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本編
閉店間際と客
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不幸中の幸いか、豹がなにかした様子はない。今日は何もなく終わりそうだ。
まぁそれも、今の所と言う一言がつくが。
「しかし…凄まじい客の…なんてーの?波だったな…」
小さく呟いただけだった独り言は、レジで立っていた学級委員長の耳に入ったらしい。
「レィアさん、まだ勤務時間中ですよ。私語は慎んでください」
「へーへー」
「返事は『はい』です」
時計は午後六時半。聖学祭の店はどれも一度午後七時には灯を落とさなくてはならないため、この店も一度ここでお開きだ。
店内には店員が数人と、客が二、三人だけ。
それだって静かに飲み物をすすりながら思い思いの時間を過ごしている。
オーダーももうほとんど無いだろう。
そして学級委員長も同じ事を思ったらしい。
「そうですね…レィアさん以外の皆さんは解散していいですよ。あとは私とレィアさんだけで何とかなりそうなので」
「…なんで俺だけ残り?」
「私もいますよ?」
違う、そうじゃない。
「昨日言ったじゃないですか。百倍働いてもらうって」
「えぇー…いや、言ってたけど…」
「あぁ、ちなみに明日も働いてもらいますよ。休み返上です」
まぁ、初日に迷惑かけたし…仕方ないか。
「わぁったよ。ほら、お前ら散った散った。…ところで学級委員長よ」
「何ですか?」
「お前、料理出来んの?」
ステーキだのハンバーグは流石にもう無いだろうが、軽食メニューはまだ有り得ない訳ではないだろう。
「既に材料がないのでどの道無理です。この時間ですとほかのお店もやっているかどうか微妙ですし」
ふーん、いい訳ではないが、まぁ仕方ないと言った所か。
「まぁ、昨日はこの時間になると人は来ませんでしたが。露店の方に人が流れてしまいますので」
「あー…あれか」
「あれです」
俺達の視線の先は店の外、大通りの方を揃って見る。
そこではアークリームやゼランバの《星祭》などで見たような出店がずらりと並んで昼間と変わらないような活気を見せていた。
唯一アークリームと違うところがあるとすれば…規模だろうか。
アークリームでも凄いと思ったのだが、こちらはその数倍。魔法の光を生み出す街頭がある事も相まって、下手をすれば昼間よりも明るい。この都市の住民は眠らないのだろうか。
と、扉が鳴った。
「いらっしゃいませー」
今日一日だけで数百回は言ったセリフが反射的に口から出る。
恐らく今日最後となるお客は老人一人と少女一人。関係はお祖父ちゃんと孫と言った所か。
「すまんが…まだやっとるかの?」
「はい、やってますよ。お席はこちら──」
「いや、悪いが二階の席が良いのじゃが…いいかの?」
ちらりと学級委員長を見ると、無言で頷く。出来れば一階にいてくれると楽だったのだが、まぁお客のお願いなら仕方ないと言った所か。
まぁそれも、今の所と言う一言がつくが。
「しかし…凄まじい客の…なんてーの?波だったな…」
小さく呟いただけだった独り言は、レジで立っていた学級委員長の耳に入ったらしい。
「レィアさん、まだ勤務時間中ですよ。私語は慎んでください」
「へーへー」
「返事は『はい』です」
時計は午後六時半。聖学祭の店はどれも一度午後七時には灯を落とさなくてはならないため、この店も一度ここでお開きだ。
店内には店員が数人と、客が二、三人だけ。
それだって静かに飲み物をすすりながら思い思いの時間を過ごしている。
オーダーももうほとんど無いだろう。
そして学級委員長も同じ事を思ったらしい。
「そうですね…レィアさん以外の皆さんは解散していいですよ。あとは私とレィアさんだけで何とかなりそうなので」
「…なんで俺だけ残り?」
「私もいますよ?」
違う、そうじゃない。
「昨日言ったじゃないですか。百倍働いてもらうって」
「えぇー…いや、言ってたけど…」
「あぁ、ちなみに明日も働いてもらいますよ。休み返上です」
まぁ、初日に迷惑かけたし…仕方ないか。
「わぁったよ。ほら、お前ら散った散った。…ところで学級委員長よ」
「何ですか?」
「お前、料理出来んの?」
ステーキだのハンバーグは流石にもう無いだろうが、軽食メニューはまだ有り得ない訳ではないだろう。
「既に材料がないのでどの道無理です。この時間ですとほかのお店もやっているかどうか微妙ですし」
ふーん、いい訳ではないが、まぁ仕方ないと言った所か。
「まぁ、昨日はこの時間になると人は来ませんでしたが。露店の方に人が流れてしまいますので」
「あー…あれか」
「あれです」
俺達の視線の先は店の外、大通りの方を揃って見る。
そこではアークリームやゼランバの《星祭》などで見たような出店がずらりと並んで昼間と変わらないような活気を見せていた。
唯一アークリームと違うところがあるとすれば…規模だろうか。
アークリームでも凄いと思ったのだが、こちらはその数倍。魔法の光を生み出す街頭がある事も相まって、下手をすれば昼間よりも明るい。この都市の住民は眠らないのだろうか。
と、扉が鳴った。
「いらっしゃいませー」
今日一日だけで数百回は言ったセリフが反射的に口から出る。
恐らく今日最後となるお客は老人一人と少女一人。関係はお祖父ちゃんと孫と言った所か。
「すまんが…まだやっとるかの?」
「はい、やってますよ。お席はこちら──」
「いや、悪いが二階の席が良いのじゃが…いいかの?」
ちらりと学級委員長を見ると、無言で頷く。出来れば一階にいてくれると楽だったのだが、まぁお客のお願いなら仕方ないと言った所か。
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