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第一章 転生、そして冒険者に
#11 冒険者と人気者
しおりを挟むふぅ…無事脱出、と思ってたら受付の外にいた冒険者の内の数名がこっちに向かってくる…なんかイヤな予感がヒシヒシと。
「よう、お前さん、漂流者なんだよな?」
あぁ…やっぱり声掛けてきた……寄って来た中の1人、厳ついおっさんが。
如何にもベテランって感じの雰囲気で、体格も鍛え上げられた感が滲み出てる…背中に背負ってるのは大盾だからタンクってやつか、うん、おっさんにぴったりの職だわ…その厳つい顔で敵を威嚇しつつ盾で前線押し上げるとか、ハマりすぎだろ。
「はい、そうですけど…」
「俺はガズヴァルド、ハイゴールドランク冒険者だ」
「…ナオトです、今日冒険者になりました」
「あんまり強そうには見えねぇが、まぁ、漂流者だからな。登録ランクはどうだったんだ?」
「ランクはハイゴールドからになりました」
「そいつはスゲぇな、かなり期待されてるじゃねぇか」
「期待…ですか……どうなんでしょう?自分じゃよく分かりませんが…」
期待っていうか、結果的にそうなっただけだと思ってるわけで。
それよりおっさんと他の人達怖いんだけど…なんでそんなに凄むの?俺何かした…?
「まぁ、最初はランクなんか気にしねぇでコツコツやって慣れてくのをオススメするぜ」
「あ、はい、自分もそうしようかと…」
「そうか、まぁ頑張れよ。ところで…だ。その、なんだ…お前さんの専属は…誰になったんだ?もしかして…ラナ…か?」
「ええ、ラナさんが専属になってくれるそうですけど…」
「「「「「!?」」」」」
え、なに、どうしたっ!?ラナさんが専属だと何かマズいのか…?
「…ついに……ラナちゃんが専属に………」
「なんてこった…オレたちのラナちゃんが……」
「くそっ!なんて…なんて………」
「「「「「羨ましいっ!!」」」」」
あ、そゆこと。
確かにラナさん可愛いしなぁ…ケモミミだし、さぞかし人気者なんだろうってのは分かる。
でも、俺からしたら他の受付嬢さん達も相当レベル高いと思うんだけどなぁ。
「えっと、ここにいる皆さんはラナさんのファンってことで?」
「ん、まぁ、こいつらはそんなとこだ。俺はそうだな…ラナを見守る方だ」
「ラナさんの身内の方ですか?」
「いや、そういうわけじゃねぇが、まぁ、小せぇ頃からラナを知ってるからな。親代わりみてぇなもんだ」
あれか、ラナさんの親に頼まれて見守ってるとか、そんな感じか。
にしても、ここまで騒ぐようなこと…って、そうか、アイドルに恋人出来たのと似たようなもんってことなのか。
そんな娘が俺の専属…なんか出来すぎてて後で酷いしっぺ返しとか来そう、ちょっと用心しとくか…。
「そうでしたか。それで皆さんは、その専属かどうかを確認しに来た、ということでいいんでしょうか」
「あぁ、そういうことだ。どんなやつの専属になるか、ずっと気にしてたからな。ま、こいつらは置いといて、お前さんなら多分大丈夫だろう。カウンター内での様子を見てた限りではな」
「なっ!?ガズさん!そいつのことそんなあっさり認めちまうのかっ!」
「そっ、そうだぜガズさん!そんなヒョロそうな小僧にオレたちのラナちゃんを…ラナちゃんを任せられるか!」
「「「そうだそうだっ!」」」
うっはー、すげー人気だなラナさん。
ただなぁ…受付嬢と冒険者って関係だけでここまで騒ぎ立てるあんたらもどうかと思うんだが。
「ナオトさん、お待たせしました、ランクの手続きが…って、どうしたんですかっ!?」
お、手続き終わったみたいだけど…カウンターの中からこの状況見て驚いてるよラナさん。
まぁ、こんだけ囲まれて言い寄られてたら何事かと思うよな。
「よう、ラナ、話は聞いたぞ。こいつの専属になったんだってな」
「あ、ガズおじさん!これ、いったいどういうことですか?どうして皆さんでナオトさんを囲んでるんですかっ!?」
「うん?あぁ、こいつらはラナが専属になっちまったってんで騒いでるだけだ、気にするな」
「気にするなって…皆さんそんな恐い顔して囲んでたら、何かあったのかって思うに決まってるじゃないですか!」
そりゃパッと見だとそう思うよなぁ…実際は問い質されてただけなんだけれども。
ただし鬼気迫る勢いで。
「別に荒事起こしてるわけじゃねぇんだ、なんて事はないだろう。こいつらもな、ただ騒ぎたいだけなんだよ」
「ガズさん…そりゃねぇよ…」
「ここ最近では一番の大事なんだぜっ!」
「アホか、そりゃオマエ等だけだろうが。見てみろ、他のヤツラは静観してるだろう」
他にも冒険者はそれなりにいるけど、確かに遠目から見てるだけだな…まぁ、視線の内訳は悲喜こもごもだけど。
「理由は分かりましたけど、揉め事と勘違いされますから皆さん解散してください!もう…」
「あー、悪かった。もう用は済んだから行くさ。おらオマエ等、解散だ、散れ散れ!」
「ちょっ、ガズさん俺はまだそいつに」
「何だお前、ラナの仕事邪魔しようってのか?ん?」
「あ、いや、そういう訳じゃ…」
「だったら行くぞ、これ以上ここにいたらラナに大目玉喰らうぞ?」
「え、あ、そ、それは…ラナちゃんに嫌われたら、俺冒険者やっていけない…」
「お、俺も…」
そこまでラナさんがモチベーションになってるのか…それでいいのか冒険者。
「じゃあな、ラナ、邪魔したな」
「ほんとですよ、もう…あんまりびっくりさせないでください」
「あぁ、悪かったよ。おら行くぞオマエ等」
渋々ガズさんに付いていったファンの皆さん…まだこっち睨んでる人もいるけど。
いや、大した事じゃなくて良かったんだけどね。
ラナさん大人気ってのが良く分かりました。
下手なことして不況を買わないよう気を付けよう…。
「大丈夫でした?ナオトさん。変なこと言われたりしませんでした?」
「ええ、大丈夫でしたよ。ちょっと驚きましたけどね。自分の専属がラナさんになったのが羨ましいって言ってました。人気者ですね、ラナさんは」
「そんなこと言われたんですか?専属って言ってもさっきみたいにちょっとした特殊な待遇があるくらいで、後は基本的に冒険者の皆さんと同じ扱いですよ?なので、羨ましいってことは無いと思うんですけど…」
ですよねー知らぬは本人ばかり也。
漂流者って言っても普通にクエストやってる分には、冒険者と受付嬢ってそんな特別なやりとり自体そうそう起こるようなもんじゃないとは思う、それは分かるけどそこじゃ無いんだなぁ。
俺とラナさんの関わり合いが気に食わないんですよ、ファンの皆さんは。
「専属だと、自分は必ずラナさんからクエストを受けなきゃダメとかあるんですか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。何かあった時のフォローがしやすくなるように、くらいの位置付け制度なので…わたしがお休みの時も当然ありますし。ただ、可能な限り頼ってくれると嬉しいです……初めての漂流者担当なので至らない所もあるかもしれませんが、迷惑掛けないように頑張りますから!」
そんな、フンスッ!って力む程気合い入れなくても…概ねこっちが迷惑掛ける方だと思うので。
まぁ、そんな気合い入れてるラナさんだけど、何故かほっこりしかしないっていう…可愛いって凄いね、ホント。
「いや、こちらこそ分からない事ばかりでいろいろ迷惑掛けてしまうと思うのですが…とりあえず、これからよろしくお願いします、と言う事で」
「はいっ!よろしくお願いしますねっ」
またそんなケモミミと尻尾パタパタさせながら元気に言われると、こっちが余計に恐縮しちゃうんですが…あ、ほら、さっきのファンの冒険者がメッチャ睨んでる睨んでる……ここは早々に引き上げた方が吉とみた。
「手続きの方は終わりました?」
「あ、はい。こちらがハイゴールドランクのギルドカードになりますね」
と言ってラナさんから差し出されたギルドカード、さっき貰ったのと同じでしっかりした金属板だけど、やっぱり金色だった…。
「あと、こちらが魔石の買取代金です」
トレーに乗せられた金貨1枚と大銀貨4枚の14000セタル…これで何とかやっていけるかな?他の素材の代金もあるから、最低3日持たせればいいわけだ、うん、この後街を散策して冒険者としてやってく準備しないとだな。
受け取った金貨と大銀貨を無限収納に回収っと。
「ありがとうございました。今日はこの後街を回りながらいろいろと準備してきます。明日早速クエスト受けてみようと思ってますので、ラナさんのところに顔出しますね」
「はい、わかりました。ではまた明日お待ちしてますね!」
「はい、また明日よろしくお願いします。ではこれで失礼します」
ふぅ…何とか無事登録完了、これで晴れて冒険者だな。
ラナさんと、いつの間にかラナさんの隣に来てたリズが手を振ってたから、軽く手を上げてちょっと急ぎ目にギルドを出た。
だってラナさんファンの皆さんがまだこっち見てるんだよ…。
──ギルドを出て伸びをひとつ…ちょっとだけ疲れた感じがする。
多分女性との会話が多かったからだな、妻や娘以外の女性とこんなに話したのは何年振りだろうか……あーでもちっちゃい娘と話すのは大丈夫だった気がするな。
え、もしかして……いやいや無い無い、緊張する要素が無いだけだから、多分、恐らく、概ねそういう事だということにしておこう、うん。
と、気を取り直して、次は…まずこの格好をどうにかしないと。
冒険者!って感じの格好を目指そうかな。
装備自体は…多分スキルで創れそうだけど、ここはこの世界にある物で揃えたい、あまりオリジナリティーを出してしまうと目を付けられそうだし。
よし、まずは服、その次に防具だ。
この円形広場沿いにはいろいろと揃ってそうだし、ぐるっと一通り回ってみるとするか。
応援ありがとうございます!
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