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二章

四十四話 始まりの都

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 SADを加え人の流れに任せて大通りを歩くことしばらく、ようやく開けた場所に出た。
 パッと見ただけでかなりの人が集まっている。
 皆ここを目指してきたんだろう。
 結構な広さの交差点の中央に大きな噴水。
 ここが中央広場で間違いないはず。
 俺達はその一角、石造りの立派な建物の前に居た。

「ここか……?」
「だな。冒険者ギルドの看板はないが位置は間違いないはずだ」
「職員は居ないけど俺達は入って問題ないんだったよな?」
「その筈だが……まぁ入ればわかるだろ」

 そういってSADは扉を開く。
 鍵はかかってないらしく、勝手に入ってこいと言うことか。
 これじゃ一般プレイヤーが紛れ込んじまうんじゃ?
 と思ったが、奥の扉の前には職員が扉を守るように立っていた。

「スタッフから待ち合わせの場所がここだと聞いてきたんだけど……」
「イベント関係者の方ですね? 招待されている方であればこの扉を通ることが出来るようになっていますので中でお待ち下さい」
「わかった」

 門番役かとおもったらただの案内役だった。
 扉自体がIDチェックで侵入可能かどうかの判断してるのか。
 まぁ、何かの用事でNPCが離れた間に紛れ込む可能性とかも考えれば当然の措置か。
 未実装イベントとか特殊エリアの侵入条件なんかに使うシステムとかかな?

 言われるがまま部屋に入ると、結構な広さの広間だった。
 サイズは丁度学校の職員室くらいの広さで、レイアウトもまさにそんな感じだった。
 恐らくこの後、ギルド職員のための事務所として使われるのだろう。

 ただし、今ここにいるのは職員ではなく運営の専用特殊アバターと公式プレイヤー達だった。
 ミーティングのときに見た顔もちらほらある。

「お疲れ様でーす。偶然外で一緒になったんでキョウも連れてきましたよ」
「ああ、二人共いらっしゃい。参加してくださって本当にありがとうございます」

 SADの呼びかけに奥から出てきたのはミーティングで司会もやっていたC1さんだ。

「お疲れ様です。とりあえずエリスとハティは連れてきましたけどどうすれば良いんでしょう?」
「あ、特に何か装着したりとかどこかに行ってほしいとかそういうのは無いんで大丈夫です。AIの思考パターンや変質アルゴリズムなんかをモニターしたいだけなので、普通にこのゲームを遊んでくだされば結構です」
「はぁ……」

 なんか特殊機材なんかをつけられるんじゃないかと思ってたが、よく考えたらデータログは既に別所で現在進行系で取られてるわけだから、後付に何か付けたり軟禁する理由はなにもないのか。
 データを取らせてほしいという言葉に一瞬拘束椅子に座らされてる図が思い浮かんだ辺り、思考がSF映画とかに毒されすぎてるんだろうか?

「しかし、何でまたこんな人の多い時期に?」
「まぁ、いろいろ理由はあるんですけど、一つは人が多いから……というのがありますね。ALPHAサーバにはNPCは多くてもプレイヤーは少ないですから」
「ああ、なるほど」

 確かにあの広大なエリアでテスター同士が遭遇するなんて稀だからなぁ。
 アラマキさんが生産系で初期のハイナ村に居着いていなければ、多分俺一人とも遭遇してなかっただろうしな。

「それと、ALPHAサーバの特殊性ですかね」
「特殊というと?」
「わたしも前職でも大規模MMOの運営に関わっていたんですが、あのサーバはテストサーバとしては規格外ですよ。なにせ本サーバであるGAMMAサーバと比べるとエリアのサイズが10倍以上ありますから」
「10倍!?」

 テキストエリアなのにオープン直後の本サーバの十倍とかいくら何でもでかすぎねーか?
 ネトゲの大規模バージョンアップでエリアが追加されたとしても、デカくても元の倍程度だろう。
 何でテストするだけのエリアでそんな巨大なスペースが必要なんだ?

「いつかあれらのエリアもデータを整えてGAMMAサーバに少しずつ移植していく予定らしいですけど、ソレにしたってテスト環境としてアレほどの超広大なエリアを構築するのは異常です。当然NPCやモンスターの数も膨大に膨れ上がり、データログを取るにしても尋常じゃないデータの中から目標のデータを探し出さなければならないわけでして」
「それってつまり、これだけの大量のプレイヤーが密集するオープン初日の最初の街ですら楽に感じるレベルだと?」
「そういう事らしいです。抽出ツール等は優秀なので複雑な手段が必要だとか難易度が高いとかそういう問題ではなく、単純に目的のログを探し出すのに時間がかかるんだそうですよ。アバター情報量も制限があまり無いぶんこちらの10倍近いらしいですし」

 エリアの広さが10倍で、NPCデータの情報量も10倍って…… 
 よくそんな環境でテストなんて出来るな。
 普通に考えたら、いくら良いものを提示されたとしても10倍クォリティのテスト必須なんて人件費や工数考えたらいくらプロデューサーがどうこう言っても会社の御上がOK出さんだろ。

「いくら何でもソレはむちゃし過ぎなんじゃ……効率悪すぎでしょう?」
「とはいえ、スポンサーと元開発者のこだわりらしくそこはオミットできないんだと開発チームが呻いていますよ」
「それは……ご愁傷さまで」

 金を出しているスポンサーにやれと言われれば、企業としても流石に断れんか。
 ゲーム自体のクォリティがかつて無いレベルで高いのは証明されてるし、効率を理由にこだわりの排除は出来んだろうなぁ。
 一体スポンサーは幾らを提示してそんな無茶なテストを認めさせたのやら……

「とまぁ、そういう理由でお越しいただいた次第でして」
「状況は理解しました。それで、さしあたって俺は今日は何をすれば良いんです?」

 ある程度の内容は把握しているけど、詳細は現地にてとなっていたんだよな。
 最低限必要な情報は書かれていたから胡散臭さはなかったが、ついでに詳細も書いてほしかった……

「今日のお仕事としての活動は、キョウさんに関しては公式プレイヤーとしてのお披露目イベントへの出演がメインになります」
「あの……俺あまり人前でうまく喋れるとは思えんのですけど」
「メールにも書いてあったと思いますが、メインのトークは声優さんが公式プレイヤー代表的な感じで喋ってくれるので、振られた質問に答える程度で大丈夫です。紹介に関してもこちらが経歴やどういうプレイヤーなのかといった所を紹介する形なので、辺に緊張しなくても大丈夫ですよ」

 ああ、自己紹介とかもしなくて良いのか。
 勝手に何言われるのかはちょっと怖いが、自分で喋るのに比べれば遥かにマシだ。
 ある程度大会なんかで舞台慣れはしているつもりだけど、喋りは昔から得意じゃないんだよな。

「それを聞いて安心しましたよ。アドリブとかに弱いんでトーク振られてもオロオロするだけだと思うんで」
「ははは、大丈夫ですよ。そのへんは我々も考慮しています」

 だが、俺はこの会社の格ゲー大会の決勝で当日、決勝直前に突然台本渡されてプロレス的なマイクパフォーマンスを要求されたことを忘れては居ないぞ。
 決勝まで上がってたことと、会場全体のテンションに引っ張られてついノリと勢いでやっちまったが、アレのせいでしばらく俺とSADはおもしろ芸人プレイヤー扱いされたんだからな……
 俺と同じ事を考えているのか、SADもまるで信用してない顔で聞き流していた。

「公式放送は14時からでしたよね?」
「はい、14時から22時までの8時間生放送ですね。公式プレイヤーの皆さんに出ていただくのは14時からのオープニング、続く14時半からの公式プレイヤーによるチャレンジバトル、そこからプレイヤー参加型イベントがあるので暫く時間を置いて20時からのトークセッションと特別イベント、となります」
「了解です、一応プログラムはひと通り見てきはしたんですけど、チャレンジバトルと特別イベントって実際何するんですかね?」
「チャレンジバトルは、視聴者アンケートでモンスターを投票してもらい、それと公式プレイヤーの皆さんとで戦ってもらう物ですね。対象モンスターはβテストで実装したものに限定して居るので、ライノスのような高レベルモンスターは出ないので大丈夫です」

 いやいや、それどう考えても視聴者が絶対悪乗りしますやん。
 βテストのモンスターがどれくらいの強さのものまで実装されてたのかは知らないけど、絶対一番高レベルの奴が選ばれるに決まってんぞ。
 SAD達先発組なら問題ないが、俺とかダメージ通らなくて完全に足手まといになる未来しか見えないんだが……
 でもまぁ、皆さんでってことはパーティバトルとかになるだろうし、俺が削れなくても高レベルの奴らが倒してくれるか。

「それと、特別イベントについてはちょっとここでは言えませんね」

 突然、そう小声で言い視線を後ろへ飛ばすC1さん。
 そこにいるのは……マネージャーらしき人やちょっと偉そうな人と話してるって事は公式プレイヤーになる声優さんか?
 声を聞けばある程度有名な人ならわかるんだが、顔とか全然知らないから見ても分からねぇんだよな。
 まぁ、C1さんの行動を見るに、サプライズイベント的なものって事か。
 せっかく隠してるのにここで喋ってうっかり聞かれても面白くないしここは聞かなかったことにしておくか。

「わかりました。まぁ、死なない程度に頑張ってみますよ」
「よろしくおねがいします」

 そういってC1さんは新しく部屋に入ってきた別の人達のところへ。
 あの人達もプレイヤーだろうか。
 まぁ、邪魔するのも悪いし、さっさと開いてる所で休むか。

 ……といってもどこも結構人で埋まってるな。
 現実と違って機材の持ち込みとかが必要ない分、あの独特の圧迫感はあまりないけど代わりに人が多い……。
 あのパーカーのPRESSって要するにスタッフだけじゃなく、記者なんかもここにいるのか。
 有名ゲーム情報サイトとかの担当者だろうか。
 新作の、しかもハンドコントローラータイプではない疑似体感型VRMMOの大作第一号となればまぁ、この人の多さも当然か
 SADは運営スタッフとなにか話してるみたいで邪魔できる雰囲気じゃないし……
 どうしたものかと考えていた所、捨てる神あれば拾う神ありと言うやつなのか

「お、キョウさんじゃないか。こっちおいでよ」

 と声をかけてくれる人が。
 この人はミーティングの時に居た人だな。
 きなこもちさんだっけかな。

「どこで休もうかとちょうど困ってたところなんで助かりますよ」
「おぅ、ソレはタイミングよかったね」

 呼ばれてしまっては応じぬわけにも行くまい。

「あれ、そういえばきなこもちさんも公式プレイヤーに?」
「まぁね。実はイチゴもそうなんだけど、今日は別のゲームのイベントがあって記事の仕事依頼があったからコレなかったのさ」
「ああ、あの人レビュアーもやってるんだ」

 アラマキさんもスローライフ系のレビューしてるって言ってたな。
 スポンサーついてマネーマッチで世界を飛び回るタイプのプロゲーマーとはタイプは違うけど、アレもプロのゲーマーだよな。

「まぁ、イチゴはあまり表に出たがるタイプじゃないから来たとしてもステージに上るかどうかは怪しかったけどね―」
「アバターなのに?」
「案外、気にするもんだよ?」

 そういうもんなのか?
 顔出しするわけじゃないのに気にするようなものじゃないと思うが、

「ところで、そちらはどなた? ミーティングでは見なかったけど」
「はじめまして! キョウの妹のエリスっていいます。この子はハティ」
「ワウッ!」
「あらかわいい! はじめまして、わたしはきなこもち。よろしくね……っていうかその子ぬいぐるみかと思ったけど生きてるのね。こんなかわいい系モンスターなんていたかしら? βではもう実装されてるっていうペットモンスター?」

「このぬいぐるみみたいなのは、以前二人が遭遇したっていう大きな狼だよ」
「マジで!? あのデカイのがこんな可愛くなってるの!?」
「まぁあの姿でこの街の中に来たらエライ騒ぎになるだろうからな」
「あ、なるほどね。というか本当に一緒にいるんだね……ペットスキルは持ってないんだよね?」
「無いなぁ。ALPHAにはそもそもペットスキル無いみたいだし、俺が持ってたらソレはそれで問題だけど」

 チート疑われちまうっての。
 このゲームの形式でどうやってチートするのかは判らんけどな。

「あ、でもこっちのサーバではペットスキル実装されてるんだし、案外コンバートの時に付与されてたりして?」
「ああ、それはあるかも」

 ……んん?
 なんとなく言われてスキルウィンドウ確認してみたが、ペットスキルは見つからなかった。
 ただ、その代わりにいろいろ他のスキルが上がりまくってるな……
 バジリコックやアーマードレイクと戦った時に上がったのか?
 最近ごたついてて、ろくに自分のステータスとか見てなかったから気が付かなかったな。
 ということはスキルだけじゃなくて……ああ、やっぱりステータスもかなり上がってるな。

「ん? どうかしたん?」
「いや、ペットスキルはやっぱ無かったんだけど、ちょっと最近イベントバトル的なのがあって、そのせいか色々上がってたことに今気がついて……」
「へぇ? どうなってるの?」
「う~ん、レベルはパッと見で2の中盤くらいで、スキルなんかも軒並み上がってるな」
「早っ!? あれから1週間しか経ってないんだけどもうそんな上がったの?」
「かなり格上っぽかったからなぁ……」

 バジリコックは実際の強さはともかくライノスより上らしいし、アーマードレイクなんかは間違いなくワンランク上だろうしな。
 そりゃパラメータも上がるってもんか。

「一体どんな修羅場をくぐり抜けたんだい君は……」
「村が一つ滅びかねない程度の修羅場……?」
「どんなイベントよそれ……」

 多数のモンスターによる襲撃イベントです。

「ん、あれ? これは……パーティウィンドウ?」
「あ、そうかレベル2になったから開放されたんだね。同行を許可しているとパーティが自動的に編成されるようになるのさ。特にデメリットはないから理由がない限りはパーティ拒否とかはしないほうが良いよ」
「へぇ、珍しいな。加入確認とかは取られないのか」
「うん。一緒に行動してればパーティって扱いみたいだね。一般MMOみたいにアイテムドロップどうこうっていうのは特に無いから揉める理由とかも特に無いからこういう形態なんだと思うよ。今のところ影響があるのって対象指定型魔法でパーティ対象っていうのがあるくらい?」
「へぇ。かなり自由だな」

 現在のパーティメンバーはエリスときなこもちさんに……ハティ?

「なんかハティもパーティメンバー扱いになってるな」
「え、あほんとだ。こっちからも見える」

 ペットじゃなくて仲間扱いなのか。

「ますます謎だなこいつ……一体どういう扱いになってるんだろうか」
「パーティメンバーになってるって事は、この子にもステータスウィンドウとかが存在するってことじゃないの?
「そうなのか?」
「いや、わからないけどパーティに入れてるってことはプレイヤーと同じ扱いなんじゃないかなって」

 ああ、確かにその可能性はあるのかも?

「ハティ、ステータスウィンドウってわかるか? 問題ないなら見せてもらいたいんだけど」
「ワフッ」

 え、うわ、なんか普通に表示されたんですけど。
 俺達の言葉を理解していることはもう疑っていなかったけど、ここまで細かい指示もちゃんと理解して対応してくるってちょっと謎の感動があるんですけど?

「何この子、言葉理解できるの? すごくない!?」
「ハティはかしこいの。ねー」
「ワンッ!」

 おっと、せっかく見せてもらってるわけだしステータスの確認を……?

「…………」

 コレはまずいんじゃ……

「それで、どんな感じ? わたしにも見せて見せて」
「お、おう……」


――――――

ハティ
月狼:女:狼王
Lv10
HP   :131000
SP   :19005
空腹値  :20
疲労値  :0
STR  :151
VIT  :114
DEX  :97
AGE  :170
INT  :121
MND  :202

――――――


「…………え……なにこれヤバくない?」
「おう……ミーティングの時にレベル10ってのは聞いてたけど、実際パラメータとしてみると本気でヤベェな」

 そりゃアーマードレイクボコるだけのことはあるわ。
 数値が軒並みぶっちぎってる。
 しかもHPとSPの数字がちょっとどころではないレベルでおかしい。
 複数プレイヤーから集中攻撃されるボスモンスターだからプレイヤーの数値の100倍設定にされてるのか?
 確かにネトゲのボスってエンドコンテンツともなると億を超えるのもザラに居るけど、このゲームはステータス補正が凄まじいからレベルLV10とか高レベルでの13万ってかなりヤバイ数字なんじゃ……
 このゲームのモンスターへのダメージは数字として表示されないから本来自分の攻撃だ相手にどれだけ効いているかはモンスターのリアクションで見るしか無いし、自分の攻撃が相手に幾つのダメージを与えたのかとかは当然わからないが、それにしたって13万って数字がそう簡単に削れるものじゃないことくらいはわかる。

「見た目はこんなに可愛いワンコなのに、中身は魔王だった……こんなのあのSADパーティでも倒すの無理でしょ」
「まぁ、先週ステータス見た時レベル5だったから無理だろうなぁ」
「ん、俺がどうしたって?」
「うわああああ!?」

 いつの間にかスタッフとの話が終わったのか丁度きなこもちさんの背後からSADが来ていた。
 後ろから突然SAD本人に話しかけられたきなこもちびっくりしてひっくり返っていた。
 いや反応激しすぎるでしょ。
 リアクション芸人かな?

「な……なんでもない、なんでもない。この子達がパーティ扱いになってたからどうなってるんだろうね?って話てたのさ」
「そうか? 呼ばれた気がしたんだが気のせいか」

 気のせいじゃないです。
 ただ、きなこもちさんが否定した後だしそういう事にしておこう。
 というか隠す意味はあるのか?

「にしても、お前さっき食ったばっかなのにもう空腹度20まで増えてるのか」
「ワフ?」

 保存してあった肉を全放出して豪勢に食いまくってからまだ1時間も立ってないぞ?
 とはいえ元のサイズはかなりデカイから腹が膨れなくても仕方ないか。

「何だ? エリスが腹空かせてるのか?」
「いや、エリスがってわけじゃないんだが……」
「丁度この広場の周りには飯を食える場所も多いし、オープニンまでまだ少し時間もある。今のうちに腹ごしらえしてきたらどうだ?」

 う~ん……
 たしかに、半端に時間があるんだよなぁ。
 イベントが始まったら何が起こるか判らんし飯も食う暇がなくなるかもしれんな。
 今のうちにハティの腹を満たすのも有りっちゃ有りか。
 よし、そうしよう。

「んじゃちょっとふらっとこの周り見てくるわ」
「おう、遅れるなよ」

 まぁあまり遠くに行くつもりはないし、近場で見つからなければ諦めて戻るつもりだから遅刻にはならんだろう。

「きなこもちさんはどうする?」
「私はさっきまで街見て回ってきてちょっと疲れてるからここで待ってるわー」
「そうか。んじゃちょっと行ってきます。エリス、ハティ行くぞ?」
「はーい」
「ワフ」

 さて、俺の所持金でハティの腹を満たせるだけの物がどれだけ買えるかね?


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