29 / 63
七氏と巫女の出会い
8-1
しおりを挟む
我の両親は、他の家族より仲が良いと思っている。理由は簡単。
「九尾様、こちらは私が丹精込めて作りました、天ぷらでございます。火を扱うのには慣れておりませんが、練習を沢山しました。いかがでしょう、食べてみてください。はい、あーん」
「うむ、あーん。むっ、前より温かく、うまいぞ! さすがワシの嫁だ!」
息子である我の目の前で、このようなイチャイチャを繰り広げておるのが、仲が良いと思っている理由の一つ。
はぁ、仲が良いのはいい事だが、こちらとしてはもう少し自重してほしいものだ。
見ているこっちが恥ずかしい気持ちになるぞ。
「あら、七氏。食べないの? 具合でも悪いのかしら」
「甘いものを目から摂取しておりますので、お気になさらないでください、母上」
「それはどういうことかしら?」
「胸やけしそうですが、具合は悪くありませんので大丈夫という意味です。ご飯もしっかりと食べますので、お気になさらず」
首を傾げ、再度父上といちゃつき始める母上。
周りには我以外の者がいないのが救いだ。
お二人は、周りにどれだけの人が居ようとお構いなしにいちゃつき始めるから困りもの。
ため息を吐きながらご飯を食べ終え、いつものように部屋に戻ろうと立ち上がると、何故か父上に止められた。
何だろうか。
「七氏、明日は暇か?」
「はい、明日は特に予定はありません。仕事の手伝いでしょうか?」
「似たようなものだ。七氏、明日は現代へ行く用事がある。共に行かぬか?」
現代へ同行という事か?
今まで、我がいくら行きたいと言っても、危険だからと連れ出してはくれなかったのに。
とうとう我も、父上にお近づきになれたという事か。
大人に一歩、近づいたな。これは喜ばしいぞ。
「い、行きたいです!!」
「くくっ、そうか。まだ少々不安ではあるが、ワシと共になら問題ないだろう。だが、約束してくれ」
「約束、ですか?」
「あぁ。気分が悪くなったらすぐに言うこと。あと、ワシから絶対に離れるでない。この約束を破れば、二度と現代へ連れては行かぬからな?」
「は、はい…………」
父上、笑顔が黒いです。怖いです。
父上が警戒するのも、無理は無い。
今まで自由に過ごしてきた自覚はある。
仕事ばかりしている父上に構ってほしくて襖を壊したり、廊下を走り回ったり。
一度、母上に後ろから突進してしまい、沸騰していたお湯が顔にかかったことがあったな。
あの時の母上は、泣きそうな顔を浮かべ何度も謝っていた。
我が構ってほしくてやってしまった事だと言うのに、母上は自分を責め何度も謝罪。
父上は事情を聞いて、何度も母上に『大丈夫だ』と『お前のせいではない』と言っていた。
我も何度も母上と父上に謝り、その場は収まったが……。
ほとぼりが冷めた頃に、こんこんと怒られた記憶が……。
いや、怒りというより、諭すような感じ。しかも今と似たような黒い笑みを浮かべて……。
我はもう、絶対に父上を怒らせてはならないと心に誓った出来事だった。
「旦那様、本当に大丈夫なのでしょうか。現代の空気は、我々あやかしにとって毒となります。体調を崩さないか心配なのですが…………」
「それも含めての提案だ。七氏には、ワシの後を継いでもらわんとならん。そのためには、現代の空気にも慣れ、偵察や現代にいるあやかしの様子を確認する術を手にしてもらわんと困る」
「ですが……」
「今はまだ、体調を崩したとしてもすぐに戻ってくることが可能。少々手荒だが、問題はないだろう」
父上の膝に乗っている母上が、上を見上げ心配そうに眉を下げて聞いている。
そこまで心配するくらい、現代の空気は汚いらしい。
我が住んでいるこの世界は空気が澄んでおり、風も心地よい。昼寝には最適の環境だ。
この空気に慣れていると、現代の空気は気持ち悪くなる。だがら、少しでも気分が崩れたら教えてくれという事だな。
「恐らくだが、最初は現代に行っただけで体を崩す。七氏が体調を崩しても良いように、氷璃は氷枕やタオルなどを準備しておいてくれ」
「わかりました」
え、体調を壊してもいいようにの事前準備? おかしくないか?
……………………現代とは、恐ろしい所なんだな。
「九尾様、こちらは私が丹精込めて作りました、天ぷらでございます。火を扱うのには慣れておりませんが、練習を沢山しました。いかがでしょう、食べてみてください。はい、あーん」
「うむ、あーん。むっ、前より温かく、うまいぞ! さすがワシの嫁だ!」
息子である我の目の前で、このようなイチャイチャを繰り広げておるのが、仲が良いと思っている理由の一つ。
はぁ、仲が良いのはいい事だが、こちらとしてはもう少し自重してほしいものだ。
見ているこっちが恥ずかしい気持ちになるぞ。
「あら、七氏。食べないの? 具合でも悪いのかしら」
「甘いものを目から摂取しておりますので、お気になさらないでください、母上」
「それはどういうことかしら?」
「胸やけしそうですが、具合は悪くありませんので大丈夫という意味です。ご飯もしっかりと食べますので、お気になさらず」
首を傾げ、再度父上といちゃつき始める母上。
周りには我以外の者がいないのが救いだ。
お二人は、周りにどれだけの人が居ようとお構いなしにいちゃつき始めるから困りもの。
ため息を吐きながらご飯を食べ終え、いつものように部屋に戻ろうと立ち上がると、何故か父上に止められた。
何だろうか。
「七氏、明日は暇か?」
「はい、明日は特に予定はありません。仕事の手伝いでしょうか?」
「似たようなものだ。七氏、明日は現代へ行く用事がある。共に行かぬか?」
現代へ同行という事か?
今まで、我がいくら行きたいと言っても、危険だからと連れ出してはくれなかったのに。
とうとう我も、父上にお近づきになれたという事か。
大人に一歩、近づいたな。これは喜ばしいぞ。
「い、行きたいです!!」
「くくっ、そうか。まだ少々不安ではあるが、ワシと共になら問題ないだろう。だが、約束してくれ」
「約束、ですか?」
「あぁ。気分が悪くなったらすぐに言うこと。あと、ワシから絶対に離れるでない。この約束を破れば、二度と現代へ連れては行かぬからな?」
「は、はい…………」
父上、笑顔が黒いです。怖いです。
父上が警戒するのも、無理は無い。
今まで自由に過ごしてきた自覚はある。
仕事ばかりしている父上に構ってほしくて襖を壊したり、廊下を走り回ったり。
一度、母上に後ろから突進してしまい、沸騰していたお湯が顔にかかったことがあったな。
あの時の母上は、泣きそうな顔を浮かべ何度も謝っていた。
我が構ってほしくてやってしまった事だと言うのに、母上は自分を責め何度も謝罪。
父上は事情を聞いて、何度も母上に『大丈夫だ』と『お前のせいではない』と言っていた。
我も何度も母上と父上に謝り、その場は収まったが……。
ほとぼりが冷めた頃に、こんこんと怒られた記憶が……。
いや、怒りというより、諭すような感じ。しかも今と似たような黒い笑みを浮かべて……。
我はもう、絶対に父上を怒らせてはならないと心に誓った出来事だった。
「旦那様、本当に大丈夫なのでしょうか。現代の空気は、我々あやかしにとって毒となります。体調を崩さないか心配なのですが…………」
「それも含めての提案だ。七氏には、ワシの後を継いでもらわんとならん。そのためには、現代の空気にも慣れ、偵察や現代にいるあやかしの様子を確認する術を手にしてもらわんと困る」
「ですが……」
「今はまだ、体調を崩したとしてもすぐに戻ってくることが可能。少々手荒だが、問題はないだろう」
父上の膝に乗っている母上が、上を見上げ心配そうに眉を下げて聞いている。
そこまで心配するくらい、現代の空気は汚いらしい。
我が住んでいるこの世界は空気が澄んでおり、風も心地よい。昼寝には最適の環境だ。
この空気に慣れていると、現代の空気は気持ち悪くなる。だがら、少しでも気分が崩れたら教えてくれという事だな。
「恐らくだが、最初は現代に行っただけで体を崩す。七氏が体調を崩しても良いように、氷璃は氷枕やタオルなどを準備しておいてくれ」
「わかりました」
え、体調を壊してもいいようにの事前準備? おかしくないか?
……………………現代とは、恐ろしい所なんだな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる