大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

鍵戦争と決戦2

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剣を担いで縦に振るう『破断』、同じく担いで横に振るう『剛砕』、そして、戦技アーツ詠唱もふくめて初めて打てる『煌覇こうは』。
これが自分の打てる『大剣』の戦技アーツの全てだ。
言い換えると、非殺傷用の戦技アーツ、武器とも言える。
今回の煌覇こうはは、厳密には戦技アーツではないが、戦技アーツにまで昇華するまで反復練習をした。
その技は、剣を鞘から抜く。それだけだ。
だから、威力は割と虚仮威しだったりするけど…衝撃は半端じゃない。
つまり、『大剣の形をした鞘から、自分の殺傷用の武器を取り出す』、という動作を攻撃にしたわけだ。
剣についていたロック、その解除が詠唱、そして、振るうと同時に鞘がぶっ飛ぶ。
それが煌覇こうはの正体。
だから、魔法を受ける気だった《不動》は。
「ぐっうぅ!」
モロぶっ飛んでた。
そりゃそうだ。アホみたいに重い剣の鞘(全部鉄)が凄まじい勢いでぶつかったんだから。
「アーネ!今ぁ!」
「言われなくとも!」
同時にアーネの詠唱が終わったようだ。
小さい火の玉、それがちょうど十。
相手に当たると同時に炸裂。爆発し、フィードが揺れた。
あれが『圧縮』の効果か。恐ろしいもんだ。
けど…。
「危ない危ない!」「危うくやられちゃうところだった!」「フロンドちゃん、しっかりしてよ!」「シクラナちゃん、撃墜してよ!」「しょうがないなぁ」「本気でいこ?」「いこ?」
《不動》が盾を構える。そこに。
踏み込み、切り込む自分。
「!」
一瞬だけ目を開く《不動》。
けれど、煌覇こうはの中身が自分の剣だとあの一撃でわかっていたようで、すぐに落ち着く。
残念。あれ、鞘だから!
自分が持っている剣は…
「片手剣…!?」
ハズレ!正解は…。
「フロンドちゃん、違う!片手剣じゃない!」
片刃の双子剣。銀の大剣の中にあったのは真っ黒な刀身を持ったソレ。
片手剣を使ったりするだけでみんなは一杯いっぱいになるけど、自分は違う。
なぜなら、スキルの効果で、『自分の思った通りに体を動かせる』から。
切り込むぞ…!
右手と左手が全く別の生き物のように動く。
振り下ろし、斬り上げ、払い突く。
叩いてフェイント、頭突きに足掛け。
どんどん攻撃仕掛けるけど、一歩も引かない…!
「ウッソだろ…!?」
「《不動》の異名は伊達じゃないよー!」
「なんてね」
「えっ?」
そこから更に加速する。
いつもなら双剣にしただけで皆驚いて、手数の多さに目を回してすぐ潰れるから、もしかしたらコレでも行けるかな?とか思ったけど、流石準英雄級。
それだけじゃ押し切れなかったか。
「アーネぇ!《不動》を先に潰すぞ!」
「私に命令ッ!しないでください!」
ちょうど一呼吸。
さっきの火の玉ほどの数も威力もない。
けど、相手の体制を崩すには充分すぎる!
《不動》の体が一瞬、ほんの少しだけ揺れた。
このスキ、逃したら次はない…!
「っ!『散華ちるは』ァ!」
自分の手が、右手だけ加速。
体のを低く、低く。下からすくい上げるように剣が動き、相手のデカい盾が浮いた。
けど、自分の剣は止まらない。
斬り上げ、伸びた体の左手、位置はちょうど相手の腹。自分の戦技アーツはまだ止まっていない!
相手の盾の腹目掛けて、剣を横に振り、そこから体を回転させる。
ここで初めて剣を重くした。
一回転目は左手だけだが、二回転目からは右手も。二回目で盾が飛んだ!
そしてさらに三回転目!
ネジのように回転しながらしゃがむ。
相手に背を向ける形になったが、手応えはあった。
さらに、目に映るのはアーネと《荒野》の魔法の撃ち合い。
加勢するべきか?
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