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4、私の事を誰かに話したら命はないって言ったよね?
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「……もしかして、あの時の美少女……?」
私は、目の前の性別不明な推定男を指さした。
男色家だと聞いていたのに、寝室にいたのが美少女だったから不思議だと思っていたけど……成る程、男だったのか。謎が解けて少しすっきり。次の日には忘れてた謎だったけど。
「イシュトと申します、以後お見知りおきを」
と男は綺麗な所作で、私の手を取り甲にキスを落としたが……私はぶすくれる。
恩を仇で返しやがって、このヤロウ。
「……私の事を誰かに話したら命はないって言ったよね?」
何で、よりによって全国紙で呼び掛けるのさ!!
お陰で私はクビだ、クビ!!
結構殺気立って言ったのに、イシュトさんはふわり、と美しく笑う。
「はい。あの時から私の命は、貴女のものですから」
「そうじゃなくてーっ!」
駄目だ。どうやら私は、イシュトさんのヒーローポジ獲得に成功し過ぎてしまったらしい。
「私さ、貴方のせいで暗殺業クビなんだけど!?」
私がそう言って初めて、イシュトさんはその綺麗な眉を下げる。
「それは……申し訳ない事を致しました」
「どうしてくれるのよ」
本当に、どうしてくれるんだ。あそこしか、私の居場所はないのに。
「では……私と結婚するのは如何でしょうか?」
「……はぁ?」
「私と結婚して頂けたら、この屋敷で衣食住を提供させて頂きます」
何なんだ、この男。いきなり自分を売り込んできた。
しかし……結婚は置いといて、イシュトさんに雇って貰うのは悪くない気がする。ヤバかったら逃げれば良いし。
「……じゃあ、結婚はともかく責任取って雇って下さい」
「承知致しました、シェーラさん。最高の部屋をご用意致します」
イシュトさんは宿屋に置いていた鞄ひとつを取りに行った私にそのまま付き添い、今度は玄関から馬車で入った私にご機嫌な笑顔で「これからはここが貴女の家ですよ」と言った。
***
イシュトさんは結局、あの事件の後自分の実家である伯爵家を復興させたらしい。
まず豚さんの名目上の嫁さんである侯爵夫人と、侯爵家の財産を折半し、お互いに干渉しない事を約束した。侯爵夫人は自分の恋人と避暑地で優雅に暮らしているらしく、それ以来会っていないらしい。そしてイシュトさんは、元々侯爵が行っていた商売を飛躍的に発展させつつ、実家の伯爵家の財政を建て直した。
そして今では、侯爵家は豚さんの親戚に跡を継がせ、自分は伯爵家に戻ってきたのだという。イシュトさんが抜けた今となっては、侯爵家の財政は一気に右肩下がりになり、伯爵家は一気に右肩上がりになったらしいが。
「さて、シェーラさんに頼みたいお仕事ですが……」
「得意な仕事は暗殺です!」
元気に手を挙げてアピールしたが、イシュトさんは華麗にスルーしやがった。
「女避けです」
「うん?」
「ですから、先程結婚して下さいと言ったじゃないですか。私はこの通り、男女関係なく言い寄ってくる輩が多くて辟易する容姿ですので」
「あー、まぁ綺麗ですよね」
私が頷きながら相槌を打つと、イシュトさんはぴたりと紅茶に伸ばした手を止めて私を見た。
私は、目の前の性別不明な推定男を指さした。
男色家だと聞いていたのに、寝室にいたのが美少女だったから不思議だと思っていたけど……成る程、男だったのか。謎が解けて少しすっきり。次の日には忘れてた謎だったけど。
「イシュトと申します、以後お見知りおきを」
と男は綺麗な所作で、私の手を取り甲にキスを落としたが……私はぶすくれる。
恩を仇で返しやがって、このヤロウ。
「……私の事を誰かに話したら命はないって言ったよね?」
何で、よりによって全国紙で呼び掛けるのさ!!
お陰で私はクビだ、クビ!!
結構殺気立って言ったのに、イシュトさんはふわり、と美しく笑う。
「はい。あの時から私の命は、貴女のものですから」
「そうじゃなくてーっ!」
駄目だ。どうやら私は、イシュトさんのヒーローポジ獲得に成功し過ぎてしまったらしい。
「私さ、貴方のせいで暗殺業クビなんだけど!?」
私がそう言って初めて、イシュトさんはその綺麗な眉を下げる。
「それは……申し訳ない事を致しました」
「どうしてくれるのよ」
本当に、どうしてくれるんだ。あそこしか、私の居場所はないのに。
「では……私と結婚するのは如何でしょうか?」
「……はぁ?」
「私と結婚して頂けたら、この屋敷で衣食住を提供させて頂きます」
何なんだ、この男。いきなり自分を売り込んできた。
しかし……結婚は置いといて、イシュトさんに雇って貰うのは悪くない気がする。ヤバかったら逃げれば良いし。
「……じゃあ、結婚はともかく責任取って雇って下さい」
「承知致しました、シェーラさん。最高の部屋をご用意致します」
イシュトさんは宿屋に置いていた鞄ひとつを取りに行った私にそのまま付き添い、今度は玄関から馬車で入った私にご機嫌な笑顔で「これからはここが貴女の家ですよ」と言った。
***
イシュトさんは結局、あの事件の後自分の実家である伯爵家を復興させたらしい。
まず豚さんの名目上の嫁さんである侯爵夫人と、侯爵家の財産を折半し、お互いに干渉しない事を約束した。侯爵夫人は自分の恋人と避暑地で優雅に暮らしているらしく、それ以来会っていないらしい。そしてイシュトさんは、元々侯爵が行っていた商売を飛躍的に発展させつつ、実家の伯爵家の財政を建て直した。
そして今では、侯爵家は豚さんの親戚に跡を継がせ、自分は伯爵家に戻ってきたのだという。イシュトさんが抜けた今となっては、侯爵家の財政は一気に右肩下がりになり、伯爵家は一気に右肩上がりになったらしいが。
「さて、シェーラさんに頼みたいお仕事ですが……」
「得意な仕事は暗殺です!」
元気に手を挙げてアピールしたが、イシュトさんは華麗にスルーしやがった。
「女避けです」
「うん?」
「ですから、先程結婚して下さいと言ったじゃないですか。私はこの通り、男女関係なく言い寄ってくる輩が多くて辟易する容姿ですので」
「あー、まぁ綺麗ですよね」
私が頷きながら相槌を打つと、イシュトさんはぴたりと紅茶に伸ばした手を止めて私を見た。
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