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大火竜の頼み事
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次に前に出たのはシャンとタックだ。
『ガルウ』
『……あんたたちかい。久しぶりだね』
シャンたちを見て少し複雑そうな顔をする大火竜。
久しぶり、というからには知り合いではあるんだろうけど……再会を手放しで喜んでいるような雰囲気じゃない。
『ガルウ、ガウッ』
『ふん、ちびから事情は聞いたようだね』
『ガウ』
『……何だって、そっちの小娘が?』
一体どんなやり取りがあったのか、大火竜が胡散臭そうに私を見た。
『とても信じられないね』
『ガウッ!』
『……嘘じゃない、ねえ。はあ、わかったよ。任せるとしよう。でも、妙な真似をしやがったらただじゃおかないよ』
……本当に一体どんなやり取りが行われているんだろうか。
『こっちだ。ついてきな』
大火竜がゆっくりと立ち上がり、洞窟のさらに奥に向かっていく。
何があるんだろう?
私たちは顔を見合わせたものの、結局は大火竜の後を追うことにした。
おそらくこの先にあるものが、シャンが私をここに連れてきた理由なんだろう。
『ここだよ』
大火竜が立ち止まったその場所では……十体以上の火竜が倒れて荒い息を吐いていた。
「……これは?」
『風竜の親玉――そのなれの果てにやられた私の同胞だ』
大火竜は忌々しそうに事情を語った。
『少し前、風竜の群れがどこかからやってきてこの山に棲みつきやがった。おまけに私たちの狩場を好き勝手に荒らし始めた。私たちは当然戦ったよ。向こうの親玉も私の炎できっちり仕留めてやった……けど、それで終わらなかった』
「終わらなかった? どういうことですか?」
『生き返りやがったんだよ、向こうの親玉が。死体になってもまだ動き回って私たちを襲ってくるんだ。まるで生きてた頃の怨念に取りつかれたようにね』
死体になっても動き回って襲ってくる、ってことは……
「アンデッド系の魔物になって復活した、ってことかな」
「だろうな。しかも元が竜となると厄介な性質を持つ。この竜どもの症状にも納得がいく」
ハルクさんとオズワルドさんが納得したように頷き合う。
「あの、どういうことですか?」
「“ドラゴンゾンビ”だよ、セルビア。恨みを残して死んだ竜は死後もまだ動き続けることになる。そしてドラゴンゾンビは生前の能力に加えて、強烈な毒のブレスを吐くことで知られているんだ」
毒のブレス。
つまりそれがこの火竜たちを苦しめているものの正体ということだろう。
『小娘。あんた、この竜たちを救えるそうじゃないか。あんたの隣にいる竜がそう言ってるよ』
「シャンがですか?」
『ああ。そのためにあんたをここに連れてきたってね』
なるほど。
「シャンは仲間が心配だったんですね」
『……ガウッ』
シャンは私の言葉を無視するように横を向いた。照れているのかもしれない。
まあ、そういうことなら話は早い。
「わかりました。では治してしまいますね」
『本気で言っているのかい? この毒は並じゃない。私たち竜ですらもう何匹も殺された。多少解毒の心得があるからって簡単に行くようなもんじゃ――』
「【聖位解毒】」
パアアッ――
私の手から放たれた光が洞窟の中を満たし、倒れる火竜たちを癒していく。
時間にして数秒。
光が収まると、竜たちの苦しげなうめき声は聞こえなくなっていた。
『ガウ!?』
『グルルッ、ガアッ!』
竜たちは起き上がり、翼や首を動かして元通り動くようになった体の調子を整えている。
「終わりました。これでもう毒に苦しむことはありません」
私が言うと、大火竜は目を点にしていた。
『……な、何だいこりゃあ……私は夢でも見ているのかい?』
「安心してください、これは現実ですよ」
『そんな馬鹿な! だってあの毒は本当にとんでもない代物だったんだよ!? それを一瞬で綺麗さっぱり消し去ったっていうのかい!?』
困惑したように言う大火竜だけど、どれだけ疑っても火竜たちが元気になった事実は変わらない。
「相変わらずセルビアはセルビアだね」
「なんかもうこの流れもおなじみだよな……」
「あの女をうまく運用すれば国ひとつぶんの医療をまかなえるのではないか?」
ハルクさんたちからは呆れたような視線を感じる。
誰か一人ぐらいは素直に褒めてくれてもいいような気がするんですが。
ともかく、これでシャンの要求は果たせたことだろう。
『ガルウ』
『……あんたたちかい。久しぶりだね』
シャンたちを見て少し複雑そうな顔をする大火竜。
久しぶり、というからには知り合いではあるんだろうけど……再会を手放しで喜んでいるような雰囲気じゃない。
『ガルウ、ガウッ』
『ふん、ちびから事情は聞いたようだね』
『ガウ』
『……何だって、そっちの小娘が?』
一体どんなやり取りがあったのか、大火竜が胡散臭そうに私を見た。
『とても信じられないね』
『ガウッ!』
『……嘘じゃない、ねえ。はあ、わかったよ。任せるとしよう。でも、妙な真似をしやがったらただじゃおかないよ』
……本当に一体どんなやり取りが行われているんだろうか。
『こっちだ。ついてきな』
大火竜がゆっくりと立ち上がり、洞窟のさらに奥に向かっていく。
何があるんだろう?
私たちは顔を見合わせたものの、結局は大火竜の後を追うことにした。
おそらくこの先にあるものが、シャンが私をここに連れてきた理由なんだろう。
『ここだよ』
大火竜が立ち止まったその場所では……十体以上の火竜が倒れて荒い息を吐いていた。
「……これは?」
『風竜の親玉――そのなれの果てにやられた私の同胞だ』
大火竜は忌々しそうに事情を語った。
『少し前、風竜の群れがどこかからやってきてこの山に棲みつきやがった。おまけに私たちの狩場を好き勝手に荒らし始めた。私たちは当然戦ったよ。向こうの親玉も私の炎できっちり仕留めてやった……けど、それで終わらなかった』
「終わらなかった? どういうことですか?」
『生き返りやがったんだよ、向こうの親玉が。死体になってもまだ動き回って私たちを襲ってくるんだ。まるで生きてた頃の怨念に取りつかれたようにね』
死体になっても動き回って襲ってくる、ってことは……
「アンデッド系の魔物になって復活した、ってことかな」
「だろうな。しかも元が竜となると厄介な性質を持つ。この竜どもの症状にも納得がいく」
ハルクさんとオズワルドさんが納得したように頷き合う。
「あの、どういうことですか?」
「“ドラゴンゾンビ”だよ、セルビア。恨みを残して死んだ竜は死後もまだ動き続けることになる。そしてドラゴンゾンビは生前の能力に加えて、強烈な毒のブレスを吐くことで知られているんだ」
毒のブレス。
つまりそれがこの火竜たちを苦しめているものの正体ということだろう。
『小娘。あんた、この竜たちを救えるそうじゃないか。あんたの隣にいる竜がそう言ってるよ』
「シャンがですか?」
『ああ。そのためにあんたをここに連れてきたってね』
なるほど。
「シャンは仲間が心配だったんですね」
『……ガウッ』
シャンは私の言葉を無視するように横を向いた。照れているのかもしれない。
まあ、そういうことなら話は早い。
「わかりました。では治してしまいますね」
『本気で言っているのかい? この毒は並じゃない。私たち竜ですらもう何匹も殺された。多少解毒の心得があるからって簡単に行くようなもんじゃ――』
「【聖位解毒】」
パアアッ――
私の手から放たれた光が洞窟の中を満たし、倒れる火竜たちを癒していく。
時間にして数秒。
光が収まると、竜たちの苦しげなうめき声は聞こえなくなっていた。
『ガウ!?』
『グルルッ、ガアッ!』
竜たちは起き上がり、翼や首を動かして元通り動くようになった体の調子を整えている。
「終わりました。これでもう毒に苦しむことはありません」
私が言うと、大火竜は目を点にしていた。
『……な、何だいこりゃあ……私は夢でも見ているのかい?』
「安心してください、これは現実ですよ」
『そんな馬鹿な! だってあの毒は本当にとんでもない代物だったんだよ!? それを一瞬で綺麗さっぱり消し去ったっていうのかい!?』
困惑したように言う大火竜だけど、どれだけ疑っても火竜たちが元気になった事実は変わらない。
「相変わらずセルビアはセルビアだね」
「なんかもうこの流れもおなじみだよな……」
「あの女をうまく運用すれば国ひとつぶんの医療をまかなえるのではないか?」
ハルクさんたちからは呆れたような視線を感じる。
誰か一人ぐらいは素直に褒めてくれてもいいような気がするんですが。
ともかく、これでシャンの要求は果たせたことだろう。
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