して貰えないことの方が多いだろうな。それこそ、人でも喰って見せない限り」
「えっと、人は食べちゃダメだからね?」
「ああ。分かってる。シュリに嫌われるようなことはしない。シュリが嫌う行為も。それにもともと、俺は人の肉を喰うのは好きじゃなかった。悪魔である以上、人の魂を喰わなかった、といえば嘘になってしまうが、それも随分昔の話だ。ここ数百年の間は、人を喰ってはいない。それだけは信じて欲しい」
オーギュストは真剣な顔でシュリを見つめた。
その告白を、シュリは頷いて受け入れ、微笑んでオーギュストの頬を撫でた。
「大丈夫。信じるよ」
そんな2人の様子を眺め、ディリアンは頷く。
2人の主従関係は強固なもののようだ、と。
だが、念のために問いかけた。
「貴女が悪魔であるということは、理解しました。明確に悪魔だと断じられるほど私の能力は高くないですが、少なくとも人とは違う別のものだということは分かります。貴女がかなり強いということも。貴女ほどの力があれば、人を殺すなど簡単でしょう? なのに貴女はこの少年……シュリに従う事を良しとする、と?」
「誤解があるようだが、悪魔にだって個性がある。中には人間を嫌っていない、人間を食料と考えていない者だっているさ」
「貴女が、そうだと?」
「今はそうだな。召還主が死んだ後も、俺は人の群れに紛れて生活してきた。シュリに出会うよりもずっとずっと前から。その中で出来た友人もいるし、師匠として仰ぐ人間もいる。少なくとも、今の俺は人間が嫌いではない。彼らを食料として見ることが出来ないくらいには、な」
それに、とオーギュストは続けた。
「今の俺は、シュリのものであることを嬉しい、と感じている。身も心も、今ある俺の存在の全てはシュリのもの。シュリの為に生き、シュリの為に命を使うことが出来る事を、心の底から幸福だと思っている」
言い切ったオーギュストという悪魔の言葉に嘘はないか、それを確かめるようにじっと見つめる。
嘘はない、と思う。
人の心を読めるわけではないが、目の前の悪魔の瞳は穏やかで真剣だった。
だが、今回の標的もまた悪魔。
人に忠誠を誓っていたとしても、己と同種の生き物を滅することは出来るのだろうか。
「君は悪魔で相手も悪魔。君は同じ種族の者を滅する手伝いが出来ますか?」
真面目な問いだったが、オーギュストという悪魔に鼻で笑われた。
「人間とはおもしろいな。お前達人間だって同じ種族同士殺し合うじゃないか。それなのに、別の種族は同族殺しをしないとなぜ思う? それに元々悪魔は個人主義な者が多い。同族だろうとなんだろうと、邪魔だと思えば排除することに躊躇はない」
オーギュストの答えに、ディリアンは頷いた。
目の前の悪魔がいう通り、人間も同族同士殺し合う生き物だ。
今でこそ各国の友好の元落ち着いているが、一昔前までは戦争という大義名分の元の殺しあいがあちこちで頻発していた。
現在の平和とてきっかけがあればどうなるか分からないし、そうでなくともちょっとした諍いから他者を殺す者もいる。
結局、1番大切なのは同じ種族であるという点ではないのだろう。
大切なのは個人個人のつながり。
種族が違おうと大切なものは大切だし、同じ種族でも馬が合わないものはあわない。
まあ、中には己の種族以外を認めようとしない、強固な同族至上主義者もいるだろうが。
目の前の悪魔にとって、大切なのは同族ではなく……
「あなたにとって1番大切なのはその少年、ということですか?」
答えの分かり切った問いではあるが、率直に尋ねてみた。
「ああ。今の俺にとっての最優先はシュリだ。まあそれ以前にも、俺は同族にそれほどの思い入れはない。知り合い程度の奴はいないでもないが、よりつき合いが深く思い入れがある相手はほとんどが人間だ。その点だけでも、俺が同族の味方をする理由はないな」
答えるオーギュストの顔をじっと見つめ、見極める。
その言葉に嘘はない、と思った。
だから、とりあえず今は……
「わかりました。あなたを信じましょう」
「俺じゃなく、シュリを信じてくれればいい」
ディリアンの言葉にオーギュストが素っ気なく返す。
その言葉に促されたというわけではないが、ディリアンは改めて友人がずっと抱いたままの少年に目を移した。
いろいろ話を聞き、無視できない情報を手に入れた後でもなお、その少年の幼げな容貌は、ディリアンの胸に不安しかもたらさない。
だが、見た目だけで判断して排除するのは明らかに悪手だと、そう思えるだけの判断力はあった。
ディリアンはほんの一瞬瞠目する。
そして自分に言い聞かせた。己の中の常識を盲信するのはするのはやめなければ、と。
幼い子供は弱く、大人が庇護すべき存在だという常識は。
少なくとも、シュリという少年にその常識は当てはまらない。
再び目を開き、ディリアンはまっすぐシュリを見つめる。
それから深々と頭を下げた。
「今までの非礼をお詫びします。その上で改めてお願いしたい。シュリ、この国の危機を救うために、あなたの力を貸していただけますか?」
その言葉に、シュリはにっこり笑い、そして答えた。
もちろん、と。
その笑顔を見た瞬間、ディリアンは己の胸がなにかにずぎゅん、と打ち抜かれたような気がした。
思わず首を傾げ、まじまじとシュリの顔を見る。
さっきまでも十分可愛い子供だと思っていたが、見れば見るほどその姿は味わいを増し、様々な感情が胸の内で渦巻く。
心臓がやけに早く鼓動を刻み、
(心臓がおかしいですね。私も年には勝てないということなのでしょうか)
そんな見当違いの事を思いつつ、ディリアンは不思議そうな顔で再び首を傾げた。
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