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11.大っ嫌い!!

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先ほどまでの感情を見せない能面のような顔はなくなり、涙を流しながらも、妖精のことをいつくしみつつ、わけを知りたいと望む顔。こんなに美しい涙は見たことがなかった。

「私たちがそんなこと言うわけないわ!だってナターシャの事が大好きだもの。
だから私たち妖精王の力を借りてシャーロットって人の前で一度だけ姿が見えるようにしてもらったの。そして「ナターシャの事虐めないで!!」って言ったの。

だってあの人たちいっつもナターシャに酷いことばかりして!!大っ嫌い!!」

妖精たちが口々に「大嫌い!!」「大嫌い!!!」と叫んでいる。
中にはパタパタと羽を動かしながら、ベーと舌を突き出している妖精もいる。
その声を聞き、様子を見て、皆の視線が集まるのは1か所。

シャーロット。

先ほどよりも更に青くなった顔で唖然としながらも震える声を絞りだす

「う、うそよ!お姉様がまたなにかしたんだわ!だからこんなことになっているのよ。
その妖精だって本物か怪しいものだわ。

大体、どうして会えなかったはずなのに今は会いに来れているのよ…おかしいじゃない!」

最後は心の底からの叫びと言ったように大きな声で言った。

「それはこの王子のお陰よ。
この王子弱いながら、除悪効果を持っているみたいなの。そのおかげであなた達が施した小細工が少しずつはがれ始めていたの。

そして、なにより大きかったのはナターシャの意志。自分を信じ、間違ったことはやっていないと思い込めた、誰かに信じて欲しいと強く願ったことで、あなた達の小細工が破壊されたのよ」

妖精リーシャが説明するその言葉にシャーロット達を見る目は冷たくなっていくばかり。
妖精の加護があるこの国で、規律を乱していたのはナターシャではなくシャーロットだった。

その事実が皆の中に広がっていくのは必然である。

「いや、やめてよ。

きっとこの妖精はお姉様に洗脳されているんだわ!だからこんな事実でないことをわざとみんなの前で広めるのよ。大体どうやって妖精たちが近寄ることのできない結界だなんて作ると言うの?そんなことできるはずないじゃない!

こうやってお姉さまはいつも私のことをいじめるのよ!!」

シャーロットが酷い酷いと手で顔を覆いながら大げさに悲しんでいるような素振りをする。

今までだったらシャーロットのこの姿に多くの男性が心奪われナターシャに疑惑の目を向けていただろう。

しかし今はもう違った。

今までシャーロットの味方であったはずの子息たちでさえシャーロットに疑惑の目を向けている。
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