上 下
28 / 62

『魔法少女という存在』⑤

しおりを挟む
『魔法少女という存在』⑤
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「先輩、洗いざらい全部話して貰いますよ?」

 メイスに込めた魔力は彼女にも認識出来ているのだろう。
 いわばナイフや拳銃を突き付けられているような状態に近い。
 怖いだろう、恐ろしいだろう。

 下を向く。
 身体が酷く強張っている。
 可哀想だとは思う。

 さっき僕が必殺技を撃った時の光景、それが脳内にフラッシュバックしているのかもしれない。

 でも、これでいいのだ。
 彼女の自業自得、僕にレーザーなんて撃ってきたのが悪い。
 僕にはもうそんな事を気にしてられる余裕はないのだ。

「何か言ったらどう? 黙ってても何もわからないんだけど」

「……」

 抵抗の意思はもう微塵もないのだろうに、やけに口が重い。

 彼女は魔法少女、言い換えればただの一般人だ。
 別に、自分の命を消費してでも墓場に情報を持って行く必要もなければ言われもないと思うのだが。
 そんな覚悟があるようにも見えないし。

 となると、よほど話したく無い事情でもあるのか。
 後ろめたい事があるのか。
 話したら最期、僕に嬲り殺しにされるとでも思っていそうである。

 まぁ、碌でもない話なのは簡単に予想がつく。
 マスコットと魔法少女が共謀して、他の魔法少女を殺そうなんて。
 それがまともな話な訳ない。

 その上で、少なくともその自覚はあるらしい。
 自分が何をしたのかという自覚が。
 マスコットよりはよほど話す余地はありそうに思える。
 こっちを残して正解だったな。

 しかし、いつまでも黙っていられても困るのだ。
 僕には後どれほどの時間があるのか、それすらすら分からない。
 妹は勿論、僕自身の安全すら全く保証されていない状況なのだ。

 ……仕方ないか。

 彼女に向けたメイスを少しずらす。
 ほんの少しだけ。
 頭に向けていたのを斜め下に、

「腕の一本や二本、無くなっても別に即死はしないよね」

「……いやっ!」

「ん? なぁに?」

「痛いのは、やめて、ください。うち、話します。だから……」

 はぁ……

 女の子を脅すなんて、やっててあんまり気持ちのいい事じゃないな。
 こんなこと不本意なのだが、仕方がない。
 口を開いてもらえないと先に進めないのだ。

 死の恐怖って言っても、別に鮮明に思い描ける訳じゃない。
 話したら殺されるかもなんて恐怖を抱いていたとしても、分かりやすい別の恐怖の前には結構脅しに屈するものらしい。
 どこかで聞き齧った知識だから結構不確かなのだけど。

 それに、この娘も別にどうしても隠し通したいって訳でもないだろう。
 話した結果殺されたりするのが怖いのだ。
 黙ってるわけにもいかないと理解さえしてくれれば話してくれるはず。

 どう話していいかわからない。
 下手なこと話して機嫌を損ねたくない。
 今の思考としてはそんなとこかな?

 ま、聞けば答えてくれるならそれでいい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

完 余命1週間の私は、1週間だけの恋をする

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:11

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:4,215

キノコの魔法: インターネットで躍進する主人公の物語

O.K
エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

俺とカオルさんの日々

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:22

現実という名の魔法

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

魔狼である我は異世界で気楽なペット生活を楽しむ(仮)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:724pt お気に入り:5,478

処理中です...