大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

落下と着地

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早速だが、いいニュースと悪いニュースの二つがある。
ひとつは三十分と経たずに聖学に着いたこと。こっちがもちろんグッドニュースの方だ。流石龍種。仮にこれが一時間だったらぶっ倒れてたかもしれん。
じゃあ次、悪いニュース。
只今絶賛落下中だ。
どういうことかと言うと、聖学の上空へ来た時に、降りようとしたのか龍が一度身体をよじった。
すると──普段なら絶対に切れることが無い俺の髪が一斉にぷつりっ、と。見事に全部切れた。
で、身体をよじった龍に振り落とされて──現在地面のシミになるため加速落下中な訳だ。
………ヤバい、どうしようか。
『何も策がないのか?』
血鎖で地面叩いて衝撃を殺しつつ、血呪で身体強化して着地の衝撃に耐える。
『却下。下にヒトがいるだろ。見られたらどう言い訳する。それにトゥーラもいる』
それなんだよな、まばらだけど人もいるからそれに配慮せにゃならん。前に結界の外で似たような落下をした時はマキナがいたから良かったものの…今はいないし。
あれ、割とこれ詰んでないか?
『死因は適当に落下死、か?勇者としては初めてになるな』
ンなことになるぐらいなら血界使うわボケ!!
あぁクソ、地面にぶつかる!
「第一血界──」
『おい馬鹿やめろ!』
いいや!限界だ撃つね!
「《血──」
「そォ────れッ!!」
血鎖が発動する直前、俺の真下で何かが広げられた。
それは俺の視界一面が真っ白になるほどの巨大な何か。
突然のことに、一瞬血鎖の発動を躊躇瞬間、それがこちらへ向かってせり上がって来、俺と衝突した。
「がふっ!?」
『今代の!?』
バキバキバキバキバキッ!と白いそれを砕きながら落下するも、白いそれがクッションの役割を果たし、地面に触れる直前で俺の落下が止まる。代わりに半ばハマったような形になるが、地面の上でケチャップの真似事をするよりか何倍もいい。
『大丈夫か!?今代の!』
なんとか。少し擦ったところがヒリヒリするだけ。
「しかし…なんだこりゃ」
バキバキっ、ともう一度音を鳴らして白い物体から抜け出し、振り返ってそれを見る。
『……白いブロッコリー?』
「に、見えなくもないが…違うだろ。どう見たって」
触れば表面は乾ききっており、少し爪を立てれば簡単に痕がつく。少し蹴飛ばしてみれば、割と簡単に動いた。かなり軽いらしい。
「ふーん?なんだこれ?」
「これ?ポップコーン」
突如、目の前の白い物体から声がした。
「へ?」
「よいしょっと」
バキバキパキッ、と白い髪の小柄な優男が出てくる。
「初めまして《緋眼騎士》さん。僕は──」
「ご、ごめんなさーい!大丈夫ですか…?」
「トゥーラ?ざけんな。死ぬかと思ったわボケ」
上から静かに降りてきたトゥーラの小脇に抱えられているアーネを確認して一安心。荷物はアーネのいた座椅子に縛り付けておいたがそっちも無事だったらしい。よかった。
「私はまた王都で生徒を拾ってきます。後の話は…あ、カイルくん、任せました」
「わかりましたよ先生」
ニコニコ笑顔の絶えない、カイルと呼ばれた白髪の男が応じる。
………まさかとは思うが、他の生徒が全部アレで来るのか?
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