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二章
五十三話 休憩室での一コマ
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◇◇◇
「お疲れ様でーす」
トークステージが終わり、声優の結城桜としての私の役目はひとまず終了。
夜にもう一度トークセッションがあるが、そっちはプレイヤー『チェリーブロッサム』としての参加だ。
次のステージは開発状況や新情報なんかの発表ステージだから私の出番はないし、これでようやく一息つける。
ゲームの中のはずなのに、まるで舞台に上がったような感覚で思っていたよりも疲れた。
「いやー、凄いねコレ。下手なネットラジオよりも緊張するわ」
一緒に登壇していた安達くんも同じらしく、笑ってはいるが少し疲れたような雰囲気だ。
「アバターだって判ってるんですけどね。目の前にああやって並ばれると『見られてる』って意識が……」
「わかるわー! リアルのイベントや舞台と何も変わらないんだよね」
まさにそのとおりだと思う。
髪の色だったり装備だったりとリアルじゃないとひと目で分かるのに、どうにも現実と錯覚してしまう。
今までもVRのゲームはいくつかプレイしたけど、ここまでの臨場感は初めてだ。
「今まで関わってきた作品のゲームも仕事の関係でいくつか触ってきたけど、時間がないのもあるけど僕ゲーム下手なんであまり長続きしないんですけど、これは身体動かす感覚でやれるから面白くていいですよね。ゲーム下手でも思ったように動きますから」
そういえば、安達くんは休みの日に草野球とか普通にやる根っからのアウトドア派だったわね。
ゲームは苦手だけどスポーツやなんかで体動かしてるから、下手な引きこもりよりも上手くキャラを動かせるのか。
そう言えばさっきの戦いも逃げてばかりだったけど、あの狭い舞台の上で最後まで逃げ切ってたっけ。
「結城さんはこの後も残るんですか?」
「うん。安達くんは?」
「僕はこの後ラジオの収録が有るからこれでおしまい。明日の夜のステージにまた出番があるんだけどね」
「そっか、おつかれさま~」
収録日がかぶってたのね。
まぁ、活動中の売れっ子声優ならスケジュールは詰まりに詰まってるか。
私も去年はコレくらい忙しかったんだけどなぁ……
そりゃ喉をやった時の炎症が悪化して、大熱出した上にその影響で右足麻痺とかしてかなり大事になったけど、半年間の療養休暇はやりすぎだと思うんだけど……
って、だめだめ。
今は実質半年間の活動休止に近い状態なんだしそこは飲み込んでおかないと。
ジムで体力だけは落とさないようにしてるけど、稽古も休むように言われてるし時間はほぼ使いたい放題だ。
今回の仕事はキャンペーンガール的なものとして事務所からはOK出てるし、このゲーム関連の仕事でゲーオタ系のファンをつなぎ留めておかないと。
その為には、半端なプレイじゃ駄目だ。
私の場合、『下手でも頑張っています』オーラ出しても受けるようなキャラじゃない。
なら、ガチでトッププレイヤーに食い込むくらいの本気さを見せないと……
その為には……
「あ、お疲れ様です伊福部さん」
「お疲れ様です。ゲーム内ではSADで良いですよ。線引きを慣れておかないとついうっかりゲーム中に身バレしちゃいますよ」
「じゃあ、私もゲーム内ではチェリーでお願いします」
「了解です」
この人は今の所このゲームを最も長い間プレイしているはず。
秋元Dからテストサーバと本サーバではかなりの差があるとは聞いているけど、さっきのプレイを見る限りレベルもプレイヤースキルもβテスト参加者の誰よりも上だった。
今このNEW WORLDで目指すべきトッププレイヤーはこの人だ。
武器種は違うけど同じ前衛のメレー職で、タンクを引き受けられるアタッカーと役割も近い。
このゲームで強くなるためには、この人から色々聞いておきたい。
「私、ちょっと仕事関係なくこのゲームにどハマリしちゃってて、本気でトッププレイヤー目指したいと思ってるんですよ」
「それはなんとなく動きを見てて判りましたよ。他のタレントプレイヤーさんと違って、取り敢えず攻撃するんじゃなくて動きにちゃんと理由を考えてる感じがしましたから」
やっぱり、見てる人はそういう所をちゃんと見てるのね。
てっきりレベルで判断するかと思ってたけど、そんな上辺だけで判断するわけじゃない……と。
「βテストも気がついたらレベル3まで上がっちゃっててちょっと自分でも引くレベルなんですけど、面白くて仕方ないっていうか……」
「そう言ってもらえるとテスターしてるこっちとしても嬉しいですね」
「それで、ぜひSADさんに強くなるためのコツなんかを教えてもらえたらなって」
「強くなるためのコツ……ですか。それはレベル上げの効率とか注意点とか?」
「そういったもの含めて、どんな事に注意すればいいかとかをざっくりとでいいのでアドバイスして貰えたら嬉しいんですけど」
「う~ん、そうだなぁ……さっきのプレイ見てる感じ基本的な動きはすべてできてる感じはあるんだよなぁ。レベルも高いって事はレベリングのコツ的なものも理解は出来てるはずだし……」
レベルもあり、プレイヤースキルも高く、パーティプレイの重要性も熟知しているこの人の持っている情報なら今最もこのゲームで価値があると行っても過言じゃないはず。
もうしばらくすれば、更に効率のいい新戦術とかも組み上げられるとはおもう。
けど、少しでも最先端を行こうと思うのなら待ってちゃ駄目だ。
「さっき、キョウと組んで戦ってましたけど、あいつの隣で戦ってどう思いました?」
「キョウさん……ですか?」
さっき一緒に戦ったテスター。
レベルは私よりも低く、ステータスは恐らくすべての面で私のほうが上回っている。
でも、そんなものは些末な問題だと思い知らされるほどのプレイヤースキル。
このゲームのステータス差は驚くほど無慈悲に結果に直結する。
レベル差1はこのゲームにおいては致命的なまでに力量差が出る。
2も離れれば、ほぼ絶望的。
ステータスの傾向によるが、防御の高いモンスターには急所攻撃ですらダメージが殆ど通らなくなる。
つまり、ラッキーパンチすら期待できない圧倒的な力の差。
「……そうですね凄い陳腐な言葉になっちゃうんですけど『化け物』だと思いました。もちろん良い意味でですよ?」
それをあの人は私の目の前で覆してみせた。
レベル差は2どころではなかった筈なのに。
攻撃力が足らないなら、足りるだけの武器を奪って使う。
頭で考えるだけなら簡単だけど、力も素早さも器用さも自分よりも遥かに強い相手から武器を奪うなんてことをそもそも実行できるとは考えないでしょ。
でも、彼は実際にやってのけた。
普通じゃない。
実際に彼のように戦えれば他のプレイヤーよりも一歩先に進めるかもしれない
でも――
「キョウさんの戦い方は凄いです。正直言って本気であの動きは憧れます。でもアレを参考には出来る気がしないんです」
凄すぎて参考にならない。
あんな、喰らえば一撃で終わるような攻撃が目と鼻の先を通り過ぎていくのをまばたき一つせずに確認して対応するなんて真似、出来る気がしない。
「あいつ、元々はウチの会社が出した格ゲーのトッププレイヤーの一人で、俺と共に決勝常連だったんですよ」
「格ゲーマーだったんですか?」
「ええ。だからなのか、あいつの戦い方は格ゲーのイメージで戦ってるんです。普通MMOの戦い方に寄るだろうに」
「すいません、格ゲーはそこまで踏み込んだプレイをしたことがないので解らないんですけど、どう違うんですか?」
3次元的挙動と2次元的挙動くらいしか違いが思いつかない。
どちらもボタンを押すことで特定の行動をする。
もちろんコマンドで技が出るかアイコン一発で技が出るかなんかの違いは有るし防御や投げみたいなシステム差だったり操作性も違うんだろうけど……
「一番わかり易い部分でいうと、ほとんどのMMOには防御が無いんです」
「はぁ……まぁ確かに……」
「MMOでは『避けるための範囲攻撃』以外はほぼ回避できません。喰らってしまうのは仕方ない。防具やレベルを上げることでその避けられない攻撃に耐えられるようにするのがMMOでの基本です」
MMOに限らずRPGと名のつくものはすべてそういうものじゃないの?
「格ゲーは小技もなにもかもを喰らわないことが前提です。牽制一発貰うだけで負けに直結します。なら防御を固めればいいかといえば、防御を崩す方法がいくつもある。でも格ゲーにはレベルや装備なんて無いから戦い方で対応するしか無い」
そうか、MMORPGをプレイしてるにもかかわらず格ゲーのつもりってそういう事か。
装備やレベルよりも、まず初めからプレイヤースキルしか頼っていないって事かしら?
でも相手の武器を奪って闘うってのは、装備の重要さを理解している筈で……んん?
「そこで、個人差はありますけど大抵のプレイヤーは防御した時に相手に確実に反撃出来る攻撃を覚えて反撃できるように対策するか、同時に技を振っても勝てる技を探すようになります。ええと……格ゲーでのフレーム表ってどういう意味かわかりますか?」
「実際に見たことはないですけど用語的な意味なら。ボタン押してから技の攻撃判定が出るまでのフレーム数とか防御された場合の不利になるフレームとかが書かれたやつ……ですよね」
「合ってます。遅延前提のMMOと格ゲーの違いは1フレームの重要さなんですよ。反撃しても大丈夫な技の見極めや、同時に出しても勝てる出の速さ、発生は同じでも一方的に勝てる技の判定の強さといった地味な計算のしあいが格ゲーの特徴です。誤解を承知で極端な言い方をすれば、1フレームの埋め合いがすべてなんです」
突き詰めるとどのゲームだって最速最適行動を求めるのはそうなんですけどね、と言いつつ、格ゲーのそれは他のゲーム以上にシビアなんだという。
ふぅ、と小さなため息の後SADさんは言う。
「あいつと対戦してその事を意識した時初めて俺達も気付いたんですよ。このゲームは体感するような遅延フレームが一切ないって」
「あ……確かにラグみたいなものは一切感じたことがないですね」
身体を動かすにあたって、遅れや重さ的な者を一切感じたことがない。
たしかに今言われる間全く気が付かなかった。
ネットゲームとしてはそれが当然じゃないと困るんだけど、ネトゲとラグは昔から切っても切り離せない問題。
それが殆どないのなら、ラグを一切排除した格ゲー的なスタイルが通用する……?
「あいつ、昔からの癖だからなのか、このゲームでもほとんどの行動をフレーム表に当てはめたように行動するんです。相手がどういうタイミングでどの技を振るのか、そしてどのタイミングでフレームに隙間が空くのか。それを確認するために最初は徹底的に見に入る……」
「でも、格ゲーと違ってこのゲームはプレイヤーが思ったとおりに身体を動かすんですよ? 同じような動きだって全く同じにならない筈ですよね? 本人がたとえ同じにしたくても機械でもなければ完全再現なんて出来やしないし……それにフレーム表なんて当然ありません」
「だから、あいつは作るんですよ。戦ってる間にあいつの頭の中に対戦相手の行動フレーム表を」
作る?
特定行動の存在しないこのゲームでフレーム表を、戦いながら?
冗談でしょう?
「そんな事が可能なんですか?」
「よく昔から漫画なんかで達人キャラが言うでしょう?『一度見た技は二度と通用しない』的な事を」
「確かに、定番ネタですけど、それこそ漫画だからでしょう? 普通の人にそんな真似ができます?」
「格ゲーでなら可能です。どれだけ多才であってもモーションは固定されていますからね。数百、数千試合と対戦したりトレーニングモードで同時に技を出したり、と言った感じで昔からどの技がどの技より早い、発生は同じだけど判定は強いといった試行錯誤によって攻略されてきました」
格ゲープレイヤーはそんな事をやってるの?
それだとゲームと言うよりも数学とかそんな印象なんだけど……でもこのゲームは
「固定されたモーションなんて一つもないこのゲームでもね? ある程度慣れてくると、相手が剣を振り上げてから振り下ろすまでの間に自分の攻撃が届くかどうかの見切りなんかは完全ではないにしろ多少は俺でも出来るようになった。でも……あいつは小技、ストレートだけじゃなくジャブまで対応する。そんなのは、少なくとも俺には真似できやしません。ですが……そこまで真似する必要って無いですよね?」
「同じような真似はできはしないとしても、要所を掴めば多少であれば真似できる……?」
「そう、基本的な所でアイツを完全にトレースすることは無理だけど、突飛に見えるようなあいつの行動は実のところ驚くほど理にかなってる物も多いんです。だから、あいつの戦い方を参考にする事で、レベル以上の強さを発揮できるのは間違いないんですよ。実際、PvPテストであいつにやられたフェイントを見よう見まねでLV1モードのPvP先行体験会で使ってみたら、相手は反応すらできずにやられてましたしね」
つまり、全部真似する訳じゃなく、自分で活かせるところだけを再現すればいいってこと?
「俺のプレイは情報を集め、狩場を探しレベルを上げ、体にスキルや装備を反復によってなじませる。言ってみれば超スタンダードな『運営が想定したプレイ』の最先端です。そしてβテストのトッププレイヤーの殆どが俺と同じ効率化を行い、ほぼ同じ戦術でモンスターと戦っている。つまり俺から教えることはあまり無いんですよ」
テストサーバと本サーバではシステムが違うんで完璧に一緒とは言えませんけどね、と苦笑いで彼は言った
「強くなるなら彼の……キョウさんのやり方にするべきだと?」
「全部が全部そうだとは言いませんけど、強くなりたくて何か一歩抜け出したいなら、そうするべきです。細かい指摘なんかはたしかに俺でもできますけど、その俺自体があいつの動きを取り入れるようになりましたからね」
「SADさんから見てもキョウさんは強いですか?」
「強いです。間違いなく」
ノータイムだった。
このゲームで最高レベル、最強のプレイヤーと運営が太鼓判を押すこの人が一切迷わず言い切った。
「あいつとは以前PvPモードのテストで対戦したことがあるんです。こっちのLVを隠してLV1のあいつを相手に」
「まさか……」
まさか、勝ったの?
このゲーム最強プレイヤー相手にLV1で?
「結果は俺の勝ち。STR不足であいつは俺のHPを削りきれなかった」
「……ですよね」
びっくりした。
あまりに思わせぶりなことを言うからつい――
「でも、内容は完全に俺の負けだった。同じレベル、同じステータスであれば開始数秒で俺の首が飛ばされていたし、最終的に俺の勝ちになりはしたけど俺は片腕飛ばされたんですよ? LV5の重武装前衛がLV1の初心者装備相手にです」
「LV差4で!?」
嘘でしょ!?
――いえ、実際彼はエドワルトと対等に渡り合ってた。
NPCとは言え、レベル差は相当なものだったはず。
そしてのこのゲームのNPCの思考レベルを考えるなら、あるいは……
「あいつはレベルの差を埋めるだけの知恵とスキルを持ってる。今日の戦いでやった武器強奪のように。スキルは一朝一夕で身につくものじゃない。あいつはあのスタイルを身につけるのに数万、数十万と試合をした結果あの思考になっているだろうからね。でも知識はそうじゃない。今日の戦いを見た多くプレイヤーは『どうしても勝てない相手』への対処の一つに自分の武器以外の何かを利用するという選択肢を手に入れたはずです」
なるほど、確かにその情報があるかないかで取れる手段の数は格段に差が出る。
ゲームの腕は必要ない。
知ってるか知らないかだけで大きく変わるわ。
「あいつのスキルの使い方はそういった考えから発生してるものが多いんですよ。恐らく今後は彼以外もそういうった考えを取り入れるプレイヤーは出てくるはず。あるいはもっと斬新な戦術を使うプレイヤーも出てくると思う。そうなった時スタンダードな動きしか知らないとなると、手も足も出ずに倒されることになりかねない。あいつと戦ったときに初撃を受けた時の俺みたいに」
「だからSADさんも?」
「ええ、俺もあいつの動きを取り入れるようになりました。俺だけじゃなく、テストに参加した俺のパーティ全員がね」
スタンダードなだけじゃ、ただ効率を求めるだけじゃ駄目だと、効率化の最先端が語る。
このゲームは効率だけではなくセンスや知識がものを言うと。
「マップの形状がまるで違うので狩場の指南なんかは出来ないですけど、効率化の方法なんかは教えることも出来ます。でも、俺は直接キョウから色々と教えてもらうほうが色々役に立つと思いますよ」
俺は一応あいつとはライバルみたいな感じになっちゃってて本人に素直に聞けやしないんですけどね、と苦笑しながらSADさんは言う。
「その上で、本当のあいつのプレイスタイルが知りたいというのであれば、一つ考えがあります」
◇◇◇
「お疲れ様でーす」
トークステージが終わり、声優の結城桜としての私の役目はひとまず終了。
夜にもう一度トークセッションがあるが、そっちはプレイヤー『チェリーブロッサム』としての参加だ。
次のステージは開発状況や新情報なんかの発表ステージだから私の出番はないし、これでようやく一息つける。
ゲームの中のはずなのに、まるで舞台に上がったような感覚で思っていたよりも疲れた。
「いやー、凄いねコレ。下手なネットラジオよりも緊張するわ」
一緒に登壇していた安達くんも同じらしく、笑ってはいるが少し疲れたような雰囲気だ。
「アバターだって判ってるんですけどね。目の前にああやって並ばれると『見られてる』って意識が……」
「わかるわー! リアルのイベントや舞台と何も変わらないんだよね」
まさにそのとおりだと思う。
髪の色だったり装備だったりとリアルじゃないとひと目で分かるのに、どうにも現実と錯覚してしまう。
今までもVRのゲームはいくつかプレイしたけど、ここまでの臨場感は初めてだ。
「今まで関わってきた作品のゲームも仕事の関係でいくつか触ってきたけど、時間がないのもあるけど僕ゲーム下手なんであまり長続きしないんですけど、これは身体動かす感覚でやれるから面白くていいですよね。ゲーム下手でも思ったように動きますから」
そういえば、安達くんは休みの日に草野球とか普通にやる根っからのアウトドア派だったわね。
ゲームは苦手だけどスポーツやなんかで体動かしてるから、下手な引きこもりよりも上手くキャラを動かせるのか。
そう言えばさっきの戦いも逃げてばかりだったけど、あの狭い舞台の上で最後まで逃げ切ってたっけ。
「結城さんはこの後も残るんですか?」
「うん。安達くんは?」
「僕はこの後ラジオの収録が有るからこれでおしまい。明日の夜のステージにまた出番があるんだけどね」
「そっか、おつかれさま~」
収録日がかぶってたのね。
まぁ、活動中の売れっ子声優ならスケジュールは詰まりに詰まってるか。
私も去年はコレくらい忙しかったんだけどなぁ……
そりゃ喉をやった時の炎症が悪化して、大熱出した上にその影響で右足麻痺とかしてかなり大事になったけど、半年間の療養休暇はやりすぎだと思うんだけど……
って、だめだめ。
今は実質半年間の活動休止に近い状態なんだしそこは飲み込んでおかないと。
ジムで体力だけは落とさないようにしてるけど、稽古も休むように言われてるし時間はほぼ使いたい放題だ。
今回の仕事はキャンペーンガール的なものとして事務所からはOK出てるし、このゲーム関連の仕事でゲーオタ系のファンをつなぎ留めておかないと。
その為には、半端なプレイじゃ駄目だ。
私の場合、『下手でも頑張っています』オーラ出しても受けるようなキャラじゃない。
なら、ガチでトッププレイヤーに食い込むくらいの本気さを見せないと……
その為には……
「あ、お疲れ様です伊福部さん」
「お疲れ様です。ゲーム内ではSADで良いですよ。線引きを慣れておかないとついうっかりゲーム中に身バレしちゃいますよ」
「じゃあ、私もゲーム内ではチェリーでお願いします」
「了解です」
この人は今の所このゲームを最も長い間プレイしているはず。
秋元Dからテストサーバと本サーバではかなりの差があるとは聞いているけど、さっきのプレイを見る限りレベルもプレイヤースキルもβテスト参加者の誰よりも上だった。
今このNEW WORLDで目指すべきトッププレイヤーはこの人だ。
武器種は違うけど同じ前衛のメレー職で、タンクを引き受けられるアタッカーと役割も近い。
このゲームで強くなるためには、この人から色々聞いておきたい。
「私、ちょっと仕事関係なくこのゲームにどハマリしちゃってて、本気でトッププレイヤー目指したいと思ってるんですよ」
「それはなんとなく動きを見てて判りましたよ。他のタレントプレイヤーさんと違って、取り敢えず攻撃するんじゃなくて動きにちゃんと理由を考えてる感じがしましたから」
やっぱり、見てる人はそういう所をちゃんと見てるのね。
てっきりレベルで判断するかと思ってたけど、そんな上辺だけで判断するわけじゃない……と。
「βテストも気がついたらレベル3まで上がっちゃっててちょっと自分でも引くレベルなんですけど、面白くて仕方ないっていうか……」
「そう言ってもらえるとテスターしてるこっちとしても嬉しいですね」
「それで、ぜひSADさんに強くなるためのコツなんかを教えてもらえたらなって」
「強くなるためのコツ……ですか。それはレベル上げの効率とか注意点とか?」
「そういったもの含めて、どんな事に注意すればいいかとかをざっくりとでいいのでアドバイスして貰えたら嬉しいんですけど」
「う~ん、そうだなぁ……さっきのプレイ見てる感じ基本的な動きはすべてできてる感じはあるんだよなぁ。レベルも高いって事はレベリングのコツ的なものも理解は出来てるはずだし……」
レベルもあり、プレイヤースキルも高く、パーティプレイの重要性も熟知しているこの人の持っている情報なら今最もこのゲームで価値があると行っても過言じゃないはず。
もうしばらくすれば、更に効率のいい新戦術とかも組み上げられるとはおもう。
けど、少しでも最先端を行こうと思うのなら待ってちゃ駄目だ。
「さっき、キョウと組んで戦ってましたけど、あいつの隣で戦ってどう思いました?」
「キョウさん……ですか?」
さっき一緒に戦ったテスター。
レベルは私よりも低く、ステータスは恐らくすべての面で私のほうが上回っている。
でも、そんなものは些末な問題だと思い知らされるほどのプレイヤースキル。
このゲームのステータス差は驚くほど無慈悲に結果に直結する。
レベル差1はこのゲームにおいては致命的なまでに力量差が出る。
2も離れれば、ほぼ絶望的。
ステータスの傾向によるが、防御の高いモンスターには急所攻撃ですらダメージが殆ど通らなくなる。
つまり、ラッキーパンチすら期待できない圧倒的な力の差。
「……そうですね凄い陳腐な言葉になっちゃうんですけど『化け物』だと思いました。もちろん良い意味でですよ?」
それをあの人は私の目の前で覆してみせた。
レベル差は2どころではなかった筈なのに。
攻撃力が足らないなら、足りるだけの武器を奪って使う。
頭で考えるだけなら簡単だけど、力も素早さも器用さも自分よりも遥かに強い相手から武器を奪うなんてことをそもそも実行できるとは考えないでしょ。
でも、彼は実際にやってのけた。
普通じゃない。
実際に彼のように戦えれば他のプレイヤーよりも一歩先に進めるかもしれない
でも――
「キョウさんの戦い方は凄いです。正直言って本気であの動きは憧れます。でもアレを参考には出来る気がしないんです」
凄すぎて参考にならない。
あんな、喰らえば一撃で終わるような攻撃が目と鼻の先を通り過ぎていくのをまばたき一つせずに確認して対応するなんて真似、出来る気がしない。
「あいつ、元々はウチの会社が出した格ゲーのトッププレイヤーの一人で、俺と共に決勝常連だったんですよ」
「格ゲーマーだったんですか?」
「ええ。だからなのか、あいつの戦い方は格ゲーのイメージで戦ってるんです。普通MMOの戦い方に寄るだろうに」
「すいません、格ゲーはそこまで踏み込んだプレイをしたことがないので解らないんですけど、どう違うんですか?」
3次元的挙動と2次元的挙動くらいしか違いが思いつかない。
どちらもボタンを押すことで特定の行動をする。
もちろんコマンドで技が出るかアイコン一発で技が出るかなんかの違いは有るし防御や投げみたいなシステム差だったり操作性も違うんだろうけど……
「一番わかり易い部分でいうと、ほとんどのMMOには防御が無いんです」
「はぁ……まぁ確かに……」
「MMOでは『避けるための範囲攻撃』以外はほぼ回避できません。喰らってしまうのは仕方ない。防具やレベルを上げることでその避けられない攻撃に耐えられるようにするのがMMOでの基本です」
MMOに限らずRPGと名のつくものはすべてそういうものじゃないの?
「格ゲーは小技もなにもかもを喰らわないことが前提です。牽制一発貰うだけで負けに直結します。なら防御を固めればいいかといえば、防御を崩す方法がいくつもある。でも格ゲーにはレベルや装備なんて無いから戦い方で対応するしか無い」
そうか、MMORPGをプレイしてるにもかかわらず格ゲーのつもりってそういう事か。
装備やレベルよりも、まず初めからプレイヤースキルしか頼っていないって事かしら?
でも相手の武器を奪って闘うってのは、装備の重要さを理解している筈で……んん?
「そこで、個人差はありますけど大抵のプレイヤーは防御した時に相手に確実に反撃出来る攻撃を覚えて反撃できるように対策するか、同時に技を振っても勝てる技を探すようになります。ええと……格ゲーでのフレーム表ってどういう意味かわかりますか?」
「実際に見たことはないですけど用語的な意味なら。ボタン押してから技の攻撃判定が出るまでのフレーム数とか防御された場合の不利になるフレームとかが書かれたやつ……ですよね」
「合ってます。遅延前提のMMOと格ゲーの違いは1フレームの重要さなんですよ。反撃しても大丈夫な技の見極めや、同時に出しても勝てる出の速さ、発生は同じでも一方的に勝てる技の判定の強さといった地味な計算のしあいが格ゲーの特徴です。誤解を承知で極端な言い方をすれば、1フレームの埋め合いがすべてなんです」
突き詰めるとどのゲームだって最速最適行動を求めるのはそうなんですけどね、と言いつつ、格ゲーのそれは他のゲーム以上にシビアなんだという。
ふぅ、と小さなため息の後SADさんは言う。
「あいつと対戦してその事を意識した時初めて俺達も気付いたんですよ。このゲームは体感するような遅延フレームが一切ないって」
「あ……確かにラグみたいなものは一切感じたことがないですね」
身体を動かすにあたって、遅れや重さ的な者を一切感じたことがない。
たしかに今言われる間全く気が付かなかった。
ネットゲームとしてはそれが当然じゃないと困るんだけど、ネトゲとラグは昔から切っても切り離せない問題。
それが殆どないのなら、ラグを一切排除した格ゲー的なスタイルが通用する……?
「あいつ、昔からの癖だからなのか、このゲームでもほとんどの行動をフレーム表に当てはめたように行動するんです。相手がどういうタイミングでどの技を振るのか、そしてどのタイミングでフレームに隙間が空くのか。それを確認するために最初は徹底的に見に入る……」
「でも、格ゲーと違ってこのゲームはプレイヤーが思ったとおりに身体を動かすんですよ? 同じような動きだって全く同じにならない筈ですよね? 本人がたとえ同じにしたくても機械でもなければ完全再現なんて出来やしないし……それにフレーム表なんて当然ありません」
「だから、あいつは作るんですよ。戦ってる間にあいつの頭の中に対戦相手の行動フレーム表を」
作る?
特定行動の存在しないこのゲームでフレーム表を、戦いながら?
冗談でしょう?
「そんな事が可能なんですか?」
「よく昔から漫画なんかで達人キャラが言うでしょう?『一度見た技は二度と通用しない』的な事を」
「確かに、定番ネタですけど、それこそ漫画だからでしょう? 普通の人にそんな真似ができます?」
「格ゲーでなら可能です。どれだけ多才であってもモーションは固定されていますからね。数百、数千試合と対戦したりトレーニングモードで同時に技を出したり、と言った感じで昔からどの技がどの技より早い、発生は同じだけど判定は強いといった試行錯誤によって攻略されてきました」
格ゲープレイヤーはそんな事をやってるの?
それだとゲームと言うよりも数学とかそんな印象なんだけど……でもこのゲームは
「固定されたモーションなんて一つもないこのゲームでもね? ある程度慣れてくると、相手が剣を振り上げてから振り下ろすまでの間に自分の攻撃が届くかどうかの見切りなんかは完全ではないにしろ多少は俺でも出来るようになった。でも……あいつは小技、ストレートだけじゃなくジャブまで対応する。そんなのは、少なくとも俺には真似できやしません。ですが……そこまで真似する必要って無いですよね?」
「同じような真似はできはしないとしても、要所を掴めば多少であれば真似できる……?」
「そう、基本的な所でアイツを完全にトレースすることは無理だけど、突飛に見えるようなあいつの行動は実のところ驚くほど理にかなってる物も多いんです。だから、あいつの戦い方を参考にする事で、レベル以上の強さを発揮できるのは間違いないんですよ。実際、PvPテストであいつにやられたフェイントを見よう見まねでLV1モードのPvP先行体験会で使ってみたら、相手は反応すらできずにやられてましたしね」
つまり、全部真似する訳じゃなく、自分で活かせるところだけを再現すればいいってこと?
「俺のプレイは情報を集め、狩場を探しレベルを上げ、体にスキルや装備を反復によってなじませる。言ってみれば超スタンダードな『運営が想定したプレイ』の最先端です。そしてβテストのトッププレイヤーの殆どが俺と同じ効率化を行い、ほぼ同じ戦術でモンスターと戦っている。つまり俺から教えることはあまり無いんですよ」
テストサーバと本サーバではシステムが違うんで完璧に一緒とは言えませんけどね、と苦笑いで彼は言った
「強くなるなら彼の……キョウさんのやり方にするべきだと?」
「全部が全部そうだとは言いませんけど、強くなりたくて何か一歩抜け出したいなら、そうするべきです。細かい指摘なんかはたしかに俺でもできますけど、その俺自体があいつの動きを取り入れるようになりましたからね」
「SADさんから見てもキョウさんは強いですか?」
「強いです。間違いなく」
ノータイムだった。
このゲームで最高レベル、最強のプレイヤーと運営が太鼓判を押すこの人が一切迷わず言い切った。
「あいつとは以前PvPモードのテストで対戦したことがあるんです。こっちのLVを隠してLV1のあいつを相手に」
「まさか……」
まさか、勝ったの?
このゲーム最強プレイヤー相手にLV1で?
「結果は俺の勝ち。STR不足であいつは俺のHPを削りきれなかった」
「……ですよね」
びっくりした。
あまりに思わせぶりなことを言うからつい――
「でも、内容は完全に俺の負けだった。同じレベル、同じステータスであれば開始数秒で俺の首が飛ばされていたし、最終的に俺の勝ちになりはしたけど俺は片腕飛ばされたんですよ? LV5の重武装前衛がLV1の初心者装備相手にです」
「LV差4で!?」
嘘でしょ!?
――いえ、実際彼はエドワルトと対等に渡り合ってた。
NPCとは言え、レベル差は相当なものだったはず。
そしてのこのゲームのNPCの思考レベルを考えるなら、あるいは……
「あいつはレベルの差を埋めるだけの知恵とスキルを持ってる。今日の戦いでやった武器強奪のように。スキルは一朝一夕で身につくものじゃない。あいつはあのスタイルを身につけるのに数万、数十万と試合をした結果あの思考になっているだろうからね。でも知識はそうじゃない。今日の戦いを見た多くプレイヤーは『どうしても勝てない相手』への対処の一つに自分の武器以外の何かを利用するという選択肢を手に入れたはずです」
なるほど、確かにその情報があるかないかで取れる手段の数は格段に差が出る。
ゲームの腕は必要ない。
知ってるか知らないかだけで大きく変わるわ。
「あいつのスキルの使い方はそういった考えから発生してるものが多いんですよ。恐らく今後は彼以外もそういうった考えを取り入れるプレイヤーは出てくるはず。あるいはもっと斬新な戦術を使うプレイヤーも出てくると思う。そうなった時スタンダードな動きしか知らないとなると、手も足も出ずに倒されることになりかねない。あいつと戦ったときに初撃を受けた時の俺みたいに」
「だからSADさんも?」
「ええ、俺もあいつの動きを取り入れるようになりました。俺だけじゃなく、テストに参加した俺のパーティ全員がね」
スタンダードなだけじゃ、ただ効率を求めるだけじゃ駄目だと、効率化の最先端が語る。
このゲームは効率だけではなくセンスや知識がものを言うと。
「マップの形状がまるで違うので狩場の指南なんかは出来ないですけど、効率化の方法なんかは教えることも出来ます。でも、俺は直接キョウから色々と教えてもらうほうが色々役に立つと思いますよ」
俺は一応あいつとはライバルみたいな感じになっちゃってて本人に素直に聞けやしないんですけどね、と苦笑しながらSADさんは言う。
「その上で、本当のあいつのプレイスタイルが知りたいというのであれば、一つ考えがあります」
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※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
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※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
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