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44.妖精王
しおりを挟むビビドが牢から戻ると、執務机にナターシャからの伝言が置いてあった。
『リーシャが戻りました。サロンでお茶をしております』
ビビドがその足でサロンへ向かうと、そこには机に向かうナターシャの姿がある。
この光景は最近見慣れたものになっていた。
ナターシャの前にはきっとリーシャがいるのだろう。
だからナターシャがあんなにも嬉しそうな笑みを浮かべているのだ。
「ナターシャ、伝言がありましたので伺いました。ご一緒しても?」
ジャッカル国で過ごすようになったナターシャのことをビビドは”ナターシャ”と呼ぶようになった。
ナターシャが王子に”嬢”をつけてもらうのはおこがましいというのでそれに従ったのだが、そのおかげで距離は近くなった気がした。
ビビドの声に振り返ったナターシャは立ち上がり、ビビドを迎え入れる。
「ビビド様、もちろんです。
でも来てくれたのはリーシャだけじゃないんですよ。妖精王のステアシル様もご一緒なのです」
ビビドには見えないが、そこにはリーシャとは別にステアシルという妖精王も一緒らしい。
だからナターシャはこんなにも嬉しそうな顔をしているのか。
妖精王が来てくれたと言うことは何らかの力になってくれるためかもしれない。それ自体はありがたい事だが、ナターシャがあんなにも無邪気な顔を向けるのが男だなんて事がビビドには受け入れられないのだ。
「妖精王?それはスゴイね。
妖精王ステアシル様、席を共にすることを許可いただき光栄です。
私ビビド・ジャッカルと申します。以後お見知りおきを」
ビビドは見えないが、菓子皿が置いてあるところに向かって頭を下げた。
リーシャの時もそうだが、ナターシャは一緒にお茶をするとき必ず妖精の分も準備をするのだ。だからきっとそこにいると推測して。
挨拶をしたビビドはナターシャの隣の椅子に腰掛ける。
隣にはナターシャ、最近ではこれが珍しいものではなくなってきたのに。
「ビビド様、シャーロットの事ですが、いかがでしたか?」
「うん、少しだが話を聞いてきたよ。
彼女はまだ自分に力があると理解しているわけではなさそうだ。
だが、顔が体中が爛れてしまえばいいのにって願っていたみたいだ」
「そう……ですか………」
ナターシャは暗い声でビビドの言葉に返し、言葉を続けた。
「妖精王がシャーロットを任せてもいいと言ってくださったのです。
シャーロットの力はどんどん強くなっていると。今放っておいたらもっと被害が広がるだろうと。
だから自分が請け負ってもいいとおっしゃってくれたんです。
………どう、思いますか?」
不安げな声で聞いてくるナターシャ。
どうしてナターシャはこんなにも不安そうにしているのだろうとビビドは不思議になるが、それよりも妖精王はシャーロットをどう対処しようと言うのか。
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