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43.シャーロットへの質問
しおりを挟む気でも狂ったのかと観察していても、どうもそういうわけでもなさそうだ。
これがきっと彼女の平常運転なのだろう。
なるほど、ナターシャの婚約破棄騒動は、これは原因だと言うのは頷ける。
ビビドがここに来た理由、それは彼女を刺激せずに現状を把握するためだった。
刺激してしまっては今のビビドではどう対処していいのかまだ対策を講じていないから、今日は話を聞きに来ただけ。
「シャーロット嬢、今日はあなたの話を聞きたくてここに伺いました。
あなたは社交の場で自分こそが妖精たちに愛されていると言っていたようですが、心が痛まなかったのですか?」
「心が痛む?なぜ?
私はナターシャと同じ姉妹なのよ。妖精に私が愛されていたって何もおかしくなんてないでしょう?それに私の方が可愛らしいもの。妖精に愛されているなら私の方に違いないのよ。
それなのにナターシャは最初から公爵家で生まれたというだけで私からすべてを奪った。
妖精姫という立場も、王太子の婚約者と言う立場も。
だから事実を言っていただけ。それなのに心が痛むはずなんてないでしょう?」
さもビビドの質問が不思議だと言わんばかりに首をかしげながら答えるシャーロット。
しかし彼女の口から出てくる内容は独善的な言い分でしかない。
父の血だけがつながった姉妹だとしても、ナターシャからシャーロットがすべて奪っていいはずなどない。
妖精にナターシャが愛されたとして、自分の方が可愛いから自分が愛されるべきなどという道理が通るはずがない。
そしてナターシャの立場がすべてシャーロットから奪ったものであるなど、独善的でしかないのだ。
「…………そうですか。
それでは別なことを伺います。
クロエラとシューナ、お二人のことをどう思いますか?」
ビビドが聞いたのは、始めに顔がただれた被害者の名だった。
「大嫌いよ。クロエラは高貴な立場の私に、固いパンを出してきたのよ。信じられない。こんなところに入れられているというだけでも信じられないのに、その私に固いパンを食事だと運んできたんです。しかも温かい飲み物も無し、デザートも無し。
それを抗議したら『そんなものあるはずがありません。食べないのであればおさげします』といって固いパンさえ取り上げようとしたんですよ。
それにシューナ。あの女は私の顔を見て笑みを浮かべたの。まるであざ笑うかのようないやらしい笑みを。
それに抗議をした私を見てこういったのよ。
「笑ったりして大変失礼いたしました。ご自身の方が可愛いから妖精に愛されていると豪語していた方の容姿にびっくりしてしまっただけですのでお気になさらないでください」
そう言って笑いながら出て行ったのよ!あの女!!
顔が爛れて、体中の皮膚が爛れて、これから人前に出れないようになればいいのよ!!!」
あぁ、彼女のこの歪んだ想いが現実になってしまったのだろう。
だが、この言い様ではきっとまだ自分が力を使えるとまでは把握していないのだろう。
この性格ならば、自分の願いが叶ったとわかれば高笑いでも始めそうだ。
「そうですか。わかりました。
貴重なお話を伺えてとても有意義な時間となりました。それでは」
ビビドは余計なことは口にせず、その場を後にした。
牢ではシャーロットが最後まで「どうして一緒に連れて行ってくれないの」と叫んでいたが振り返ることはしなかった。
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