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31.リリーヌ国の王
しおりを挟む落ち着いたままのクレヴァ王はそんな風に話した。
要するに自分ができることは行っており、あの時話した内容には一部間違いがあったのだと。
「クレヴァ王、それはどういうことでしょう。
あの時の発言は偽りだったということですか?」
ビビド王子が低い声でそういった。
「いやいや、そうは言ってはおらんよ。
だが、そうだな。あの時は私一人が悪者になればそれで事が収まるのではないかと動揺した中で思ってしまったのだよ。
そのことでビビド王子にはいらぬ心配をかけてしまったことを心から詫びよう。この通り」
そう言ってクレヴァ王は頭を下げた。
しかしビビド王子は見てしまった。
クレヴァ王の口の端が僅かに上がっているのを。
「クレヴァ王、情報共有を怠った事への謝罪は受け取った。
では次にリリーヌ国のシャトール王に聞くことにしよう。シャトール王、クレヴァ王の今の話は事実ですか?」
ギラン王の問いにトレアール国の隣国、リリーヌ国のシャトール王が答える。
「もちろん事実です。クレヴァ王が嘘などつくはずがない。
あの時はクレヴァ王から依頼を受けた父が女性の捜索を指示しましたが、見つかったのは遺体でした。
その為各国への報告はしなかったと聞いております」
リリーヌ国は小さな国で軍隊を持たない国。だからもし攻め入られでもしたらトレアール国が防衛をする。その為、リリーヌ国はトレアール国のいいなりとなっていると評されている。
しかし問題はそれだけではない。
最近は弱気な王が続いており、トレアール国に逆らうことができなくなっていると問題視されていた。
シャトール王もその一人である。
シャトール王は5年前に即位したまだ30代の王。
しかもその性格はおとなしく、その上自己保身が強い傾向にある。
その為余計にトレアール国に逆らえず、最近では属国化しているとまで言われていた。
だからこの発言も信憑性があるかは疑わしいものだった。
「そうですか。
ですが今回トレアール国で呪いの子とその娘がダリアン王子の婚約者に取って代わろうとしたと聞いています。
そしてそれを手助けしていたのがダリアン王子だと。
それに関してはリリーヌ国も承知の事だったと?」
「っ、いえ、そのような事は承知しておりません。
しかし王子は手助けしようとしたわけではなく、ただ騙されていたときいております。しかも呪いの子だとは知らずに。
少しばかりその行動は安易だったと言えるでしょうが、彼も被害者だったのではないですかな」
そう話すシャトール王の顔は少しばかり苦悶の色が浮かんでいた。
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