大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

暇と本

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んで。
昼ぐらいまでその後は寝てた。
多分、今は二時ぐらい…だと思う。
今頃みんな、訓練所で魔獣とかと戦ってるんだろうな…。
そう言えば、三人班とかキツイだろうけど、大丈夫なんだろうか?流石に先生もどうにかしてると思いたい。
さて、少し遠くに思いを馳せたところで意識を自室へと戻そうか。
ハァ…なんと言うか。
『暇だな』
そういう事だ。
「…暇ですわね」
既に何度も表紙をみた小説から顔を上げることすらせずにアーネがぼそりと呟く。
ちなみに題名は分からない。どうしても見せてくれねぇんだよな。
…にしても、あれ一冊でも中々な値段すると思うんだけど。アーネ個人の持っている本はもうちょっと多い。
コイツ、実は金持ち…?
「お前が寝てろって言うんだろ?俺だって死ぬほど暇さ。そうだ、訓練所とは言わねぇから取り敢えず外に──」
「ダメですわよ?」
うん、にべも無い。
ちなみに、トイレとかに行くにしてもアーネが介護という名目で監視しているので抜け出せない。
そもそも、今は身体中ガッタガタなので、俺は走ることはおろか、歩くことにすら苦労するので即座に捕まるだろうが。
つまり、朝の十分あれば本が云々とか、夢のまた夢だったって話がだな。
…さて、どうするか。
このままだったら暇すぎて死ねる。
「あ、そうだ」
「はい?どうしましたの?」
大した話じゃないんだが。
「アーネって本何冊か持ってたよな?」
「えぇ、まぁ。どれも昔から読み返していたので、もう読み飽きたものばかりですけど」
それでも読み続ける辺り、アーネもかなり本が好きなんだろうか。
まぁ、単にやることが無いってだけな話の確率の方が高そうだが。
「んじゃ、適当なのどれか一冊貸してくんねぇ?」
俺としては、字を読む練習と暇つぶしを兼ねての話で、特に何も考えちゃいない。
んだけど。
「ぴゃっ!?」
奇声を上げて飛びずさった。しかも顔真っ赤。
「どした?」
「いやっ、そのっ、えっと…」
らしくも無くモジモジとするアーネ。
「どうした?何度も読んだんだろ?まだ読んでないんじゃないんだ。別にいいだろ?」
とか言ってる間にもアーネはゴニョゴニョとなにか言ってやがる。
しかし、荷物を漁り始めたので、多分貸してはくれるんだろう。
「ど、どうぞですわ」
「おう、さんきゅ」
そう言って差し出された本は。
「………」
えーっと。
『あれ?読まねぇのか?』
いや、読むけど。読むけどさ…。
いつものアーネのイメージとかけ離れてるって言うかなんて言うか…。
『つまり、どういう事だ?』
なんて言うか…ユメミルショウジョとか言う人種が好んで読む類いの本だわ。
『………個人の自由ってことにしようか』
そうだな。
借りた手前、読まないわけには行かない。
ちなみに分厚さは鈍器級。
ため息を呑み込みつつ、少し迂闊だった数分前の自分を恨み、表紙を捲った。
その直前、チラリとアーネを見ると、さらに顔を真っ赤にしたアーネと目が合った。
「ま、まだマシな方なんですからね!!」
………。
無言で視線をそっと本に戻した。
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