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一章
十二話 我が家verβ
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「さて、今夜の安眠のためにも早速建ててみようかね。我がマイルームを」
持ち帰った木材を前に軽く気合を入れる。
まだ夕暮れまでは時間がある。
日が沈む前に出来るだけ進めたい所だ。
マイルームとは言え今回作るのは物置程度の小さな小屋だ。
雨風を凌げるだけの作りがアレばいい。
作った木材の一部とアラマキさんの家にあった形の悪い木板を交換してもらったので、壁や屋根作りもそこまで時間はかからないはず。
本格的な家はアラマキさんの講座を終えて木工スキルを20まで上げたら作れるというちょっと立派な家と言うやつまでお預けだ。
さて、まずは拾って来た石を四方に並べる。
この意志は一面を削り平にした、家の基礎用のものだ。
石を岩の表面にこすりつけて削っただけで石材加工スキルを入手したときには少し驚いたが、このスキルは木工とは干渉しないようだ。
ちなみに、後々立て直す前提での小屋作りでは家の基礎部分もすぐに撤去できるように石の上に乗せるだけでいいらしい。
石に乗っけるだけで大丈夫なのかとアラマキさんに聞いた所、昔の家は大抵こんな感じらしい。
知らんかった。
そんなこんなで基礎を作り、貰った板を嵌めていく。
木材自体は豊富なのでサイズと型があったものを並べてはめ込んでいくだけで作業は進む。
あっという間に基礎部分と床が完成した。
やはり立体的な見本が表示されているというのは非常に大きい。
しかも、完全一致させられなくても立体図のほうがある程度調整してくれるのだ。
便利過ぎるってレベルじゃねーぞ。
そして次は壁作り。
鉄の釘なんて高価なものはないので、全部木組みだ。
と言っても複雑な物ではなく、柱に溝を引き、そこに壁になる板を挟み込んでいくだけのものだ。
板は形が悪いということらしいが、多少平面がゆがんでいるだけで、長方形という形自体は全く崩れていないので仮屋の壁に使う分には一切の問題がない。
屋根も末広がりの屋根ではなく片側斜面の簡易な板張りの下に木の皮を挟んだシンプルなもの。
窓は南側に一つ。
まぁ南といっても日の出と日の入りの方向からから勝手に俺がそう言ってるだけだが。
うん、木工スキルのおかげか、驚くべき手際だ。
身体のスペックが俺本人のものに比べて遥かに高く、疲れにくいっていうのもあるが、スキルによる行動アシストのせいなのかやたらとサクサク作業が進む。
別に手が倍の速さで動いているというわけではなく、次の手順をどうするべきなのかが半透明のナビゲータみたいな感じで作業手順を見える形でサポートしてくれるのだ。お陰でプラモデルの説明書でも見ながら組み立てるかのように迷いなく作業が進んでいくのだ。
紙の説明書と違って、次にどれをどうするのかがリアルタイムでガイドされていく分、プラモの組み立てよりも迷いがない。
よし、完成。
いやいや、我ながら早くねぇ!? いくら組み立てるだけとは言えまだ二時間も経ってねーぞ……
いやでも、ゲームとして考えるとコレくらいでちょうどいいのかもしれんな。
完全にリアルと同じ時間かけて家作るとか流石に普通のプレイヤーにとっては苦痛でしか無いだろう。
ニッチ層はスゲェ好きそうではあるけれども。
それにしてもリアルの俺が休日DIYでこの小屋を建てようとしたら、死ぬほど汗だくで働いても恐らく基礎部分で日が暮れるだろうな。
スキルとは偉大である……
◇◇◇
「わ……おうちが建ってる」
おや、遊び終わって帰ってきたのか。
ちゃんと暗くなる前に帰ってきたのは関心だ。
「おかえりエリス……と、サリちゃん」
「ただいまー」
「あの、ただいま……です」
「今日は二人で楽しく遊べたか? 怪我なんかはしてないか?」
「うん!」
「あの……はい、たのしかった、です」
お、この反応はいい感じに事が運んだ予感。
「それは良かった。サリちゃん、よかったらまたエリスと遊んでやってくれないかな」
「は、はい。わたしもエリスちゃんとたくさん遊びたい、です」
「うん、ともだちだもんねー」
「ね」
よしよし、いい感じで仲良くなれたみたいだな。
俺にべったりだと訓練とかそんな事ばっかりに付き合わせるはめになっちまうからなぁ。
サリちゃんが友だちになってくれるなら俺としても大助かりだ。
「あ、暗くなっちゃう……わたし、おうち帰るね」
「あ、うん、サリちゃんまたね!」
「またね」
子供はおうちへ帰る時間、か。
さて、日が落ちる前にやるべきことをちゃっちゃと済ませないとな。
「さて……俺も休憩終わり、と」
「お家作ったのに、まだなにかするの?」
「ん? 小屋建てて余った木や石を使って他にも幾つか作ろうかと思ってな」
「へー、わたしもやりたい!」
ふむ……
面倒くさい作業ばかりなんだが、まぁ本人がやりたいなら別に構わないか。
「そうだな……それじゃそこに幾つか石があるだろう?」
「うん」
「その石を半分くらい地面に埋まるようにしてこの円の形に並べてくれ」
「穴掘って並べればいいの?」
「そうそう」
「りょうかーい!」
なんだろう、接する人が増えたからか、俺と話すのに慣れたからか日が経つにつれてエリスの言葉遣いが快活になっていくな。
年相応と言うか子供らしい言葉遣いになってる気がする。
これが田辺さんの言うAIの成長ってやつなのか?
まぁ多分良いことなんだろうし気にしなくても良いか。
さて、俺は先に材木を色々組んじまうか。
まず必要なのは物干し台……ああそうだ、着替えも手に入れないとなぁ。
後で考えるか。
それと小屋は寝るくらいのスペースしか無いから、調理場も外に用意しないとだな。
壁は無理だがテラスっぽい感じで屋根だけならギリギリ板も足りるか。
椅子は丸太でいいし、机もデカイ丸太を縦斬りにして下を石で固定すればいけるよな。
フロは……そもそもこの村の一般家庭に風呂って存在するのか?
今の所はどの道フロなんて立派なもの用意するのは無理か。
そんな寒くないし川で水浴びすればいいな。
……ふむ。
とりあえず必要なのはコレで出揃ったか。
まぁ他に必要なものが出来たらその都度作り足していけばいいな。
よし、これで組み立て用のパーツは完成。
後、必要なのは……
「キョウ、できたよー」
「おお、ナイスタイミング」
よしよし、きれいに並んでるな。
隙間も殆ど無い。
これなら焚き火場に十分つかえそうだ。
「おし、それじゃエリスが作ったコレを中心に、四箇所穴掘るぞ」
「穴掘り?」
「おう、エリスはここを掘ってくれ。エリスの肘くらいの深さで、両手入れられるくらいの広さの穴、掘れるか?」
「掘るだけでいいの? なら大丈夫!」
「じゃあ、この木や石を使って、ここに掘ってくれ。手で掘るなよ? 怪我するかもしれないからな」
「わかったー」
じゃあ俺は残り三箇所か。
エリスよりは体力あるだろうし丁度いいだろう。
「ここ掘れワンワン……っと」
スコップ欲しいなぁ。
木でスコップ作るのは……流石に作れても折れるか。
金物作れる人は今は村人用にノコギリとか揃えてるだろうし、今は頼むのも無理だよなぁ。
今の所は掘ると言ってもこの程度だし、我慢して石で掘り起こせばいいか……
しっかし……、リアルの俺は寝たきりなのに、意識はリアルでは絶対やらないレベルの充実生活やってるんだよなぁ。
汗水たらして働いて、自分の家を自分で建てて……
コレって健康的な生活ってやつになるのか?
身体は絶賛不健康状態だが、精神的には超健康。
アンバランスここに極まれり、だ。
体を動かすたびに、この世界とリアルの差を考えさせられる。
考えても仕方がないというのは分かってる。
どのみち今の俺にはこの世界で活動するしかないからな。
しかし、どうしてもふとした瞬間考えてしまうのだ。
いっそ、このまま一生過ごせたらと。
ネトゲの、しかもALPHAサーバである以上それは無理だというのは解ってはいるんだけどな。
ただ、寝たきりで目と耳しか自由のないベッドの上の生活なんかよりこっちの世界で面白おかしく暮らしていたほうが良いのは間違いない。
……無いものねだりか。
この仕事が終わった後、次回作とかあるならそのテスターとして雇ってもらえるかどうか、真剣に交渉する必要があるな。
まぁ、今の所はこのテストを目一杯満喫させてもらおう。
決まっても居ない次回作のことを考えても仕方がないよな。
「掘れたよー!」
「なぬ!?」
早くね?
俺も考え事しながらやってたからちょっと上の空だったかもしれんが、体力とか俺のほうが高いはず……なんだが、ほぼ同じ速度だと?
「それじゃぁ、ここに同じ穴もう一個頼むな」
「うん、わかったー」
どういう事だ?
体格はかなり違うけど割り振られてるパラメータ自体は俺とエリスで殆ど変わらないのか?
確かにネトゲでは基本的に体格差は種族差でもない限りはパラメータに影響することはまず無い。
2mはある男キャラも130cmしか無い女の子キャラも同職、同レベルならステータスは同じだ。
エリスは特別なAIを積んではいるがプレイヤーとしてパラメータを割り振られてるとすれば、俺とずっと一緒に居たわけだからそんなに差がなくてもおかしくはない。
だが……
「エリス、ちょっといいか?」
「んー? なぁに?」
「ちょっとここに肘立ててみてくれるか?」
「……えっと、こう?」
疑問に感じたら、手っ取り早く試してみればいいか。
「で、俺もこうやって手を組むんだが、これ腕相撲っていうんだけどわかるか?」
「ううん? しらない」
「力比べの遊びでな? お互い、肘を下に付けたまま相手の手の甲を付けた方の勝ちなんだ」
「へぇー、そんな遊びもあるんだねぇ」
流石にこういう知識は持ってないか。
「ちょっとエリスがどれくらい力持ちなのかの確認も兼ねて、俺と腕相撲チャレンジだ」
「やるー!」
「よし、掛かってきなさい」
「よーし、いくよー! ……ふぬぬっ!」
あら、意外と力持ち。
とはいえ、見た目から違和感を感じるほどの力はない。
あくまでこの歳の女の子にしては力がある、程度だ。
「ふぬぃーー!!」
「はい残念、時間切れです」
パタリ。
少し力を入れただけでエリスの腕はあっけなく手の甲を下につけた。
「ああーん、負けたー」
「まだまだ俺のほうが力持ちだったみたいだな」
「悔しいー! また今度勝負だよキョウ!」
「はいはい、力つけたらまた掛かってきなさい」
「約束だからねー!」
力じゃあない。
だったら何が原因だ?
穴掘りのスキルとかあるのか?
いや、あったら俺がいまさっき穴堀った時に覚えてるはず。
「おし、休憩終了。穴掘り再開だ」
「あいあいさー」
え、腕相撲は知らないけどそんな返事は知ってるの?
基準が判らないんだけど、この子のAI教育したやつ一体何を基準にやったんだよ……
さて、エリスはあの非力さでどうやって穴を掘ればあの速度が出るのかな……と。
やってるのは俺と同じ。
石を使って地面を削ってるだけだ。
それだけ。
なのに、すごい勢いで土を掻き出していく。
割とゴリゴリ一生懸命掘っているが、一生懸命になっても俺よりも遥かに力が弱いエリスが。
穴掘りスキルでないなら何が原因だ?
別に特別な動きをしてるわけじゃない、あくまで石を持って地面を掘ってるだけで使ってるのはせいぜい手首くらいだ。
腕相撲の時、倒す時に手首を返す抵抗は見せたがそれも殆無力だったのに、何故だ?
「エリスは穴掘り上手いなぁ」
「そう?」
「俺より力すくないのに、俺と同じくらい早く掘れてるからどうやってるのかなって」
「んんー? 特に特別なことしてないよ?」
だよな……
あれ、そう言えばエリスってスキルは認識できてるんだろうか?
ガーヴさんと話してた感じだとNPCはそれこそスキルなんて言うシステマチックな理解の仕方じゃなく、修行とかで身につく技術とかそういう捉え方をしていた印象がある。
【踏み込み】スキルに関しても、流派によって【飛影】とかいう歩き方の技って言ってたから多分間違いないと思う。
格闘漫画とかである必殺技を編み出すイメージだ。
じゃあ、プレイヤー扱いなのかNPC扱いなのか曖昧なエリスの場合は?
田辺さんに紹介されたときは特殊なNPCとは言ってたが、特殊なとか頭につけられた時点でもうほかと比べられねーよなっていうか……
まぁ、コレも聞いてみるのが手っ取り早いか。
「穴掘る時になにか穴を掘るのに便利なスキルとか使ってるのか?」
「ううん? 特にそんなのは使ってないよー? あ、でも【手首制御】の数字が上がってるからこれのせいかも?」
おおう、ばっちり理解しておられる。
つか、この世界の一般人の女の子として位の知識しかないって言ってなかったっけか?
しかし【手首制御】か。
発展スキルを普通につかってるということは【腕力】スキルは俺よりも圧倒的に上か。
俺より力ないのに?
あぁ、でもアラマキさんも【腕力】スキル持っててもSTR補正無いって言ってたっけかな。
「すごいなーエリスは」
「わたしすごいの? キョウより」
「俺まだ【手首制御】使えねーもん。俺よりスゲーよ?」
「そっかー。わたしスキルはキョウよりすごいんだー……えへへ」
しかし、これが発展スキルの性能か。
【腕力】同様に力が上がるわけじゃなくて、多分対応した部位の行動の最適化を行ってるんだろうな。
【手首制御】は文字通り手首を使った作業時の効率だったり体にかかる負担を軽減していると見ていいだろう。
だから力は少ないのに、同じ道具、同じ方法でも俺よりも効率よく作業が進められたと。
そう考えるとかなり有用だなこのスキル。
戦闘以外でもかなりの広い範囲で使えるってのがデカイ。
手を使った作業であればほぼ全てに対して補正がかかるに違いない。
戦闘系スキルは兎も角、このスキルだけは優先して手に入れたほうが良さそうだ。
家造りにも役に立ちそうだしな。
「さて、こんなもんか。エリスはどうだ?」
「掘れた―」
「よし、じゃあこの柱を穴に立てて、根本を埋めるぞー」
「おー!」
……てな感じで4隅煮立てた柱に一本筋交い入れて、あとは余った板を天井代わりに敷き詰めて完成。
テラスっぽいもの付きの炊事場がが出来ましたとさ。
テラスじゃないものを無理やりテラスっぽくしたからなのか、完成品が【テラス?】になってるのはどうかと思うけどな。
物干し台は……まぁいいか今やっちまおう。
これも二本立てるだけだしな。
煙が服についても嫌だから、炊事場から離れた所が良いか。
「よっ……せい!」
掘った穴に物干し台……といっても先をY字に組んだだけのただの枝だが、それを突っ込んで立てるだけ。
物干し竿も当然長い木の棒だ。
明日は起きたら布団代わりのマントとかを洗って干してみるか。
流石に臭ってきそうだしな。
服は着替えが見つかるまでは上だけだな。
うむうむ、掘っ立て小屋と多少の生活グッズが整っただけなのにずいぶん家っぽくなったじゃないか。
なるほど、ネトゲでハウジングコンテンツにドハマリするやつの気持ちが初めてわかった気がするわ。
自分の家を自分で作るの超楽しい……!
「ねぇーキョウー。お腹すいたー!」
「おっと、もう晩飯時か」
色々熱中しすぎて時間経過が完全に認識の外だったな。
「よし、早速作った炊事場でヤギ肉スープ作るか―」
「おー!」
そろそろ山羊肉以外の食材も欲しくなってきたな。
……なんてのは生活が安定しだしたからこそ出てくる贅沢ってやつだろうか?
持ち帰った木材を前に軽く気合を入れる。
まだ夕暮れまでは時間がある。
日が沈む前に出来るだけ進めたい所だ。
マイルームとは言え今回作るのは物置程度の小さな小屋だ。
雨風を凌げるだけの作りがアレばいい。
作った木材の一部とアラマキさんの家にあった形の悪い木板を交換してもらったので、壁や屋根作りもそこまで時間はかからないはず。
本格的な家はアラマキさんの講座を終えて木工スキルを20まで上げたら作れるというちょっと立派な家と言うやつまでお預けだ。
さて、まずは拾って来た石を四方に並べる。
この意志は一面を削り平にした、家の基礎用のものだ。
石を岩の表面にこすりつけて削っただけで石材加工スキルを入手したときには少し驚いたが、このスキルは木工とは干渉しないようだ。
ちなみに、後々立て直す前提での小屋作りでは家の基礎部分もすぐに撤去できるように石の上に乗せるだけでいいらしい。
石に乗っけるだけで大丈夫なのかとアラマキさんに聞いた所、昔の家は大抵こんな感じらしい。
知らんかった。
そんなこんなで基礎を作り、貰った板を嵌めていく。
木材自体は豊富なのでサイズと型があったものを並べてはめ込んでいくだけで作業は進む。
あっという間に基礎部分と床が完成した。
やはり立体的な見本が表示されているというのは非常に大きい。
しかも、完全一致させられなくても立体図のほうがある程度調整してくれるのだ。
便利過ぎるってレベルじゃねーぞ。
そして次は壁作り。
鉄の釘なんて高価なものはないので、全部木組みだ。
と言っても複雑な物ではなく、柱に溝を引き、そこに壁になる板を挟み込んでいくだけのものだ。
板は形が悪いということらしいが、多少平面がゆがんでいるだけで、長方形という形自体は全く崩れていないので仮屋の壁に使う分には一切の問題がない。
屋根も末広がりの屋根ではなく片側斜面の簡易な板張りの下に木の皮を挟んだシンプルなもの。
窓は南側に一つ。
まぁ南といっても日の出と日の入りの方向からから勝手に俺がそう言ってるだけだが。
うん、木工スキルのおかげか、驚くべき手際だ。
身体のスペックが俺本人のものに比べて遥かに高く、疲れにくいっていうのもあるが、スキルによる行動アシストのせいなのかやたらとサクサク作業が進む。
別に手が倍の速さで動いているというわけではなく、次の手順をどうするべきなのかが半透明のナビゲータみたいな感じで作業手順を見える形でサポートしてくれるのだ。お陰でプラモデルの説明書でも見ながら組み立てるかのように迷いなく作業が進んでいくのだ。
紙の説明書と違って、次にどれをどうするのかがリアルタイムでガイドされていく分、プラモの組み立てよりも迷いがない。
よし、完成。
いやいや、我ながら早くねぇ!? いくら組み立てるだけとは言えまだ二時間も経ってねーぞ……
いやでも、ゲームとして考えるとコレくらいでちょうどいいのかもしれんな。
完全にリアルと同じ時間かけて家作るとか流石に普通のプレイヤーにとっては苦痛でしか無いだろう。
ニッチ層はスゲェ好きそうではあるけれども。
それにしてもリアルの俺が休日DIYでこの小屋を建てようとしたら、死ぬほど汗だくで働いても恐らく基礎部分で日が暮れるだろうな。
スキルとは偉大である……
◇◇◇
「わ……おうちが建ってる」
おや、遊び終わって帰ってきたのか。
ちゃんと暗くなる前に帰ってきたのは関心だ。
「おかえりエリス……と、サリちゃん」
「ただいまー」
「あの、ただいま……です」
「今日は二人で楽しく遊べたか? 怪我なんかはしてないか?」
「うん!」
「あの……はい、たのしかった、です」
お、この反応はいい感じに事が運んだ予感。
「それは良かった。サリちゃん、よかったらまたエリスと遊んでやってくれないかな」
「は、はい。わたしもエリスちゃんとたくさん遊びたい、です」
「うん、ともだちだもんねー」
「ね」
よしよし、いい感じで仲良くなれたみたいだな。
俺にべったりだと訓練とかそんな事ばっかりに付き合わせるはめになっちまうからなぁ。
サリちゃんが友だちになってくれるなら俺としても大助かりだ。
「あ、暗くなっちゃう……わたし、おうち帰るね」
「あ、うん、サリちゃんまたね!」
「またね」
子供はおうちへ帰る時間、か。
さて、日が落ちる前にやるべきことをちゃっちゃと済ませないとな。
「さて……俺も休憩終わり、と」
「お家作ったのに、まだなにかするの?」
「ん? 小屋建てて余った木や石を使って他にも幾つか作ろうかと思ってな」
「へー、わたしもやりたい!」
ふむ……
面倒くさい作業ばかりなんだが、まぁ本人がやりたいなら別に構わないか。
「そうだな……それじゃそこに幾つか石があるだろう?」
「うん」
「その石を半分くらい地面に埋まるようにしてこの円の形に並べてくれ」
「穴掘って並べればいいの?」
「そうそう」
「りょうかーい!」
なんだろう、接する人が増えたからか、俺と話すのに慣れたからか日が経つにつれてエリスの言葉遣いが快活になっていくな。
年相応と言うか子供らしい言葉遣いになってる気がする。
これが田辺さんの言うAIの成長ってやつなのか?
まぁ多分良いことなんだろうし気にしなくても良いか。
さて、俺は先に材木を色々組んじまうか。
まず必要なのは物干し台……ああそうだ、着替えも手に入れないとなぁ。
後で考えるか。
それと小屋は寝るくらいのスペースしか無いから、調理場も外に用意しないとだな。
壁は無理だがテラスっぽい感じで屋根だけならギリギリ板も足りるか。
椅子は丸太でいいし、机もデカイ丸太を縦斬りにして下を石で固定すればいけるよな。
フロは……そもそもこの村の一般家庭に風呂って存在するのか?
今の所はどの道フロなんて立派なもの用意するのは無理か。
そんな寒くないし川で水浴びすればいいな。
……ふむ。
とりあえず必要なのはコレで出揃ったか。
まぁ他に必要なものが出来たらその都度作り足していけばいいな。
よし、これで組み立て用のパーツは完成。
後、必要なのは……
「キョウ、できたよー」
「おお、ナイスタイミング」
よしよし、きれいに並んでるな。
隙間も殆ど無い。
これなら焚き火場に十分つかえそうだ。
「おし、それじゃエリスが作ったコレを中心に、四箇所穴掘るぞ」
「穴掘り?」
「おう、エリスはここを掘ってくれ。エリスの肘くらいの深さで、両手入れられるくらいの広さの穴、掘れるか?」
「掘るだけでいいの? なら大丈夫!」
「じゃあ、この木や石を使って、ここに掘ってくれ。手で掘るなよ? 怪我するかもしれないからな」
「わかったー」
じゃあ俺は残り三箇所か。
エリスよりは体力あるだろうし丁度いいだろう。
「ここ掘れワンワン……っと」
スコップ欲しいなぁ。
木でスコップ作るのは……流石に作れても折れるか。
金物作れる人は今は村人用にノコギリとか揃えてるだろうし、今は頼むのも無理だよなぁ。
今の所は掘ると言ってもこの程度だし、我慢して石で掘り起こせばいいか……
しっかし……、リアルの俺は寝たきりなのに、意識はリアルでは絶対やらないレベルの充実生活やってるんだよなぁ。
汗水たらして働いて、自分の家を自分で建てて……
コレって健康的な生活ってやつになるのか?
身体は絶賛不健康状態だが、精神的には超健康。
アンバランスここに極まれり、だ。
体を動かすたびに、この世界とリアルの差を考えさせられる。
考えても仕方がないというのは分かってる。
どのみち今の俺にはこの世界で活動するしかないからな。
しかし、どうしてもふとした瞬間考えてしまうのだ。
いっそ、このまま一生過ごせたらと。
ネトゲの、しかもALPHAサーバである以上それは無理だというのは解ってはいるんだけどな。
ただ、寝たきりで目と耳しか自由のないベッドの上の生活なんかよりこっちの世界で面白おかしく暮らしていたほうが良いのは間違いない。
……無いものねだりか。
この仕事が終わった後、次回作とかあるならそのテスターとして雇ってもらえるかどうか、真剣に交渉する必要があるな。
まぁ、今の所はこのテストを目一杯満喫させてもらおう。
決まっても居ない次回作のことを考えても仕方がないよな。
「掘れたよー!」
「なぬ!?」
早くね?
俺も考え事しながらやってたからちょっと上の空だったかもしれんが、体力とか俺のほうが高いはず……なんだが、ほぼ同じ速度だと?
「それじゃぁ、ここに同じ穴もう一個頼むな」
「うん、わかったー」
どういう事だ?
体格はかなり違うけど割り振られてるパラメータ自体は俺とエリスで殆ど変わらないのか?
確かにネトゲでは基本的に体格差は種族差でもない限りはパラメータに影響することはまず無い。
2mはある男キャラも130cmしか無い女の子キャラも同職、同レベルならステータスは同じだ。
エリスは特別なAIを積んではいるがプレイヤーとしてパラメータを割り振られてるとすれば、俺とずっと一緒に居たわけだからそんなに差がなくてもおかしくはない。
だが……
「エリス、ちょっといいか?」
「んー? なぁに?」
「ちょっとここに肘立ててみてくれるか?」
「……えっと、こう?」
疑問に感じたら、手っ取り早く試してみればいいか。
「で、俺もこうやって手を組むんだが、これ腕相撲っていうんだけどわかるか?」
「ううん? しらない」
「力比べの遊びでな? お互い、肘を下に付けたまま相手の手の甲を付けた方の勝ちなんだ」
「へぇー、そんな遊びもあるんだねぇ」
流石にこういう知識は持ってないか。
「ちょっとエリスがどれくらい力持ちなのかの確認も兼ねて、俺と腕相撲チャレンジだ」
「やるー!」
「よし、掛かってきなさい」
「よーし、いくよー! ……ふぬぬっ!」
あら、意外と力持ち。
とはいえ、見た目から違和感を感じるほどの力はない。
あくまでこの歳の女の子にしては力がある、程度だ。
「ふぬぃーー!!」
「はい残念、時間切れです」
パタリ。
少し力を入れただけでエリスの腕はあっけなく手の甲を下につけた。
「ああーん、負けたー」
「まだまだ俺のほうが力持ちだったみたいだな」
「悔しいー! また今度勝負だよキョウ!」
「はいはい、力つけたらまた掛かってきなさい」
「約束だからねー!」
力じゃあない。
だったら何が原因だ?
穴掘りのスキルとかあるのか?
いや、あったら俺がいまさっき穴堀った時に覚えてるはず。
「おし、休憩終了。穴掘り再開だ」
「あいあいさー」
え、腕相撲は知らないけどそんな返事は知ってるの?
基準が判らないんだけど、この子のAI教育したやつ一体何を基準にやったんだよ……
さて、エリスはあの非力さでどうやって穴を掘ればあの速度が出るのかな……と。
やってるのは俺と同じ。
石を使って地面を削ってるだけだ。
それだけ。
なのに、すごい勢いで土を掻き出していく。
割とゴリゴリ一生懸命掘っているが、一生懸命になっても俺よりも遥かに力が弱いエリスが。
穴掘りスキルでないなら何が原因だ?
別に特別な動きをしてるわけじゃない、あくまで石を持って地面を掘ってるだけで使ってるのはせいぜい手首くらいだ。
腕相撲の時、倒す時に手首を返す抵抗は見せたがそれも殆無力だったのに、何故だ?
「エリスは穴掘り上手いなぁ」
「そう?」
「俺より力すくないのに、俺と同じくらい早く掘れてるからどうやってるのかなって」
「んんー? 特に特別なことしてないよ?」
だよな……
あれ、そう言えばエリスってスキルは認識できてるんだろうか?
ガーヴさんと話してた感じだとNPCはそれこそスキルなんて言うシステマチックな理解の仕方じゃなく、修行とかで身につく技術とかそういう捉え方をしていた印象がある。
【踏み込み】スキルに関しても、流派によって【飛影】とかいう歩き方の技って言ってたから多分間違いないと思う。
格闘漫画とかである必殺技を編み出すイメージだ。
じゃあ、プレイヤー扱いなのかNPC扱いなのか曖昧なエリスの場合は?
田辺さんに紹介されたときは特殊なNPCとは言ってたが、特殊なとか頭につけられた時点でもうほかと比べられねーよなっていうか……
まぁ、コレも聞いてみるのが手っ取り早いか。
「穴掘る時になにか穴を掘るのに便利なスキルとか使ってるのか?」
「ううん? 特にそんなのは使ってないよー? あ、でも【手首制御】の数字が上がってるからこれのせいかも?」
おおう、ばっちり理解しておられる。
つか、この世界の一般人の女の子として位の知識しかないって言ってなかったっけか?
しかし【手首制御】か。
発展スキルを普通につかってるということは【腕力】スキルは俺よりも圧倒的に上か。
俺より力ないのに?
あぁ、でもアラマキさんも【腕力】スキル持っててもSTR補正無いって言ってたっけかな。
「すごいなーエリスは」
「わたしすごいの? キョウより」
「俺まだ【手首制御】使えねーもん。俺よりスゲーよ?」
「そっかー。わたしスキルはキョウよりすごいんだー……えへへ」
しかし、これが発展スキルの性能か。
【腕力】同様に力が上がるわけじゃなくて、多分対応した部位の行動の最適化を行ってるんだろうな。
【手首制御】は文字通り手首を使った作業時の効率だったり体にかかる負担を軽減していると見ていいだろう。
だから力は少ないのに、同じ道具、同じ方法でも俺よりも効率よく作業が進められたと。
そう考えるとかなり有用だなこのスキル。
戦闘以外でもかなりの広い範囲で使えるってのがデカイ。
手を使った作業であればほぼ全てに対して補正がかかるに違いない。
戦闘系スキルは兎も角、このスキルだけは優先して手に入れたほうが良さそうだ。
家造りにも役に立ちそうだしな。
「さて、こんなもんか。エリスはどうだ?」
「掘れた―」
「よし、じゃあこの柱を穴に立てて、根本を埋めるぞー」
「おー!」
……てな感じで4隅煮立てた柱に一本筋交い入れて、あとは余った板を天井代わりに敷き詰めて完成。
テラスっぽいもの付きの炊事場がが出来ましたとさ。
テラスじゃないものを無理やりテラスっぽくしたからなのか、完成品が【テラス?】になってるのはどうかと思うけどな。
物干し台は……まぁいいか今やっちまおう。
これも二本立てるだけだしな。
煙が服についても嫌だから、炊事場から離れた所が良いか。
「よっ……せい!」
掘った穴に物干し台……といっても先をY字に組んだだけのただの枝だが、それを突っ込んで立てるだけ。
物干し竿も当然長い木の棒だ。
明日は起きたら布団代わりのマントとかを洗って干してみるか。
流石に臭ってきそうだしな。
服は着替えが見つかるまでは上だけだな。
うむうむ、掘っ立て小屋と多少の生活グッズが整っただけなのにずいぶん家っぽくなったじゃないか。
なるほど、ネトゲでハウジングコンテンツにドハマリするやつの気持ちが初めてわかった気がするわ。
自分の家を自分で作るの超楽しい……!
「ねぇーキョウー。お腹すいたー!」
「おっと、もう晩飯時か」
色々熱中しすぎて時間経過が完全に認識の外だったな。
「よし、早速作った炊事場でヤギ肉スープ作るか―」
「おー!」
そろそろ山羊肉以外の食材も欲しくなってきたな。
……なんてのは生活が安定しだしたからこそ出てくる贅沢ってやつだろうか?
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許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
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ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
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