大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
793 / 2,021
本編

取引と二つ名の行方

しおりを挟む
「そう、か。ありがとうレィア」
「あ?何で俺に礼を言ってんだ?むしろ何で上手いこと負けなかったって文句言ってもいいんだぜ?」
「そんな事言うわけがないだろう?それに…キミは多分選べただろう?自分から言うのではなく、他の誰かに言ってもらう事も出来たはずだ。わざわざ自分から言いに来てくれた…キミは優しいのだな」
「…別に。決まりで俺が言わなきゃならんかったからだぞ」
「ふふっ、そういうことにしておいてやろう」
「何のことやら?…さて、俺の話はこれだけだが、いつ出るんだ?」
「さて、いつになるだろうな。この事はすぐに知られるだろうから、一週間もしないうちに帰ってくるよう言われるだろうな」
「そうか…」
と、そこで俺の部屋の扉が開く。
「ん?」
「………おかあさん、これ」
シエルが渡してきたのはマキナ…の、一部。どうも俺宛にメッセージらしい。
可愛らしい彼女の頭を撫でてからそれを受け取り、軽く耳に当てる。
「すまんユーリア、ちょっと待っててくれ」
「ん?あぁ。構わないぞ」
その言葉を確認してから後ろを向き、声を幾分落としてメッセージに応じる。
「──誰だ?」
『私だ』
その低い声の主は──ルト。
「驚いた、何用だ?」
『端的に言おう。《貴刃》は正式に二つ名持ちになった』
「あ?」
さてはこいつ、何かしやがったな?
「何をした?」
『別に。私と学校長で少しばかり取引をしただけだ。大したことではない』
大したことではない──本当に?
「対価は?」
『私だ』
一瞬意味が分からなかったが、すぐにその意味を理解した。
「まさかお前、《シェパード》に…!?」
『それしか取引の材料が無かったのでな。学校長は快く承諾してくれた』
いや、違う。
ルトはそう言うものの、恐らく学校長はこれすら想定していただろう。
少し考えれば分かるはずだ。
《剣姫》はともかく、《死神》もユーリアと同じで戦いには負けたものの、ウィルに致命傷を与える事に成功したと言う点を評価されていたはずだ。
それなのにユーリアを不合格とした──これは明らかにおかしいのだ。
そして学校長はルトとの取引に快く応じたと言う。
学校長は……これを狙っていた……?
《キャット・シー》の力を削ぐために?そこまで…するのか?
『とりあえずこの事を…姉さんに伝えておいてくれ』
「あ、おい!」
そう言うやいなや、メッセージは一方的に切られた。
「…なにかあったのか?」
「ユーリア、変更だ。お前は正式に二つ名《貴刃》に認定された」
そう言った時の俺の顔はどんな顔をしていただろう。
ユーリアが驚きも喜びもせず、心配そうに「どうした?」と聞いてきたのが、俺は答えることも出来なかった。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,331pt お気に入り:1,654

王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:26,157pt お気に入り:7,099

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:196,499pt お気に入り:12,165

旦那様は妻の私より幼馴染の方が大切なようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:54,293pt お気に入り:5,446

食いしんぼうエルフ姫と巡る、日本一周ほのぼの旅!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:223

処理中です...