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二章※1話以降現在推敲中

14話

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14話
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 てなわけで、スラム街に来た。
 例の、闇ギルドの拠点の前である。

「待った?」

「あぁ、待ってた」

 ボスにそっと近づいて声をかけたのだが、驚いてくれなかった。
 流石に慣れたらしい。
 私の声を覚えられちゃった可能性もあるけど。

 それどころか、デリカシーのないお返しをくれた。
 待ってたって……
 そこの返しは待ってないって言うのがセオリーでしょ。

 別に男女って間柄でもないけど。
 あまりにストレートに言われたものだからちょっとびっくりした。
 だからなんだって話だが。

 屋台のおじさんと違ってこの男を相手に雑談する気にはなれない。
 不思議だ。
 お金をもらってる訳だし、私としてはおじさんよりずっと都合が良い人のはずなんだけど。

 おじさんが人好きのする正確なのか、
 ボスが近寄りがたいのか、

 まぁ、どっちでもいいか。
 さっさと本題に入ろう。
 このためにスラムに来るのは苦ではなかったが、別にスラムにいると言う状態が私にとって不快なことに変わりはないのだ。

「それで、あの子はどう?」

「部屋で待たせてある」

「さすがボス、頼りになる」

「使い勝手が良いの間違いだろ」

「同じ意味でしょ?」

「……」

 どうやら、男の子の説得はうまく行ったらしい。
 よくやった。
 指の話は無しにしてやろう。

 ま、私の中だけで勝手に決まっていたことだけど。
 これで本当に切り落としたりしたら相当理不尽だよね。
 相当に嫌がる顔が目に浮かぶ。

「あいつだけならともかく、他の人員は回せないからな」

「そのつもりはないけど、どうして」

「誰かさんに上納金を納めるためにせっせと働いてもらわなきゃならないんでね」

「あぁ、なるほど」

 まぁ、私としてももらえるお金が減るのは困る。
 今回のは例外だ。
 ビビンっと来ちゃったんだから仕方がない。

 手を伸ばせば届くところに欲しいものがあったのだ。
 手を伸ばさないのは嘘でしょ。
 これでこそ好きに生きるって事だと思う。

「じゃ、またね」

「……もうしばらくは来ないでくれ」

 なんか疲れていそうだ。
 ま、やることがいろいろあるのだろう。

 スラム街で闇ギルドの人間が大量に殺されたのが昨日。
 そしてその犯人を配下に加えたのが今日。
 その間にボスのスラム街での名声や立ち位置は相当上下したことだろう。

 うまく生かそうとすると、かなり動き回る必要がある。
 私のお願いは別に難しいものでもなかったと思うんだけど。
 その時間すら勿体無いほど忙しいのかな?

 力関係のせいで断れないちょっとしたお願い。
 それを繁忙期に。
 そう見ると、私ってかなり嫌な上司じゃない?

 でも、犯罪者相手だし別に遠慮はしないけどね。

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