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七氏と巫女の出会い

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 父上の後ろを何も話さず付いて行くと、馬車に乗り込むこととなった。

 馬車に乗るほど遠くに行くという事か? 
 どのような形で現代に行くのだろう。

 我が馬車に乗り込むと、父上が御者席に座る男性に指示を出し、馬を走らせた。

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 馬車が走り出してから数分、目的の場所にたどり着いたらしく、止まった。

「ここって……。森? いつも市場に行く時に見る森ですよね?」

「そうだ、この森の中にあるんだぞ。現代に行くことが出来る神木が」

 神木? 神木を使い、現代に行くのか。
 よくわからんが、楽しみだ。
 
 現代とは一体どのような所なのだろうか、何があるのだろうか。
 少々先ほどの話を聞いて怖気ついてしまったが、やはりわくわく感は湧いてくるもの、楽しみだ。

「目を輝かせておるのぉ。どんなに楽しくても、ワシからは離れるでないぞ? あと、気持ち悪くなったらすぐに言うんだ。この約束が守れなかった場合は、二度と現代に連れて行かんからな?」

「は、はい…………」

 父上の口調と表情が黒い物へと切り替わる。
 本気度が伺えるな……。父上を怒らせてはいかんから、約束は絶対に忘れぬようにしなければな。

「では、入るぞ」

「はい」

 父上が森の中に入り、我も付いて行く。

 カサカサと二人分の足音が聞こえ、鳥の声も耳に優しく心地が良い。

「七氏は、本当にこの森が好きだなぁ」

「え、確か好きですが、あまりこの森に立ち入ったことはありませんよね? なぜ、そう思うのですか?」

「ほう、そこは覚えておらんのか。七氏は、ワシが怒るといつも屋敷を出てこの森で時間を潰しておったのだぞ。神木の影で泣き、疲れたら寝てしまう。寝たところをワシが回収するのが日常茶飯事だった」

「え、そんなことが…………?」

「もう数十年も前の話だから、覚えていないのも無理はない」

 そんな出来事があったのか……。
 
 我は子供の頃、やんちゃしすぎだろう……。

 馬車では数分の距離だが、子供の足では少なくとも数十分はかかる距離。
 そんな距離などなんのそのと思えるくらいこの森は心地よく、一人になりたい時は最適だったのだろうな。

 改めて周りを見渡しても、本当に心が踊る素敵な場所だ。
 太陽光が木々の隙間から注がれ、幻想的。好きになっても仕方がない。

「着いたぞ、これが現代に行くための神木だ」

「これが、神木…………」

 父上が指しているのは、周りに立ち並ぶどの木よりも高く伸びている大きく太い木。
 しめ縄が巻かれ、葉が風により踊るように揺れていた。

 ここだけ、空気が違うような気がする。  
 体がじんわりと温かくなるのと同時に、心が澄んでいくような、洗われるような感覚だ。

 見上げている神木から目を離すことが出来ない。
 これが、 神霊の宿る木…………か。

「見惚れておるところ悪いが、もうそろそろ準備を始めるぞ」

「? 準備?」

 父上は我の質問には笑顔で返すのみ、すぐに神木の前に立って手を添えた。

 ────っ! 強い光?! 前が見えん!! 何が起きたというのだ。

 目を閉じ、手で顔を覆っていると、徐々に光が薄れ暗くなる。
 恐る恐る目を開けると、父上がにんまりとした顔で我を見ていた。

「準備は出来た、行くぞ」

「準備が出来たとは一体? 見た目は特に変わりがありませんが…………」

 改めて見るも、強い光を放った前と神木には変化がない。何を準備したというのか。

「心配せんでも良い、ほれ。ワシの手を離すでないぞ、絶対だ」

「は、はい」

 父上が我の手を握り、神木に手を添えた。
 …………そえっ、え?

「す、すり抜けてますよ父上ぇぇええ!?!?」

「っ! おぉ、さすがに驚いたな。まさか七氏からこのように抱き着かれるとは。これは親として嬉しいな。最近では恥ずかしがり、まともに手すら握らせてもらえなかったしのぉ~」

「今はそのようなことはどうでもいいのです! それより、手が、父上の手が神木に食べられております!!」

「安心せい、神木は人もあやかしも食わん。ほれ、そーれ」

 父上が思わず抱き着いてしまった我の身体を抱きかかえ、そのまま神木の中へと入った?!

 勘弁してください! 我はまだ死にたくないですよぉぉおお!!!
 
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