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32.わずかな顔の歪み

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「次期国の王ともなろうものが騙されたから被害者とはシャトール王はいささか浅薄な認識の持ち主であるようですな。これからの治世がいささか心配になる。
ビビド、そなたの目から見てダリアン王子は被害者に映ったか?」

「はっ、
失礼ながら私の目にはダリアン王子は被害者には到底見えませんでした。
それどころか罪のない公爵令嬢を押さえつけ、貴族界から縁を切らせ、追い出そうとした主犯に見えました。
ですが、その令嬢が妖精姫で間違いないとわかると手の平を返したように「私の婚約者でいていい」などと叫んでいました。その姿はあまりにも無様であり、短慮であるように感じました」

「っ……………
ビビド王子は昔からダリアン王子の優秀さにねたんでいたと聞いたことがあります。
だからそのようにダリアン王子を貶めるような発言をなされるのでは?」

その言葉に”ふっ”と小さな笑いがいたるところで漏れ聞こえてきた。

「そのような話、どこから聞かれたのか伺いたいですね。
その話をあなたにした方はよほどあなたを貶めたい様子。

ちなみに私からも一つ。ダリアン王子は妖精姫のナターシャ嬢との結婚がなければ王位につけなかったとは本当でしょうか。とても優秀とは思えない噂ですが。

しかもそんな頼みの綱であるはずのナターシャ嬢との婚約を一方的な冤罪で破棄してしまうなど、とても優秀とは思えない。優秀どころか考えられないほどに愚かだと思いますが」

「ビビド!!!貴様調子に乗るなよ!!!
お前なんてただ生まれたのが大国であっただけ。運がよかったそれだけだ!!」

ビビド王子の言葉に煽られるように発せられたのはそんな言葉だった。
シャトール王は肩を大きく揺らしながら、感情を表に出している。
だが、シャトール王は本来気が弱く、こうして語気を強めたことなど記憶にない。

そしてその様子を見たクレヴァ王の顔がわずかにゆがんだのを他の王たちも見逃さなかった。

「ビビド、もういいだろう。
クレヴァ王、シャトール王のこの様子では先ほどの話しが事実とはなかなか信じがたいですな。やはりパーティー会場で話されたことが事実ではないのですか?

確認しておきますが、この場で嘘をついたことが確認できれば、それ相応の対応をさせて頂きますので、返答は慎重にお願いします」
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