大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

墜落と突入

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何がどうなってあぁなったのか、正直俺にもよく分からない。
憶測で言うなら、雷であることからして《白虎》がやったことであろうという事や、あの手を出したヤツやその周りを這う影について予想程度は簡単につく。
だがひとつ、この場で確実に言えることは非常に短く、端的。
「──墜ちる」
直後、何百、あるいは何千という家屋が一斉に押しつぶされ、ただの瓦礫へとなった。
戦果としては上々。恐らくこれだけの打撃を魔族に与えたのはこれまでの歴史の中でも指折りのものだろう。
だが俺は思わず舌打ちをした。
「クソっ!」
都市が落下している最中に薄らと気づいていた。
あの手が現れて都市を押しとどめかけた時点で何となく予感はしていた。
「角度がズレたッ…!!」
予想…というか予定では、あの大きくそびえる魔族の塔へ向けて突撃させ、陽光楽園のド真ん中に空中都市を墜すはずだった。
しかし──強引かつ雑な方法によって強制的に飛ばされた弊害で落下の微調整は出来ず、加えて不完全とはいえ物理的な妨害も入った。
都市が陽光楽園に落ちただけ御の字。そう言ってもいいだろうが──陽光楽園の四割程度削ったぐらいでは、魔族…妖魔族の神である《我神》を引きずり下ろすには到底足りない。
もっとだ。もっともっと魔族の数を減らさせ、信仰を奪い、神をこの地上へと引きずり下ろす。
そうでなくては、この争いは永遠に終わらないのだから。
だがまず、やらなくてはならないことがある。
「──あそこか」
一直線に視界が一点を向く。
それは背中の熱によって。そして同時に、右手が早く来いと引っ張られ、急き立てられる。
「だな、お兄ちゃん」
「…やっぱり、あの塔の中ですわよね」
アーネですら分かる、いやむしろ、ヒトアーネだからこそ分かる感覚というものがあるのだろう。
それが戦争などを一方的にねじ伏せるような、《勇者》や《聖女》のように、理の外側にいるような存在であるという事を。
そしてそれを何百年何千年、いや、もしかするとそれ以上なのか。ただひたすらにソレの成就を願っていた魔族もその存在があと僅かで覚醒に至ることを本能として知っているのだろう。
だからこそ、その悲願を達そうとするのだろう。
深い意味も理解せず、ただこれだけはしなくてはならないと。
「行かせん」
ざり、ざり、と。
砂を踏みしめ、魔族達がワラワラとそこらかしこから出てくる。
当たり前だ。ここは魔族最大にして主要都市。空を飛ぶ都市でもなく、地の底の城でもなく、陽の光を一身に受けたこの都市こそが楽園であると名をつけた。
魔族の楽園。それは言い換えれば、ヒトにとっての地獄である。
七、八、九、十…二十…三十…それ以上数えようとして、馬鹿らしくなって数えるのをやめた。
「あの方の所へは行かせんッ!!」
「チッ、折角それなりの成果は出たのに…変な団結心であんま混乱してねぇみたいだな。だったら──」
一歩だけ、斜め後ろに身を引いた。
直後、魔族の目に映るのは俺の影で魔法を編み、手元で既に構えていたアーネ。
「蹴散らすしかねぇよな」
「《炎竜の吐息ドラグーン・ブレイズ》」
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