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本編
取引と二つ名の行方
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「そう、か。ありがとうレィア」
「あ?何で俺に礼を言ってんだ?むしろ何で上手いこと負けなかったって文句言ってもいいんだぜ?」
「そんな事言うわけがないだろう?それに…キミは多分選べただろう?自分から言うのではなく、他の誰かに言ってもらう事も出来たはずだ。わざわざ自分から言いに来てくれた…キミは優しいのだな」
「…別に。決まりで俺が言わなきゃならんかったからだぞ」
「ふふっ、そういうことにしておいてやろう」
「何のことやら?…さて、俺の話はこれだけだが、いつ出るんだ?」
「さて、いつになるだろうな。この事はすぐに知られるだろうから、一週間もしないうちに帰ってくるよう言われるだろうな」
「そうか…」
と、そこで俺の部屋の扉が開く。
「ん?」
「………おかあさん、これ」
シエルが渡してきたのはマキナ…の、一部。どうも俺宛にメッセージらしい。
可愛らしい彼女の頭を撫でてからそれを受け取り、軽く耳に当てる。
「すまんユーリア、ちょっと待っててくれ」
「ん?あぁ。構わないぞ」
その言葉を確認してから後ろを向き、声を幾分落としてメッセージに応じる。
「──誰だ?」
『私だ』
その低い声の主は──ルト。
「驚いた、何用だ?」
『端的に言おう。《貴刃》は正式に二つ名持ちになった』
「あ?」
さてはこいつ、何かしやがったな?
「何をした?」
『別に。私と学校長で少しばかり取引をしただけだ。大したことではない』
大したことではない──本当に?
「対価は?」
『私だ』
一瞬意味が分からなかったが、すぐにその意味を理解した。
「まさかお前、《シェパード》に…!?」
『それしか取引の材料が無かったのでな。学校長は快く承諾してくれた』
いや、違う。
ルトはそう言うものの、恐らく学校長はこれすら想定していただろう。
少し考えれば分かるはずだ。
《剣姫》はともかく、《死神》もユーリアと同じで戦いには負けたものの、ウィルに致命傷を与える事に成功したと言う点を評価されていたはずだ。
それなのにユーリアを不合格とした──これは明らかにおかしいのだ。
そして学校長はルトとの取引に快く応じたと言う。
学校長は……これを狙っていた……?
《キャット・シー》の力を削ぐために?そこまで…するのか?
『とりあえずこの事を…姉さんに伝えておいてくれ』
「あ、おい!」
そう言うやいなや、メッセージは一方的に切られた。
「…なにかあったのか?」
「ユーリア、変更だ。お前は正式に二つ名《貴刃》に認定された」
そう言った時の俺の顔はどんな顔をしていただろう。
ユーリアが驚きも喜びもせず、心配そうに「どうした?」と聞いてきたのが、俺は答えることも出来なかった。
「あ?何で俺に礼を言ってんだ?むしろ何で上手いこと負けなかったって文句言ってもいいんだぜ?」
「そんな事言うわけがないだろう?それに…キミは多分選べただろう?自分から言うのではなく、他の誰かに言ってもらう事も出来たはずだ。わざわざ自分から言いに来てくれた…キミは優しいのだな」
「…別に。決まりで俺が言わなきゃならんかったからだぞ」
「ふふっ、そういうことにしておいてやろう」
「何のことやら?…さて、俺の話はこれだけだが、いつ出るんだ?」
「さて、いつになるだろうな。この事はすぐに知られるだろうから、一週間もしないうちに帰ってくるよう言われるだろうな」
「そうか…」
と、そこで俺の部屋の扉が開く。
「ん?」
「………おかあさん、これ」
シエルが渡してきたのはマキナ…の、一部。どうも俺宛にメッセージらしい。
可愛らしい彼女の頭を撫でてからそれを受け取り、軽く耳に当てる。
「すまんユーリア、ちょっと待っててくれ」
「ん?あぁ。構わないぞ」
その言葉を確認してから後ろを向き、声を幾分落としてメッセージに応じる。
「──誰だ?」
『私だ』
その低い声の主は──ルト。
「驚いた、何用だ?」
『端的に言おう。《貴刃》は正式に二つ名持ちになった』
「あ?」
さてはこいつ、何かしやがったな?
「何をした?」
『別に。私と学校長で少しばかり取引をしただけだ。大したことではない』
大したことではない──本当に?
「対価は?」
『私だ』
一瞬意味が分からなかったが、すぐにその意味を理解した。
「まさかお前、《シェパード》に…!?」
『それしか取引の材料が無かったのでな。学校長は快く承諾してくれた』
いや、違う。
ルトはそう言うものの、恐らく学校長はこれすら想定していただろう。
少し考えれば分かるはずだ。
《剣姫》はともかく、《死神》もユーリアと同じで戦いには負けたものの、ウィルに致命傷を与える事に成功したと言う点を評価されていたはずだ。
それなのにユーリアを不合格とした──これは明らかにおかしいのだ。
そして学校長はルトとの取引に快く応じたと言う。
学校長は……これを狙っていた……?
《キャット・シー》の力を削ぐために?そこまで…するのか?
『とりあえずこの事を…姉さんに伝えておいてくれ』
「あ、おい!」
そう言うやいなや、メッセージは一方的に切られた。
「…なにかあったのか?」
「ユーリア、変更だ。お前は正式に二つ名《貴刃》に認定された」
そう言った時の俺の顔はどんな顔をしていただろう。
ユーリアが驚きも喜びもせず、心配そうに「どうした?」と聞いてきたのが、俺は答えることも出来なかった。
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